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名無しの(仮)ヒーロー

海月三五

楽は苦の種苦は楽の種 4 

 
 将嗣は、軽く息を吐きだし気持ちを切り替えるように明るいトーンで口を開いた。

「じゃあ、実家に行く話は前向きに検討してほしい。でも、認知の話は進めるからな」

「将嗣は、美優の事を認知していいの? だって、この先、再婚とか考えた時に足枷になる可能性だってあるのに……」
 私が言葉に将嗣は眼を細め優しい瞳を私に向ける。

「夏希と俺の大切な子供だろう」
 そう言われて、何かストンと心に落ちた。
 
「ごめん、今まで黙っていて……」

 再会しなければ今でも美優の存在を将嗣には知らせてはいなかっただろう。
 自分の意地のために子供から父親を奪い、父親から子供を奪う身勝手な行為をする所だった。

 将嗣が寂しそうに微笑みながら言葉を紡ぐ。
「イヤ、夏希は悪くない。悪いのは俺だよ。俺が、壊れた家庭を放置しないで、夏希と向き合っていれば、今頃3人で、ごくごく平凡な温かい家庭が築けていたんだ。俺が悪かったんだよ」

 将嗣は私の肩に手を掛けた。
 うっ、これは、マズイ雰囲気だ。
 コイツ、あの手、この手で、私を落としに掛かっている。

 私は、スッと体を反転させて、美優のところに行き将嗣から逃れた。
そして、誤魔化気味に話題を変える。

「そろそろ美優のオムツ替えるころかな?」

「おむつ替え? 俺にも出来るかな?」

 頬をポリポリ掻いて、少し照れながらおつむ替えにチャレンジしようとする将嗣。そのパパになろうとしている努力は認め、替えのオムツを渡す。

「はい、頑張れ、新米パパ」
 
 オムツといってもパンツタイプ。生後10ヶ月という月齢は、世の中のすべての物に興味深々でオムツ替えだからといって、おとなしく横になってくれたりはしない。好みの問題もあるだろうが、私は、パンツタイプのオムツの方が履き替えがラクな気がしたのでパンツタイプ派なのだ。

 将嗣が美優を横に寝かせるとすかさず美優は体を捻り、ハイハイの姿勢に持ち込もうと暴れる。こういう時の背筋は乳幼児といえども凄い強力で、押さえつける事が難しい。

「美優ちゃん、おとなしくして」
と、焦っている将嗣を見て、クスクス笑ってしまった。困り果てて助けを求める目で私を見る将嗣にアドバイスを送った。

「今、履いているパンツの横が破けるから破いて脱がして、履かせるパンツの足を通す所に手を入れてから履かせるの」
 すると、悪戦苦闘をしながらなんとか履かせることができた。

 ひと仕事終えた将嗣は、満面の笑みで、美優を高く抱き上げ、抱き上げられた美優はキャッキャッとはしゃいだ。
 楽しそうにしている二人を見ていると、嬉しいような、申し訳ないような、何とも言えない複雑な気持ちにさせられた。
 

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