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名無しの(仮)ヒーロー

海月三五

楽は苦の種苦は楽の種 3

 
 駅前のタワマンの一室。
 私の口の中は、フロマージュに満たされ幸せになっていた。

「夏希、ブレないよなァ」
 将嗣に言われ、グッと詰まる。
 ゴホッ、ゴホッ、
むせ返った私の背中をさすりながら正嗣が心配そうにのぞき込み声を掛けた。

「おいおい、大丈夫か」

「大丈夫」
 
「ママは、食いしん坊な上にあわてんぼうだから パパは、心配ですよ。
美優ちゃんも心配ですか。じゃあ、二人でママを見守りましょうね」

 子供をダシにして好き勝手言ってと頬を膨らませ文句を言う。
「むせたぐらいで大げさな」

「イヤ、俺、本気だけど……。夏希が具合悪い時とか、一人だと大変だろう? この前のヤツに言われて何も言い返せなかったよ。俺、今まで何もしていない。だけど、これからは俺に頼って欲しいんだ」
 
「待って、待って、お友達でって、言ったでしょう? 今日は、美優の事で会っているんだよね」

「友達にだって頼るだろう? だから、俺を一番に頼って欲しいんだ。それに美優の事ももっと関わりたい」

 美優の事を持ち出されると困る。けれど、” 一番に頼る ”といって、思い浮かべるのは、朝倉先生の事だった。
 
 考えこんでいる私に正嗣は真剣な面差しを向け言った。

「なあ、この間のヤツ仕事相手だって言っていたけど、それだけじゃないんだろう?」
 唐突にそんなことを言われて、またむせた。
 ゴホッ、ゴホッ、

「なにやっているんだよ。大丈夫か?」

 くっそー、将嗣は、こういうの聡いんだ。自分の事は、ダメダメな癖に!
 そして、何かを察したような視線を送り、話しを始めた。
 
「なあ、弁護士さん頼んで正式な形で、美優ちゃんの事を認知したいと思っている。それで、うちの両親にも美優ちゃんを合わせてあげたい」
 
「えっ? ご両親に?」
 私は、考えもしていなかった話に驚きを隠せなかった。

「だって、両親からしてみたら孫に当たるわけだし、会いたいと思うんだよね」

 言われてみれば、もっともな話。自分の両親は、既に他界していたので気が付かなかった。

「で、さぁ。俺の田舎、福島なんだけど2泊3日ぐらいで行かないか?」

「行かない!」
 なんで、元カレと2泊3日も……冗談じゃない。

「日帰りじゃ、美優ちゃんが可哀想だし、1泊じゃせわしないし、やっぱり、2泊3日は、欲しいと思うわけだ」

「だから、行かないって言っているでしょう?」
 あ、キツイ口調になってしまった。
「あ、ごめん」

「いや、俺の方こそ、しつこく言って悪かった。ごめん、夏希。実は、俺の父親、病気で自宅療養中なんだ。コッチに出て来れないから、孫に会わせてあげられるのは行くしかないんだ」

 事情は分かった。でも、元カレと一緒に実家を訪ねるのって、すっごい抵抗感がある。
 それに私は、朝倉先生と付き合い始めた大切な時期。
 誤解を与えるような行動は慎みたい。今日、こうして会っている事ですら申し訳ない感じがするのにどうしたらいいのだろう?
 現地集合・現地解散を希望したいところだが、乳幼児を連れて長時間の車の移動は自分ひとりでは、キビシイ。
 これは、もう答えはただ一つ!


「取り敢えず、保留で!」

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