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名無しの(仮)ヒーロー

海月三五

ひょうたんから駒 4

 
 イケメンの蕩けるような笑顔が、尊い……。
 というか、この狭い部屋のとても近い距離で、その笑顔は反則です。

 そして、私が朝倉先生の笑顔に蕩けたところで
「君たちは、特別だからね」
 と、その一言にトドメを刺された。
 
 ずるい。
 その特別の意味が知りたくなる。
 その言葉に私がどれだけ動揺するか、わかっていないんだから……。

「朝倉先生も私たちにとって特別な存在です」
 私の言葉に、朝倉先生はフいッと顔を逸らす。
 また、何かやってしまったのではないかと不安になった。
 昨日も顔を逸らされたのを思い出し、朝倉先生の顔を良く見て見ると耳が赤く染っていた。

 もしかして、朝倉先生照れているの?

 そう思うと、ドキドキと心拍数が早くなる。

「名前……。朝倉先生では無く違う呼び方で、呼んで欲しい」
 朝倉先生が呟いた。

「えっ? 名前?」

「そう、名前」

 朝倉先生の名前。『朝倉翔也』をなんて呼べば良いのだろう。

「翔也……先生」

 慣れない呼び方で、呼ぶのはどこか恥ずかしく、顔が火照っているのがわかる。
「はい。……夏希さん」

 ひゃあ、朝倉先生に名前で呼ばれた。

 朝倉先生にとって、私はただの仕事相手と思っていたのに" 特別 "と言ってもらえたり、名前で呼ばれたり、これは勘違いじゃなくて自惚れててもいいのかな。

 ドキドキしながら名前を口にした。

「翔也先生、そろそろ打ち合わせをしませんか」

 のぼせた頭を冷やすように仕事モードに切り替えようと声を掛けたが、慣れない呼び方に意識が朝倉先生に向いてしまう。

「打合せしましょう、夏希さん」
 蕩けような笑顔で返事をするから、その笑顔の破壊力に頭が爆発しそう。

 どうしよう。これって、私、どうよ。
 漏れてない? 
 朝倉先生を好きだって、駄々洩れていない?
 自惚れていいの? 期待して良いの? 
 仕事の関係がおかしくなったりしない??

「少しいい子にしていてね」
 朝倉先生は、美優に声をかけながらベビーサークルに下ろすと、仕事を始めるために机に向かった。

 二人並んでPCを見つめ、イラストを確認しながら色合い、小物などを話し合い決めていく。
 肩が触れ合う距離が、緊張する。

 仕事に集中と自分に言い聞かせてみても、隣にいる朝倉先生の息遣いやオーデトワレの香りが、私をおかしくさせる。
 本当に恋心とは、やっかいな物だ。
 もしも、ただの勘違いだったら、好きが駄々洩れているのは、絶対にマズイのに自分で自分を制御できない。

 マウスを持つ手が緊張しているのか、上手くポイントを合わせられない。
悪戦苦闘していると朝倉先生の手が私の手の上に重なった。
 手の熱を感じる。

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