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名無しの(仮)ヒーロー

海月三五

ひょうたんから駒 2


「連絡先教えてあげるから今日は帰ってよ。この後、仕事があるのは本当なんだからね!」

 部屋に携帯電話を取りに入った。美優を一人で部屋に置いておくのは不安だったので、美優を抱いて携帯電話を持ち玄関の将嗣の所に戻る。

 将嗣はニッコリ笑い、美優に向かって両手を広げ声をかけた。

「美優ちゃんおいで」

 美優も呼ばれて将嗣に手を伸ばす。

「時間が無いんだから早くして!」

「そんな釣れないことを言うなよ」
 と美優を抱こうとしている。私は遮るように声を掛けた。

「ラインアプリ入っている?」

「入っている」
 と言いながら美優と握手をして笑い合っている。

 ため息をつきながら、二人でシャカシャカしていると、朝倉先生の車が、アパートの来客用駐車場に停まった。

 そして、今まさに車から降りようとしている。

 イヤーーーーッ!!(心の叫び)

「仕事相手が見えたからもう帰って!」

「夏希の仕事相手なら挨拶しておくよ」

「バカな事を言わないでよ。なんで将嗣が挨拶すんのよ! 早く帰って!」

「美優ちゃんが離してくれないんだよ」

 将嗣に言われて美優を見ると、その小さな手は、将嗣の人指し指をギュッと握っている。

「美優、ばっちいから離しなさいね」

「ヒデー!」

 玄関先で、ギャーギャー騒ぎたて将嗣を追い返そうと躍起になった。

 朝倉先生が、慌ててこちらにやってきた。

「谷野さん、大丈夫?」

 あああぁあああ!!(心の叫び)


 朝倉先生は、私を庇うように将嗣との間に割って入って、二人は睨み合う状態になってしまった。
 なんと、バツの悪い。どうしよう。
 でも、この事態を収束させられるのは、自分なのだ。

 さあ、覚悟を決めろ。

「朝倉先生、ありがとうございます。昔の友人が、アポなしで来てしまったので、今、帰って頂く所だったんです」

 私は、目で将嗣に か・え・れ・と強い視線を送る。

 すると、将嗣は朝倉先生に向かって
「夏希の仕事相手の方ですね。夏希がいつもお世話になっております。私、美優の父親の園原将嗣と申します」
 
 ぎゃああぁーーー! やめてー!!(心の叫び)

「美優ちゃんの父親? 今さら、何を言っているんですか? 谷野さんが、一人で苦しんでいる時に手も差し伸べない人が……」

 朝倉先生の言葉に将嗣は、グッと言葉を詰まらせた。
 私は、畳み掛けるように言う。

「今日は、これから打ち合わせがあるの。帰ってくれる?」
 
「わかった。また、来るよ。これ、好きだろう? 夏希に買ってきたんだから食べてくれよ」と、タカノの袋を渡された。
「美優ちゃん、またね。今度、パパと遊ぼうね」

 私は、再び目で将嗣に か・え・れ・と強い視線を送った。
 もう、これ以上余計な事を朝倉先生に言わないで欲しい。
 私の様子を察したのか「連絡する、またな」と言って帰っていった。

 朝倉先生と二人(美優もいるから正確には三人)
 この後、仕事をしなければならない。
 気まずい空気をどうしてくれよう。
 くそぅ! 将嗣のヤツめ~!
 美味しいケーキぐらいじゃ、ごまかされないぞ!!
 

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