名無しの(仮)ヒーロー
地獄で仏 5
滝沢さんにお礼を言ってお宅を後にした。
まだ、熱は下がり切っていないものの行に比べて体が軽くなっている。車の中で後部座席に横になりながら、朝倉先生が作る心地良い空間にいつまでも居たいと思った。
車が自宅に到着した頃にはチャイルドシートの上で美優はスヤスヤと眠っている。朝倉先生が、そっと抱き上げ「よく眠っている」と微笑む。
玄関を開けてベビーベッドに降ろすと、少しフニャフニャ言っていたが、朝倉先生が美優の胸の上にそっと手を添えると安心したようにそのまま大人しく眠り。その手慣れた様子に関心するばかりだった。
「谷野さんも少し眠った方がいい。まだ、無理は禁物だ。谷野さんが寝ている間に買い物に行ってくるから鍵を貸してくれる?」
「朝倉先生、お忙しいのにそんな……。今日、滝沢さんのところに連れていってくださっただけでも十分助かりました。それにしてもよく私が乳腺炎だって分かりましたね」
そう、朝倉先生に症状を伝えただけで、滝沢さんの所に連れていってくれた。
「姉貴がね。実家に帰って来て大騒ぎしているのを見ているから もしかして、と思ったんだ。さっきも姉貴に相談したらすぐに滝沢さんのところに行けって言われて、何が役に立つかわからないものだね」
「ありがとうございます。先生には、助けてもらってばかりで、いつか私にお返しが出来ればいいのですが……」
あの寒い風の吹く12月の街中で私を支えてくれた手は、心まで温かくしてくれた。
恋人同士になる事は無理だとしてもせめて恩返しぐらいはしたい。
「谷野さんと美優ちゃんに充分癒やされているから気にしないでいいんだよ」
尊い……。
買い物に行って来るよと言われ、お言葉に甘えて
お願いしますと朝倉先生に家の鍵を渡した。
「横になって、休んだ方が良いよ」
朝倉先生の言葉に頷いて、ベッドに向かおうと振り返った。その時、クラッと目眩を起こしバランスを崩してしまう。
倒れそうになった私は朝倉先生の腕が支えられ、気が付くと、朝倉先生の腕の中に抱き留められていた。
朝倉先生から香るウッディな香りに包まれ、心臓がドキドキと跳ねる。
顔かすぐそばで、目が合い視線が絡む。ち、近い……。
「す、すいません……」
焦って謝罪の言葉を口にした。
いくら何でもこの距離はダメだよ。顔が火照っているのが自分でもわかる位だし、恥ずかしいやら嬉しいやら、どうしていいのかわからない。
おかしな態度を取って、朝倉先生との関係が悪くなったらどうしよう。
ひゃー。誰かどうにかして!!
「ほら、まだ無理しちゃダメだよ」
と、ふわりと体が浮き上がった。気が付けば朝倉先生にお姫様だっこをされている。持ち上げられると余計に体が密着した。
ひゃー!本日2回目のお姫様抱っこ。恥ずかしい。
この心臓がドキドキが聞こえてしまいそうで余計に緊張した。
それにさして広くない部屋は、抱えてもらったところで直ぐにベッドに到着し、降ろされ、布団にくるまれた。
何か言いたいけれど何を言って良いのか、掛ける言葉が見つからなくて、視線が朝倉先生を追いかける。
するとふたりの視線が絡み、その優しい瞳に吸い込まれそうで胸が熱くなった。
不意に朝倉先生の両手が私の頬を挟み、おでことおでこをコツンと当てた。
「まだ、熱がある」と、言って頬を撫でた後、
「買い物に行ってくるね」と部屋から出ていった。
イヤ、ナニ?
その萌え攻撃。
余計に熱が上がるから……。
まだ、熱は下がり切っていないものの行に比べて体が軽くなっている。車の中で後部座席に横になりながら、朝倉先生が作る心地良い空間にいつまでも居たいと思った。
車が自宅に到着した頃にはチャイルドシートの上で美優はスヤスヤと眠っている。朝倉先生が、そっと抱き上げ「よく眠っている」と微笑む。
玄関を開けてベビーベッドに降ろすと、少しフニャフニャ言っていたが、朝倉先生が美優の胸の上にそっと手を添えると安心したようにそのまま大人しく眠り。その手慣れた様子に関心するばかりだった。
「谷野さんも少し眠った方がいい。まだ、無理は禁物だ。谷野さんが寝ている間に買い物に行ってくるから鍵を貸してくれる?」
「朝倉先生、お忙しいのにそんな……。今日、滝沢さんのところに連れていってくださっただけでも十分助かりました。それにしてもよく私が乳腺炎だって分かりましたね」
そう、朝倉先生に症状を伝えただけで、滝沢さんの所に連れていってくれた。
「姉貴がね。実家に帰って来て大騒ぎしているのを見ているから もしかして、と思ったんだ。さっきも姉貴に相談したらすぐに滝沢さんのところに行けって言われて、何が役に立つかわからないものだね」
「ありがとうございます。先生には、助けてもらってばかりで、いつか私にお返しが出来ればいいのですが……」
あの寒い風の吹く12月の街中で私を支えてくれた手は、心まで温かくしてくれた。
恋人同士になる事は無理だとしてもせめて恩返しぐらいはしたい。
「谷野さんと美優ちゃんに充分癒やされているから気にしないでいいんだよ」
尊い……。
買い物に行って来るよと言われ、お言葉に甘えて
お願いしますと朝倉先生に家の鍵を渡した。
「横になって、休んだ方が良いよ」
朝倉先生の言葉に頷いて、ベッドに向かおうと振り返った。その時、クラッと目眩を起こしバランスを崩してしまう。
倒れそうになった私は朝倉先生の腕が支えられ、気が付くと、朝倉先生の腕の中に抱き留められていた。
朝倉先生から香るウッディな香りに包まれ、心臓がドキドキと跳ねる。
顔かすぐそばで、目が合い視線が絡む。ち、近い……。
「す、すいません……」
焦って謝罪の言葉を口にした。
いくら何でもこの距離はダメだよ。顔が火照っているのが自分でもわかる位だし、恥ずかしいやら嬉しいやら、どうしていいのかわからない。
おかしな態度を取って、朝倉先生との関係が悪くなったらどうしよう。
ひゃー。誰かどうにかして!!
「ほら、まだ無理しちゃダメだよ」
と、ふわりと体が浮き上がった。気が付けば朝倉先生にお姫様だっこをされている。持ち上げられると余計に体が密着した。
ひゃー!本日2回目のお姫様抱っこ。恥ずかしい。
この心臓がドキドキが聞こえてしまいそうで余計に緊張した。
それにさして広くない部屋は、抱えてもらったところで直ぐにベッドに到着し、降ろされ、布団にくるまれた。
何か言いたいけれど何を言って良いのか、掛ける言葉が見つからなくて、視線が朝倉先生を追いかける。
するとふたりの視線が絡み、その優しい瞳に吸い込まれそうで胸が熱くなった。
不意に朝倉先生の両手が私の頬を挟み、おでことおでこをコツンと当てた。
「まだ、熱がある」と、言って頬を撫でた後、
「買い物に行ってくるね」と部屋から出ていった。
イヤ、ナニ?
その萌え攻撃。
余計に熱が上がるから……。
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