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名無しの(仮)ヒーロー

海月三五

地獄で仏 1

 
 朝倉先生に引き続き、将嗣の前でも授乳をするハメに陥った。
 もう、何と言うか。とほほ。
 ホント、” 誰か私を埋めて下さい ”の気持ち。

 保健所の保健士さんにも断乳を勧められたから、実行しても問題ない頃合いだ。
 これ以上、自分的事故記録を増やさない為にもコレは実行する。

 断乳するぞー!!

 と、意気込んで断乳を始めたが、急に母乳が止まるわけではない。私の意思とは別に時間が来れば、勝手に満タンになって、飲まれずに余った母乳を搾乳機で取り捨てる事になる。この搾乳作業が、割と痛かったり、スッキリするほど吸い取る事が出来なかったりと意外な程大変な作業だった。

 今までは、娘が飲んでくれていたので、搾乳がこんなに大変な作業とは思わなかった。
 本を読んだりネットで調べたりしながら、試行錯誤を繰り返すが、やはり娘が飲んでくれる程の効果はなかった。

 娘は、離乳食を食べるようになっていて、フォローアップミルクも飲んでいる。
 寝ぐずりの時に欲しがる程度で、その寝ぐずりを私が耐えられれば、スムーズに卒乳出来そうな様子だった。
 数日かかって回数を減らし、夜、眠る時に授乳するだけになっていた。

 でも、今日は朝から体が重だるい。昨晩、娘が眠った後に朝倉先生の新作の依頼のイラストを徹夜で描いてしまったせいかも……。

 今日は、朝倉先生がウチに来て打ち合わせをする予定になっていたのだ。

 重たい体を起こして、美優の朝ごはんを食べさせ、自分の食事を取った後、搾乳を始めた。
 母乳が溜まって胸がこんなにパンパンでコチコチになるのかと思うほど張っていた。

 痛みをこらえて、搾乳をする。すると今まで見たこともないような、ドロリとした腐った練乳のようなものが絞り出された。

 「ナニコレ?」
 明らかに様子がおかしい、体の重だるさの症状も増している。不安になって熱を測ると38.2℃も体温があった。
 体調が悪いからこんな事になったのか。と搾乳機の中にある物体を見つめた。
 朝倉先生に今日の打ち合わせの延期を伝えるメールを送る。
 すると電話の着信を知らせるバイブが震えだし、画面の表示は、朝倉先生からの着信を告げていた。

「はい、谷野です」

「おはようございます。谷野さん、寝ていたかな? 今、大丈夫?」

 久しぶりに聞く朝倉先生のイケボ、熱とあいまってボーっとする。

「朝倉先生、すみません。今日、お時間頂いていたのに何だか急に熱が出てしまって、お日にちの変更可能でしたらお願いします」
 
 いくら熱があっても仕事の事はちゃんとして迷惑を掛けるのは最小限にしないと……。でも、会えなくなったのは、残念だな。

「熱は、どのくらいあるの?」

「それが38℃を超えてしまって」

「美優ちゃんもいるのに大変じゃないか、これから行くから寝てなさい」

「えっ!」
 と、言った時には、既に電話は切れてしまっていた。
 
 朝倉先生が来る……。
 こんな、熱もあってボロボロの時に……。
 あああぁあああ!
 また、マイナスだぁぁぁ!
 

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