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名無しの(仮)ヒーロー

海月三五

魚こころあれば水こころ 6

 
 将嗣から美優を受け取る時に視線が合い、思わず後ろめたさのせいか目を逸らしてしまった。
 テーブルを挟んで向かい合わせに腰を下ろすと、緊張が高まる。

「夏希、あの時は、すまなかった」
 
 なんと返事をして良いのか分からず複雑な思いでいた。

「俺が、結婚していた事を隠していたのは悪かったと思っている。 実は、俺の結婚生活当初から夫婦として破綻していたんだ」

「えっ?」

「俺は、勤め先の歯科医医院の院長に気に入られ、院長の娘と引き合わされた。将来の跡継ぎとして嘱望され、話がトントン拍子に進んだ。妻となった医院長の娘・亜矢も乗り気に見えたし、美人だったし、当時、恋人もいなかった俺に、結婚の条件としては申し分ない相手だった。新婚旅行から帰ってきて、新居で暮らし始めたら亜矢の態度が一変して、なんて言われたと思う?」

「え? 新婚旅行から帰ってきて 」

 そんなの、やだ、夜の相性が悪かったの? 将嗣失敗しちょった? あれ? 私の時は問題なかったよね。って、いうか、そんな事。私に言わせんの?

 将嗣を見ると真剣な眼差しでこちらを見ている。
 うーっ。変な事言いたくない……。

「わかりません」

 将嗣は、ため息をつくと
「亜矢は、” 恋人がいるからもう貴方とは寝れない ”と言ったんだ」

「えっ!」

「だよな、俺も驚いたよ。まさか、新婚旅行から帰ってきてそんな事を言われるなんて、思いもよらなかったよ。でも拒絶されたらどうしようもない。その日から寝室は別々で、ただの同居人になった。離婚も考えたけれど、亜矢が親の手前、離婚したくないと言い張って、自由にしていいからと懇願された。で、ズルズルと3年も結婚生活を続けている時に夏希と出会ったんだ。
バカだよな。あの時、離婚しておけば良かったよ。実の無い結婚をして、好きな人と別れ事になるなんて、本当にバカだった」

「歯科医院の跡継ぎに目が眩んだツケだね」

 キツイ言葉かも知れないが、私だって、いっぱい泣いたんだから……。

「そう、いずれ後を継ぐつもりで結婚したのが、そもそもの間違いだったよ。俺は、大事な事が分かっていなかった。夏希が俺に凄く怒って、いっぱい泣きながら怒って、いなくなった……。その後、ぽっかりと気持ちに穴が空いてしまってから、やっと、気が付いた。自分にとって何が大事かって……」

 将嗣は眉根を寄せて、今にも泣きだすのをこらえているようにもみえた。
 色々な夫婦の形があるからその辺は何とも言えないけど……。
 私は、不倫は許せないし、自分がしたいと思った事は無かった。それに不倫をしていたなんて想像もしていなかった。どれだけショックだったか……。

 不倫した理由わけは、分かったけど、それでも何かしこりが残った。

「手遅れかも知れないけど、やっと離婚したんだ」
 将嗣は、悲しそうにフッと微笑んだ。
 

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