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名無しの(仮)ヒーロー

海月三五

魚こころあれば水こころ 2

 
 車に乗り込みチャイルドシートに娘を座らせながら、複雑な気持ちになった。
 もしも、この子が大きくなって自分のルーツを知りたがった時に私は何を言えばいいのだろう。
 このまま、過去の事をいつまでも根に持ち、娘の父親という存在を消していまってもいいのだろうか。
 例えば、将嗣と話をして子供の存在を拒絶されてからでも遅くは無いのかも……。
 でも、受け入れられたらどうする?
 認知をしてもらう? 時々会わせる? 引き取りたいと言われたら?
 悪夢を払うかのように首を横に振った。

 そういえば、離婚したって言っていた……。
 でも、りを戻すつもりなど毛頭なかった。
 浮気性の男なんて、治らない病に掛かっているようなものだ。

 答えの出せない難題を突き付けられ、頭を抱えた。
 直ぐに捨てるつもりでいた名刺を長財布の外ポケットに押し込み、マザーズバックに投げ入れた時にもう一つ言っていた事を思い出しハッとした。
 『駅前のマンションに引っ越してきた』
 この区役所の駐車場からも見える駅前のタワーマンションに引っ越してきただとう?
 駅前のタワマンと言えば、スーパーも入っているし、ドラックストアもある本屋もあるしファーストフードのチェーン店も入っている。
 車の駐車場も利用者無料だし、子育て中のママには大きすぎず、必要なものが全て揃う便利な場所だ。
 下手をしたらチョイチョイ会ってしまうのではないか 


 
 駅前のタワマンに引っ越してきた、元カレ・園原将嗣。
 ヤツに会う心配をして、数日タワマンには近づかずに過ごしてきた。
 でも、良く考えれば歯科医院に勤める将嗣の休みは、木・日曜日だったはず。それを避けた曜日の日中に買い物に行けば、仕事をしているヤツにばったり出会うこともないだろう。
 そして、今日はスーパーで水曜日のお客様感謝デーとドラックストアのポイントアップが重なる日。逃す訳には行かないのだ。

 いざ出陣!
 私は、タワマンの駐車場に車を入れ、娘を抱え店内に。
 さすが、感謝デーとポイントアップが重なる日とあって人が多い。
 だが、この戦いに負ける訳には行かないのだ。
 先ずは、娘をカートに乗せてオムツを買わねば!
私は、ドラックストアを目指しカートを走らせる。カートの下の段にオムツの大パック2個を乗せ、上の段におしりふきトイレに流せる用3個1パックを放り込む、後はテッシュペーパーとトイレットペーパー・シャンプーリンス。離乳食などの赤ちゃん用品も選ぶと、カートは既にいっぱいだ。
 娘が飽きて泣きださないうちに素早い行動が求められる。
 レジに行けば大行列。仕方ない。ここは、上手くあやしながら並ぶしかない。諦めて並んだレジの行列は、遅々として進まず、おやつの赤ちゃん用おせんべいで誤魔化すのもそろそろ限界かもしれない。
 ああ、お願いだから泣かないで!
泣きそうな娘にハラハラしている時だった。

 「夏希、また会えたな」
っと、不意に声を掛けられる。元カレ・園原将嗣だ。
 よりにもよってこのタイミングで「チッ!」心の中で舌打ちをした。
 

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