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名無しの(仮)ヒーロー

海月三五

沈む瀬あれば浮かぶ瀬あり 10

 ぷはっ、
 朝倉先生が吹き出し笑い始め、釣られて、配達員も笑い。二人は、爆笑と言っていいほど、涙を流して笑っている。

「もう、そんなに笑わなくてもいいじゃないですか!」
 
「ごめん、ごめん。やっぱり、女性は強いなぁって」

 朝倉先生が、そう言うと配達員も同意してウンウンと頷く。

「だって、今日のお礼に夕飯をご馳走させて頂くつもりだったのに朝倉先生が払ったらお礼にならないじゃないですか」

 私は、おつりを貰うべく配達員に手を差し出し、おつりを受け取る。配達員は肩を震わせながら帰って行った。
 届いた夕飯は、ウナギのひつまぶしセットが二つ。
 トレーをお持ち上げ、部屋に移動しようとすると朝倉先生が、トレーをスッと持ち上げた。
「これぐらいは、させてくれる?」
と部屋に持って行ってくれる。
 何をしてもスマートな人だな。
 散らかったテーブルの上をサササッと片付け向かい合わせに腰を掛けた。

 朝倉先生が、大笑いしてくれたおかげで、さっきまでの微妙な緊張感から解放された気分だ。
 朝倉先生の瞳の意味は、私には考えてもわからない。
 きっと、お姉さんの子供たちの事でも考えていたのだろう。
 あれ? 聞いたことが無いけど、朝倉先生って独身だったかしら?
 自分がお礼をしたからと言って強引に引き留めてしまったけれど、迷惑だったのでは? と、今更ながら心配になってきた。
「朝倉先生、散々お引止めしてからなんですが、どなたかお家で待っていらっしゃったりします?」
 
「いや、気軽な一人暮らしでね。実家の両親や姉たちにいつも良い様に使われているんですよ。それ以外はいつも一人。今日は、一緒にご飯を食べる人がいて楽しいですよ」

 その言葉を聞いてホッとする。
 自分が暴走気味に色々しでかしてしまう事を自覚していた。
 いつもは、こんなにひどくないはず……。
 朝倉先生とは、出会いからハチャメチャだ。
 顔良し、性格良し、収入良しのザ・パーフェクトな朝倉先生。
 そのザ・パーフェクトの前で、私はなんでいつもバタバタしているんだろう。
 今日だって、女としてマイナスな状態だったし、そもそも通話中に転んで心配かけしまったし、おまけに授乳シーンを見せて、出前を取ればテンパって……。
 ああ、情けないやら悲しいやら、ため息しかでないわ。

 せめて、食後のお茶ぐらいは入れよう。
 と、食べ終わった食器を持ってキッチンへ移動しお茶を入れる。

 お茶の入れ方には、こだわりがあってヤカンでお湯を沸かしゆらゆらと湯気が横揺れするぐらいの温度、お湯を湯呑についで、急須に茶葉を入れる。
湯呑のお湯を急須に注ぎ、約1分茶葉が開いたところで急須をゆっくり回し、2つの湯呑に交互に注ぐ、最後の一滴まで注ぎいれたら出来上がり。

 朝倉先生にお茶を出し、自分の湯呑に口をつける。
 はぁ~。落ち着く。

「谷野さんの入れてくれた、お茶美味しいよ」
 と、朝倉先生は、甘やかな笑顔を見せる。

 はう、尊い……。
 良かった。少しはまともな所が見せられて……。
 

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