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名無しの(仮)ヒーロー

海月三五

沈む瀬あれば浮かぶ瀬あり 9

 
 誰か、私に穴を掘って埋めてくれー!

 今更ながら恥ずかしい、娘におっぱいあげ終わったらどうする?
 振り返りたくない。
 別に先生に向かっておっぱいポロリとしているわけじゃないし、一応タオルで隠しているから見えていないと思うけど、この沈黙の時間が重い。

 朝倉先生は、今どうしているんだろう。ソファーに座っているのは分かる。
 携帯電話でも見ているんだろうな。って、いうか、ぜび、見ていて欲しい。いや、きっと見ている。見ているに違いない。
 自分の中でその考えは確信にも変わっていた。

そして、先生の様子を伺うべくチラリと覗き見る。と、朝倉先生と目が合った。
 私は、慌てて目を逸らした。
 なんで!?
 なんで、目が合うの?
 携帯電話を見ているんじゃないの?
 目が合うって、ことはコッチを見ているってこと?
 えっ!えええっ!
 なに? 朝倉先生っていい人だと思っていたけど、もしかして……。
 マニア? 変態?
 イケメンで優しくて、人として完璧なイメージがあったけど、そうか、そういう欠点があるのか。ちょっと残念。
 朝倉先生は、わたしのヒーローだったんだけどなぁ。
 誰しも欠点はある。しようがない。
 まあ、たとえ、人に言えない趣味があろうとも先生ほどの人ならもっと素敵な女性が立候補するでしょうから、私には関係ないわ。ははっ、はぁ。
っと、おかしな妄想で自分自身を誤魔化してした。


 暫くして、満腹になった娘はおっぱいを飲みながらウトウトと眠ってしまった。
 衣服を整え、娘の背中を軽くトントンと叩いてげっぷをさせる。ベビーベッドに寝かせた時、ピンポーンと、チャイムが鳴り出前が届いた。

「ちょうど、夕飯が届いたみたいですね」
と、振り返り朝倉先生に声を掛け、お財布を持って玄関に急いで向かう。

 正直振り返った後、何て声を掛けていいのか分からなかったから、出前の届くタイミングの良さにホッとした。

 目が合った後、朝倉先生変態疑惑の妄想で平静を保っていたが、内心はドキドキしていた。
 
 あの時の朝倉先生の瞳は、慈しみに満ちていて、とても暖かい眼差しであった。
 だからこそ、おかしな妄想で自分をゴマかし、次に掛ける言葉が見つからずにいた。
 朝倉先生の瞳の意味を知りたいような、知りたくないような複雑な気持ちになり、その感情を何と呼ぶのか見当もつかない。

 ふーっと息を吐き気持ちを整え、配達のお兄さんに出前の代金のお金を払らおうとした時、横からスッと手が伸びて配達員にお金が渡る。
 朝倉先生がいつの間にか後ろに立っていた。

「朝倉先生、ダメですよ。ここは、私に払わせて下さい」
  
 朝倉先生に散々迷惑をかけて、夕飯までご馳走してもらうわけにはいかない。
 私は、配達員の手からお金をむしり取り、自分のお財布からお金を出して配達員に渡し、むしり取ったお金は、朝倉先生に返した。

 お金を返された朝倉先生も、お金をむしり取られ新たに渡された配達員も私の勢いに気圧されて、固まっていた。

 ヤバイ、また、やっちゃった。
 

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