S級スキル【竜化】持ちの俺、トカゲと間違われて実家を追放されるが、覚醒し竜王に見初められる。今さら戻れと言われてももう遅い。お前たちは、俺たちの属国として面倒を見てやるよ

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

62話 村人たちの恨み

 俺たちは村に凱旋した。

「とりあえず、村の中央まで連れて行くぞ」

 そう言うなり、俺は先頭に立って歩き出す。
 家々の中にいた村人たちが何事だといった感じで顔を出すが、すぐに納得した様子で俺たちに付いてきている。
 わざわざ広く通達するまでもなく、俺が盗賊団を無事に壊滅させたことはある程度伝わるだろうな。

 だが念には念を入れておこう。
 俺は村の中央広場に位置取り、手を空に向けて掲げた。

「【火柱】」

 呪文を唱えると同時に手から炎が出現して上空へと伸びていき、大きな火柱となって天を突き上げた。

「うわああっ!!」

「なんだ!?」

「なんだよあれえっ!」

 村人たちが騒然となる。
 これで注目は集められたな。

「静かにしろ!」

 俺は大声で叫んだ。
 すると、騒ぎはピタリと止む。

「お前たちに朗報がある! この村の脅威となっていた盗賊団は、この俺ライルが壊滅させた!!」

 続けて、宣言する。

「だが、これで一件落着ではない! なぜなら、こいつらに殺された者が帰ってくることはないからだ! そして、諸君らの心の傷も癒えてはいないだろう!?」

 俺はそこで一拍置いて、周囲を見回す。

「そ、そうじゃ! 儂の息子は、こいつらに殺された!!」

「わたしのお兄ちゃんも……!」

「俺の妻は、俺が見ている前で輪姦された……! 絶対に許せねえ……!!」

 やはりか。
 ミルカや村長だけでなく、村人全員に怨嗟の声が渦巻いている。

「お前たちの恨みは正当なものだ!!」

 俺は、再度叫ぶ。

「こいつらは、まさに外道だ!! 人の命を奪い、女を犯し、金品を奪う……!! まさしく、鬼畜と呼ぶに相応しい所業ではないか!」

「そうだ!」

「殺せっ!!」

「ぶっ殺しちまえっ!!!」

 怒号が飛び交った。
 憎悪と殺意に満ちた言葉ばかりだ。

「その通り! 俺も、こいつらをこのまま逃がすつもりはない! 町へ連れ帰るのもいいが、それでは諸君らの心が晴れぬであろう! よって、ここで何人かを処刑するつもりでいる!!」

「「「「「「「「「「「おおおおっ!!!」」」」」」」」」」」

 歓声が上がった。

「まとめて殺しては、少しもったいない! 手始めに、俺が1人処刑して手本を見せてやろう!! アイシャ、ミルカ!! 男を1人ここに!!」

「はっ!」

「かしこまりました!」

 2人は即座に返事をする。

「ほら、さっさと歩け!」

「とろとろするな!」

 彼女たちが1人の男を引っ張ってくる。
 両手と体は縛っているが、足は自由な状態だ。

「や、やめてくれぇ……。俺はただの下っ端だよ……。命だけは……」

 男は涙目で懇願してくる。
 この期に及んで命乞いか。
 くだらない奴だ。
 だが……。

「村人諸君! この男は下っ端で、自らに罪はないと豪語している! 救う価値があるか、諸君らに判断を委ねたい!」

 俺はそう呼びかけた。
 すると、村人たちは互いに顔を見合わせる。

 そして……。
 沈黙の後、村人たちから次々と声が上がる。

「ふざけるなっ!」

「生かす理由なんてないぞ!」

「あいつが村の金品を略奪しているところを見たぞ!!」

「何が下っ端だよ! 同罪だろうが!!」

「当然の報いだ!」

「そうだそうだ!」

「死ね! 死んじまえっ!」

「死んで詫びろっ!!」

 村人たちが口々に叫び、罵り始める。
 よしよし。
 いい感じに盛り上がってきたな。

「……だ、そうだが? 残念だったな」

「ひ、ひいぃ……。そんな……」

 盗賊の男が絶望的な表情を浮かべた。
 ま、こいつが無実ではないのは分かっていたがな。
 S級スキル竜化を持つ俺は、人が持つ気配や雰囲気を敏感に察知する。
 この男からは、殺人者や強姦者としての匂いがプンプンする。

 まあ、盗賊団の中では多少マシな方なので、下っ端ということまでは事実なのだろうが……。
 無罪放免というには罪を重ねすぎている。
 最初から、死刑以外に道はなかったのだ。

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