混沌の神殺し

神港 零

ギルド

俺たちは一際ひときわ目立つ大きな建物に入る。ここが恐らくギルドなんだろう。
と、入ったところで疑問を覚えた。
思ったよりギルドの中って綺麗でやけに静かだな。500年前は薄汚い酒場 で荒くれ者の集まりでピリついた空気を毎日のように出していたのに………な。いきなり襲い掛かってくるやつがいるんじゃないかと思って警戒していたが拍子抜けだった。
さすがに500年経てば平和になるか。
これがお前と俺が望んだ世界だったのかもな、ノエル。
嬉しさを噛み締めながらギルドの中を堂々と歩き始める。
周りを見渡すと探求者らしき人たちが話し込んでいる。
だが、俺たちに気づいた途端「61位が子供を連れてきた」と好奇な視線を向けてきた。

「ホント、イリスくんは肝が据わっているというか怖いもの知らずですねー」

「ま、僕たちにもため口だしね。それに探求者同士で敬語を使ったら舐められる原因になるから肝が据わっているほうがいいと思うよ。あ、でも貴族さまには敬語を使わないとダメだぞ」

「はははは、貴族さまご本人がいうか!」

三人が笑い合う。
やはりクリストは貴族であったか。
衛兵の態度を見た俺からすれば概ね予想出来たことだ。
笑い合っているクリストたちに受付嬢らしい女性が話しかけてきた。

「クリストさん、ノーブルさん、ケニアさん、もう帰ってきたのですか?まだ半日も経っていないんですが……………」

「ああ。彼のおかげですぐに終わった」

クリストが俺を紹介すると受付嬢が目を丸くする。

「この子が?」

「ああ、この子は見かけに寄らずかなりの曲者だぞ」

「はぁ」

何を言っているのか分からないのか言葉にならない声を漏らす。一応、精神年齢は1000歳を超えているが見た目は子供に近いので舐められても仕方がない。

「あの嘘をついている訳じゃないですよね?」

「お前、主様を侮辱するのですか?ならば容赦はしませんよ?」

疑いの眼差しを俺とクリストに向けている受付嬢にアスタロトが激怒する。
 
「えっと、クリストさん。この子も……………」

「この子は……彼の従者だ」

妖刀と言うわけにはいかないのか、従者と言って誤魔化した。確かに今の世界では神具もレアらしいし、本当のことを言ったら面倒なことになるのは否めない。サンキュー、クリスト。

「……………本当なんですか?」

「あの魔獣に突撃する時の表情と返り血だらけで魔獣を刺している時の狂気さを思い出すと否定できないですぅ」

「そうだな、あれは人間の所業ではなかった」

「………………そうですか」

二人に聞いても同じ答えが帰ってきたので諦めたようにため息を吐く。

「61位の人が嘘をつくとも思えませんし、信じます」

と、だけ言ってこの場を去った受付嬢。

「61位ってなんだ?」

俺は軽く呟いたつもりだったがその言葉をクリストが拾う。

「もしかしてイリス、ギルドランキングを知らないのかい?」

「ギルドランキング?」

「これはとんだ世間知らずだな」

苦笑を浮かべているケニアが言う。

「じゃあ、簡単に説明しよう。ギルドランキングっていうのはこの世界にある10個のギルドに登録されている探求者の実績と強さを順位化したものだよ」

「後、順位で階級も決まっているんですよ。1位〜100位は一階級、101位〜1000位が二階級、1001位〜5000位が三階級、5001位〜10000位が四階級、それ以下は五階級となります」  

「それに階級によって受けられる依頼が違うもの特徴だな」

「……………基本的はこんな感じかな」  

三人がギルドランキングとやらの説明を分かりやすく教えてくれた。

「ちなみに三人の順位はなんだ?」  

「僕は61位」
  
「私は65位です」  

「俺は67位だ」

おっ、すごいな。三人とも一階級かぁ。
ギルドランキング………………何やら面白いではないか。
俺も早くギルド登録したいんだが受付嬢が見当たらな…………………あっ、いた。

「………探求者登録したいんだが……………」

「あ、君、副マスが呼んでます。来てください…………………クリストさんたちも」

「分かった」「分かりました」「了解」

受付嬢が先導して奥の部屋にクリストたちを先導し始めた。唯一状況を掴めてない俺は取り残されそうになる。

「え?副マス?」

「何?イリス、ボサっとしてるの?行くよ」

「……………………?」

俺はクリストに言われるままに奥の部屋に入った。

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