混沌の神殺し

神港 零

亜空間 その3

「今のはなんだ?」

八岐大蛇が俺のことを睨みながら言う。

「『砲雷』のことか?……………ただ、魔力を暴発しただけだ」

その問いに答え、追撃する。

技法ぎほう 雷神拳らいじんけん

八岐大蛇がそれを巨体を上手く使って俺の攻撃から身を守る。
かなりダメージが入ったと思うんだがまだ動ける余力があるのか、意外とタフだな。

「このままじゃ先に消耗するのは我の方だな、しょうがないあれを使うか」

俺から距離を取り、八岐大蛇が何かしようとする。

「これをここで使いたくないだがお前のために見せてやる。我の真の姿を」

俺は嫌な予感がし、止めに入るが時すでに遅し。八岐大蛇が八体の龍に分裂ぶんれつしていた。

「多勢に無勢ってことか」

俺はそう呟くしかなかった。
すると、分裂が完了した八岐大蛇たちは笑いながらこう言った。

「一体の時は炎を吐くので精一杯だったがこの八体に分裂したことにより、事実上、八つの属性の攻撃が可能になったのだ」

「赤龍、青龍、白龍、紫龍、雷龍、飛龍、地龍、氷龍…………………それは厄介だな」

八体を見て、苦笑いを浮かべながらそう言う。
その瞬間、左に赤龍せきりゅう、右に青龍せいりゅうがそれぞれ炎と水の咆哮ほうこうを吐いて、俺に先制攻撃を仕掛ける。
それをジャンプし、かわす。
しかし、その先には白龍はくりゅう紫龍しりゅうが居て、そいつらも光と闇の咆哮を吐き、攻撃してくる。
俺は咄嗟とっさに守りの体勢に入り、その攻撃を耐えきった。

「さすがに厳しいか」

ボロボロになった服を見ながら言った。
そんな俺に残りの四体も攻撃を仕掛ける。
北の方角に雷龍らいりゅう、南の方角に飛龍ひりゅう、東の方角に地龍ちりゅう、西の方角に氷龍ひょうりゅうがいた。

「やばっ!」

俺は思いっきり空間を足蹴りし、氷龍に一撃を加えようとする。
だが、間合いに入れてもらえず、八岐大蛇たちの咆哮をまともに食らう。
思わず気絶しかける。

「うわぁぁぁ」

「これでどうだ?さすがに死んじゃったか?わはは!」

亜空間に八岐大蛇の声が響き渡る。
そして、少女の元に向かおうとした。

「ちょっと待てよ!俺はまだ生きているぞ」

少しかすり傷を負った俺が八岐大蛇たちの歩みを止める。

「あの攻撃を受けて死なないのか?お前、本当に何者だ」

驚いた顔で俺を見る八岐大蛇。
しかし、このままじゃ勝てるかどうか分からないぞ。あの少女が助けを求めてたから助けたものの妖刀がなきゃ確実に助けらない。
どうしたものか。

「よく見ればその黒い目…………………お前、もしかして500年前、亜空間に閉じ込めた神殺しか!?死んだと思っていたがまだ生きていたのか?しかし、これは好都合こいつを殺せば神は俺を認めてくれるはず」

 八岐大蛇は標的を俺に変えたようだ。

「あの人が幾度も神々を倒し、創造神アザゼルを追い詰めた人…………………この人しかいない」

すると、八岐大蛇の言葉を聞いた少女が何か呟きながらこちらに向かってくる。

「君、危ないよ!」

俺の忠告を無視し、少女は止まる様子はない。
八岐大蛇たちは少女が走って来ようがお構えなしに八体同時に咆哮を撃ってくる。
俺はこちらに向かってくる少女、庇う。
その時、少女が光に包まれて刀に変貌した。
俺は咄嗟にその刀を使って咆哮を斬った。

憂鬱アスタロト

刀の権能が発動し、咆哮が塵のように消えていく。その様子に下唇を噛んだ八岐大蛇が言う。

「なるほど、そいつが妖刀だから我に回収を命じたのか」

そう言い、俺から離れる。
俺の脅威は妖刀を扱っている時だってことを知っているようだ。

「あの、契約ってことでいいですか?」

「うわっ」

妖刀がいきなり喋りだしたので素っ頓狂な声を出す。

「どうしたんですか?早く契約してアイツを倒しましょう」

「本当に妖刀なのか?君は?」

俺は素朴な疑問をぶつける。

「一応、妖刀です。ただ、神に作られたですが」

「何か深い事情がありそうだがまずは八岐大蛇を倒してからにしよう」

「はいっ!剣先に血を垂らし、名前を述べてください」

俺は言われるがまま妖刀で指先を切り、血を垂らす。

「我が名はイグリス・ロード」

「そして妖刀 憂鬱アスタロト

「「ここに契約の契りをかわす」」

その瞬間、身体に馴染むように膨大な力が流れるような感じがした。

「三回戦目、始めるか」

俺は八体の龍の八岐大蛇に向かって走った。

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