混沌の神殺し

神港 零

プロローグ

「お前なんかが我を倒せると思っているのか?神殺し」

「お前たちがこの世界を滅ぼすなら俺がそれを止めるだけだ」

俺は玉座のような物に座っている神を睨みつける。

「神の御前で偉そうだな」

『神の御前』

俺の身体が重いものに押しつぶされたように地面に這いつく張る。
そして、やつは高笑いをする。

「はははっ、どうだ?我の権能のお味は?所詮神殺しといえどこれは解けないだろ?すぐに終わらせてやる、神に手を出したと言うのがどういうことか、教えてやってからな!」

「はぁ〜長い、話が長い。もうすし短くできないのか?」

「こんな状況でよくもそんな抜けたことを言えるな」

俺はその言葉を聞き、不敵な笑みを浮かべた。
そして、右手に持っている妖刀に魔力を込めてこう唱える。
 
強欲マモン

すると、身体の重いものに押しつぶされている感覚が取れ、俺は立ち上がる。
その姿を見た途端、目の前にいる神は震え出す。

「な、なんで我の権能が効かないんだ?もう一度だ!神の御前」

しかし、何も起こらなかった。

「な、なんで使えなくなっているんだ?おまえ、何をした!」

「…………………この刀には強欲マモン、半径三キロ圏内ならあらゆる権能を奪う能力が付与されている」

「なんだと……………」

その顔を見飽きたからもう少し違うリアクションを出来ないのか?
つくづく神って傲慢だよね。自分のことを殺しに来る奴がいるって分かっているのに下調べしないで俺に勝てると思っているらしい。
だから足元を掬われるのだ。

「こ、降参だ。権能を奪う能力があるやつに勝てるとは思わない」

やつはそう言って手を挙げて降参を表明した。呆気ないやつだな、だがその方が賢明だ。この神は他の神と違うらしい。

「そうか、なら殺す必要はないな」

俺は戦う気がないやつにトドメを刺す趣味はないので刀を収める。
その瞬間、奴はニヤリと笑った。

時止タイム

その瞬間、時間が止まった。
もちろん、俺も動けなくなる。

「はははは、バカめ。油断しおって、噂通り甘いヤツだ、我の勝ちだ」

奴はでっかい鎌を取り出し、俺に切りつける。しかし、その鎌は俺に届くことはなかった。

傲慢ルシファー

左手にある妖刀がその問いかけに反応し、俺は鎌を受け止める。

「なんで動ける!強欲マモンで権能を奪っている素振りなんてなかったぞ!」

強欲マモンだけがすべてじゃないぞ。左手の妖刀にはな、傲慢ルシファーというあらゆる権能を無効化する能力が付与されているだ」

「そ、そんなのありなのか!」

少し恐れが入った表情をした神に俺は冷たい視線を送る。

「お前も同じか………………少しでも賢明な神だと思った俺がバカだった。最後だ、時空神アビルス」

「ちょっと待……………」

「待つ必要性は皆無だ」

俺はそう言い、
ふたつの妖刀でアビルスの首を一瞬で斬った。

強欲マモン

「それにしてもこいつも呆気なかったな」

俺は目の前にいる時空神アビルスの権能を全て奪って、そう呟くしかなかった。
すると、そんな冷たい視線をしている俺に女の子が近づいてくる。

「やりましたね、兄さん」

「そうだな、ミゼラ」

この子は竜人と魔族のハーフで俺が神殺しの旅している時にある森で捨てられていたところを発見した。竜人の血が入っているからか、成長スピードが早すぎるため、俺とそんなに歳が変わらないほどまで大きくなっている。

「それにしてもその妖刀、万能ですね。兄さんの基礎的な身体能力も人間離れしてますけどあの神と互角、いやそれ以上の力を秘めている妖刀。これがあればどんな神だろうと負けませんよね」

「そうだな、だが油断はしないほうがいいと思うぞ………………まだ、あの創造神アザゼルがいるんだから」

創造神アザゼルがいる限り神が生まれ、この世界を滅ぼそうとする。俺はその度に神をほふっている。

「さてと、もうここには用はないし帰るか」

「そうだな、早く帰ってご飯作ったあげるよ」

その時、空間に裂け目上の何かが生まれた。
異変を感じてミゼラを突き飛ばした。
すると、俺はその裂け目に吸い込まれそうになる。

「兄さん!」

「こっちに来るな!」

俺に近づこうとしたミゼラを制止する。
この裂け目はどう考えてもあの創造神の仕業だろうな。恐らくはあの裂け目の先には亜空間と呼ばれる無の世界があるだろう。

「ここに閉じ込めようってわけか。ち、これ以外で俺を倒す方法が思いつかなかったのかよ」

あのクソ神に思わず呆れたように言う。
これは権能じゃないので妖刀は役に立たない。
俺は意を決して、ミゼラに向かって妖刀を投げた。

「ミゼラ、その七つの妖刀はこの世界を保つために必要なものだ。それにもし、俺がいない間に神たちがこの世界を滅ぼそうとしたときにそれを使ってくれ」

「兄さん、そんなこと言わないでよ。ずっと私のそばに居てよ」

「ごめん、だけど絶対戻ってくるから……………その時はお前がもっと綺麗になってるミゼラを見たいな」

俺はそう言い残し、裂け目に吸い込まれた。

「にいさんのバカ」 

ミゼラの呟きが静かに響き渡るのだった。

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