【完結】ロリコンなせいで追放された魔術師、可愛い愛弟子をとって隣国で自由気ままに成りあがるスローライフ!
第47話 無能な味方より、賢い敵のほうがまし
冬の寒さが本格的に厳しくなってきた庭のど真ん中。
訓練兵たちが心配そうに見つめてくるなかで、ゾウマンはグイッと顔を近づけてきた。
「ノルマを達成した? ならば、はやく次の魔法を覚えさせろ。お前のところは、
教育しやすい奴らを集めてるんだ、通常の2倍、3倍の戦術的価値のある兵士になってもらわねば困る」
「その分、高難度の魔法を覚えさせてるわけですから、負担は変わらないでしょう」
「ただの1ヶ月で全員が5秒以内の『現象』の発生を達成し、ノルマをクリアしたんだぞ? 生徒たちの素養が高かったんだ。
俺のところは人数もおおく、まだ全員が火炎球≫を覚えられてない。
負担が同じなどと……まるで自分の教育がよかったからの成果だとでも、いいたげな態度だな」
深読みしすぎだって、おっさん。
「はぁ〜……」
ひとつ大きなため息をついて、雪なんか降りだしそうな灰色の空を見あげる。
なんだかんだイチャモンつけられてきた1ヶ月。
魔術教官どうしの輪をギスギスさせないように、2回りくらい歳食ってる顔をたてたつもりだったが……ーー。
「やっぱり、能のない老骨を野放しにするほど危険なことはないですねぇ〜」
俺は白い息を吐きながら、目の前の傷顔にむけて言った。
眉をピクリと震わせるゾウマン。
「貴様ァ、それはどう言う意味だ……?」
「無能な味方ほど危険なものはなく、賢い敵のほうがよっぽどましということです」
一拍置いて、ゾウマンの暗い瞳をまっすぐに見つめる。
「自分の無能を生徒に押し付けるな」
「ッ!」
激情に駆られた目。
ローブを翻し、抜き放たれる杖。
ゾウマンは抜身の杖をさきを、俺の首に押しつけ歯を剥きだしに怒りを爆発させる。
「いい気になるなよ、若造がァ……ッ!」
「撃つ度胸もないのに、杖を抜かないほうがいいですよ。それはおもちゃじゃない」
「……ッ! クソがッ!」
俺の言葉がゾウマンの最後の理性を焼き切った。
スパークの走る魔感覚。
首元の杖に魔力がながれ、刹那の後に、魔法ーーそう、火属性の魔法が飛びだしてくるのが直感的にわかる。
「舐めるなァア! ≪火炎ーー」
古典魔術≪怪腕≫。
火属性の魔力が俺を焼くよりはやく、杖を持った手を振りはらい、手首を手刀で弾いて武装解除。
だが、すでに魔法は放たれた。
俺の首横を殺意の火炎がぬけていく。
「なっ!?」
頬をこがすような熱さを感じたのち、速攻でゾウマンのローブの襟を握りとる。
そのまま強引に引っ張り、俺はゾウマンの頭を芝生の地面にこすりながら、アンダースローでちかくの城壁に放り投げた。
「あ、がは……っ!」
背中を硬い壁にうちつけて、白目をむくゾウマン。
「嫉妬は醜い、俺の怒りのほうがまだマシだ」
倒れふすゾウマンから視線をはずし、上方、真っ黒に焼け焦げた外壁を見あげて俺はつぶやいた。
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