【完結】ロリコンなせいで追放された魔術師、可愛い愛弟子をとって隣国で自由気ままに成りあがるスローライフ!

ノベルバユーザー542862

第47話 無能な味方より、賢い敵のほうがまし


冬の寒さが本格的に厳しくなってきた庭のど真ん中。

訓練兵たちが心配そうに見つめてくるなかで、ゾウマンはグイッと顔を近づけてきた。

「ノルマを達成した? ならば、はやく次の魔法を覚えさせろ。お前のところは、
教育しやすい奴らを集めてるんだ、通常の2倍、3倍の戦術的価値のある兵士になってもらわねば困る」

「その分、高難度の魔法を覚えさせてるわけですから、負担は変わらないでしょう」

「ただの1ヶ月で全員が5秒以内の『現象』の発生を達成し、ノルマをクリアしたんだぞ? 生徒たちの素養が高かったんだ。
俺のところは人数もおおく、まだ全員が火炎球かえんきゅう≫を覚えられてない。
負担が同じなどと……まるで自分の教育がよかったからの成果だとでも、いいたげな態度だな」

深読みしすぎだって、おっさん。

「はぁ〜……」

ひとつ大きなため息をついて、雪なんか降りだしそうな灰色の空を見あげる。

なんだかんだイチャモンつけられてきた1ヶ月。

魔術教官どうしの輪をギスギスさせないように、2回りくらい歳食ってる顔をたてたつもりだったが……ーー。

「やっぱり、能のない老骨を野放しにするほど危険なことはないですねぇ〜」

俺は白い息を吐きながら、目の前の傷顔にむけて言った。

眉をピクリと震わせるゾウマン。

「貴様ァ、それはどう言う意味だ……?」

「無能な味方ほど危険なものはなく、賢い敵のほうがよっぽどましということです」

一拍置いて、ゾウマンの暗い瞳をまっすぐに見つめる。

「自分の無能を生徒に押し付けるな」
「ッ!」

激情に駆られた目。
ローブを翻し、抜き放たれる杖。

ゾウマンは抜身の杖をさきを、俺の首に押しつけ歯を剥きだしに怒りを爆発させる。

「いい気になるなよ、若造がァ……ッ!」

「撃つ度胸もないのに、杖を抜かないほうがいいですよ。それはおもちゃじゃない」
「……ッ! クソがッ!」

俺の言葉がゾウマンの最後の理性を焼き切った。

スパークの走る魔感覚。

首元の杖に魔力がながれ、刹那の後に、魔法ーーそう、火属性の魔法が飛びだしてくるのが直感的にわかる。

「舐めるなァア! ≪火炎かえんーー」

古典魔術≪怪腕かいわん≫。

火属性の魔力が俺を焼くよりはやく、杖を持った手を振りはらい、手首を手刀で弾いて武装解除。

だが、すでに魔法は放たれた。

俺の首横を殺意の火炎がぬけていく。

「なっ!?」

頬をこがすような熱さを感じたのち、速攻でゾウマンのローブの襟を握りとる。

そのまま強引に引っ張り、俺はゾウマンの頭を芝生の地面にこすりながら、アンダースローでちかくの城壁に放り投げた。

「あ、がは……っ!」

背中を硬い壁にうちつけて、白目をむくゾウマン。

「嫉妬は醜い、俺の怒りのほうがまだマシだ」

倒れふすゾウマンから視線をはずし、上方、真っ黒に焼け焦げた外壁を見あげて俺はつぶやいた。

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