【完結】ロリコンなせいで追放された魔術師、可愛い愛弟子をとって隣国で自由気ままに成りあがるスローライフ!
第24話 垣間見える本領
目の前でぐっと伸びる紅の細腕。
骨と皮、そのうえにはしる血管とぴったり張りついた鱗の隙間からあふれる寒色の波動。
「いやぁぁああッ! ティナ、ティナぁあ!」
緑髪の少女の身体が巨大な五指につかまれた。
「グロゥウォォォォオッ!」
凄まじい凶暴性、驚異的な魔力と俊敏性。
木の影から踊りいでて、俺は杖をまっすぐに構えた。
「こっちを見ろ、俺が相手だ、≪風打≫」
残りわずかとなった体内魔力を杖へ伝達。
俺の杖の芯に使われている不死鳥の脊髄へ、つたった魔力は属性に変換されて、「現象」として目に見えるかたちで現れる。
生成された気流と、元からある空気を空いてる片手と魔力操作で圧縮していく。
手加減なしの殺す気砲。
瞬きのあいだにすべての工程をおえて、中杖のさきから魔力を解き放つ。
風の球ーーいいや、もはや爆風の槍と化けた初等魔法は、真空の軌跡をのこして紅鱗をメキメキと侵食。
「グロゥウォォォォッ!?」
巨大猿の雄叫びの意味合いが変わると同時に、紅鱗はわずかな抵抗もみせずに砕けちった。
大穴を空けて、内側を蹂躙しながら、向こうがわの景色をみせてくれる。
射線上に位置していた木々に、おなじ大きさの穴があき、へし折れる音が響くなか、俺は細腕に掴まれたままの緑髪の少女のもとへ。
「っ、こ、これは、あなたが……?」
「ああ。それより、ケガはないか。ポルタの怪力に掴まれては、一瞬握られただけでも致命傷になるかもしれない」
「ぁ、い、いえ、私は大丈夫です……」
蒼翠の透きとおった瞳をパチクリさせ、なんどもをまぶたをこする緑髪の少女。
平気そうな彼女をおいて、大きすぎる魔女ハットをかぶった幼女、ティナのもとへ。
「ティナ、傷があったら大変だ。いますぐにポーションを飲むといい……ッ!」
金貨1枚はくだらない金の治癒ポーションを、有無を言わさず飲ませる。
「ちょ、待つです! いまの超高等魔法はあなたが使ったですか!? いまの魔法は、いったい何という魔法ですか?!?」
「そんなことはどうだっていい! いまはそのふにふにの柔肌に、傷が残らないことが先決だろう!」
「ッ! そうです! アース、それにハゲタカもポルタに吹き飛ばされたです、はやく助けに行かないと!」
金の治癒ポーションをこばみ、ティナは紫髪をなびかせながら、ポルタの手からもぞもぞ抜け出てきた少女のもとへ。
「ヌクオチはハゲタカを、私はアースを見つけてきます! ポーションが必要ならこれを使うです!」
「了解。予備は持ってるけど、鎧圧の厚さから考えてハゲタカの方がダメージはおおきい。ポーションはもらっておくんだぞ」
テキパキと役割分担して、さっさと立ち去ってしまう少女たち。
途中、ティナと緑髪の少女ーーヌクオチはは、こちらへ振りかえり、ペコリと頭をさげてからこの場を去っていった。
「まさか一撃で射止めるとは……流石です、サラモンド先生」
「サリィ、本当にすごかったぁあー! こう魔法がぶしゅーん、すこーん、すばぉあんっていって、プシューって抜けていったんだよー!?」
可愛すぎるレティスを抱きしめたい衝動。
くちびるに血の味を感じながら、耐えぬく。
「それにしても先生、彼女たちは大丈夫でしょうか……? あのポルタ、話に聞いていた以上に強大で恐ろしい魔物でしたが……」
「俺には何とも……とにかく、無事なことを祈るしかないです」
俺は加勢が遅れたことに罪悪感を感じながら、目をそらし自信なくそう答えた。
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