【完結】ロリコンなせいで追放された魔術師、可愛い愛弟子をとって隣国で自由気ままに成りあがるスローライフ!

ノベルバユーザー542862

第17話 浅緑の白熊


エルダートレントがふたたび眠りにつくを見届けて、俺たちはエレアラント森林を進みはじめた。

「クルクマまではどれくらいですか?」
「30分くらい歩けば、たぶん着くと思います。実際に来たことはないので、なんとも言えないですけど」

アヤノは杖を片手にうなづくと、油断なくあたりを警戒しはじめる。

心配しなくても、ここら辺に魔物は出てこないというのに……師匠が言ってたんだから、たぶん問題はない。

ーーウワァァアアっ!

ん、あれ、いま何か聞こえた気がする。

「っ、サラモンド先生! 向こうで誰かの叫び声が!」

呑気に歩いていたところへ、アヤノの声。

木々の向こうを指差して、切羽詰まった顔でまくしたててくる。やっぱり、気のせいじゃない。

「だいじょうぶかーッ! レティスがいまいくぞー!」
「あ、お嬢ーー」
「レティスお嬢様ぁぁぁぁあッ!」

走りだしたレティス。
即刻、つかまえようとするが、するりと身軽なフットワークで腕をぬけられてしまう。

大きな木の根っこをくぐり、そのまま向こうがわへ。

穴の中をのぞけば、獣道を楽々と走破していくレティスの背中がみえた。

アヤノと目配せ。

「下がっててっ、≪風爆弾ふうばくだん≫!」
「きゃっ!」

風の魔力を強引に叩きつけて、壁を形成する巨木の根っこを衝撃波でふきとばす。

木っ端微塵になった木くずが降ってくる。
そのなかで、頭に乗ったホワイトプリムを直す、メイドの鏡たるアヤノの手をひいて走りだした。

人の手の入っていない獣道を進んでいくと、すぐにレティスの背をみつけた。

同時、その奥に見える白い巨体と、おおいかぶさるように組み伏せられ、襲われる男。

「むむぅ……≪風打ふうだ≫!」

レティスは長い暗唱ーー頭のなかで魔法発動に必要な詠唱を終えることーーの後、杖先から風の球をはなった。

「うわぁあ! 殺されるぅー!」
「ベェィアッ!」

絶体絶命のそこへ、レティスの風の魔力が到達。

「ベェィアぁあっ!?」

間抜けな鳴き声をあげて、大白熊ーーテゴラックスの体が衝撃にういて、ごろりと横倒しに転がった。

白熊はそのままコロコロと、転がり、獣道を転がり落ちていく。

「大丈夫ですクァァアッ! レティスお嬢ーー」
「お嬢様ぁぁあっ! なんて無謀なことをッ!」
「うわぁ!? アヤノがおこってる……ッ!」

レティスに飛びつこうとするも、アヤノに先をこされる。

仕方ないので、倒れている男のもとへ駆けよる。

「んー、見たところ怪我はないな。はい、終了」
「ちょまっ! もっと心配してくれてもいいんでねぇか!?」

元気に被害者あつかいを要求する男。
やはり、あまり心配はいらなそうだ。

「ベェィアァアッ!」
「テゴラックス、こんな浅いところに出てきちゃダメだろうに……」

姿勢を取り戻し、坂の下から駆けあがってくる白熊。

成体になれば3メートルもの大きさに育つ魔物。
放っておくことは出来ない。

「アヤノさん、お嬢様の目を。≪風打ふうだ≫」
「ッ」

すぐにレティスの目をおさえるアヤノ。

圧縮された大気の球。
空気の衝撃をぶつける魔法も、使い方しだいでは、それは何者をもつらぬく無双の槍になる。

ーーべちゃビチャッ

「お、おぉ、こりゃすげぇ。旦那は魔法屋さんだったかいな」

魔法屋……ローレシア魔法王国でも、市井の間にはまだ魔法魔術は浸透していないのか。

杖をふり、≪土操どそう≫で土を操り、ピンク色の臓物と、鮮血にまみれた木の根を、おおいかくして現場の刺激をすくなくする。

「ありがとぉ、魔法屋さんたちや。いったいこんな所で何をしてるんで?」

「俺たちは、この近くにあるクルクマという町を目指していたところです。すこし……帰り道に迷ってしまいまして」

「おお、そらぁ、いい。おらについて来れば、炭鉱の町クルクマにダァーと連れてってあげんさ」

強烈なクルクマなまりを何とか聞き取りつつ、俺たちは男に道案内を頼むことにした。

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