【完結】パーティを追放された若き【医者】、実は世界最強の【細菌使い】〜患者を救うより、悪党を殺す方向で世界を良くしながら成り上がる!〜

ノベルバユーザー542862

第15話 拷問


夕食を2人でいっしょに片付け終えた。

「おやすみなさいです、アレックスさん! 良い夢見てくださいね!」
「ああ、ルミリアもな」

部屋のまえで彼女とわかれる。

俺も自身の部屋へもどり、ベッドに身を寝かせた。

もっともまだ俺にはやることがある。

ただ、きっと、長い夜になるだろう。

「1時間ほど仮眠をとるか」

俺はゆっくりとまぶたを閉じた。


⌛︎⌛︎⌛︎


ーーぴったり1時間後

「……」

暗い部屋のなか、むくりと起き上がり、ベッドから降りる。

足音を忍ばせ、気配を殺して白衣を着込み、ルミリアの部屋のまえで聞き耳をたてる。

「むにゃむにゃ……アレックスさん、そんな、それはちょっと、えちですよ……えへへ♡」

「……」

寝言か。
今晩はかなりの快眠と見える。

よかった、よかった。

ルミリアに気付かれないように、アルドレア医院を出て、俺はクズどもを監禁している廃墟へむかった。


⌛︎⌛︎⌛︎


「……ッ! んー! んー!」

「恐怖で眠れないようだな。それは結構」

縄でぐるぐるに縛って放置していた、娼館のマスターが充血した目でなにかを訴えかけてくる。

俺はポケットからメスを取りだして、口が聞けるように猿轡さるぐつわをとってやった。

「なんの真似だこれは! てめぇ、いい加減にしないと、本当に後悔するぞ……っ!」

「後悔するかは、俺が決める。お前は俺の質問に嘘いつわり無く答えればいい」

メスでマスターの頬をかるく斬りつける。

マスターは片目を閉じて痛みにうめき、悔しそうに歯がみして睨みつけてきた。

ただ、それだけだ。
それ以上は何もできない。

「お前とあの男の関係を教えろ」

俺はマスターにたずねた。

「誰がてめぇなんかに……」

マスターの反抗的な態度。

これはいただけない。

俺は躊躇なく、メスを持ち直し、マスターの耳の先端をスライスして斬り落とす。

血が滲み出るように、切断面から溢れ出てきた。

「うぁああああああ!」
「口を閉じろ」

立ちあがり、靴の先端をマスターの歯をへし折りながら、無理やり彼の口につっこむ。

マスターは涙目で嗚咽おえつをもらしながら、恐怖に震えはじめた。

俺は靴を勢いよくひっこぬいて、口の中を必要以上に傷つけたあと、マスターの目の前にゆっくりしゃがみ込こんだ。

「しーっ」

マスターを静観しながら、俺は指をたてて、彼に口を閉じさせる。

「うぅ、ぅ、ひぃ……」
「それでいい。初めにことわっておくが」

俺はマスターの耳の切断面へ指を近づけ……彼の治癒力を活性化させ止血した。

「俺は人の体なんて、いくらでも操れる。お前の態度次第じゃ、想像を絶する地獄がこの先に待っていると思え」
「ひぃい……! すまない、やめて、やめ、やめてぇ、くれぇ……っ!」
「やめて欲しいなら、迅速に、簡潔に、要領よく、質問に答えろ。それが、お互いためになる」

この後、マスターはペラペラとよく喋ってくれた。


⌛︎⌛︎⌛︎


「次はお前の番だ」
「アレックス・アルドレア、この街で『犯罪顧問』にさからって生きていけるとでもーー」

いらない事を喋る口。

素早くメスを走らせて、上唇うわくちびるを削ぎ落とす。

「うがぁぁあ?!」
「静かに」

勝手に音を出す声帯は、悪い声帯だ。

喉を絞めあげ、喉仏を陥没させる。

「げぼっ、がほ、ぁ、ぉ……っ」
「それでいい。今から俺がする質問に迅速に、簡潔に、要領良く答えろ。お前は『犯罪顧問』ーー『百面』の手先か?」
「はぁ、ぁぁ、はぁ……」

男は目元をひくつかせ、ただ見上げて睨んでくる。

喋る気配はない。
黙秘を選んだか。

「愚かだな」

俺は脇腹を蹴り上げて、男の吹っ飛ばして、石壁に叩きつけた。

男は口から血の塊をはきだして、猛烈な痛みに耐えかねて声をあげる。

俺はすかさず、彼の体の傷を治癒する。

「っ!」

男は自分がされたことを理解して、目を見開いた。

「もう一度、チャンスをやる。お前は『犯罪顧問』の手下か?」
「……クソ喰らえ」

男は全身を恐怖に震わせながらも、引きつった笑顔で言った。

なるほど。
ただの痛みで口を割る輩ではないか。
となると、『百面』のカリスマは本物ということになる。

流石は、ファントムシティで発生する犯罪の半分に関わり、裏で糸を引いていると言われるだけのことはある。

「出来れば使いたくなかったが、仕方ない」
「何をしても、絶対に口は割らないぞ、イヒヒヒ……っ」

気丈にふるまい笑みを浮かべる男の頭を踏みつける。

地面に固定され、よく見える耳の穴へ、俺は小瓶のなかの生物を流しこんだ。

「ッ?!」
「先に忠告しておく。おそらく人類が経験する苦痛のなかでも、トップを争う本当の″痛み″が待ってる。さ、痛覚の限界に挑んでみろ」
「ま、待て、なにを、なにを入れた……! なにを入れたんだ!?」

俺はそれだけ告げて〔細菌碩学さいきんせきがく〕で男の体内に侵入した生物の成長をうながす。

『コカドローヂ』
俗に″悪魔の虫″とすら呼ばれる最悪の寄生虫。
毒を撒き散らしながら、体内を食いあさり、成体になると、股間を内側から突き破って出てくる。

「うがぁぁあァァァァァアアッ!」

穴という穴から血を吹き出し、痙攣して叫びだした男。

俺は痛覚を〔細菌碩学さいきんせきがく〕麻痺させて、痛みから一時解放する。

「あぁあ! あああ! うぅうぅうッ!」
「しーっ」

口に指をあて、大人しくさせる。

ーーぐちゅぐちゅ

「ほら、耳を澄ませてみろ」
「ヒ……ッ!」
「聞こえるだろう、お前のなかで血肉を食べて成長してる虫たちの音が。今は痛覚を麻痺させてるが、これはいつだって解除できる。また、お前の体を内側から再生させることも俺なら簡単だ。意味はわかるな? よし、ならいい。……今、痛覚をもどしてやるから、質問に答える気になったら、ぜひ呼んでくれ。朝まででも、外で待ってるからな」

俺はそういって、痛覚を戻すために男の胸に指をふれた。

人間は痛みと恐怖の″インターバル″こそもっとも恐れる生き物だ。

一時的に、苦痛から開放されると、次にやってくる苦しみにことさら反応を示す。

それが、終わらない地獄のはじまりだと身をもって体感すれば、この恐怖に耐えられる者は多くない。

「あああ、わがっだッ! わがっだ、答える、答えるから、やめてぐれ゛ぇえ!」

この後、男はめちゃくちゃ素直に質問に答えてくれた。

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