【完結】平凡クラス【槍使い】だった俺は、深海20,000mの世界で鍛えまくって異世界無双する

ノベルバユーザー542862

第13話 ファーストコンタクト

俺が見つけたのは、金属の建物だった。

ちょうど扉のようなモノがあり、直感的にそこが出入り口なのだとわかる。

「うぐ……ッ」

出入り口を見つけたと同時に、突き刺すような頭痛が襲ってきた。

「まずい、体の限界か……?」

頭痛の原因を過労に求めて、俺は一刻もはやい休息が必要だと判断する。

ーーブシャウ

「ッ、開くのか?」

俺がフラフラしながらも、なんとか立て直していると、扉がひとりでに動き始めた。

開いてみてわかったが、その扉は俺が想像していたより10倍は重厚なモノだった。

その扉の向こうから明かりが漏れてきた。

魔力溜まりの青紫の光ではない。
白くて綺麗な光だった。

《メインパイプが破損したなんて、いったいどこのどいつがヘマしたってんだ》
《まあ、十中八九、カブラギだろーな。やるとしたらヤツしかいない》

金属の建物から″何か″が出てくる。

その者たちは身長2メートル以上の、鎧のような金属に包まれていた。
しかし、顔の部分だけはガラスのように透明であり、表情がよくわかるようになっている。

鎧の一種なのか?
水圧から身を守るため?

彼らは人間で間違いなさそうだな。

俺は感動に震える頭で、なお冷静であり続けた。

《えーと、破損区画はAの3番……っと》

何かぶつくさ言いながら、透明なガラスの向こう側の顔がこちらを見てくる。

「……」
《……》

人間に会えた嬉しさはあった。
だが、それ以上に俺には言い知れぬ不安があった。

嫌な予感がしたのだ。

俺に気がついた男の片割れは、目を見張り、となりの男の子に合図をおくった。

《フラッド……》
《あん? どうしたっての……ぁ》

もうひとりの男も俺を見た。

まったく同じ反応をしてくる。

《生身で、水中に……!》
《ってことはーー》

2人の喋っていることは、相変わらず俺には理解できなかった。

ソフレト共和神聖国の外では、人間は複数の言語をもつと聞いたことがあるので、もしかしたら彼らも、違う言語とやらを話しているのかもしれない。

《喋れないタイプの超能力者だ……》
《翻訳機、翻訳機つけろ! こんな事で殺されたらたまらねぇ!》

「?」

「あーあー、聞こえますか? こちらの声がわかったのなら、ついてきてくれますか?」

突然、ひとりの男の言っている事がわかるようになった。

彼らは踵をかえして、金属の建物のなかへ戻りはじめる。

ついてこい、という意味か。

「お前たちはちょっと待ってろ」

大きすぎるダンゴムシ達は、その場に待機させて、俺は案内にしたがって金属の建物のなかへと入った。

扉のなかに入ると、そこは2メートル四方の小さな部屋となっていた。

「ん?」

俺の後ろの扉が勝手にしまっていく。

「ーー排水開始」

「え?」

いまのは男の声ではない。
明らかに女性的な声が聞こえた。
しかし、ここには女性などいないはずだが。

同時に頭のほうから空気の層が、爆発的に増えてくる。

小さな部屋のなかは、みるみるうちに水が無くなっていき、やがて完全に空気だけが充満する快適な空間になってしまった。

「いったい、どうやって……なんだ、コレは……」

おそらく、海底都市とやらと関係しているとは思っていたが、まさか深海に空気を作りだす仕組みを持っているなんて。

スキルなのか?
いや、そんな感じじゃない。

では、科学か?
まったく見当がつかない領域だが、海底都市に住んでいるくらいだから、俺の知らない科学があったとしても何もおかしくはない。

「こちらへ」

男たちは空気で満たされた部屋で、いま俺たちが入ってきた玄関とは反対側の壁を押して開けた。

どうやら、こっちも金属の扉になってるようだ。

男たちについて行くとリビングのような場所に通され、彼らは、頭につけていた、顔がガラスで見えるようになってる不思議な鉄兜を脱いだ。

「それはなんて言うんだ?」
「はい? これですか?」
「ああ」
「これは……潜水服です、けど……?」
「潜水服って言うのか。なるほど。それじゃ、それは?」
「これは………………これは、ヘルメットで良いんじゃないですかね?」

男のひとりは困惑しながら答えてくれる。

「馬鹿野郎、超能力者様がそんなこと聞くわけないだろ! どこの潜水服か聞いたんだろーが!」
「あ、しまった! そうだよな。申し訳ございません! 正式な型番を聞いてらっしゃるんですね! でも、その、すみません、あまり潜水服には詳しくなくて。とりあえず、亜門電機電力株式会社の製品だとは思います」

男のひとりは焦って俺に頭を下げてきた。

俺は別に1ミリも怒ってないのに、どうして謝ってくるんだろうか。

俺は首をかしげると、彼らは見るからに怯えはじめた。

はて、どうしたものか。

すこし考えて、俺はとりあえず……聞くべき事を聞く事にした。

「ここは、海底都市なのか?」

「え? そんな言い方します……?」
「馬鹿野郎! 超能力者様なんだから、そのまんまの意味でとらえんな! この質問は『アルカディアの一員として、この地をしっかりと我らの理想郷たらしめる覚悟が出来ているか?』って意味の質問だろ!」
「っ! そうだったのか……! も、申し訳ございません! はい、この地こそ我らの理想郷・海底都市アルカディアであります!」

なんだかおかしな言い方をされたが、そうかそうか……ここが、海底都市……。
名前はアルカディアって、言うのか。

「そうか、ぅぅ、たどり着いたんだな……」

「泣いているのですか、超能力者様?」
「これは、泣いてらっしゃる、な……」

俺は感極まり、ついに自分が過酷な試練を乗り越えたのだと確信した。

お前たち、その犠牲は無駄じゃなかった。
占い師、俺はやり遂げたんだ。

俺は安心からくる、究極の疲労に思わず膝から崩れ落ちた。

「超能力者様?!」
「嘘だろ、いきなりぶっ倒れちまった!」
「担架、担架急げ!」

俺は急速に重たくなっていく、鉛の身体を起こすことができず、まわりでジタバタと慌ただしくする彼らの事をボーッと見つめる事しかできなかった。

そうして、俺は数秒のあとに、深い眠りに落ちた。

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