【完結】平凡クラス【槍使い】だった俺は、深海20,000mの世界で鍛えまくって異世界無双する

ノベルバユーザー542862

第12話 過酷な遠征


俺の実力で火山深海竜を撃退できると判明してから、俺たちはこの火山帯で休憩を取ることにした。

ここまでザッと10時間近く海底を旅してきた。

海底火山を迂回するだけでも、3時間ほどかかっている。

「休める時に休んでおけよ」
「ぐぎぃ」

幸い、ここは温かい。

こんだけ温かいのなら、地中深く家を構える必要はなさそうだ。

俺は魔槍を抱えながら、キングを背にもたれかかり、ダンゴムシ団の真ん中でゆっくり意識を沈めていった。

魔槍の温かさを抱きしめていると、そこにはラナがいるような気がした。


⌛︎⌛︎⌛︎


「98、99、100……っと。よし、全員いるな」
「ぐぎぃ」

温かな海底火山近くで眠った俺は、ダンゴムシ団のメンバーがちょうど100匹いる事を確認していた。

点呼を取りたいが、彼らはあまり頭が良くないので、俺が数えてあげないといけない。

「それじゃ、出発だ」
「ぐぎぃ」

俺はキングにまたがり、索敵結界網を展開して闇の世界へと再突入しはじめた。

後方へ火山の明るさと温かさが、薄れていくのは、我が家を旅立つ時以上の不安と寂しさを感じさせて来たが、自分が確実にまえに進んでいると信じて俺とダンゴムシ団は足を前へ前へと出していった。































長い時間がかかった













ダンゴムシ団はいくたびも
暗闇から深海生物たちの襲撃を受けた










俺たちは何日にも渡って必死に戦った


















しかし、全てを守る事が出来なかった

















寝ずに海底を進みつづけ





















怯えて海底を進みつづけ

















泣きながら海底を進みつづけ

























震えて海底を進みつづけ









わからないほどの時間が過ぎた













⌛︎⌛︎⌛︎


ーー2週間後

「ぐぎぃ」
「頑張れ……頑張れ……お前たち」

俺はかすれる声を掛けて、後ろをついてくる3匹のダンゴムシを鼓舞する。

ミスター・タンパク源のブーストを使っても、あかりひとつも無い海底を強行突破するのは厳しすぎた。

朝も、昼も、夜もない暗黒の世界で、幻覚と幻聴に襲われながら、時にホンモノの何十メートル級のバケモノに襲われる。

奴らは俺の索敵結界網の外から、凄まじい勢いで突っ込んでくる事がほとんどだったので、実質的に事前に危機を回避するプランはほとんど意味をなさなくなっていた。

この深海では、俺のような人間のちっぽけな工夫など、環境に適応し、進化して来た怪物たちの前では付け焼き刃にすぎない。

ダンゴムシ団が1秒も油断の許されない死の世界に飛び込んでいたのを、本当の意味で知ることになったのは、海底火山を出発してから何十時間も経ってからだった。

疲労困憊の俺は、自分とダンゴムシたちが休むための空間を確保するために地面を掘り進めて、そのしたに埋まって休もうと考えた。

幸いにも、ダンゴムシたちは丸まって大人しく寝てくれたので、この策は良案だと思われた。

だが、すぐに後悔とともに俺は砂のなかにとどまる事をやめた。

その理由は、俺が砂の中に埋まって寝ていると、ムシャムシャと音がし始めたせいだ。

音の正体は、怪物が砂のなかのダンゴムシを掘り返してむさぼっていた音だった。

このせいで数匹が犠牲になった。

深海生物たちは俺たちが一ヶ所に留まると、必ずと言って良いほど襲撃を仕掛けて来た。

まるで「休ませない」事を目的としているようだった。

彼らは知恵を持っていたのだ。

そのため、俺は休まずに行軍を続けることを余儀なくされた。

そこからだ。
俺が精神的にも肉体的にも、本当の地獄を知るようになったのは、

常に緊張しながら深海を歩き続けていると、俺の体には過度の疲労が蓄積された。
幻覚・幻聴がはじまったのもこの時だ。
現実なのか、幻なのか、その境目にずっと悩まされながら、どんどんどんどん仲間たちは消えていく。

どれだけ怪物たちと戦っても、一行にゴールは見えない。

海底都市にはたどり着けない。

そうなってくると、次第にある考えが頭をよぎる。

ーー方角を間違えたのでは?

足の向きを1ミリずらしただけでも、延長線は数キロ先で大きくズレる事になる。

それが数十キロ、あるいは数百キロならば?

俺は暗闇を歩いているうちに、ひょっとしたらまったく見当違いな方向へ進んでいたのではないだろうか。

「頼む……頼む……」
「ぐぎぃ」

俺は祈りながら、暗闇を進み続けていた。

女神ソフレトの祝福を信じて、急な傾斜を何十時間もゆっくり、ゆっくり、一歩ずつ踏みしめて進む。

今、俺は先の戦いで丸まったきり、動かなくなってしまったキングを、全身の力を動員して押しあげて、精一杯に進んでいる。

「ぅぅ、ぐ、そ……キング、死ぬな……頼む」

返事は返ってこない。

「ぐぎぃ」

代わりに答えてくれるのは、後ろの3匹だ。

「ごめんな……俺の無謀な旅に付き合わせたせいで、たくさんの仲間を殺してしまった」
「ぐぎぃ」
「言葉なんてわからないよな……」
「ぐぎぃ」

俺は鼻をすすり、涙をぬぐい、それでも信じて進み続けた。

そうしなければ、嘘になってしまう。
すべてが無駄になってしまう。

ここに来るまでに、死んでいった100匹以上の巨大ダンゴムシたち。

それ以前に、俺が海底で生きて、海底都市を目指すために費やした″ほかの命″たちの犠牲もだ。

俺という生命は、無数の命のおかげでここまで来た。

海底都市にたどり着かなければいけない。
こんな無意味な死は許されない
挫折はありえない。

「大丈夫、この丘を越えれば、必ず海底都市にたどり着けるさ」

俺は何百時間も寝てない、もうろうとする意識でキングを押しあげ続けた。

そうして、ようやく俺たちダンゴムシ団の生き残りは丘を越えた。

「……」

そこに都市はなかった。

俺は膝をおり、動かなくなってしばらく経つキングに突っ伏して、溢れて止まらない涙を堪えた。

俺の苦労は。
皆の犠牲は。
この苦しみは。
この悲しみは。
この悔しさは。

いったいどこへぶつければいい。

「……ダメだ、決して諦めるな」
「ぐぎぃ」
「死ぬ瞬間まで、海底を舐めはしない……」
「ぐぎぃ!」
「俺はエイト・M・メンデレー……」
「ぐぎぃっ!」
「海底の旅人なのさ、負けてたまるか」

俺は目を見開き、キングをふたたび転がし始めた。

後ろをついてくる最後の仲間たちの分まで、俺は命を預かると決めたんだ。

挫折は無い。
それだけはありえない。

「必ず、必ず、たどり着ける」

俺は自分を信じて海底を進み続けた。





















やがて、変化が訪れた。













「嘘だろ……」

俺は遥か遠方を眺めてつぶやいた。

俺たちの視線の先。

つま先を向けるずっと向こうに光を発見したのだ。

それまでキングを必死に転がしていたので気がつかなかったが、それは確かに明かりであった。

俺は頬を叩いて、今見ている光景が、幻覚じゃないと確信する。

俺はそれが海底都市に違いないと思い、キングを転がす速度をあげた。

しばらく進んで、明かりに近づいてみると、不思議な光景を見た。

「なんだ、これは? 都市じゃない?」

俺が見つけた光源は都市ではなかった。

それは、まるで湖のようだった。
海底なのに、そこだけ異様に深くなっていて、しかして、その巨大な穴は″青紫色″の神秘的な輝きを放っていたのだ。

俺は海底の湖に近づいてみる事にした。

「なんだか、不思議なチカラを感じるな……これは……魔力溜まりなのか?」

知識のなかで、高濃度の魔力が湧き出たり、溜まったりしてしまう場所があるという事は知っている。

だが、まさか海底にも存在するとは思いもよらなかった。

「ぐ、ぐぎぃ……」
「! キング?!」

俺が魔力溜まりに近づいた途端に、キングが丸まった状態から動き始めた。

よかった、生きていたようだ。
魔力溜まりのおかげで元気になったのか。

「ぐぎぃ」
「ん? キング、どこへ行くんだ」

キングは元気になるなり、どこかへと一直線に向かいはじめた。

彼のあとを追いかける。

「っ、これは!」

すると奇妙すぎるモノを見つけた。

岩陰に建てられていたのは、いかめしい様相の″金属の建物″であった。

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