【完結】平凡クラス【槍使い】だった俺は、深海20,000mの世界で鍛えまくって異世界無双する

ノベルバユーザー542862

第10話 旅立ち


ーー1ヶ月後

俺は我が家の荷物をまとめていた。

ポケット空間を開いて、持ち物の最終確認をする。

度重なるスキル開発と鍛錬により、俺はポケット空間の内側に″しきり″を作成することに成功している。

俺は実質的にいくつものポケット空間を持っているのだ。

そのために、ひとつのポケット空間は飲料水で満帆にして、ひとつにはミスター・タンパク源をギチギチに詰めこむなんて事もできる。

このスキルは、海の底を横断するためには、必須の工夫であった。

「入れるだけ詰めて、だいだい水は3ヶ月分を確保。食糧もミスター・タンパク源をはじめ、もう訳わからないくらいある。あとは土と泥で作った食器の数々……っと。よし、完璧」

俺はすべての準備が整ったと確信して、立ちあがった。

「……ここともお別れか」

俺は最後となる我が家を見てまわり、お世話になった水脈に頭をさげた。

「ありがとうございました。おかげで、俺はまだ生きてます」

頭をあげて、魔槍を手に持ち、玄関へと通ずる水辺に足をつっこむ。

期間にして2ヶ月以上。
初めは数時間ともたないで死ぬかと思った地獄だった。

だけど、ここがあったから耐えられた。

周りには何もない。
ここは遥かる深海20000mの暗闇。
どれだけ大声を出しても、やってくるのは得体の知れない怪物ばかり。

そんな、地獄で俺は立派に生きたんだ。

「……記念になんか書いておこうかな」

いつも寝ていた発光植物を乾かして床に敷いただけの、簡素なベッドの枕元に、文字を刻みつける事にした。

魔槍を短く持って、俺はメッセージを壁に書きこむ。

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「ふう、思ったより長くなっちゃったな」

俺は壁に書きつづった文字を眺めて、満足して玄関へと続く水辺に足を突っ込んだ。

最後にもう一度、部屋を見渡す。

「行ってきます」

俺はそれだけ告げて、覚悟を決めた。

空気の層を分厚く展開して、俺は我が家を出た。

海底に刻まれた『西へ迎え!』の文字を探して、方角を定める。

「この方向。ズレないように地面に跡をつけながら進もう」

俺は魔槍で地面を引っ掻きながら進む事にした。

こうすれば、後ろを振り返って、自分が真っ直ぐに歩いているのか、ある程度目測による修正を行うことができる。

線がまっすぐならヨシ。
曲がっていたのなら直す。

海中ではわずかな海流によって、いつのまにか体の向きが変わっていることも多い。

これは何百時間も海底を散歩したからこそ、得られた特殊すぎる経験値から来た知識だ。

「大丈夫、俺なら行ける。絶対に大丈夫だ」

自分を鼓舞し続けて、俺は発光植物の群生地を歩き続けた。



しばらく、歩いて進むと巨大ダンゴムシに遭遇した。

「お前ともここでお別れだな」
「ぐぎぃ」
「じゃあな。達者で暮らせよ」

巨大ダンゴムシは特に俺に襲ってくる事なく、道を開けてくれた。

もうこいつとは、顔見知りなんだ。

「ぐぎぃ」「ぐぎぃ」「ぐぎぃ」
「ぐぎぃ」「ぐぎぃ」「ぐぎぃ」

今度は巨大ダンゴムシの群れに会った。

発光群生地はこのダンゴムシたちの巣なので、たくさんいて当然だが、それにしても数が多い。

ざっと50匹くらいはいそうだ。

「ぐぎぃ」
「ぐぎぃ」
「ぐぎぃ」
「ぐぎぃ」

「……なんだ?」

俺が歩くと、道をふさいでいた巨大ダンゴムシたちが道をどんどん脇によけて、俺のために道を開けてくれる。

「のぞのぞ…のぞのぞ…」
「のぞのぞ…のぞのぞ…」
「のぞのぞ…のぞのぞ…」
「のぞのぞ…のぞのぞ…」
「のぞのぞ…のぞのぞ…」
「のぞのぞ…のぞのぞ…」

いいや、道を開けるだけじゃない。
こいつら俺の後ろをついてくる。

「なんだよ、やっぱり、俺のことが憎いのか?」

会うたび会うたび、ついて来られて総勢100匹以上の軍団となった巨大ダンゴムシたちに、俺は恐怖を覚えはじめていた。

なによりも、足元の方角の基準線が巨大ダンゴムシの足跡でかき消されてしまうので、ついて来ないで欲しいのだが……。

「ぐぎぃ」
「なんだ?」

ふと、巨大ダンゴムシの群れの中から、1匹の一際立派な甲羅をもつキング・ダンゴムシが進み出てきた。

俺はヤル気なのかと思い、魔槍を構える。

しかし、この2ヶ月の間、死ぬほどダンゴムシたちを繰り返し眺めた経験から察するに、このキングには敵意を感じられない。

それどころか、むしろ優しさ?とも言うべきダンゴムシ・スピリチュアル・ソウルを感じていた(翻訳:優しい目をしてた)

「ぐぎぃ」
「なになに? 背中に乗れだと?」
「ぐぎぃ」
「そんな……俺は、お前たちの仲間を殺しまくった、張本人だぞ?」
「ぐぎぃ」
「それでも、いいってのか?」

キングと会話を重ねると、俺は彼の気持ちを理解することができた(注意:エイトは極めて特殊な環境下で訓練を受けています)

「そうか、わかった。ならお言葉に甘えようか」
「ぐぎぃ」

俺はキングの立派な甲羅のうえにまたがった。

すると、キングはのぞのぞと発光群生地を抜けて、そのまま暗闇の中へと遠慮なく突入していく。

背後をふりかえると、相変わらず100匹以上のダンゴムシたちの行軍行われていた。

なんだか、思っていた旅立ちとだいぶ違うが、これは凄く心強く、なにより寂しくないのでヨシとする、

「キング、海底都市に連れて行ってくれ」
「ぐぎぃ」

俺たちは深淵のなかを突き進んだ。

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エイトの書き残し

『このメッセージを読む君へ

諦めないで
君はまだ終わってなんかない
この海底は寒く、暗く、孤独だ

けれど、この海底で2ヶ月もの
期間生き抜いた者もいるんだ

俺の名前は
エイト・M・メンデレー
深海20000mの世界で
もっとも長く生き、
また初めて暮らした
最初にして、最後の人類だ

だが、人生何があるかわからない
いつか来るかもしれない
後輩である君にいくつか
プレゼントを残していくよ

贈り物なしなんか寂しいからね

ひとつ目が、シャベル
これは師匠がくれた閃きの種
俺にはもう必要ないけど
君には役に立つかもしれない

ふたつ目が、イモムシ
外に生えてる発光植物には
イモムシが入ってる
こいつを食べられなきゃ
海底じゃやっていけないよ?

みっつ目が、水脈
すぐ横を見て
その穴の水は海水じゃない
俺が奇跡をたぐりよせ
掘り当てた人類最深の水脈だ

よっつ目が、俺の家
この家を自由に使ってくれて構わない
こんな海底にやってきた不運じゃなく
この場を見つけられた幸運を喜んで

最後に

俺は今から西を目指す
この家の外の矢印の方角だ
そこには海底都市があるらしい
あまりにも眉唾だが、行くしかない

もし興味があるなら、
君も来るといい
少なくとも
そこは人がいるだろうから


では、よき深海ライフを
エイト・M・メンデレー』

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