燃費最悪の外れスキル【時空剣】のせいで追放された俺、燃費問題を解決して最強となる。戻って来ていいと言われるがもう遅い。

ノベルバユーザー542862

積み立て魔力


崖下に落とされた俺は、岩を押しのけてなんとか起きあがる。

助かった?
あの高さから落ちて?

俺は、夜空との違いすら分からぬほどに、高天を突く崖を見上げる。

「吾輩が助けたのですよほほほォ〜」
「っ」

いつのまにか黒服の奇人がいた。

白と黒のハット、人間離れした細さ、2mを超える身長、鼻は長く、白塗りの顔、唇紅の鮮やかさが不気味な、性別不明の悪魔だ。

崩れた岩に腰掛けて、ハットを脱いで、うちわのように使い、顔をあおいでいる。

「お前……何年ぶりだよ、今更何しにきやがった、″悪魔″」
「ゴールドと呼んでくださいと言っているでしょうに、ミスターァ」
「……」
「まあ、いいです。ともかく、吾輩が来た理由など知れているでしょォ〜」
「3年間姿を表さなかったくせに、何を今更……」
「心のどこかでは、すがっていたのでしょう。99%は諦めていたでしょうが、1%は吾輩と日々″積み立てている″魔力のことが頭をチラついたはずでぇえすゥ」

俺はこの悪魔──ゴールドに4年前に出会った。

その頃は悪魔だなんて知らなかった。
姿も今とは違い、もっと人間ぼかった。

悪魔は、俺の抱える、魔力量が″虫けらレベル″という問題を解決する手段を提示した。

それが、魔力の積み立て、だ。
簡単に言えば、今使わない魔力を、あとあと使うために貯める貯金箱である。

もちろん、人間界にはそんなモノはない。

貯金箱を持ってるのは悪魔であり、それを管理できるのも、目の前の悪魔だけだ。

「……」

俺は黙ったままゴールドを睨みつける。

「そんなに怒らないでくださぁい〜、ちゃんと吾輩は、あなの先祖と、あなたの契約を果たしに来たのでぇぇすゥ〜」
「……」
「おやおや、これはずいぶんと拗ねられてしまいましたねェ〜。では、こちらを見て機嫌を直していただきましょうォ〜!」

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積み立て魔力
4ララ/日

プラン
ゴールド式積み立てMagic

銘柄   口数 暗黒界通貨    前日比
Magic 50 ×5.59   1,070.69    +7.07%
A&B 470 ×8.01     804.14     +1.20%
PPQ 5000 ×4.44    703.09     +1.08%

人間界通貨換算総資産
=10,007ララ

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ゴールドの手に持つクリスタルに映し出される画面。

「吾輩の、ゴールド魔券が預からせていただいている、アイガ様の総資産が、1万ララを突破いたしましたので、ご報告にあがりましたァ〜」

俺はその報告を聞いて目を見開く。

ララは、人間界で流通する通貨であると同時に、様々な物質に変換できる触媒だ。

悪魔は、特別な秘術を使って人間にはマネできない『ララ=魔力』の変換を行える。

つまり、俺はこの悪魔の助けを借りて、俺の体が1日に作れる魔力を変換することで、この4年間資産を積み立てて来たのだ。

「まさか……【時空剣】を使えるのか?」
「ええ、恐らくは。魔力量が1日4ララ分しか無い、誇張抜きで虫レベルの魔力量のあなたでも、頑張って貯めたララを使えば、1万ララ相当の魔力を消費するスキルでも行使可能ですよォ〜」

ゴールドが空間を腕で突く。
すると、黄金に輝くララが溢れ出てきた。

「これは……!」

地面に散らばったララが、どんどん蒸発していき、俺の体に吸収されていく。

なんという全能感。
無敵になった気分だ。
これが10,000ララ分の魔力か。

「おお、戦等級が跳ね上がりましたねェ」

ゴールドが何か言いながらも「死にたく無いので離れましょォ〜!」と駆け足で逃げていく。

俺はスキル【時空剣】を発動した。

中空に空間の裂け目を出現させる。
そこから取り出したるは、黒い剣。

夜空を切り取り、剣の輪郭を与えたかのような、この世の物とは思えない美しい剣だ。

握った瞬間、この剣に内包された途方もない意志に全身を焼き切られそうになる。

何という切れ味。
ただそこにあるだけで、すべてを切断しようとしている。

「俺の言うことを……聞けッ」

俺は反抗する剣を、手懐けるために、柄を握りしめて、思いきり剣をふりぬいた。

瞬間、空間が歪む。

歪みは、膨れ、緊張の糸が切れたかのように爆発的な破壊を直上に引き起こす。

すべてがおさまった後。

俺は根こそぎ掘り返され、禿げてしまった森と、その真ん中で「いやァ、バケモノォバケモノォ〜っ」とハットで土埃を払うゴールドの姿を見た。

「斬撃箇所の空間を収束し、発散させる事で破壊を引き起こしているようですねェ〜」
「これが時空剣の力? 凄いな……」
「吾輩、暗黒界でも一、二を争う空間能力の使いですが……ハッキリ言って、その剣の価値は予想以上ですねェ〜」

ゴールドは拍手をして、満足そうにうなづいた。

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