ごみ人間 『お前がおらんと、おもんない』って言わせたる♡

相度@益太

夏休み5

 小学生の喧嘩や無い。
 俺らは、高校生。まぁ、大人と変わらん体格や。

 当然、それなりの破壊力がある、やから、結果は一瞬って事が多い。

 総一郎は一発喰らってから反撃するスタイル。

 そんで喰らった瞬間、体勢の整ってない相手を捕まえて締め落としたり、押し倒して殴りまくる。ラグビーやってるだけあって、服に指が掛かったら、もうどないもならん。

 ボクシング経験者ですら、捕まると手打ちでしか殴れんから敵やなかった。世ん中広いから、捕まえる事もできんと総一郎がやられる相手は多分居ると思う。

 でも、今までそんな奴におうたこと無かった。つまり、総一郎は路上やったら負けなしやった。

 ラグビーでバキバキに鍛え上げられた身体に、素人の手打ちのパンチなんか、なんの役にも立たん。

 相手は、無理やり押し倒されるしか無い。これが柔道経験者やったら、相手を投げ倒すってことやろう。


 つまり、指が身体に触れたら、ほぼ、総一郎の勝ちやった。柔道経験者が強いって理由をある意味、俺に、身を持って教えてくれたと言うてええ。その、総一郎が俺の目の前で殴り倒された。


「はぁ?」

 ヨッシーの声が聞こえた。

「何しとんねん! ワレごらぁ!」

 それ以上に俺が叫んどった。


 バイクの座席の下の物入れに放り込んであった、警棒型の虎の子。最強兵器スタンガンを握り締める。ほんま、こんなもん、はったりかます為の護身用のつもりやったっちゅうのに。

 ベトナム警察に正式採用されとるとか言うマジ装備S型タイターン。

 スーパーアマゾンで29800円で購入。こんなもんで殴ったら、即座に警察沙汰や。解っとる。せやけど、あかん、パッ金クソ過ぎやろ。

 角刈りと総一郎が喧嘩始めたその横から、いきなり金属バットで総一郎の頭に一発入れ腐った。

 ほんま、あかん。死んでん、ちゃうやろなぁ、アイツ! 

 絶対、カマしたる。
 アホが、あの糞パッ金。

 俺が一発かましたんぞ、ごらぁ。
 はなから、なんでもありやったらお前ら如き…怖無いねん、俺は。



 状況を整理するように静かにヨッシーが、パッ金を非難した。

「汚過ぎるやろ、お前」

「はぁ? 4人でケリ付ける言うたんお前やろが。それやのに、ぼぉっと見とるお前がおかしいねん。まぁ、言うたらお前の所為でこのハゲはのされとるねん。今日から、お前、ヨッシーやのうて、よわっちぃって名乗らしたるわ」

「…くッ」

「どうすんや? 2対1 なってんねんけどやぁ? まだ、やんのぉ?」

「黙れ、お前、絶対追い込んだるからなぁ」


 それが負け犬の遠吠えのようで、めちゃくちゃ悔しそうなヨッシーの横顔。北野と晃が倒れた総一郎の方に走っていくんが見えた。


「はいはい、口だけやったら世界最強やなぁ、よわっちぃはやぁ。ほんま、雑魚が粋がんなや」

「黙れよ、ゴミが」

 頭に完全に血が昇っとるヨッシー。
 金属バット持ったパッ金に、真正面から殴り掛かった。喧嘩慣れしたパッ金が金属バット振り廻す。そんですぐに背後に逃げるを繰り返した。

 嫌でも腕に何発か喰らうヨッシー。

 地味なダメージでもいつも通り腕が動かんくなったら、こんな喧嘩に勝てる訳が無い。明らかに顔が焦っとる。

 せやけどやぁ、俺のが昇ってんねん。血管ブチ切れて、頭から血ぃ吹き出しそうやねん。

「何しくさっとるねん。ボケがぁ!!」

 俺は叫びながら警棒片手に走って行った。これがスタンガンやと誰も解るはずが無い。


 俺も初めて使うねんからやぁ!


 片手で金属バット振り廻すパッ金に、俺は、警棒型のスタンガンで殴り掛かった。当然、金属バットで受けるか、避けるかする。誰だってそうする。

 ほんでパッ金も、そうした。

 見事に金属バットで受けよった。
 俺の予想通りに。

 パッ金、乙!!

 金属バットで受け止めた瞬間、パッ金は反対側の腕で俺を掴んで潰すつもりやったやろう。でも、その前に…


「あぎぃあぁぁぁぁるぃぃ!!」

「何語叫んどんねん、糞がぁ!!」

 握っとった金属バットがパッ金の手の平から、零れ落ちる。金属バットがアスファルトに落ちて乾いた音が鳴る前に、スタンガンの痛みで咄嗟にしゃがもうとしたパッ金の顔面に、俺がヤクザキックをお見舞いした。

 バゴッ!!

「シンどけやぁぁ!!」

 一瞬の事に、角刈りが呆然と俺の方を見とった。先になんでもありにしたんはパッ金やからやぁ、俺は知らんでぇ!

 そのまま、角刈りに襲い掛かる俺。
 総一郎になんかあったら、コイツらマジで殺したる。

 左手で俺の警棒型スタンガン。タイターンを受け止める角刈り。アホやろコイツ。俺が容赦すると思うなよぉ!

「ひぎぃ、あああぁぁぁ!!」

 警棒で殴られて、続くスタンガンの衝撃に、その場に蹲る角刈り。まさに最強兵器、一撃必殺やぁぁ!! 


「めちゃくちゃやんけ」

 ヨッシーが叫んどった。

 知るか。
 俺、なんも悪無いな。
 先にやったんは、パッ金や。
 気に入らんのやったら、パッ金に言え。


 俺も興奮して、訳解らんかったけど、兎に角叫んだ。

「総一郎が最強やぁぁ! ほんで、なんでもありやったら俺もそこそこ強いっ、的なぁ? まぁ、ええねん、次誰や?」

 誰もが動かん。
 俺にビビんなよ。俺如きに。
 嫌、スタンガン付きの警棒にびびっとるだけって、ほんまは俺も解ってる。

 取り敢えず、今日は、総一郎の怪我確認して帰るしか無い。そう思った瞬間…

 ドゴって音が聞こえた。
 ほんま、身体の中から聞こえるような感じ。ほんでから急に地面が落ちて来て、なんでか、ヨッシーとパッ金が見えた気がした。

 蹴られて弾き倒された。

 立たれへんかった。多分、太腿。
 ったぁ!!

 激痛が襲って来た。
 誰やねん?


 って言うか、あの糞パッ金しかおらんやろがぁ!





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