見た目は青年、心はアラサー、異世界に降り立つ! ~チートスキル「ストレージ」で異世界を満喫中~
十二話
「収納ボックス? これ全部が?」
「はい、そうですよ。ちなみにこの手提げバッグも、只のバッグじゃなくて収納バッグです」
マリーから補足説明を受け、その言葉の意味を考える。
壁一面の収納ボックスと、入口の収納バッグ。そして「野菜」と書かれたネームプレート。そこから導き出される結論は……。
「もしかして、これ全部に野菜が収納されてるのか?」
「正解です。ここからこの収納バッグに商品を詰め替えて、それを受付で見せてから代金を支払う。これが「ガイアの恵み」での買い物の仕方です」
驚きの真実。まさに異世界ならではのシステムだな。確かに、これなら買い物中に商品がかさばる事は無いし、会計の時も収納バッグの中身を確認するだけで済む。なるほど、理に適っている。
でも、持って帰る時はどうするんだろう? 買い過ぎたら持ち帰れないんじゃないか?
「その点は大丈夫です。市場に買い物に来る人は、ほとんどが安く大量に仕入れたい人なので、大体何かしらの運搬方法を用意してる筈ですから」
「そうなのか。まあそりゃそうだよな」
流石に何も考えてなかったら、それはただの馬鹿だ。俺の場合はストレージがあるから……って、そうだ。そういう可能性もあるじゃないか。
「アイテムボックス持ちに持ち逃げされたりはしないのか?」
そうなのだ。アイテムボックス持ちなら、自分のアイテムボックスに商品を収納して、そのままさよなら、なんて事も可能じゃないのか?
もしそんな事されたら、市場側にはバレないと思うけど。
「その点も心配いりません。カウンターにいる方は「真偽鑑定」のスキルを持ってる筈ですから」
「しんぎ鑑定?」
聞き慣れない単語が出てきたけど、しんぎ鑑定って?
字的には「真偽」だろうか? 真実と嘘を見抜く、的な。そんな便利なスキルがあるのか?
「真偽鑑定を持つ人には、嘘をついても無駄です。それに、一度市場に入ったら、黙って出て行く事は許されません。なので、余程の事がない限りは、持ち逃げなんて不可能な筈です」
「へぇー、なるほどね」
真偽鑑定か。随分便利なスキルだな。そんな物があったら迂闊に嘘は付けないよな。
だからこその、このシステムなのか。日本じゃどうあがいても真似できないなこれは。
「マリーは確かゴールド会員だよな? って事は、ここで相当買い物してたんじゃないのか? その時はどうやって持って帰ったんだ?」
「……さあ、早く野菜を買って孤児院に行きましょう! きっとアンちゃんも待ってますよ!」
あれ? 流された?
いやいや、そんな筈ないよな。きっとよく聞こえなかったんだろう。俺の声が小さかったかな?
「あのさ、マリー。ここで買い物してた時って……」
「あ、キャベツが安いですよ! 見て下さい!」
俺が再度尋ねると、話を遮る様に言葉を被せてくるマリー……って、キャベツ!? え、こっちにもキャベツあるの?
あ、そういえばお好み焼きにもキャベツが入ってたっけ?
当たり前すぎて深く考えてなかったけど、よく考えたらそこで気付くべきだった。ていうか、こっちでもキャベツって名前なんだ。
「どれどれ……二玉銅貨一枚か。確かに安いな」
こっちの相場はイマイチ分からないけど、銅貨一枚は、日本円で百円ぐらいだった筈だ。それで、これは二つで銅貨一枚。つまり百円だ。
いくら相場が分からないからといっても、これが安いというのは流石に分かる。
試しに他のも見てみると「レタス」「トマト」「きゅうり」に「ハクサイ」もか……って、全部知ってる野菜じゃないか!
確かにこっちに来てから食べる野菜って、どれも見覚えあるな、とは思ってたけど、まさか本当に知ってる野菜だったなんて。
「どうかしたんですか?」
「いや、ちょっと世界の狭さというか、異世界を身近に感じてた」
肉はあんなに色んな物があるのに、野菜は地球とほとんど同じだなんて。本当に、まだまだ知らない事の方が断然に多いな、異世界。
「良かった、誤魔化せて」
「何か言ったか?」
「いえ、別に何も!?」
マリーが何か言った様な気がしたが、気の所為だったか?
まあいいや。今は一国も早く野菜を選ばないと。あんまりアン達を待たせたら悪いし。
俺は再び視線を正面の棚に移し、孤児院へと持って行く野菜を選び始めた。
「ありがとうございました」
無事野菜も買う事が出来たので市場から出ると、もう辺りは暗くなり始めていた。
「思ったよりも時間が掛かりましたね」
「だな。急いで孤児院に向かわないと」
孤児院がいつもどのぐらいの時間に晩飯を食べてるかは分からないが、あの孤児院に明かりらしき物はあんまりなかった様に思う。
ローソクだってタダじゃないんだ。食べる物にも困ってるって話だったし、光源にかける費用なんてほぼ無いと考えて間違いないだろう。
だったら、まだ明るい内に晩飯を食べていたとしても不思議じゃない。
マリーも同じ事を思ったのか、俺達の足は自然と早まる。だが、このままじゃあ孤児院に着く頃にはほとんど暗くなってる筈だ。
こうなったら。
「マリー。俺に掴まってくれ」
「え? 急にどうしたんですか?」
「いや、飛んで行こうかと」
俺の人間ロケットなら、孤児院まで真っ直ぐ向かう事が出来る。ものの一分で孤児院に辿り着く事も可能だ。
「と、飛んで、ですか……ま、まあ、仕方ありません。ある意味私の所為で遅くなった様なものですし」
それに関しては否定しない。
「さあ、掴まって」
「……よろしくお願いします」
マリーは少しだけ悩んだ後、苦渋の決断を下したかの様な表情で俺の肩に手を置いた。いや、これじゃあ振り落とされるけど。
仕方ない。
「ちょっとだけ我慢してくれよ」
「え? 何を……きゃっ」
俺はマリーの肩と膝の裏に腕を回し、一気にマリーを抱え上げた。所謂お姫様抱っこの状態だ。
「あ、あの、カイトさん!?」
「あのままじゃ振り落とされるからな。それじゃあ、行くぞ!」
「……」
俺の言葉にマリーは答えず、黙って頷くだけだった。
心なしか、顔が赤い様な……って、そうか。こんな格好、流石に恥ずかしいよな。
俺も今になって恥ずかしくなってきたけど、こういうのは変に意識するとダメだ。ただでさえ今から空を飛ぶんだから、集中しないと。
「に、人間ロケット!」
恥ずかしさを堪えながら、俺は自分の両足から炎を噴射し、一気に上空へと飛び上がった。
そのまま孤児院がある方向に視線を向け、目的の建物を探す。
「あったあった」
ここからでもハッキリと分かる、教会の鐘。そして、現在は誰も住んでいない廃墟。目立つ建物が二つもあれば、見つけるのは容易だ。
「相変わらず、すごいですね、コレ」
マリーが凄いというのは、多分人間ロケットの事だろう。便利ではあるけど。
「練習すればマリーも使えると思うぞ? 今度練習してみたらどうだ?」
マリーの魔力制御能力なら、あっという間に使える様になりそうだな。なんなら俺なんてすぐに追い抜く可能性すらある。
まあ、そう簡単に負けるつもりはないけど。
「そうですね……いえ、やっぱりやめておきます。勿体ないですし」
「何が?」
マリーが勿体ないと言ったが、何の事だろうか?
マリーに聞き返してみたんだが。
「秘密です」
そう言って教えてはくれなかった。
いや、すっごい気になるんだけど。
「ほらほら、それよりも早くしないと、日が暮れちゃいますよ」
「おっと、そうだったな。それじゃあ、しっかり掴まっててくれよ!」
俺は一度マリーを支える腕に力を込め、そのまま孤児院の方角に向かって加速し始めた。
「折角だし、堪能しないと、ね」
「何か言ったか?」
「いえ、別に!」
マリーが何か言った気がするんだが、周りの音に掻き消されてよく聞き取る事は出来なかった。
風魔法を使いこなせれば、この状態でも話せる筈なんだけどなぁ。その内出来る様になれればいいんだけど。
「はい、そうですよ。ちなみにこの手提げバッグも、只のバッグじゃなくて収納バッグです」
マリーから補足説明を受け、その言葉の意味を考える。
壁一面の収納ボックスと、入口の収納バッグ。そして「野菜」と書かれたネームプレート。そこから導き出される結論は……。
「もしかして、これ全部に野菜が収納されてるのか?」
「正解です。ここからこの収納バッグに商品を詰め替えて、それを受付で見せてから代金を支払う。これが「ガイアの恵み」での買い物の仕方です」
驚きの真実。まさに異世界ならではのシステムだな。確かに、これなら買い物中に商品がかさばる事は無いし、会計の時も収納バッグの中身を確認するだけで済む。なるほど、理に適っている。
でも、持って帰る時はどうするんだろう? 買い過ぎたら持ち帰れないんじゃないか?
「その点は大丈夫です。市場に買い物に来る人は、ほとんどが安く大量に仕入れたい人なので、大体何かしらの運搬方法を用意してる筈ですから」
「そうなのか。まあそりゃそうだよな」
流石に何も考えてなかったら、それはただの馬鹿だ。俺の場合はストレージがあるから……って、そうだ。そういう可能性もあるじゃないか。
「アイテムボックス持ちに持ち逃げされたりはしないのか?」
そうなのだ。アイテムボックス持ちなら、自分のアイテムボックスに商品を収納して、そのままさよなら、なんて事も可能じゃないのか?
もしそんな事されたら、市場側にはバレないと思うけど。
「その点も心配いりません。カウンターにいる方は「真偽鑑定」のスキルを持ってる筈ですから」
「しんぎ鑑定?」
聞き慣れない単語が出てきたけど、しんぎ鑑定って?
字的には「真偽」だろうか? 真実と嘘を見抜く、的な。そんな便利なスキルがあるのか?
「真偽鑑定を持つ人には、嘘をついても無駄です。それに、一度市場に入ったら、黙って出て行く事は許されません。なので、余程の事がない限りは、持ち逃げなんて不可能な筈です」
「へぇー、なるほどね」
真偽鑑定か。随分便利なスキルだな。そんな物があったら迂闊に嘘は付けないよな。
だからこその、このシステムなのか。日本じゃどうあがいても真似できないなこれは。
「マリーは確かゴールド会員だよな? って事は、ここで相当買い物してたんじゃないのか? その時はどうやって持って帰ったんだ?」
「……さあ、早く野菜を買って孤児院に行きましょう! きっとアンちゃんも待ってますよ!」
あれ? 流された?
いやいや、そんな筈ないよな。きっとよく聞こえなかったんだろう。俺の声が小さかったかな?
「あのさ、マリー。ここで買い物してた時って……」
「あ、キャベツが安いですよ! 見て下さい!」
俺が再度尋ねると、話を遮る様に言葉を被せてくるマリー……って、キャベツ!? え、こっちにもキャベツあるの?
あ、そういえばお好み焼きにもキャベツが入ってたっけ?
当たり前すぎて深く考えてなかったけど、よく考えたらそこで気付くべきだった。ていうか、こっちでもキャベツって名前なんだ。
「どれどれ……二玉銅貨一枚か。確かに安いな」
こっちの相場はイマイチ分からないけど、銅貨一枚は、日本円で百円ぐらいだった筈だ。それで、これは二つで銅貨一枚。つまり百円だ。
いくら相場が分からないからといっても、これが安いというのは流石に分かる。
試しに他のも見てみると「レタス」「トマト」「きゅうり」に「ハクサイ」もか……って、全部知ってる野菜じゃないか!
確かにこっちに来てから食べる野菜って、どれも見覚えあるな、とは思ってたけど、まさか本当に知ってる野菜だったなんて。
「どうかしたんですか?」
「いや、ちょっと世界の狭さというか、異世界を身近に感じてた」
肉はあんなに色んな物があるのに、野菜は地球とほとんど同じだなんて。本当に、まだまだ知らない事の方が断然に多いな、異世界。
「良かった、誤魔化せて」
「何か言ったか?」
「いえ、別に何も!?」
マリーが何か言った様な気がしたが、気の所為だったか?
まあいいや。今は一国も早く野菜を選ばないと。あんまりアン達を待たせたら悪いし。
俺は再び視線を正面の棚に移し、孤児院へと持って行く野菜を選び始めた。
「ありがとうございました」
無事野菜も買う事が出来たので市場から出ると、もう辺りは暗くなり始めていた。
「思ったよりも時間が掛かりましたね」
「だな。急いで孤児院に向かわないと」
孤児院がいつもどのぐらいの時間に晩飯を食べてるかは分からないが、あの孤児院に明かりらしき物はあんまりなかった様に思う。
ローソクだってタダじゃないんだ。食べる物にも困ってるって話だったし、光源にかける費用なんてほぼ無いと考えて間違いないだろう。
だったら、まだ明るい内に晩飯を食べていたとしても不思議じゃない。
マリーも同じ事を思ったのか、俺達の足は自然と早まる。だが、このままじゃあ孤児院に着く頃にはほとんど暗くなってる筈だ。
こうなったら。
「マリー。俺に掴まってくれ」
「え? 急にどうしたんですか?」
「いや、飛んで行こうかと」
俺の人間ロケットなら、孤児院まで真っ直ぐ向かう事が出来る。ものの一分で孤児院に辿り着く事も可能だ。
「と、飛んで、ですか……ま、まあ、仕方ありません。ある意味私の所為で遅くなった様なものですし」
それに関しては否定しない。
「さあ、掴まって」
「……よろしくお願いします」
マリーは少しだけ悩んだ後、苦渋の決断を下したかの様な表情で俺の肩に手を置いた。いや、これじゃあ振り落とされるけど。
仕方ない。
「ちょっとだけ我慢してくれよ」
「え? 何を……きゃっ」
俺はマリーの肩と膝の裏に腕を回し、一気にマリーを抱え上げた。所謂お姫様抱っこの状態だ。
「あ、あの、カイトさん!?」
「あのままじゃ振り落とされるからな。それじゃあ、行くぞ!」
「……」
俺の言葉にマリーは答えず、黙って頷くだけだった。
心なしか、顔が赤い様な……って、そうか。こんな格好、流石に恥ずかしいよな。
俺も今になって恥ずかしくなってきたけど、こういうのは変に意識するとダメだ。ただでさえ今から空を飛ぶんだから、集中しないと。
「に、人間ロケット!」
恥ずかしさを堪えながら、俺は自分の両足から炎を噴射し、一気に上空へと飛び上がった。
そのまま孤児院がある方向に視線を向け、目的の建物を探す。
「あったあった」
ここからでもハッキリと分かる、教会の鐘。そして、現在は誰も住んでいない廃墟。目立つ建物が二つもあれば、見つけるのは容易だ。
「相変わらず、すごいですね、コレ」
マリーが凄いというのは、多分人間ロケットの事だろう。便利ではあるけど。
「練習すればマリーも使えると思うぞ? 今度練習してみたらどうだ?」
マリーの魔力制御能力なら、あっという間に使える様になりそうだな。なんなら俺なんてすぐに追い抜く可能性すらある。
まあ、そう簡単に負けるつもりはないけど。
「そうですね……いえ、やっぱりやめておきます。勿体ないですし」
「何が?」
マリーが勿体ないと言ったが、何の事だろうか?
マリーに聞き返してみたんだが。
「秘密です」
そう言って教えてはくれなかった。
いや、すっごい気になるんだけど。
「ほらほら、それよりも早くしないと、日が暮れちゃいますよ」
「おっと、そうだったな。それじゃあ、しっかり掴まっててくれよ!」
俺は一度マリーを支える腕に力を込め、そのまま孤児院の方角に向かって加速し始めた。
「折角だし、堪能しないと、ね」
「何か言ったか?」
「いえ、別に!」
マリーが何か言った気がするんだが、周りの音に掻き消されてよく聞き取る事は出来なかった。
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