見た目は青年、心はアラサー、異世界に降り立つ! ~チートスキル「ストレージ」で異世界を満喫中~
九話
「うん。ごめんなさい、お姉ちゃん」
フォレは何も言い返す事は無く、素直にアンに謝っていた。まあ俺が見た限りでも既に三回も一人で水汲みしようとしてたんだし、当然の反応かな。
まあフォレはまだ子供だし、次からやらなければいいだけだ。
「分かればいいの。もう一人で水汲みしちゃダメよ?」
「うん」
何とも微笑ましい光景だ。こうして見てるとまるで仲のいい姉妹だな。
アンがお姉さんで、フォレが妹。しっかり者の姉が、妹の面倒を見ている様にも見える。
「それで、今日は何をしに来たんですか?」
「何を? いや、ただ孤児院の様子が気になっただけだけど」
ちゃんと飯は食べてるかなあ、とか。何か困ってないかなあ、とか。それこそ色々だ。
「ウチの様子が……そんな理由でここに? いえ、おじ……お兄さんは、私に邪険にされても、わざわざ食べ物を分けに来てくれる様な人でしたね」
「ん? ああ、まあそうだけど」
それぐらいは当たり前だ。たかがアンに邪険にされたぐらいで孤児院に来なくなるようなら、最初から孤児院に関わろうなんて思わない。
俺が当然のように答えると、アンは一度頷いた後。
「お兄さん、よかったら今夜はウチでご飯を食べていきませんか?」
「え? ここで?」
「はい。昨日のお詫びって訳じゃありませんけど、お兄さん達さえ良かったら」
アンの口から出たのは、思ってもみない提案だった。
ここで飯を食っていく。つまり、晩飯のお誘いだ。昨日はあんなに邪険にされてたのに、随分とまともな扱いになったものだ。
さて、どうするか。折角のお誘いだし、ここは受けたい所だ。何よりも、あのアンが自分から晩飯に誘ってくれてるんだから、出来れば断りたくない。
「マリーはどう思う?」
「私ですか? 私は別に構いませんよ。ただ、姉さんに一言話しておかないといけないので、一度宿には帰りますけど」
フーリにか。確かに、ここで晩飯を食べるにしても、一度皆には断っておかないとダメだよな。
でも、ここで晩飯を食べる事そのものは構わないらしい。マリーが良いなら、ここはありがたくそのお誘いに乗っておこうかな。
「よし、決まりだな。一度みんなに話しておきたいから、一度宿に帰ってから改めてここに来るよ」
「それじゃあ」
「ああ、折角だし、ご馳走になろうかな」
俺がアンの誘いに応えると、アンはその顔に笑顔を浮かべ。
「分かりました。それじゃあお夕飯の準備をして待ってますね」
嬉しそうに答えた。
うん、やっぱりアンは仏頂面よりも笑顔の方が似合うな。
俺はアンの返事を聞いてから、マリーと一度顔を見合わせ、二人で孤児院から出ようとして。
「それじゃあアン、フォレ、また後でな」
「また後でね、アンちゃん、フォレちゃん」
「あ、うん。バイバイ」
「はい、待ってますね」
アンは当然として、フォレは分かっているのかいないのか、俺達に手を振りながら見送ってくれた。
「それじゃあ一度帰るか」
「ええ、そうですね」
孤児院を出た俺とマリーは、渡り鳥亭に向かって歩き始めた。
「ほう、孤児院で。それはまた、あんなに私達を邪険にしてたアンが、随分と変わったものだな」
渡り鳥亭へと戻り、今夜は孤児院で晩飯を食べる旨をフーリに話すと、フーリも俺と似た様な事を言った。
まあニーナさんが誤解を解いてくれたからこその扱いなんだけどな。本当、ニーナさんには感謝しないと。
「分かった。それじゃあ今夜は二人共孤児院で夕飯を食べるんだな?」
「ああ、そのつもりだ」
「うん、その予定」
折角のアンからのお誘いだしな。ただ。
「なあ、良かったらフーリも一緒に孤児院で晩飯を食べないか? 昨日俺に付き合ってくれたのはマリーだけじゃないんだし、俺からアンに話してみるけど」
そう、今日はマリーと二人で孤児院に行ったから、フーリはその場にはいなかった。
昨日俺に付き合ってくれたのはマリーだけじゃないんだし、フーリも一緒の方がいい気がするんだけど。
「いや、私は遠慮しておこう。後から人数が増えるとアンにも悪いからな」
だが、フーリはそれをキッパリと断った。確かに、フーリの言う事も分かる。
アンは俺とマリーの二人を晩飯に招待してくれたんだから、用意する晩飯も二人分の筈だ。
そこで予定よりも人数が増えると、それはそのままアンの負担となる。それに、自分から誘っておいてきちんとおもてなし出来なかった、なんて気にするかもしれない。
そう考えると、ここはフーリの言う通り、二人でお呼ばれするのが無難か。
「だが、誘ってくれてありがとう。また機会があれば、その時はお邪魔しよう」
「ああ、分かった。次はフーリも一緒にな」
今回は残念だが、マリーと二人で行くか。
「それじゃあ私はちょっと準備してきますね」
マリーはそう言うと、自分の部屋へと入って行った。さて、俺も準備しないと……。
「ちょっと兄さん! ここで夕飯を食べないってどういう事!」
自分の部屋へと向かおうとすると、突然向かいの部屋の扉が開き、そこから我が妹――光がすごい剣幕で姿を現した。
光、向かいの部屋だったんだな。
「どういうって、そのまんまの意味だけど?」
孤児院でアンに誘われたから、そのままお呼ばれする事にしたんだけど、なんか変だったか?
あ、でもそうだな。
「光とはまた明日にでも一緒に飯食おうな」
折角世界を超えて再会出来た家族だ。もしかしたら光は、今夜は一緒に晩飯を食べたかったのかもしれない。
もしそうなら、光には悪い事をしたけど。
「……どうしても行くの?」
てっきりもっと何か行って来るかと思ったが、光は急にしおらしい態度になると、上目遣いで尋ねてきた。
うっ、これは罪悪感を刺激される。でも、もうアンと約束したんだし、ここはきちんと説明して納得して貰わないと。
「悪いな、光。もうアンと約束したんだ。また明日、一緒に飯を食おう。な?」
光が納得してくれる事を祈りながら説明した。せめてもの誠意の証として、その視線は決して光から逸らさない
「……はぁ。兄さんのその目。何を言っても無駄みたいね。分かったわ。今日の所は許してあげる」
もっと何か文句を言われるかと思っていたのだが、思ったよりも光が素直に納得してくれたのには驚いた。
いやまあ、納得してくれるのなら俺としては助かるけど。ていうか、今「その目」って言ったか?
光とはかれこれ十年以上の付き合いだし、俺の癖を知っていたとしても不思議じゃないけど。
「ありがとうな光。明日は絶対一緒に飯食おうな」
「ええ、それはもちろん。約束よ」
「ああ、約束だ」
そう言って、再び自分の部屋の前に立つ。
俺は光に今夜の事を説明し終えると、今度こそ自分の部屋の扉に手をかけ、その扉を開いて中へと入った。
「さて、俺も準備しますかね。とは言っても、ちょっと着替えるだけだけど」
俺はストレージから普段着を取り出し、それに着替えた。
後は、私物は全てストレージに仕舞ってあるから大丈夫だし……。
「うん、これは今日の晩飯の時にでも出せばいいか」
ストレージ内に収納されている「今日の戦利品」達を眺めながら呟いた。
せっかくお呼ばれするんだ。手土産は必要だよな。孤児院には子供が沢山いるんだし、食べ物はあって邪魔にはならないだろう。
そう考えて、今日は沢山買い込んだんだ。
「孤児院の子達、喜んでくれればいいんだけど」
そんな事を考えている時だった。
「お兄ちゃん! 帰って来てるの!」
扉の外から、アミィの声が聞こえてきたのは。
フォレは何も言い返す事は無く、素直にアンに謝っていた。まあ俺が見た限りでも既に三回も一人で水汲みしようとしてたんだし、当然の反応かな。
まあフォレはまだ子供だし、次からやらなければいいだけだ。
「分かればいいの。もう一人で水汲みしちゃダメよ?」
「うん」
何とも微笑ましい光景だ。こうして見てるとまるで仲のいい姉妹だな。
アンがお姉さんで、フォレが妹。しっかり者の姉が、妹の面倒を見ている様にも見える。
「それで、今日は何をしに来たんですか?」
「何を? いや、ただ孤児院の様子が気になっただけだけど」
ちゃんと飯は食べてるかなあ、とか。何か困ってないかなあ、とか。それこそ色々だ。
「ウチの様子が……そんな理由でここに? いえ、おじ……お兄さんは、私に邪険にされても、わざわざ食べ物を分けに来てくれる様な人でしたね」
「ん? ああ、まあそうだけど」
それぐらいは当たり前だ。たかがアンに邪険にされたぐらいで孤児院に来なくなるようなら、最初から孤児院に関わろうなんて思わない。
俺が当然のように答えると、アンは一度頷いた後。
「お兄さん、よかったら今夜はウチでご飯を食べていきませんか?」
「え? ここで?」
「はい。昨日のお詫びって訳じゃありませんけど、お兄さん達さえ良かったら」
アンの口から出たのは、思ってもみない提案だった。
ここで飯を食っていく。つまり、晩飯のお誘いだ。昨日はあんなに邪険にされてたのに、随分とまともな扱いになったものだ。
さて、どうするか。折角のお誘いだし、ここは受けたい所だ。何よりも、あのアンが自分から晩飯に誘ってくれてるんだから、出来れば断りたくない。
「マリーはどう思う?」
「私ですか? 私は別に構いませんよ。ただ、姉さんに一言話しておかないといけないので、一度宿には帰りますけど」
フーリにか。確かに、ここで晩飯を食べるにしても、一度皆には断っておかないとダメだよな。
でも、ここで晩飯を食べる事そのものは構わないらしい。マリーが良いなら、ここはありがたくそのお誘いに乗っておこうかな。
「よし、決まりだな。一度みんなに話しておきたいから、一度宿に帰ってから改めてここに来るよ」
「それじゃあ」
「ああ、折角だし、ご馳走になろうかな」
俺がアンの誘いに応えると、アンはその顔に笑顔を浮かべ。
「分かりました。それじゃあお夕飯の準備をして待ってますね」
嬉しそうに答えた。
うん、やっぱりアンは仏頂面よりも笑顔の方が似合うな。
俺はアンの返事を聞いてから、マリーと一度顔を見合わせ、二人で孤児院から出ようとして。
「それじゃあアン、フォレ、また後でな」
「また後でね、アンちゃん、フォレちゃん」
「あ、うん。バイバイ」
「はい、待ってますね」
アンは当然として、フォレは分かっているのかいないのか、俺達に手を振りながら見送ってくれた。
「それじゃあ一度帰るか」
「ええ、そうですね」
孤児院を出た俺とマリーは、渡り鳥亭に向かって歩き始めた。
「ほう、孤児院で。それはまた、あんなに私達を邪険にしてたアンが、随分と変わったものだな」
渡り鳥亭へと戻り、今夜は孤児院で晩飯を食べる旨をフーリに話すと、フーリも俺と似た様な事を言った。
まあニーナさんが誤解を解いてくれたからこその扱いなんだけどな。本当、ニーナさんには感謝しないと。
「分かった。それじゃあ今夜は二人共孤児院で夕飯を食べるんだな?」
「ああ、そのつもりだ」
「うん、その予定」
折角のアンからのお誘いだしな。ただ。
「なあ、良かったらフーリも一緒に孤児院で晩飯を食べないか? 昨日俺に付き合ってくれたのはマリーだけじゃないんだし、俺からアンに話してみるけど」
そう、今日はマリーと二人で孤児院に行ったから、フーリはその場にはいなかった。
昨日俺に付き合ってくれたのはマリーだけじゃないんだし、フーリも一緒の方がいい気がするんだけど。
「いや、私は遠慮しておこう。後から人数が増えるとアンにも悪いからな」
だが、フーリはそれをキッパリと断った。確かに、フーリの言う事も分かる。
アンは俺とマリーの二人を晩飯に招待してくれたんだから、用意する晩飯も二人分の筈だ。
そこで予定よりも人数が増えると、それはそのままアンの負担となる。それに、自分から誘っておいてきちんとおもてなし出来なかった、なんて気にするかもしれない。
そう考えると、ここはフーリの言う通り、二人でお呼ばれするのが無難か。
「だが、誘ってくれてありがとう。また機会があれば、その時はお邪魔しよう」
「ああ、分かった。次はフーリも一緒にな」
今回は残念だが、マリーと二人で行くか。
「それじゃあ私はちょっと準備してきますね」
マリーはそう言うと、自分の部屋へと入って行った。さて、俺も準備しないと……。
「ちょっと兄さん! ここで夕飯を食べないってどういう事!」
自分の部屋へと向かおうとすると、突然向かいの部屋の扉が開き、そこから我が妹――光がすごい剣幕で姿を現した。
光、向かいの部屋だったんだな。
「どういうって、そのまんまの意味だけど?」
孤児院でアンに誘われたから、そのままお呼ばれする事にしたんだけど、なんか変だったか?
あ、でもそうだな。
「光とはまた明日にでも一緒に飯食おうな」
折角世界を超えて再会出来た家族だ。もしかしたら光は、今夜は一緒に晩飯を食べたかったのかもしれない。
もしそうなら、光には悪い事をしたけど。
「……どうしても行くの?」
てっきりもっと何か行って来るかと思ったが、光は急にしおらしい態度になると、上目遣いで尋ねてきた。
うっ、これは罪悪感を刺激される。でも、もうアンと約束したんだし、ここはきちんと説明して納得して貰わないと。
「悪いな、光。もうアンと約束したんだ。また明日、一緒に飯を食おう。な?」
光が納得してくれる事を祈りながら説明した。せめてもの誠意の証として、その視線は決して光から逸らさない
「……はぁ。兄さんのその目。何を言っても無駄みたいね。分かったわ。今日の所は許してあげる」
もっと何か文句を言われるかと思っていたのだが、思ったよりも光が素直に納得してくれたのには驚いた。
いやまあ、納得してくれるのなら俺としては助かるけど。ていうか、今「その目」って言ったか?
光とはかれこれ十年以上の付き合いだし、俺の癖を知っていたとしても不思議じゃないけど。
「ありがとうな光。明日は絶対一緒に飯食おうな」
「ええ、それはもちろん。約束よ」
「ああ、約束だ」
そう言って、再び自分の部屋の前に立つ。
俺は光に今夜の事を説明し終えると、今度こそ自分の部屋の扉に手をかけ、その扉を開いて中へと入った。
「さて、俺も準備しますかね。とは言っても、ちょっと着替えるだけだけど」
俺はストレージから普段着を取り出し、それに着替えた。
後は、私物は全てストレージに仕舞ってあるから大丈夫だし……。
「うん、これは今日の晩飯の時にでも出せばいいか」
ストレージ内に収納されている「今日の戦利品」達を眺めながら呟いた。
せっかくお呼ばれするんだ。手土産は必要だよな。孤児院には子供が沢山いるんだし、食べ物はあって邪魔にはならないだろう。
そう考えて、今日は沢山買い込んだんだ。
「孤児院の子達、喜んでくれればいいんだけど」
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