見た目は青年、心はアラサー、異世界に降り立つ! ~チートスキル「ストレージ」で異世界を満喫中~
二話
「だが、もしカイトが優勝する事が出来れば、その時は褒美を取らせようと思っている」
「褒美?」
「そう、褒美だ。もしカイトが優勝する事が出来たなら、その時は何でも一つだけ願いを叶えてやろう。もちろん、可能な範囲内でだがな。どうだ? 悪い話ではなかろう?」
何でも一つだけ願いを叶えるだって? それどこの〇龍?
だが、優勝すれば何でも一つだけ願いを叶えてくれるというのは破格だ。相手はこの国のトップ、国王陛下だ。叶えられない願いなんてそうそう無いだろう。
「お兄ちゃん、どうするの?」
俺がどうしようかと考えていると、アミィが不安げな声で尋ねてきた。
「うーん、そうだなぁ」
何でも一つだけか……あ、そっか。
俺はアミィの顔をもう一度見る。そこには、いきなり無言で視線を向けられ、困惑しているアミィの姿がある。
何でもって事は、もしかしたら「アレ」を入手出来る可能性もあるって事だよな。
なら。
「一つ確認したい事があるんですけど」
「何だ? 申してみよ」
「その褒美と言うのは、俺だけしか貰えないのですか?」
「うん? どういう……いや、そういう事か」
陛下は最初、俺の言葉の意味が分からないという顔をしていたが、マリー達の方をちらっと見て、俺の言葉の意図を察してくれた様だった。
「よかろう。褒美はカイトと同じチームメンバー全員に取らせる事とする。これで良いか?」
「「えっ?」」
陛下の言葉に、驚きの声を上げる二人。いや、流石に俺一人しか褒美を貰えないのに、二人を付き合わせるのは申し訳ないからな。
そういう意図も込めて尋ねてみたんだが、聞いてみるもんだな。
二人の褒美も確約して貰えた。
「ありがとうございます。そういう事でしたら、喜んで出場させて貰います」
この条件なら、俺も喜んで出場する。
何でも一つだけ願いを叶えて貰える上に、二人も同じ条件なら、何も迷う事は無い。
「交渉成立だな。武闘大会は一週間後、三日かけて行われる予定だ。詳しくはセバスに聞くがよい」
セバス……セバスチャンさんの事か。
武闘大会に出場する以上、これから何かとお世話になる可能性が高いからな。セバスチャンさんとは仲良くしておかないと。
「あの、私達にも同じ様に褒美を下さるなんて、本当によろしいのですか?」
「私達は只のBランク冒険者なのですよ?」
マリーとフーリは自分達にも褒美を取らせるという陛下の言葉に困惑している様で、恐る恐ると言った感じで陛下に尋ねた。
まだ正式にお願いした訳じゃないのに、二人が当然の如く一緒に出場してくれるつもりなのが、素直に嬉しい。
「よい。それに、噂の氷炎の美姫がカイトと同じチームで出場。これ程面白そうな事はそうそう無いからな」
陛下は口の端を上げ、ニヤリと悪そうな笑みを浮かべる。
やっぱりこの人の中では、そういう判断基準なのか。
「そうと決まれば、早速出場の手配だ。セバス」
「承知しました」
陛下がセバスチャンさんの名前を呼ぶと、それだけで陛下の意図を理解し、そのまま来客室から出て行ってしまった。
「へい……」
バタンッ
セバスチャンさんが部屋から出る時、一瞬人の姿が見えた気がしたが、その姿を確認する前にセバスチャンさんが扉をピシャリと閉めてしまった為、確認出来なかった。
ていうか、セバスチャンさん反応早っ!
「まったく。あいつも学ばない奴ではある」
「陛下がもっとガツンと言ってやればいいじゃないですか」
「面倒臭い」
そしてこの二人の会話は、相変わらず遠慮が無いというかなんというか。
ていうか、光と話す時の陛下の口調って、俺達と話す時とは少し違う気がする。
なんというか、遠慮がないのは今更なんだが、それにしても砕けた感じというか、フランクなんだよな。
もしかしたら、こっちが陛下の本来の言葉遣いなのかもしれない。
いや、俺達相手にも随分砕けた物言いではあるけど、光に対してはそれ以上だ。
「さて、長居しすぎたな。俺は執務に戻る。後の事はセバスに聞く様に」
陛下はそれだけ言い残し、来客室から去って行ってしまった。えぇ、急だな。
突然やってきて、唐突に去って行く。まるで嵐みたいな人だったな。
「もう、陛下ったら。ごめんなさいね、急に押しかけたりして迷惑だったでしょ? 陛下には、後で私から言っておくから」
光は扉を一瞥してから、呆れる様に溜息を吐きながら謝ってきた。
「そんな! 迷惑だなんて!」
「ああ、そんな失礼な事、考えてもない!」
「そうですよヒカリさん! 気にしないで下さい!」
三者三様の反応を示す三人。
流石に相手が相手だし、ここで「迷惑だった」なんて言ったら、後でどうなるか分からない、とか思ってるんだろうな。
でも、心配しなくても大丈夫だと思うけど?
「ありがとう。それじゃあ早速なんだけど、私の部屋に移動しましょう」
光は一度俺達全員を見回すと、そのまま自分の部屋に移動しようと提案してきた。
そういえば、元々光は自分の部屋に案内するつもりだったんだよな。何でそんなに自分の部屋に拘るのかは分からないが、ここまで言うのだからお邪魔してもいいか。
「あ、はい、そうですね」
「私も構わないが」
二人は特に異存なし。アミィはどうだろう?
「私も。お兄ちゃんと一緒なら」
アミィも大丈夫、と。なら決定だな。
「兄さんも、それでいい?」
俺がすぐに答えなかったのが気になったのか、光が再度不安気な声で尋ねてくる。
「ああ、もちろん。当たり前だろ?」
俺が光の誘いを断る理由なんて、どこにもない。
そういう意味も込めて、俺は「二ッ」と笑いながら答えた。
昔から光を不安にさせない様にする時に浮かべていた笑顔だ。頼り甲斐のある兄だって所を見せる為に、よくこうやって不敵に笑ってたっけ。
光も俺の笑顔にすぐ気が付いたのか、不安気な表情から一変して「パァッ」と、心の底から嬉しそうな笑顔を浮かべると。
「ありがとう、兄さん! それじゃあ私に付いて来て!」
そう言うと光は先頭に立っち、俺達を案内するべく来客室の扉に手をかけた。
「勇者ヒカリの兄だと? まったく、忌々しい!」
海斗達が国王と対談している時、憎々し気に来客室の扉を睨む男が一人。
背丈は低く、小太りで、軽くウェーブがかった短い金髪はくすんでおり、お世辞にも綺麗だとは言えない。
握り拳一つ分ぐらい伸ばした顎髭を掴んでは引っ張って滑り、また引っ張っては滑り、と。同じ動作を何度も繰り返し、随分と機嫌が悪そうだ。
部屋の外で控える侍女が、そんな姿を見て呆れる様な視線を向けてきても、気にも留めずに男は更に続ける。
「大体陛下も陛下だ! 何故あの様な得体の知れぬ者共を城に招き入れる!?」
男は室内に聞こえるのではないかという程大きな声で怒鳴り散らした。
すると突然、来客室の扉が開き、男はチャンスだと言わんばかりに室内へと入り込もうとするが。
「ぐっ、セバス殿……」
来客室から出てきた執事――セバスチャンに遮られ、その機を逃す。
「イガッツ伯爵様、どうかお引き取りを。あなた様の行動に、陛下は大変ご立腹です」
セバスチャンの言葉に男――イガッツ・ドライトは、一瞬怯むような仕草を見せたが、すぐにセバスチャンを睨み返し。
「セバス殿。あなたも陛下の腹心なら、城に招き入れる相手はもっと慎重に選んで頂かないと! あの様などこの馬の骨とも分からない相手、王家の品位が問われますぞ!」
セバスチャンはイガッツの口から出て来る言葉に、内心呆れていた。品位が問われるのはどちらだ、と。
「カイト様は勇者ヒカリ様の兄君です。充分城に招き入れるに相応しい方だと思いますが?」
「あの男が本当に勇者ヒカリの兄だという証拠があるのですか!?」
「……はぁ」
イガッツの言葉に、セバスチャンは呆れを隠そうともせずに溜息を吐いた。
「勇者ヒカリが自ら兄だと認めているのです。他にどのような証拠が必要だと?」
「勇者ヒカリは騙されているのです!」
イガッツはそのまま畳みかける様に、セバスチャンに言葉の弾幕を浴びせかける。
「褒美?」
「そう、褒美だ。もしカイトが優勝する事が出来たなら、その時は何でも一つだけ願いを叶えてやろう。もちろん、可能な範囲内でだがな。どうだ? 悪い話ではなかろう?」
何でも一つだけ願いを叶えるだって? それどこの〇龍?
だが、優勝すれば何でも一つだけ願いを叶えてくれるというのは破格だ。相手はこの国のトップ、国王陛下だ。叶えられない願いなんてそうそう無いだろう。
「お兄ちゃん、どうするの?」
俺がどうしようかと考えていると、アミィが不安げな声で尋ねてきた。
「うーん、そうだなぁ」
何でも一つだけか……あ、そっか。
俺はアミィの顔をもう一度見る。そこには、いきなり無言で視線を向けられ、困惑しているアミィの姿がある。
何でもって事は、もしかしたら「アレ」を入手出来る可能性もあるって事だよな。
なら。
「一つ確認したい事があるんですけど」
「何だ? 申してみよ」
「その褒美と言うのは、俺だけしか貰えないのですか?」
「うん? どういう……いや、そういう事か」
陛下は最初、俺の言葉の意味が分からないという顔をしていたが、マリー達の方をちらっと見て、俺の言葉の意図を察してくれた様だった。
「よかろう。褒美はカイトと同じチームメンバー全員に取らせる事とする。これで良いか?」
「「えっ?」」
陛下の言葉に、驚きの声を上げる二人。いや、流石に俺一人しか褒美を貰えないのに、二人を付き合わせるのは申し訳ないからな。
そういう意図も込めて尋ねてみたんだが、聞いてみるもんだな。
二人の褒美も確約して貰えた。
「ありがとうございます。そういう事でしたら、喜んで出場させて貰います」
この条件なら、俺も喜んで出場する。
何でも一つだけ願いを叶えて貰える上に、二人も同じ条件なら、何も迷う事は無い。
「交渉成立だな。武闘大会は一週間後、三日かけて行われる予定だ。詳しくはセバスに聞くがよい」
セバス……セバスチャンさんの事か。
武闘大会に出場する以上、これから何かとお世話になる可能性が高いからな。セバスチャンさんとは仲良くしておかないと。
「あの、私達にも同じ様に褒美を下さるなんて、本当によろしいのですか?」
「私達は只のBランク冒険者なのですよ?」
マリーとフーリは自分達にも褒美を取らせるという陛下の言葉に困惑している様で、恐る恐ると言った感じで陛下に尋ねた。
まだ正式にお願いした訳じゃないのに、二人が当然の如く一緒に出場してくれるつもりなのが、素直に嬉しい。
「よい。それに、噂の氷炎の美姫がカイトと同じチームで出場。これ程面白そうな事はそうそう無いからな」
陛下は口の端を上げ、ニヤリと悪そうな笑みを浮かべる。
やっぱりこの人の中では、そういう判断基準なのか。
「そうと決まれば、早速出場の手配だ。セバス」
「承知しました」
陛下がセバスチャンさんの名前を呼ぶと、それだけで陛下の意図を理解し、そのまま来客室から出て行ってしまった。
「へい……」
バタンッ
セバスチャンさんが部屋から出る時、一瞬人の姿が見えた気がしたが、その姿を確認する前にセバスチャンさんが扉をピシャリと閉めてしまった為、確認出来なかった。
ていうか、セバスチャンさん反応早っ!
「まったく。あいつも学ばない奴ではある」
「陛下がもっとガツンと言ってやればいいじゃないですか」
「面倒臭い」
そしてこの二人の会話は、相変わらず遠慮が無いというかなんというか。
ていうか、光と話す時の陛下の口調って、俺達と話す時とは少し違う気がする。
なんというか、遠慮がないのは今更なんだが、それにしても砕けた感じというか、フランクなんだよな。
もしかしたら、こっちが陛下の本来の言葉遣いなのかもしれない。
いや、俺達相手にも随分砕けた物言いではあるけど、光に対してはそれ以上だ。
「さて、長居しすぎたな。俺は執務に戻る。後の事はセバスに聞く様に」
陛下はそれだけ言い残し、来客室から去って行ってしまった。えぇ、急だな。
突然やってきて、唐突に去って行く。まるで嵐みたいな人だったな。
「もう、陛下ったら。ごめんなさいね、急に押しかけたりして迷惑だったでしょ? 陛下には、後で私から言っておくから」
光は扉を一瞥してから、呆れる様に溜息を吐きながら謝ってきた。
「そんな! 迷惑だなんて!」
「ああ、そんな失礼な事、考えてもない!」
「そうですよヒカリさん! 気にしないで下さい!」
三者三様の反応を示す三人。
流石に相手が相手だし、ここで「迷惑だった」なんて言ったら、後でどうなるか分からない、とか思ってるんだろうな。
でも、心配しなくても大丈夫だと思うけど?
「ありがとう。それじゃあ早速なんだけど、私の部屋に移動しましょう」
光は一度俺達全員を見回すと、そのまま自分の部屋に移動しようと提案してきた。
そういえば、元々光は自分の部屋に案内するつもりだったんだよな。何でそんなに自分の部屋に拘るのかは分からないが、ここまで言うのだからお邪魔してもいいか。
「あ、はい、そうですね」
「私も構わないが」
二人は特に異存なし。アミィはどうだろう?
「私も。お兄ちゃんと一緒なら」
アミィも大丈夫、と。なら決定だな。
「兄さんも、それでいい?」
俺がすぐに答えなかったのが気になったのか、光が再度不安気な声で尋ねてくる。
「ああ、もちろん。当たり前だろ?」
俺が光の誘いを断る理由なんて、どこにもない。
そういう意味も込めて、俺は「二ッ」と笑いながら答えた。
昔から光を不安にさせない様にする時に浮かべていた笑顔だ。頼り甲斐のある兄だって所を見せる為に、よくこうやって不敵に笑ってたっけ。
光も俺の笑顔にすぐ気が付いたのか、不安気な表情から一変して「パァッ」と、心の底から嬉しそうな笑顔を浮かべると。
「ありがとう、兄さん! それじゃあ私に付いて来て!」
そう言うと光は先頭に立っち、俺達を案内するべく来客室の扉に手をかけた。
「勇者ヒカリの兄だと? まったく、忌々しい!」
海斗達が国王と対談している時、憎々し気に来客室の扉を睨む男が一人。
背丈は低く、小太りで、軽くウェーブがかった短い金髪はくすんでおり、お世辞にも綺麗だとは言えない。
握り拳一つ分ぐらい伸ばした顎髭を掴んでは引っ張って滑り、また引っ張っては滑り、と。同じ動作を何度も繰り返し、随分と機嫌が悪そうだ。
部屋の外で控える侍女が、そんな姿を見て呆れる様な視線を向けてきても、気にも留めずに男は更に続ける。
「大体陛下も陛下だ! 何故あの様な得体の知れぬ者共を城に招き入れる!?」
男は室内に聞こえるのではないかという程大きな声で怒鳴り散らした。
すると突然、来客室の扉が開き、男はチャンスだと言わんばかりに室内へと入り込もうとするが。
「ぐっ、セバス殿……」
来客室から出てきた執事――セバスチャンに遮られ、その機を逃す。
「イガッツ伯爵様、どうかお引き取りを。あなた様の行動に、陛下は大変ご立腹です」
セバスチャンの言葉に男――イガッツ・ドライトは、一瞬怯むような仕草を見せたが、すぐにセバスチャンを睨み返し。
「セバス殿。あなたも陛下の腹心なら、城に招き入れる相手はもっと慎重に選んで頂かないと! あの様などこの馬の骨とも分からない相手、王家の品位が問われますぞ!」
セバスチャンはイガッツの口から出て来る言葉に、内心呆れていた。品位が問われるのはどちらだ、と。
「カイト様は勇者ヒカリ様の兄君です。充分城に招き入れるに相応しい方だと思いますが?」
「あの男が本当に勇者ヒカリの兄だという証拠があるのですか!?」
「……はぁ」
イガッツの言葉に、セバスチャンは呆れを隠そうともせずに溜息を吐いた。
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