見た目は青年、心はアラサー、異世界に降り立つ! ~チートスキル「ストレージ」で異世界を満喫中~
三十九話
その後俺達はしばらくの間、他愛のない雑談に花を咲かせていた。主に俺の世界の食べ物事情に関してだが。
セバスチャンさんが思ってた以上に話せる人なのには驚いたが、王城の執事長ともなると、そういうスキルも必要になるんだろうな。
「さて、そろそろ光様たちが戻って来る頃ですね。私は一度こちらを片付けてきますので、皆様はそのままお寛ぎください」
そう言うと、セバスチャンさんがテーブルの上のティーセットをキッチンワゴンに乗せ始める。
何だかんだ言っていつの間にかお茶菓子完食してたな。本当に旨い物って、気付いたら食べ終えてる事あるし、実は結構好きだったのかもな、今のお茶菓子。
「それでは、失礼させていただきます」
いつの間にかテーブルの上を片付け終えたセバスチャンさんが、扉の前で一礼してから来客室を出て行く。
それを見送り、俺はふぅっと一息吐いて、この後行われるかもしれないという謁見の事を考えた。
「……謁見かぁ。まともな人ならいいな、国王様」
一応光もセバスチャンさんも、謁見がある「かも」しれないとは言っていただけで「ある」と断言していた訳じゃない。
もしかしたら何かの間違いで「やっぱり謁見はありません」なんて事には……ならないだろうなぁ。
こういう時の俺の勘は当たるんだ。
「それにしても、随分大事になってしまいましたね。パレードを見てただけなのに、気付いたらこんな場所まで来てるんですから」
マリーが思い出す様にしみじみとそう口にした。
確かに。俺達は元々勇者召喚パレードという名の祭りに参加していただけなのに、いつの間にか「王城で国王様と謁見」なんて事になってるんだ。
本当、どうしてこんな事になってるんだろうなぁ。
「あのユキという少女が原因とも思えるが、召喚勇者の一人がカイト君の肉親だったんだ。遅かれ早かれこうなっていただろう。早いか遅いかの違いさ」
確かにフーリの言う通り、召喚勇者の一人が光だったんだから、この結果はある意味必然だったのかもしれないけど。
でも、あんな場所で騒ぎが起きなければ、もっと穏便に事が運んだのではないかと思えて仕方がない。
いや、この言い方はあんまりよくないな。これじゃあまるでユキちゃんが悪いみたいじゃないか。
あんな子供相手に、これは流石に大人気ないか。
「そういえば、アミィは何で王都に来てたんだ? 店は大丈夫なのか?」
そもそもアミィは「店があるから来れない」なんて言ってた様な気がするんだけど?
「あ、うん。それは大丈夫。ギルド長さんが手伝ってくれるらしいから」
「ギルド長が?」
あの厳ついスキンヘッドのギルド長が? それって大丈夫か? あんな厳ついおっさんが店員してたら、逆に客が減るんじゃ……。
「カイトさん、きっと大丈夫ですよ。ギルド長はああ見えて、結構器用な方ですから」
「そ、そうか? ならいいんだけど」
いや、器用かどうかと見た目は関係ないけど。
でもまあ、マリーが大丈夫だって言うなら大丈夫なんだろう。心配ではあるが、ここはマリーの言葉を信じよう。
「それで、王都には、その……お兄ちゃんを追いかけて来たの」
「……え、何で?」
追いかけて来たって、ちょっと出かけた相手を追いかけるのとは訳が違うんだぞ。
それに、アルクの馬車はかなりスピードが出てたし、俺達がペコライを出発してすぐにでも出ない限り、こんなに早く王都には着かないと思うけど……って、まさか。
「なあアミィさんや、ペコライを出発したのはいつ頃だい?」
「え? お兄ちゃんが出発した次の日の朝一だよ?」
そっか。次の日の、しかも朝一。それなら確かに今日ここにいてもおかしくはないか。
「次の日なのか? てっきり私達が出発してすぐに出たものだと思っていたんだが」
……ん? フーリは今何て言った? 何でそんな勘違いしたんだ?
いや、勘違いした事自体は別になんらおかしな話じゃない。速度的にもそう思うのが普通だし。
それに、アミィは今ここにいるんだから、当然ペコライをから王都まで来たという事になる。
いつ頃ペコライを出発したか予想するのも別に変じゃない。
だが、何か引っかかる。今の言い方はまるで、アミィが王都に来る事を「最初から知っていた」様な言い方だった気がするんだけど?
もしかして、二人はグルだったりするのか?
「驚かせようとしてたんですよ」
「え?」
俺が二人に尋ねようかと思っていると、マリーが横から種明かしをする様に話し始めた。
「実はペコライを出るちょっと前に聞いたんですけど。アミィちゃん、カイトさんを驚かせたくて、わざとこの話をしなかったらしいんです。「王都で会って、お兄ちゃんをびっくりさせるんだ」って、張り切ってましたよ?」
マリーから話を聞いて、思い当たる節がいくつかあった。
アミィに「お土産は何がいいか?」と尋ねる俺と、俺に任せると言ったアミィ。だがその後で「楽しみにしてるね」と言っていた。
あの時は深く考えもせずに、お土産が楽しみなんだろうと思っていたが、こういう事だったのか。
そりゃお土産は何でもいいってなるわな。
だってアミィ自身が王都に来るつもりだったんなら、そもそもお土産を貰う側じゃなくて、買う側なんだから。
「えへへっ」
俺がアミィにゆっくりと視線を向けると、アミィは照れ笑いを浮かべながら頭を掻き、ペロッと舌を出した。
片目も瞑り、所謂「テヘペロ」状態。
こういうのをあざと可愛いというのだろうか?
「……様、……ち……さい!」
そんな話をしている時だった。
それまで静かだった扉の向こうから、微かに人の声が聞こえてきた。
あまりにも小さすぎて確信が持てないが、若い男の声だった様な気がする。
「……さい……ども……せるな」
「……から、お待ち……と」
その声に応える、もう一つの声。こちらも若い男の声。二つの声は何かを言い合っている様で、少しずつこの部屋に近づいてきているのがハッキリと分かった。
「来るか?」
その声に反応し、咄嗟に身構えるフーリ。いや、ここは王城なんだし、そうそう構えなくても大丈夫じゃない? 多分この城の関係者とかだと思うけど。
などと思いつつも、アミィを庇う様に前に立ち、ストレージから魔鉄バットを取り出そうとした時だった。
バァンッ!
「「「「っ!?」」」」
突然客室の扉が勢いよく開き、そこから姿を現す謎の青年。
年の頃は三十手前といった所か。
短く切り揃えられた茶色い髪と、大きな体躯。野性味が溢れる顔立ちで、ニカっと笑うその姿は、まるで「大きなやんちゃ坊主」といった感じだ。
「この四人が例の四人か、セバス?」
「左様でございます」
青年の声に、聞き覚えのある声が答える。この声は、さっきティーセットを片付ける為に部屋を出て行ったセバスチャンさんの声だ。
セバスチャンさんはいつの間に部屋に入って来たのか、気付いたら扉の傍で控えていた。
「兄さん! ちょっと、邪魔です陛下!」
「はっはっ、相変わらず不敬な奴だ」
一体何事かと思っていると、青年の更に後ろから、俺を呼ぶ光の声が聞こえてくる。そっちに視線を向けると、青年と扉の隙間から姿がチラッと見えた。
って、陛下? 今陛下って言ったのか光は?
「「「っ!」」」
光の言葉に、息を呑む三人。
一瞬、俺の聞き間違いかとも思ったが、三人のあの反応。どうやら聞き間違いじゃなかったみたいだ。
陛下と呼ばれた青年の後ろから、光が何とか部屋の中へと入って来ようとしているが、なかなかそれは叶わない様だ。
それに構わず、青年は再び口を開いた。
「諸君、はじめまして。私はルロンド王国国王、ギルガオン・K・ルロンドだ」
「「「なっ!?」」」
三人は青年――ギルガオン陛下が名乗ると、驚きの声を上げて絶句していた。いや、そら誰でもそうなるわな。
そんな中、俺はというと。
「……若っ!」
「「「ちょっ!?」」」
つい本音が口をついて出てしまい、更に驚く三人。さっきから息ピッタリだな皆。
セバスチャンさんが思ってた以上に話せる人なのには驚いたが、王城の執事長ともなると、そういうスキルも必要になるんだろうな。
「さて、そろそろ光様たちが戻って来る頃ですね。私は一度こちらを片付けてきますので、皆様はそのままお寛ぎください」
そう言うと、セバスチャンさんがテーブルの上のティーセットをキッチンワゴンに乗せ始める。
何だかんだ言っていつの間にかお茶菓子完食してたな。本当に旨い物って、気付いたら食べ終えてる事あるし、実は結構好きだったのかもな、今のお茶菓子。
「それでは、失礼させていただきます」
いつの間にかテーブルの上を片付け終えたセバスチャンさんが、扉の前で一礼してから来客室を出て行く。
それを見送り、俺はふぅっと一息吐いて、この後行われるかもしれないという謁見の事を考えた。
「……謁見かぁ。まともな人ならいいな、国王様」
一応光もセバスチャンさんも、謁見がある「かも」しれないとは言っていただけで「ある」と断言していた訳じゃない。
もしかしたら何かの間違いで「やっぱり謁見はありません」なんて事には……ならないだろうなぁ。
こういう時の俺の勘は当たるんだ。
「それにしても、随分大事になってしまいましたね。パレードを見てただけなのに、気付いたらこんな場所まで来てるんですから」
マリーが思い出す様にしみじみとそう口にした。
確かに。俺達は元々勇者召喚パレードという名の祭りに参加していただけなのに、いつの間にか「王城で国王様と謁見」なんて事になってるんだ。
本当、どうしてこんな事になってるんだろうなぁ。
「あのユキという少女が原因とも思えるが、召喚勇者の一人がカイト君の肉親だったんだ。遅かれ早かれこうなっていただろう。早いか遅いかの違いさ」
確かにフーリの言う通り、召喚勇者の一人が光だったんだから、この結果はある意味必然だったのかもしれないけど。
でも、あんな場所で騒ぎが起きなければ、もっと穏便に事が運んだのではないかと思えて仕方がない。
いや、この言い方はあんまりよくないな。これじゃあまるでユキちゃんが悪いみたいじゃないか。
あんな子供相手に、これは流石に大人気ないか。
「そういえば、アミィは何で王都に来てたんだ? 店は大丈夫なのか?」
そもそもアミィは「店があるから来れない」なんて言ってた様な気がするんだけど?
「あ、うん。それは大丈夫。ギルド長さんが手伝ってくれるらしいから」
「ギルド長が?」
あの厳ついスキンヘッドのギルド長が? それって大丈夫か? あんな厳ついおっさんが店員してたら、逆に客が減るんじゃ……。
「カイトさん、きっと大丈夫ですよ。ギルド長はああ見えて、結構器用な方ですから」
「そ、そうか? ならいいんだけど」
いや、器用かどうかと見た目は関係ないけど。
でもまあ、マリーが大丈夫だって言うなら大丈夫なんだろう。心配ではあるが、ここはマリーの言葉を信じよう。
「それで、王都には、その……お兄ちゃんを追いかけて来たの」
「……え、何で?」
追いかけて来たって、ちょっと出かけた相手を追いかけるのとは訳が違うんだぞ。
それに、アルクの馬車はかなりスピードが出てたし、俺達がペコライを出発してすぐにでも出ない限り、こんなに早く王都には着かないと思うけど……って、まさか。
「なあアミィさんや、ペコライを出発したのはいつ頃だい?」
「え? お兄ちゃんが出発した次の日の朝一だよ?」
そっか。次の日の、しかも朝一。それなら確かに今日ここにいてもおかしくはないか。
「次の日なのか? てっきり私達が出発してすぐに出たものだと思っていたんだが」
……ん? フーリは今何て言った? 何でそんな勘違いしたんだ?
いや、勘違いした事自体は別になんらおかしな話じゃない。速度的にもそう思うのが普通だし。
それに、アミィは今ここにいるんだから、当然ペコライをから王都まで来たという事になる。
いつ頃ペコライを出発したか予想するのも別に変じゃない。
だが、何か引っかかる。今の言い方はまるで、アミィが王都に来る事を「最初から知っていた」様な言い方だった気がするんだけど?
もしかして、二人はグルだったりするのか?
「驚かせようとしてたんですよ」
「え?」
俺が二人に尋ねようかと思っていると、マリーが横から種明かしをする様に話し始めた。
「実はペコライを出るちょっと前に聞いたんですけど。アミィちゃん、カイトさんを驚かせたくて、わざとこの話をしなかったらしいんです。「王都で会って、お兄ちゃんをびっくりさせるんだ」って、張り切ってましたよ?」
マリーから話を聞いて、思い当たる節がいくつかあった。
アミィに「お土産は何がいいか?」と尋ねる俺と、俺に任せると言ったアミィ。だがその後で「楽しみにしてるね」と言っていた。
あの時は深く考えもせずに、お土産が楽しみなんだろうと思っていたが、こういう事だったのか。
そりゃお土産は何でもいいってなるわな。
だってアミィ自身が王都に来るつもりだったんなら、そもそもお土産を貰う側じゃなくて、買う側なんだから。
「えへへっ」
俺がアミィにゆっくりと視線を向けると、アミィは照れ笑いを浮かべながら頭を掻き、ペロッと舌を出した。
片目も瞑り、所謂「テヘペロ」状態。
こういうのをあざと可愛いというのだろうか?
「……様、……ち……さい!」
そんな話をしている時だった。
それまで静かだった扉の向こうから、微かに人の声が聞こえてきた。
あまりにも小さすぎて確信が持てないが、若い男の声だった様な気がする。
「……さい……ども……せるな」
「……から、お待ち……と」
その声に応える、もう一つの声。こちらも若い男の声。二つの声は何かを言い合っている様で、少しずつこの部屋に近づいてきているのがハッキリと分かった。
「来るか?」
その声に反応し、咄嗟に身構えるフーリ。いや、ここは王城なんだし、そうそう構えなくても大丈夫じゃない? 多分この城の関係者とかだと思うけど。
などと思いつつも、アミィを庇う様に前に立ち、ストレージから魔鉄バットを取り出そうとした時だった。
バァンッ!
「「「「っ!?」」」」
突然客室の扉が勢いよく開き、そこから姿を現す謎の青年。
年の頃は三十手前といった所か。
短く切り揃えられた茶色い髪と、大きな体躯。野性味が溢れる顔立ちで、ニカっと笑うその姿は、まるで「大きなやんちゃ坊主」といった感じだ。
「この四人が例の四人か、セバス?」
「左様でございます」
青年の声に、聞き覚えのある声が答える。この声は、さっきティーセットを片付ける為に部屋を出て行ったセバスチャンさんの声だ。
セバスチャンさんはいつの間に部屋に入って来たのか、気付いたら扉の傍で控えていた。
「兄さん! ちょっと、邪魔です陛下!」
「はっはっ、相変わらず不敬な奴だ」
一体何事かと思っていると、青年の更に後ろから、俺を呼ぶ光の声が聞こえてくる。そっちに視線を向けると、青年と扉の隙間から姿がチラッと見えた。
って、陛下? 今陛下って言ったのか光は?
「「「っ!」」」
光の言葉に、息を呑む三人。
一瞬、俺の聞き間違いかとも思ったが、三人のあの反応。どうやら聞き間違いじゃなかったみたいだ。
陛下と呼ばれた青年の後ろから、光が何とか部屋の中へと入って来ようとしているが、なかなかそれは叶わない様だ。
それに構わず、青年は再び口を開いた。
「諸君、はじめまして。私はルロンド王国国王、ギルガオン・K・ルロンドだ」
「「「なっ!?」」」
三人は青年――ギルガオン陛下が名乗ると、驚きの声を上げて絶句していた。いや、そら誰でもそうなるわな。
そんな中、俺はというと。
「……若っ!」
「「「ちょっ!?」」」
つい本音が口をついて出てしまい、更に驚く三人。さっきから息ピッタリだな皆。
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コメント
虹ウサギ
ふと読んでみらたら結構面白くてここまで一気見してしまいました!
文脈もしっかりしてて、1話1話厚みもあり読み応えのある作品でした!
続き楽しみにしてます!