見た目は青年、心はアラサー、異世界に降り立つ! ~チートスキル「ストレージ」で異世界を満喫中~
三十話
「お兄ちゃん! 寝ないで!」
「そうよ兄さん! 折角会えたんだから!」
「は、はいぃっ!」
夢から覚める為に眠りにつこうとしたら二人に怒鳴られてしまい、無意識に背筋が伸びるのを感じながら返事をした。
「カイトさん、現実逃避はやめましょうね」
「そうだぞ。それに、折角かわいい……妹達? がいるんだ。寝るなんてとんでもない」
マリーとフーリは優しい笑みを浮かべているが、言ってる事は全然優しくない(主に俺に)。要は、この状況から逃がさないと言ってる様なものだ。
いや、出来ればここで現実逃避させて欲しかったんだけど。なんなんだよこの状況。ほら見てみろよ。周りの人達が状況についてこれず「ポカン」としてるじゃないか。
「ねえにいたん、あそぼ!」
そして、この騒動の原因というか、主犯のユキという名の少女は、この状況を理解していないのか、マイペースに遊びたがっている。
ていうか「にいたん」って。俺にこんな妹がいた記憶はないぞ? 俺の妹は光だけだ。
「どしたのにいたん?」
光に引き離されそうになった時に俺の上からはどいてくれたが、俺の事は相変わらずにいたんと呼び続けるユキちゃん。だが、なんとなくユキちゃんからは懐かしい気配を感じるんだよな。初対面の筈なのに。
……初対面、だよな?
「あ、ちょっとユキ! あんたちょっとこっちに来なさい!」
「やー!」
ユキちゃんが俺の顔をジーっと見つめていると、光が後ろからユキちゃんを羽交い絞めにして、再度俺から引き離していく。
ユキちゃんは引き離されていく時に、咄嗟に俺の服を掴んだのだろう。何故か俺まで一緒に光に引っ張られてしまう。
突然引っ張られた事により、バランスを崩した俺は、そのまま前のめりに倒れそうになり。
「おっと」
無意識に手を伸ばして何かにつかまろうとした。
思えばこの行動が良くなかったのだろう。咄嗟に伸ばした俺の手は、当然もっとも近くにある物を掴むのが普通だ。
そして俺の一番近くにある物――ていうかいる者は、目の前のユキちゃんだ。
伸びる俺の手。掴むはユキちゃん。場所はその小さな体躯からは想像も出来ないぐらい大きく育った双丘。
「「あっ!」」
直後に手に伝わる「ムニッ」とした感触。
あ、やばい。そう思ったが、時既に遅し。
「兄さんのバカ!」
「お兄ちゃんのバカ!」
光とアミィ。二人が俺を非難する声が聞こえた。
パァンッ!
「ぶべらっ!」
ビンタというおまけ付きで。
「「あっ」」
すぐにはっとなる二人。流石に今のはやり過ぎだったと思ったんだろうな。うん、出来れば殴る前に気付いて欲しかった。
おかげで俺の頬に、大きな紅葉が二枚貼り付いてしまった。
ていうか、そもそも何で光がここに?
アミィも、確かペコライで留守番してる筈じゃ?
それに、このユキちゃんという少女は一体何者なんだ? どう考えてもこの子とは初対面の筈なのに、何故か「にいたん」って呼ばれるし。
その上訳も分からないまま殴られる始末。いや、訳なら分かるけど、アレは事故なんだ。
もう何が何だか分からない。一体何が起こってるんだ?
「ちょっとちょっと、どうしたんですかユキさん? それに光さんまで」
「急に飛び降りるから何事かと思いましたよ」
突然起こったハプニングに俺が混乱していると、馬車の上から降りて来た爽やかイケメン君と図書委員ちゃん。
助かった。ようやくこの場を収められそうな人が来てくれた。
「とにかく、このままじゃ大騒ぎになりますから、皆さん一度馬車に乗って下さい。話は後で聞きますから」
図書委員ちゃんに促されるまま、俺達は順番に馬車へと乗り込む。その間に爽やかイケメン君が、突然の出来事に混乱している人達への対応をしてくれている。
図書委員ちゃんの手際はそこそこといった具合だが、爽やかイケメン君の手際の良さはとても良い、
周囲の人々の中から、まず一部の女性を中心に説明を始めると、持ち前のイケメン爽やかスマイルでニコッと微笑む。これだけで大抵の女性がすんなり話を受け入れていた。
その女性陣に協力を仰ぎ、一気に周囲の人達全てを納得させるという技を使っている。凄いな。俺だったら絶対真似出来ない手段だわ。
「ありがとう、爽やかイケメン君。今だけは感謝するよ」
「何を馬鹿な事言ってるんですか」
車窓から見える光景にボソッと呟いたのだが、どうやらマリーに聞かれていたらしい。別に馬鹿な事じゃないぞ。結構重要な事だ。
「圭太、準備いいよ!」
「分かった。すみません、出して下さい」
俺達が全員馬車内に乗り込んだのを確認すると、図書委員ちゃんが爽やかイケメン君こと、圭太君にそれを知らせ、様御者さんに馬車を出す様に指示を出した。
すると、馬車がゆっくりと発進する。
「あ、待って下さい! まだロザリーさんとヴォルフさんが!」
馬車が出発すると、アミィが慌てて車窓に近づき、人を探す様に視線を左右に振っていた。
ていうか、ロザリーさんとヴォルフ? え、あの二人も王都に来てるのか?
「えっと、アミィさん、でしたっけ? そのお二人なら、後で騎士団の方達が探して連れて来ると思いますので。」
「え? 本当ですか?」
「はい、騎士団の方達が責任を持ってお連れします」
図書委員ちゃんはニコリと微笑みながらアミィに答えた。さっきのアミィの言い方からいて、多分三人は一緒に王都に来たんだろう。って事は、二人もアミィからそう離れていない場所にいると考えるのが妥当だ。
なら、後はあの付近でアミィを探している二人組を探せばいい訳だし、そこまで難しい事じゃないか。
まあそれはともかくとして、騎士団といえば異世界お約束だよな。女騎士なんかもいたりするのだろうか?
もしもいるのなら、生の「くっころ」なんかも聞けたりするかも……。
「その「くっころ」というのは何なのだカイト君?」
「それで、実際に……え? いきなりどうしたんだフーリ?」
フーリが「くっころ」なんて言うと、妙にリアルというか。
フーリって、喋り方とか佇まいなんかが女騎士っぽいイメージがあるからな。下手な女騎士よりもよっぽど女騎士っぽいかもしれない。
って、何でフーリは「くっころ」なんて言葉を知っていたんだ? この世界にも同じ言葉があるとか?
あり得ない話ではないが、今言う意味が分からない。
誰かが「くっころ」って言わない限、り、は……。
「あれ? もしかして」
「ああ、声に出ていたぞ。生の「くっころ」がどうとか」
……やべ。
ちらっと車内の全員に視線を巡らせると、マリーやフーリ、アミィなんかはキョトンとしていた。まあそれはいい。想定の範囲内だ。普通「くっころ」なんて言われても何の事か分からないだろうから、その反応は当然だ。
ちなみにユキちゃんはと言うと、車窓から外を眺めては「あれ何?」と俺に何度も尋ねてくるというのを繰り返している。
いや、俺がそんなの知る訳ないんだけど?
と、現実逃避はこのぐらいで。
俺が恐る恐る召喚勇者――日本組に視線を向けると。
「「……」」
「兄さん……」
圭太君と図書委員ちゃんの二人は無言。
圭太君は気まずそうに人差し指で頬を掻きながら「あははっ……」と乾いた笑いをあげ、図書委員ちゃんは顔を赤くし、恥ずかし気に俯いている。
その反応、二人共「くっころ」が何か知ってるな? 今度じっくり話してみたい。
そして最後の一人。妹の光はと言うと、呆れた様な、でもどこか嬉しそうな表情で俺の事を見つめている。
え、それどういう感情?
「そうよ兄さん! 折角会えたんだから!」
「は、はいぃっ!」
夢から覚める為に眠りにつこうとしたら二人に怒鳴られてしまい、無意識に背筋が伸びるのを感じながら返事をした。
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「そうだぞ。それに、折角かわいい……妹達? がいるんだ。寝るなんてとんでもない」
マリーとフーリは優しい笑みを浮かべているが、言ってる事は全然優しくない(主に俺に)。要は、この状況から逃がさないと言ってる様なものだ。
いや、出来ればここで現実逃避させて欲しかったんだけど。なんなんだよこの状況。ほら見てみろよ。周りの人達が状況についてこれず「ポカン」としてるじゃないか。
「ねえにいたん、あそぼ!」
そして、この騒動の原因というか、主犯のユキという名の少女は、この状況を理解していないのか、マイペースに遊びたがっている。
ていうか「にいたん」って。俺にこんな妹がいた記憶はないぞ? 俺の妹は光だけだ。
「どしたのにいたん?」
光に引き離されそうになった時に俺の上からはどいてくれたが、俺の事は相変わらずにいたんと呼び続けるユキちゃん。だが、なんとなくユキちゃんからは懐かしい気配を感じるんだよな。初対面の筈なのに。
……初対面、だよな?
「あ、ちょっとユキ! あんたちょっとこっちに来なさい!」
「やー!」
ユキちゃんが俺の顔をジーっと見つめていると、光が後ろからユキちゃんを羽交い絞めにして、再度俺から引き離していく。
ユキちゃんは引き離されていく時に、咄嗟に俺の服を掴んだのだろう。何故か俺まで一緒に光に引っ張られてしまう。
突然引っ張られた事により、バランスを崩した俺は、そのまま前のめりに倒れそうになり。
「おっと」
無意識に手を伸ばして何かにつかまろうとした。
思えばこの行動が良くなかったのだろう。咄嗟に伸ばした俺の手は、当然もっとも近くにある物を掴むのが普通だ。
そして俺の一番近くにある物――ていうかいる者は、目の前のユキちゃんだ。
伸びる俺の手。掴むはユキちゃん。場所はその小さな体躯からは想像も出来ないぐらい大きく育った双丘。
「「あっ!」」
直後に手に伝わる「ムニッ」とした感触。
あ、やばい。そう思ったが、時既に遅し。
「兄さんのバカ!」
「お兄ちゃんのバカ!」
光とアミィ。二人が俺を非難する声が聞こえた。
パァンッ!
「ぶべらっ!」
ビンタというおまけ付きで。
「「あっ」」
すぐにはっとなる二人。流石に今のはやり過ぎだったと思ったんだろうな。うん、出来れば殴る前に気付いて欲しかった。
おかげで俺の頬に、大きな紅葉が二枚貼り付いてしまった。
ていうか、そもそも何で光がここに?
アミィも、確かペコライで留守番してる筈じゃ?
それに、このユキちゃんという少女は一体何者なんだ? どう考えてもこの子とは初対面の筈なのに、何故か「にいたん」って呼ばれるし。
その上訳も分からないまま殴られる始末。いや、訳なら分かるけど、アレは事故なんだ。
もう何が何だか分からない。一体何が起こってるんだ?
「ちょっとちょっと、どうしたんですかユキさん? それに光さんまで」
「急に飛び降りるから何事かと思いましたよ」
突然起こったハプニングに俺が混乱していると、馬車の上から降りて来た爽やかイケメン君と図書委員ちゃん。
助かった。ようやくこの場を収められそうな人が来てくれた。
「とにかく、このままじゃ大騒ぎになりますから、皆さん一度馬車に乗って下さい。話は後で聞きますから」
図書委員ちゃんに促されるまま、俺達は順番に馬車へと乗り込む。その間に爽やかイケメン君が、突然の出来事に混乱している人達への対応をしてくれている。
図書委員ちゃんの手際はそこそこといった具合だが、爽やかイケメン君の手際の良さはとても良い、
周囲の人々の中から、まず一部の女性を中心に説明を始めると、持ち前のイケメン爽やかスマイルでニコッと微笑む。これだけで大抵の女性がすんなり話を受け入れていた。
その女性陣に協力を仰ぎ、一気に周囲の人達全てを納得させるという技を使っている。凄いな。俺だったら絶対真似出来ない手段だわ。
「ありがとう、爽やかイケメン君。今だけは感謝するよ」
「何を馬鹿な事言ってるんですか」
車窓から見える光景にボソッと呟いたのだが、どうやらマリーに聞かれていたらしい。別に馬鹿な事じゃないぞ。結構重要な事だ。
「圭太、準備いいよ!」
「分かった。すみません、出して下さい」
俺達が全員馬車内に乗り込んだのを確認すると、図書委員ちゃんが爽やかイケメン君こと、圭太君にそれを知らせ、様御者さんに馬車を出す様に指示を出した。
すると、馬車がゆっくりと発進する。
「あ、待って下さい! まだロザリーさんとヴォルフさんが!」
馬車が出発すると、アミィが慌てて車窓に近づき、人を探す様に視線を左右に振っていた。
ていうか、ロザリーさんとヴォルフ? え、あの二人も王都に来てるのか?
「えっと、アミィさん、でしたっけ? そのお二人なら、後で騎士団の方達が探して連れて来ると思いますので。」
「え? 本当ですか?」
「はい、騎士団の方達が責任を持ってお連れします」
図書委員ちゃんはニコリと微笑みながらアミィに答えた。さっきのアミィの言い方からいて、多分三人は一緒に王都に来たんだろう。って事は、二人もアミィからそう離れていない場所にいると考えるのが妥当だ。
なら、後はあの付近でアミィを探している二人組を探せばいい訳だし、そこまで難しい事じゃないか。
まあそれはともかくとして、騎士団といえば異世界お約束だよな。女騎士なんかもいたりするのだろうか?
もしもいるのなら、生の「くっころ」なんかも聞けたりするかも……。
「その「くっころ」というのは何なのだカイト君?」
「それで、実際に……え? いきなりどうしたんだフーリ?」
フーリが「くっころ」なんて言うと、妙にリアルというか。
フーリって、喋り方とか佇まいなんかが女騎士っぽいイメージがあるからな。下手な女騎士よりもよっぽど女騎士っぽいかもしれない。
って、何でフーリは「くっころ」なんて言葉を知っていたんだ? この世界にも同じ言葉があるとか?
あり得ない話ではないが、今言う意味が分からない。
誰かが「くっころ」って言わない限、り、は……。
「あれ? もしかして」
「ああ、声に出ていたぞ。生の「くっころ」がどうとか」
……やべ。
ちらっと車内の全員に視線を巡らせると、マリーやフーリ、アミィなんかはキョトンとしていた。まあそれはいい。想定の範囲内だ。普通「くっころ」なんて言われても何の事か分からないだろうから、その反応は当然だ。
ちなみにユキちゃんはと言うと、車窓から外を眺めては「あれ何?」と俺に何度も尋ねてくるというのを繰り返している。
いや、俺がそんなの知る訳ないんだけど?
と、現実逃避はこのぐらいで。
俺が恐る恐る召喚勇者――日本組に視線を向けると。
「「……」」
「兄さん……」
圭太君と図書委員ちゃんの二人は無言。
圭太君は気まずそうに人差し指で頬を掻きながら「あははっ……」と乾いた笑いをあげ、図書委員ちゃんは顔を赤くし、恥ずかし気に俯いている。
その反応、二人共「くっころ」が何か知ってるな? 今度じっくり話してみたい。
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