見た目は青年、心はアラサー、異世界に降り立つ! ~チートスキル「ストレージ」で異世界を満喫中~
十四話
「銀貨二枚ですね。それでは大銅貨七枚のお返しになります」
従業員さんからお釣りを受け取り、それを財布にしまうフーリ。
「それじゃあお部屋に案内しますね。私に着いて来て下さい」
従業員さんはそう言うと、カウンターの中から出てきて二階へと続く階段を上り始める。それに続く俺達。
そういえば、賢者の息吹ではアミィじゃなくてフーリが部屋まで案内してくれたんだよな。
先頭には従業員さんがいるとはいえ、目の前にフーリがいて、それに俺が着いて行くこの状況は、何となくあの時の事を思い出すな。今回マリーは酔い潰れていないけど。
従業員さんに案内されて訪れた部屋は、二階の廊下の突当り。つまり、一番奥にある向かい合わせの部屋だった。
場所的には階段から一番遠いが、日当たりという意味では一番いい場所だ。
「こちらが皆さんのお部屋となります。何かありましたら受付までお願いしますね」
従業員さんは一度俺達の方に向き直ると、それだけ言い残し、急いで一階へと戻って行ってしまった。
事務的な受け答えの筈なのに、あの人が言うと事務的に感じないから不思議だ。
多分、最初の明るい挨拶の印象があったからだろう。
「さて、部屋で軽く休んだら、一度街に出てみないか?」
「パレードは明日からですけど、露店なんかは既に開いてますし、ちょっとだけ覗いちゃいましょうよ」
フーリとマリーは、楽し気な様子でこれからの事について話し始めた。
「露店かぁ。それはすごい興味あるな」
そして俺も。
祭りの屋台とかキッチンカーって、見るだけでワクワクするよね? 味は大した事ないって分かっていても、ついつい覗いて買っちゃうんだよな。。
でも、そういうのも含めて楽しむのが屋台やキッチンカー、そして露店だ。
ちなみに当たりを引いた時のテンションの上がり方は尋常じゃない。宝くじで一万円当たった時ぐらい上がる。
「なら決まりだな。少し休憩したら呼びに行くから、それまでカイト君も部屋で休んでいてくれ」
フーリはそう言うと、自分たちの部屋の扉を開き、そのまま中へと入って行った。
「それじゃあカイトさん、また後で」
そう言ってマリーもフーリに続いて部屋の中へ。そして残ったのは俺一人。
「とりあえず入るか」
これからしばらく泊まる(予定)の部屋がどんな部屋なのかも気になるしな。
俺は自分の部屋の前に立ち、鍵を開けて室内へと入る。
中に入ると、そこには六畳一間ぐらいの広さの部屋があった。
室内にはシングルベッドが一つだけ置いてあり、テーブルも一つ。椅子は無し。備え付けの家具はそれだけらしく、それ以外は何もない。
質素。それが俺の頭に一番最初に浮かんだ言葉だった。
「賢者の息吹って、かなり良心的だったんだな」
そういえばこの世界に来てすぐの頃、アミィに沢山サービスするって言われたけど、もしかしてかなり割引してくれてたとか?
でも、フーリとマリーも似た様な金額だった気がするし、気の所為か?
「ていうかここ、飯はどうなってんだろう?」
賢者の息吹なら、同じ建物内に酒場があったから何も考えなくても良かったんだけど、ここはどうだろう?
見た所酒場がある様には見えないし、もしかしたら飯は自分で何とかしないといけないのかもしれない。
これから一週間はパレードもあるからどうとでもなるけど、それから先はまだ分からない。
パレードが終わったら帰るかもしれないし、王都に残るならどこかいい店を見つけないといけないからな。
「ま、なるようになるか」
先の事は先の俺に任せよう。
今の俺は今を全力で楽しむだけだ。
「とりあえず、休憩がてらストレージの確認でもするか」
この一週間で魔物もそれなりに狩ったし、ワイルドボアとかいう魔物の魔石のスキルも確認しないと。
俺は備え付けのベッドに寝っ転がり、ストレージ画面を開いた。
「えーっと、ワイルドボアの魔石はっと……お、あったあった」
数は全部で四つ。
ワイルドボアは基本的にこっちから攻撃しない限り襲ってこないから、狩る機会も少なかったんだよな。
マリーがオイ椎茸を取り合ったりとか、木の陰になって寝ているのに気付かず、尻尾を踏みつけてしまったりとかした時だけ、仕方なく狩ったぐらいだ。
正直襲われる理由はこっちにあったのに、それを狩るっていうのは心苦しかったけど、襲ってくる以上は仕方なかったんだ。
「でも、手に入れた以上、魔石はきちんと有効活用しないとな」
ワイルドボアには悪いけど、世の中弱肉強食って言うし。素材を無駄なく使うの事が、ワイルドボアに対する礼儀だろう。
「それで、スキルは……「逆境」か。逆境ってどんなスキルだ?」
逆境って一口に言われても、それがどんなスキルなのかは分からない。自分が不利な状況なら身体能力が跳ね上がるとか、絶体絶命の状況下でのみ強くなるとかはありそうだけど。
どんなスキルにしても、普通に過ごしてる分には必要ないスキルなのは間違いない。
これが必要な状況っていうのは、要は何かに襲われてる時だ。そしてそれは同時に、ワイルドボアの性格を表していると言える。
誰かに襲われない限り、自分から襲い掛かる事はないって事なんだから。
あれ? なんだか罪悪感が。
「深く考えるのはよそう。深みにハマりそうだ」
それよりもスキル習得だな。このスキルなら習得しておいて損はないだろう。何となく予想できるスキルだし。
ワイルドボアの魔石を選択してスキルを抽出。それを習得する。
これで逆境のスキルが手に入った訳だが、効果はその内分かるだろ……俺、本当に早まってないよな?
……いや、自分を信じよう。
「カイトさん、そろそろ出かけませんか?」
スキル習得も完了し、自分の選択に自信を持とうと考えていた時、扉の方から俺を呼ぶマリーの声が聞こえてきた。
「ん? ああ、分かった。今行く」
時間的にそろそろ昼飯時。このまま出かけて、昼飯は出店で済ませればいいかな。
マリーの声に答え、ストレージ画面を閉じてから扉の方へと向かう。
「お待たせ。フーリは?」
部屋の外に出ると、そこにはマリー一人だけが立っており、フーリの姿が無かった。
どこに行ったのか気になりマリーに尋ねてみると、忘れ物を取りに部屋に戻ったとの事。少しだけ待ってみると、二人の部屋からフーリが出てきた。
「待たせてすまない。それじゃあ出かけようか」
「ああ、ついでに昼飯も出店で済ませないか?」
「そうですね。折角ですから」
「そうだな。折角だからな」
俺の提案にすぐにのる二人。
そうと決まればすぐに行動。三人で宿を出て、向かうは祭り会場。本番は明日からだが、そこは既にパレードを見に来たのであろう人達で賑わっている。
そこら中から聞こえてくる楽し気な話し声。内容は明日から始まるパレードについてのようだ。
「なあ、聞いたか? 今回召喚された勇者様の事」
「勇者様? 一体何の話だ?」
「なんでも、今回召喚された勇者様は一人じゃないらしいってよ」
「あん? どういう事だ?」
「いやな。なんでも、今回召喚された勇者様は、なんと三人もいるんだと」
「三人?」
「ああ、三人だ。しかも、一人はただの勇者様じゃないとか」
召喚勇者が三人? しかも、一人は只の勇者じゃない?
何か妙な話だな。召喚された勇者は一人だけだと思ってたんだけど、三人もいるのか?
更に詳しく話を聞こうと聞き耳を立てていたのだが、途中から召喚勇者に女が二人いるらしいという話に変わり、そこからどんどん話が脱線していき、最終的にカップルへの妬みにシフトしたので、俺は聞き耳を立てるのをやめた。
「カイト君、どうかしたのか?」
「ん? いや、ちょっと小耳に挟んだんだけど、今回召喚された勇者は一人じゃないらしい」
「ほう、それは初耳だな」
「詳しく聞かせて貰っても?」
俺がたった今聞いた話を二人にすると、二人共興味津々といった感じで聞き返してきたので、聞こえた範囲で二人にも教えてあげた。
ちなみにこの話をしていた二人だが、気付いたらいつの間にかいなくなっていた。
従業員さんからお釣りを受け取り、それを財布にしまうフーリ。
「それじゃあお部屋に案内しますね。私に着いて来て下さい」
従業員さんはそう言うと、カウンターの中から出てきて二階へと続く階段を上り始める。それに続く俺達。
そういえば、賢者の息吹ではアミィじゃなくてフーリが部屋まで案内してくれたんだよな。
先頭には従業員さんがいるとはいえ、目の前にフーリがいて、それに俺が着いて行くこの状況は、何となくあの時の事を思い出すな。今回マリーは酔い潰れていないけど。
従業員さんに案内されて訪れた部屋は、二階の廊下の突当り。つまり、一番奥にある向かい合わせの部屋だった。
場所的には階段から一番遠いが、日当たりという意味では一番いい場所だ。
「こちらが皆さんのお部屋となります。何かありましたら受付までお願いしますね」
従業員さんは一度俺達の方に向き直ると、それだけ言い残し、急いで一階へと戻って行ってしまった。
事務的な受け答えの筈なのに、あの人が言うと事務的に感じないから不思議だ。
多分、最初の明るい挨拶の印象があったからだろう。
「さて、部屋で軽く休んだら、一度街に出てみないか?」
「パレードは明日からですけど、露店なんかは既に開いてますし、ちょっとだけ覗いちゃいましょうよ」
フーリとマリーは、楽し気な様子でこれからの事について話し始めた。
「露店かぁ。それはすごい興味あるな」
そして俺も。
祭りの屋台とかキッチンカーって、見るだけでワクワクするよね? 味は大した事ないって分かっていても、ついつい覗いて買っちゃうんだよな。。
でも、そういうのも含めて楽しむのが屋台やキッチンカー、そして露店だ。
ちなみに当たりを引いた時のテンションの上がり方は尋常じゃない。宝くじで一万円当たった時ぐらい上がる。
「なら決まりだな。少し休憩したら呼びに行くから、それまでカイト君も部屋で休んでいてくれ」
フーリはそう言うと、自分たちの部屋の扉を開き、そのまま中へと入って行った。
「それじゃあカイトさん、また後で」
そう言ってマリーもフーリに続いて部屋の中へ。そして残ったのは俺一人。
「とりあえず入るか」
これからしばらく泊まる(予定)の部屋がどんな部屋なのかも気になるしな。
俺は自分の部屋の前に立ち、鍵を開けて室内へと入る。
中に入ると、そこには六畳一間ぐらいの広さの部屋があった。
室内にはシングルベッドが一つだけ置いてあり、テーブルも一つ。椅子は無し。備え付けの家具はそれだけらしく、それ以外は何もない。
質素。それが俺の頭に一番最初に浮かんだ言葉だった。
「賢者の息吹って、かなり良心的だったんだな」
そういえばこの世界に来てすぐの頃、アミィに沢山サービスするって言われたけど、もしかしてかなり割引してくれてたとか?
でも、フーリとマリーも似た様な金額だった気がするし、気の所為か?
「ていうかここ、飯はどうなってんだろう?」
賢者の息吹なら、同じ建物内に酒場があったから何も考えなくても良かったんだけど、ここはどうだろう?
見た所酒場がある様には見えないし、もしかしたら飯は自分で何とかしないといけないのかもしれない。
これから一週間はパレードもあるからどうとでもなるけど、それから先はまだ分からない。
パレードが終わったら帰るかもしれないし、王都に残るならどこかいい店を見つけないといけないからな。
「ま、なるようになるか」
先の事は先の俺に任せよう。
今の俺は今を全力で楽しむだけだ。
「とりあえず、休憩がてらストレージの確認でもするか」
この一週間で魔物もそれなりに狩ったし、ワイルドボアとかいう魔物の魔石のスキルも確認しないと。
俺は備え付けのベッドに寝っ転がり、ストレージ画面を開いた。
「えーっと、ワイルドボアの魔石はっと……お、あったあった」
数は全部で四つ。
ワイルドボアは基本的にこっちから攻撃しない限り襲ってこないから、狩る機会も少なかったんだよな。
マリーがオイ椎茸を取り合ったりとか、木の陰になって寝ているのに気付かず、尻尾を踏みつけてしまったりとかした時だけ、仕方なく狩ったぐらいだ。
正直襲われる理由はこっちにあったのに、それを狩るっていうのは心苦しかったけど、襲ってくる以上は仕方なかったんだ。
「でも、手に入れた以上、魔石はきちんと有効活用しないとな」
ワイルドボアには悪いけど、世の中弱肉強食って言うし。素材を無駄なく使うの事が、ワイルドボアに対する礼儀だろう。
「それで、スキルは……「逆境」か。逆境ってどんなスキルだ?」
逆境って一口に言われても、それがどんなスキルなのかは分からない。自分が不利な状況なら身体能力が跳ね上がるとか、絶体絶命の状況下でのみ強くなるとかはありそうだけど。
どんなスキルにしても、普通に過ごしてる分には必要ないスキルなのは間違いない。
これが必要な状況っていうのは、要は何かに襲われてる時だ。そしてそれは同時に、ワイルドボアの性格を表していると言える。
誰かに襲われない限り、自分から襲い掛かる事はないって事なんだから。
あれ? なんだか罪悪感が。
「深く考えるのはよそう。深みにハマりそうだ」
それよりもスキル習得だな。このスキルなら習得しておいて損はないだろう。何となく予想できるスキルだし。
ワイルドボアの魔石を選択してスキルを抽出。それを習得する。
これで逆境のスキルが手に入った訳だが、効果はその内分かるだろ……俺、本当に早まってないよな?
……いや、自分を信じよう。
「カイトさん、そろそろ出かけませんか?」
スキル習得も完了し、自分の選択に自信を持とうと考えていた時、扉の方から俺を呼ぶマリーの声が聞こえてきた。
「ん? ああ、分かった。今行く」
時間的にそろそろ昼飯時。このまま出かけて、昼飯は出店で済ませればいいかな。
マリーの声に答え、ストレージ画面を閉じてから扉の方へと向かう。
「お待たせ。フーリは?」
部屋の外に出ると、そこにはマリー一人だけが立っており、フーリの姿が無かった。
どこに行ったのか気になりマリーに尋ねてみると、忘れ物を取りに部屋に戻ったとの事。少しだけ待ってみると、二人の部屋からフーリが出てきた。
「待たせてすまない。それじゃあ出かけようか」
「ああ、ついでに昼飯も出店で済ませないか?」
「そうですね。折角ですから」
「そうだな。折角だからな」
俺の提案にすぐにのる二人。
そうと決まればすぐに行動。三人で宿を出て、向かうは祭り会場。本番は明日からだが、そこは既にパレードを見に来たのであろう人達で賑わっている。
そこら中から聞こえてくる楽し気な話し声。内容は明日から始まるパレードについてのようだ。
「なあ、聞いたか? 今回召喚された勇者様の事」
「勇者様? 一体何の話だ?」
「なんでも、今回召喚された勇者様は一人じゃないらしいってよ」
「あん? どういう事だ?」
「いやな。なんでも、今回召喚された勇者様は、なんと三人もいるんだと」
「三人?」
「ああ、三人だ。しかも、一人はただの勇者様じゃないとか」
召喚勇者が三人? しかも、一人は只の勇者じゃない?
何か妙な話だな。召喚された勇者は一人だけだと思ってたんだけど、三人もいるのか?
更に詳しく話を聞こうと聞き耳を立てていたのだが、途中から召喚勇者に女が二人いるらしいという話に変わり、そこからどんどん話が脱線していき、最終的にカップルへの妬みにシフトしたので、俺は聞き耳を立てるのをやめた。
「カイト君、どうかしたのか?」
「ん? いや、ちょっと小耳に挟んだんだけど、今回召喚された勇者は一人じゃないらしい」
「ほう、それは初耳だな」
「詳しく聞かせて貰っても?」
俺がたった今聞いた話を二人にすると、二人共興味津々といった感じで聞き返してきたので、聞こえた範囲で二人にも教えてあげた。
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