見た目は青年、心はアラサー、異世界に降り立つ! ~チートスキル「ストレージ」で異世界を満喫中~
八話
「興味あるに決まってるじゃないか。多分召喚勇者も興味あると思うぞ」
俺と同郷なら、ドラゴンとかワイバーンは需要があると思うんだよな。だって地球にはいなくて、でも大体の人が知ってる空想上の生物。そんなのが実際に存在していると知って、果たして興味を持たないだろうか? いいや、持つ筈だ。
「召喚勇者もですか? ワイバーンがそんなに珍しいんでしょうか?」
正確にはワイバーンではなくドラゴンが、だけど。
でも、ワイバーンもかなり有名な部類だし、間違ってはいないだろう。
「あ、それ聞いた事あります。歴代の召喚勇者の方達は、ドラゴンやグリフォンなんかを見ると興奮するらしいって」
「え? そうなんですかアルクさん?」
俺がワイバーンに興味を示していると、前を歩くアルクが……なんかダジャレみたいだな。
と、とにかく! 召喚勇者がドラゴンなんかに興味を持っていたらしいという話をしてきた。
「ええ。なんでも、召喚勇者の方達が元居た世界には、そもそも魔物が存在しないらしいんです。それで、おとぎ話の中だけの存在である、ドラゴンやグリフォンに憧れがあるとか」
正確には、おとぎ話だけじゃなくて、創作物の中もだけど、そんな細かい事までツッコまなくてもいいか。
「へえ、そうなんですか。私達からすれば、ワイバーンなんて厄介な魔物でしかないんですけどね」
「厄介?」
何か特殊なスキルでも持っているのだろうか? それとも単に強いだけとか?
「ワイバーンは空を飛ぶからな。それに加えて知能もそこそこ高い。相手をするとなると、面倒な相手なんだよ」
俺がマリーに聞き返すと、それに答えてくれたのは先頭を歩くフーリだった。
「空を飛ぶ魔物はあまりいないからな。ワイバーンはそれだけで充分厄介な相手なんだ。「普通」は空を飛ぶ相手と戦うのは面倒だと感じるものだからな。「普通」は」
フーリが俺を見てやたらと「普通」を強調しているが、何でだ?
「私は弓も魔法も得意ですから比較的相手をするのは楽なんですけど、それでも「普通」は面倒ですからね」
マリーまで。まるでここに普通じゃない誰かがいるみたいな言い方じゃないか。そんな事を考えていると、二人からの呆れるような視線を感じた。
……え、俺? 俺は別に普通じゃない?
「いや、相手が飛ぶなら、こっちも飛べばいいだけじゃないのか?」
「その発想が普通じゃないんですよ!」
「空を飛べるのは、カイト君ぐらいだからな?」
二人して声を大にしてツッコんできた。いや、そうかもしれないけど。
でも、やり方さえ覚えればフーリにも出来るよ? 多分マリーの風魔法でも似たような事出来るよ?
だが、とてもじゃないが今はそんな事を言えるような雰囲気じゃない。。
「解せぬ」
「あ、あはは……」
俺の呟きが聞こえていたのか、アルクの苦笑いが聞こえてきたが、その苦笑いは何に対してなのだろうか?
ちょっとだけ、本当にちょっとだけ気になりながらも、俺達は順調にリーグ山脈を進んで行った。
数時間後。
「思ったよりも進みが早いな。これなら日が暮れる前にはリーグ山脈を抜けれそうだ」
フーリの言う通り、ここまでの道中は特に魔物と遭遇する事もなく、俺達の歩く速度が速いのもあって、想像以上に山脈越えは順調だ。
考えてみれば俺達三人は冒険者だし、アルクも一応冒険者なのだから、普通の人よりも早い筈だ。
ワイバーンやワイルドボアが見れないのは残念だが、たまにはこうやって平和な日があってもいいのかもな。
考えたら今日まで魔物と戦わなかった日の方が明らかに少ないのだし。
「あ、オイ椎茸!」
「あ、こら待てマリー!」
そんな風に一人納得していたら、突然マリーが道を外れて走り出した。フーリが制止するのも聞かずに。
オイ椎茸って言ってたし、自生してるオイ椎茸でも見つけたのか? そう思ってマリーが向かう先に視線を向けると、確かにオイ椎茸が生えていた。
あんなのよく見つけたな。
「まったくマリーは」
「まあまあフーリ。山脈越えは予定よりも早く終わりそうなんだろ? 少しぐらい大目にみてもいいんじゃないか?」
予定よりも遅れてるなら話は別だけど、今の様子なら多少道草を食っても問題ないだろうし。
フーリの口振りからして、もうそんなにかからずに山脈越えは終わるのだろうからな。
「まあそれもそうだな。よし、この辺で休憩にでもするか。アルクもいいか?」
「あ、はい。私は別に問題ないですよ」
アルクも特に異論はないみたいで、特に文句を言う事もなかった。
「俺もだ。少し休け……っ 」
その時だった。俺の気配探知に突然魔物の気配が引っかかったのは。
しかもその場所は。
「マリー! 気を付――」
「邪魔しないで!」
けろ! という言葉は、俺の口から発せられる事はなかった。
何故なら、俺がマリーに声をかけるのと、マリーが猪の様な魔物を風魔法で切り裂くのは、まったくの同時だったからだ。
えぇ……。
「まったく。これは私が先に見つけたオイ椎茸なんだから、横取りなんて許しません!」
マリーの風魔法をモロに喰らった猪の魔物は、首と胴体を真っ二つに切り裂かれ、既に息絶えている。
その亡骸を一瞥したマリーは、再びオイ椎茸集めに戻っていった。
「今日は採れ立てのオイ椎茸が食べられる」
そんな事を呟いているが、だからと言って魔物とオイ椎茸を取り合わないで欲しいものだ。
「しっかりと周囲に気を配っていた様だし、今回は良しとするか」
マリーのそんな様子を見ながら、フーリはぼそりと呟いた。
良かったな、マリー。お咎めは無しみたいだぞ。
「……っ?」
マリーが一瞬だけビクッと体を強張らせたのを俺は見逃さなかった。
「あはは、ははっ」
そしてアルク、本日二度目の苦笑い。うん、マリーのアレを見ると、最初はそういう反応になるよな。よーく分かる。
マリーのオイ椎茸へかける情熱は相当な物だからな。
「カイトさん、コレ収納しておいて貰えますか? ついでにワイルドボアの死骸も収納しておいて欲しいんですけど」
一通りオイ椎茸を採集し終えたのか、マリーが両手いっぱいにオイ椎茸を抱えながら近付いてきた。
「ああ、別にいいけど……って、ワイルドボア 今のワイルドボアだったの 」
「え? ええ、そうですけど?」
まさかの事実に驚いてしまった。そうか、あれがワイルドボアだったのか。マリーが一撃で倒してしまったから、ほとんど見る事が出来なかったんだけど、アレがか。
とりあえず死骸は回収するけど、もっとまともに遭遇したかったな。
「収納っと」
ストレージにワイルドボアの死骸と魔石を収納し、次にマリーが抱えているオイ椎茸を収納する。
すると、今収納したオイ椎茸の項目に「オイ椎茸(上)」と出ている事に気が付いた。
「上? 上っていうと、これは普通のオイ椎茸よりも旨いって事になるのか?」
普通に考えればそうなんだろうけど、実際に食べてみない事には分からないよな。
「丁度いい時間ですし、これを使ってお昼にしませんか? 採れ立ては美味しいですよ」
マリーは手に持っているオイ椎茸を俺達に見せながら自信満々に提案してきた。まだ持ってたのか。
確かにこの「上」っていうのは気になるし、時間的に丁度いいのも否定しない。ていうかむしろ肯定する。
「そうだな。マリーの言う通り、ここで昼食にしようか」
「ああ。アルクもそれでいいか?」
「ええ、私は異論ありません」
アルクの賛成も得た事で、俺達は急遽早めの昼飯を食べる事にした。
俺と同郷なら、ドラゴンとかワイバーンは需要があると思うんだよな。だって地球にはいなくて、でも大体の人が知ってる空想上の生物。そんなのが実際に存在していると知って、果たして興味を持たないだろうか? いいや、持つ筈だ。
「召喚勇者もですか? ワイバーンがそんなに珍しいんでしょうか?」
正確にはワイバーンではなくドラゴンが、だけど。
でも、ワイバーンもかなり有名な部類だし、間違ってはいないだろう。
「あ、それ聞いた事あります。歴代の召喚勇者の方達は、ドラゴンやグリフォンなんかを見ると興奮するらしいって」
「え? そうなんですかアルクさん?」
俺がワイバーンに興味を示していると、前を歩くアルクが……なんかダジャレみたいだな。
と、とにかく! 召喚勇者がドラゴンなんかに興味を持っていたらしいという話をしてきた。
「ええ。なんでも、召喚勇者の方達が元居た世界には、そもそも魔物が存在しないらしいんです。それで、おとぎ話の中だけの存在である、ドラゴンやグリフォンに憧れがあるとか」
正確には、おとぎ話だけじゃなくて、創作物の中もだけど、そんな細かい事までツッコまなくてもいいか。
「へえ、そうなんですか。私達からすれば、ワイバーンなんて厄介な魔物でしかないんですけどね」
「厄介?」
何か特殊なスキルでも持っているのだろうか? それとも単に強いだけとか?
「ワイバーンは空を飛ぶからな。それに加えて知能もそこそこ高い。相手をするとなると、面倒な相手なんだよ」
俺がマリーに聞き返すと、それに答えてくれたのは先頭を歩くフーリだった。
「空を飛ぶ魔物はあまりいないからな。ワイバーンはそれだけで充分厄介な相手なんだ。「普通」は空を飛ぶ相手と戦うのは面倒だと感じるものだからな。「普通」は」
フーリが俺を見てやたらと「普通」を強調しているが、何でだ?
「私は弓も魔法も得意ですから比較的相手をするのは楽なんですけど、それでも「普通」は面倒ですからね」
マリーまで。まるでここに普通じゃない誰かがいるみたいな言い方じゃないか。そんな事を考えていると、二人からの呆れるような視線を感じた。
……え、俺? 俺は別に普通じゃない?
「いや、相手が飛ぶなら、こっちも飛べばいいだけじゃないのか?」
「その発想が普通じゃないんですよ!」
「空を飛べるのは、カイト君ぐらいだからな?」
二人して声を大にしてツッコんできた。いや、そうかもしれないけど。
でも、やり方さえ覚えればフーリにも出来るよ? 多分マリーの風魔法でも似たような事出来るよ?
だが、とてもじゃないが今はそんな事を言えるような雰囲気じゃない。。
「解せぬ」
「あ、あはは……」
俺の呟きが聞こえていたのか、アルクの苦笑いが聞こえてきたが、その苦笑いは何に対してなのだろうか?
ちょっとだけ、本当にちょっとだけ気になりながらも、俺達は順調にリーグ山脈を進んで行った。
数時間後。
「思ったよりも進みが早いな。これなら日が暮れる前にはリーグ山脈を抜けれそうだ」
フーリの言う通り、ここまでの道中は特に魔物と遭遇する事もなく、俺達の歩く速度が速いのもあって、想像以上に山脈越えは順調だ。
考えてみれば俺達三人は冒険者だし、アルクも一応冒険者なのだから、普通の人よりも早い筈だ。
ワイバーンやワイルドボアが見れないのは残念だが、たまにはこうやって平和な日があってもいいのかもな。
考えたら今日まで魔物と戦わなかった日の方が明らかに少ないのだし。
「あ、オイ椎茸!」
「あ、こら待てマリー!」
そんな風に一人納得していたら、突然マリーが道を外れて走り出した。フーリが制止するのも聞かずに。
オイ椎茸って言ってたし、自生してるオイ椎茸でも見つけたのか? そう思ってマリーが向かう先に視線を向けると、確かにオイ椎茸が生えていた。
あんなのよく見つけたな。
「まったくマリーは」
「まあまあフーリ。山脈越えは予定よりも早く終わりそうなんだろ? 少しぐらい大目にみてもいいんじゃないか?」
予定よりも遅れてるなら話は別だけど、今の様子なら多少道草を食っても問題ないだろうし。
フーリの口振りからして、もうそんなにかからずに山脈越えは終わるのだろうからな。
「まあそれもそうだな。よし、この辺で休憩にでもするか。アルクもいいか?」
「あ、はい。私は別に問題ないですよ」
アルクも特に異論はないみたいで、特に文句を言う事もなかった。
「俺もだ。少し休け……っ 」
その時だった。俺の気配探知に突然魔物の気配が引っかかったのは。
しかもその場所は。
「マリー! 気を付――」
「邪魔しないで!」
けろ! という言葉は、俺の口から発せられる事はなかった。
何故なら、俺がマリーに声をかけるのと、マリーが猪の様な魔物を風魔法で切り裂くのは、まったくの同時だったからだ。
えぇ……。
「まったく。これは私が先に見つけたオイ椎茸なんだから、横取りなんて許しません!」
マリーの風魔法をモロに喰らった猪の魔物は、首と胴体を真っ二つに切り裂かれ、既に息絶えている。
その亡骸を一瞥したマリーは、再びオイ椎茸集めに戻っていった。
「今日は採れ立てのオイ椎茸が食べられる」
そんな事を呟いているが、だからと言って魔物とオイ椎茸を取り合わないで欲しいものだ。
「しっかりと周囲に気を配っていた様だし、今回は良しとするか」
マリーのそんな様子を見ながら、フーリはぼそりと呟いた。
良かったな、マリー。お咎めは無しみたいだぞ。
「……っ?」
マリーが一瞬だけビクッと体を強張らせたのを俺は見逃さなかった。
「あはは、ははっ」
そしてアルク、本日二度目の苦笑い。うん、マリーのアレを見ると、最初はそういう反応になるよな。よーく分かる。
マリーのオイ椎茸へかける情熱は相当な物だからな。
「カイトさん、コレ収納しておいて貰えますか? ついでにワイルドボアの死骸も収納しておいて欲しいんですけど」
一通りオイ椎茸を採集し終えたのか、マリーが両手いっぱいにオイ椎茸を抱えながら近付いてきた。
「ああ、別にいいけど……って、ワイルドボア 今のワイルドボアだったの 」
「え? ええ、そうですけど?」
まさかの事実に驚いてしまった。そうか、あれがワイルドボアだったのか。マリーが一撃で倒してしまったから、ほとんど見る事が出来なかったんだけど、アレがか。
とりあえず死骸は回収するけど、もっとまともに遭遇したかったな。
「収納っと」
ストレージにワイルドボアの死骸と魔石を収納し、次にマリーが抱えているオイ椎茸を収納する。
すると、今収納したオイ椎茸の項目に「オイ椎茸(上)」と出ている事に気が付いた。
「上? 上っていうと、これは普通のオイ椎茸よりも旨いって事になるのか?」
普通に考えればそうなんだろうけど、実際に食べてみない事には分からないよな。
「丁度いい時間ですし、これを使ってお昼にしませんか? 採れ立ては美味しいですよ」
マリーは手に持っているオイ椎茸を俺達に見せながら自信満々に提案してきた。まだ持ってたのか。
確かにこの「上」っていうのは気になるし、時間的に丁度いいのも否定しない。ていうかむしろ肯定する。
「そうだな。マリーの言う通り、ここで昼食にしようか」
「ああ。アルクもそれでいいか?」
「ええ、私は異論ありません」
アルクの賛成も得た事で、俺達は急遽早めの昼飯を食べる事にした。
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