見た目は青年、心はアラサー、異世界に降り立つ! ~チートスキル「ストレージ」で異世界を満喫中~
四十話
「ふんふふーん」
なんか今日はやけに機嫌がいいな。何か良い事でもあったのか? 鼻歌まで歌っているし。
「それにしても、久しぶりですね」
「久しぶり?」
何が久しぶりだというのだろうか?
「夕飯ですよ。三人で一緒に食べるのなんて、随分久しぶりな気がして」
「ああ、なるほど。そういう事か。言われてみれば、確かに久しぶりかも」
マリーに言われて気付いたが、酒場の手伝いを始めてから、俺はマリー達と晩飯をとる事も無かったな。
二人はいつも酒場で晩飯を食べてたから、全然そんな気はしなかったけど。
まあ昼間は果ての洞窟に一緒に潜っているから、昼飯は一緒に食べてたんだけど。
「でしょう? 今日は久しぶりに三人での夕飯なんですからね! さあ、早く行きましょう!」
そう言うと、マリーは更に強く引っ張り、俺達は急ぎ足で酒場へと向かった。
「お待たせ、姉さん!」
「いや、大して待っていないが」
酒場に着くと、そこには既に席に座って待つフーリの姿があった。
「とりあえず適当に注文しておいたが、良かったか?」
「うん、大丈夫。ささ、カイトさんも座って下さい」
「ああ。待たせて悪かったなフーリ」
一足先に席に着いたマリーに促され、俺は二人の向かいの席へと腰を下ろし、フーリに一言謝った。
「いや、私もさっき来たばかりだから大丈夫だ」
「お待たせしました! ご注文のラガーです!」
フーリが答えるのと、アミィが三人分のラガーを席へと運んでくるのは、ほぼ同時だった。
タイミング良すぎじゃない? と思ったが、よく考えたら今はまだ店が混み始める前だ。出来るだけ混雑した時間を避ける為に、前はいつもこのぐらいの時間には酒場に来ていたっけ?
「来たか。さて、色々話さないといけない事もあるが、とりあえず今は乾杯といこうか」
フーリの言葉で俺とマリーが自分のコップを手に持つと。
「では、乾杯!」
「「乾杯!」」
フーリにつられて、俺とマリーも乾杯を返した。
そのままの勢いで、コップの中のラガーを一息に飲み干す。
「くぅっ、染みるなぁ」
そんなおっさん染みた感想が俺の口をついて出た。
いやだって、よく考えたらラガーなんて久しぶりだし、一気に飲み干したら大体こうなるって。
「あははっ。カイトさん、おじさんみたいですよ」
と、自分でもおっさん臭いと感じていたら、マリーからズバリ指摘されてしまった。
「大丈夫、自覚はある」
この手の話は下手に否定すると逆によくない。こういう時は素直に認めるに限る。
そうすれば、下手にツッコまれる事も。
「いや、それは若者としてどうなんだ?」
と、思っていたが、フーリにあっさりツッコまれてしまった。
いや、俺中身はおっさんだし。ある意味マリーの指摘は的を射ているのだから仕方がない。
「いいんだよ。俺がおっさん臭かったのは事実だし」
なんせ中身は立派なアラサー。反論の余地はないのだ。
「まあカイト君が良いというなら、私がとやかくいう必要は無いが」
フーリはそれだけ言うと、再び自分のラガーに口をつけている。
「それよりもだ。カイト君に大事な話がある」
「え? 俺に?」
フーリは残りのラガーを一息に飲み干すと、改めて俺の方に視線を向けて、そう切り出してきた。
突然改まって切り出されると、どうしたのか気になるじゃないか。
「実はアルクの護衛の話なんだが。少し予定を早めて欲しいらしい」
「あらま。そうなのか?」
何の話かと思ったが、護衛の話か。
アルクにも、何か事情があるのだろうし、別に予定を早めるのは構わないけど、問題はいつになるのかだ。
「それで、アルクは一体いつ頃に出発したいって?」
「一週間後だ」
一週間後か。思ったよりも早いな。てっきり、早めると言っても二~三日程度だろうと思ってたけど、一週間も早めて欲しいのか。
まあ俺としては特に問題は無いんだけど……。
「アミィはさっきから一体何をしてるんだ?」
「ぎくっ」
いや、ぎくって。それ実際に言う人間初めて見たぞ。
実はフーリの話が始まった頃から、アミィは俺のすぐ近くにいた。いたんだが、とりあえずフーリの話を聞いてからツッコもうと思い、放置していたのだ。
「それで、アミィは一体何をしてたんだ?」
「べ、別に何も!」
俺が尋ねると、アミィは慌てた様に誤魔化し。
「あ、いけない! 私まだ仕事があるから、もう行くね!」
「あ、おい」
まるで逃げるかの様にその場から立ち去って行った。いや、実際逃げたのか。
何だったんだ、一体?
「全くアミィは。心配なんかしなくても」
「本当にね。ちゃんとアミィちゃんにも教えてあげるのに」
「ん? 何か言ったか?」
足早に去っていったアミィから二人に意識を戻すと、何やら二人で何か話していた。
「いや、こっちの話だ」
「カイトさんは気にしなくて大丈夫ですよ」
「ん? そうか?」
最近二人が妙に小声で話す時があるんだよな。しかも俺には内緒みたいに。
はっ! もしかして俺って、実は体臭キツイとか? こっちに来てからという物、風呂……ていうか、湯船に全く浸かれていない。
この世界は基本的に水浴びだからな。湯船はおろか、シャワーすらこっちでは見た記憶がない。
もしもこの世界に風呂があるなら、是非とも手に入れたい所だけど、果たしてそう簡単に手に入るだろうか?
っと、いかんいかん。今は二人の話に集中しないと。
「それで、どうだろうか? カイト君は一週間後でも大丈夫か?」
「ああ、俺は特に問題は無いかな。二人は大丈夫なのか?」
俺はこれといってやる事はないけど、二人はもしかしたら違うかもしれない。そう思って尋ねてみたのだが。
「ああ、私は問題ない」
「私も特には」
との事。つまり、三人共問題は無いって事か。だったら話は決まりだな。
「よし、それじゃあアルクには一週間後で大丈夫だと伝えておこう。お、丁度いい頃合いだな」
話に一区切りがついた所で、フーリが視線を向けた先。
そこにはフーリが頼んだのであろう料理がたくさん載った、キッチンワゴンを押すアミィの姿があった。
って、キッチンワゴン?
「お待たせしました! イレーヌのお任せコースです!」
「イレーヌのお任せコース?」
初めて聞くメニューだな。少なくとも昨日まで酒場を手伝っていた時には聞いた事すらなかったメニューだ。
今日から始めた新メニューなのか、もしくは俗にいう裏メニューなのかは分からないが、それにしても凄い量だ。
テーブルの上に次々並んでいく料理の数々。
気が付くと、テーブルがいっぱいになるほどの料理が並んでいた。
……これ、三人で食べきれるか?
二人に視線を向けると、俺と同じ事を思ったみたいで、顔が引き攣っている。
「それじゃあ、ごゆっくり!」
アミィは俺達の表情を確認すると、とても良い笑顔で厨房へ去っていった。
後に残される、大量の料理。
「なあ、フーリさんや」
「こんな筈じゃなかったんだ」
俺がフーリに説明を求めようとすると、両手で顔を覆って嘆くフーリの姿が目に映った。
フーリがこんな風になってるのも珍しいな。
「……とりあえず食べましょうか。三人で食べればきっと食べきれますよ!」
マリーはまるで自分に言い聞かせるかの様に言うが、何か忘れてやしませんか?
アミィは確かに言ったんだ。イレーヌのお任せ「コース」って。つまりこれはコース料理。何で酒場にコース料理があるのか分からないが、そんな事、今は些細な問題。
重要なのは、これから更に料理が追加される可能性があるという点だ。
「……よし、気合入れるか!」
後の事なんて今考えたらダメだ! 今は目の前の料理を片付ける事に集中しなければ!
「すまない、こんな筈ではなかったんだ」
未だに嘆いているフーリには悪いが、今は放っておこう。その内勝手に復活するだろうし。
「いただきます!」
俺は目の前の料理を片付けるべく、フォークを手に持った。
まあ最悪の場合、食べきれない分はストレージに収納するしかないかな、これは。
次からは注文する前に量を確認してくれる事を祈りつつ、俺は料理を口へと運んだ。
量に問題はあるが、やはりイレーヌさんの料理は絶品だった。
尚、その日の夜は食べ過ぎで苦しんだのは言うまでもない。
なんか今日はやけに機嫌がいいな。何か良い事でもあったのか? 鼻歌まで歌っているし。
「それにしても、久しぶりですね」
「久しぶり?」
何が久しぶりだというのだろうか?
「夕飯ですよ。三人で一緒に食べるのなんて、随分久しぶりな気がして」
「ああ、なるほど。そういう事か。言われてみれば、確かに久しぶりかも」
マリーに言われて気付いたが、酒場の手伝いを始めてから、俺はマリー達と晩飯をとる事も無かったな。
二人はいつも酒場で晩飯を食べてたから、全然そんな気はしなかったけど。
まあ昼間は果ての洞窟に一緒に潜っているから、昼飯は一緒に食べてたんだけど。
「でしょう? 今日は久しぶりに三人での夕飯なんですからね! さあ、早く行きましょう!」
そう言うと、マリーは更に強く引っ張り、俺達は急ぎ足で酒場へと向かった。
「お待たせ、姉さん!」
「いや、大して待っていないが」
酒場に着くと、そこには既に席に座って待つフーリの姿があった。
「とりあえず適当に注文しておいたが、良かったか?」
「うん、大丈夫。ささ、カイトさんも座って下さい」
「ああ。待たせて悪かったなフーリ」
一足先に席に着いたマリーに促され、俺は二人の向かいの席へと腰を下ろし、フーリに一言謝った。
「いや、私もさっき来たばかりだから大丈夫だ」
「お待たせしました! ご注文のラガーです!」
フーリが答えるのと、アミィが三人分のラガーを席へと運んでくるのは、ほぼ同時だった。
タイミング良すぎじゃない? と思ったが、よく考えたら今はまだ店が混み始める前だ。出来るだけ混雑した時間を避ける為に、前はいつもこのぐらいの時間には酒場に来ていたっけ?
「来たか。さて、色々話さないといけない事もあるが、とりあえず今は乾杯といこうか」
フーリの言葉で俺とマリーが自分のコップを手に持つと。
「では、乾杯!」
「「乾杯!」」
フーリにつられて、俺とマリーも乾杯を返した。
そのままの勢いで、コップの中のラガーを一息に飲み干す。
「くぅっ、染みるなぁ」
そんなおっさん染みた感想が俺の口をついて出た。
いやだって、よく考えたらラガーなんて久しぶりだし、一気に飲み干したら大体こうなるって。
「あははっ。カイトさん、おじさんみたいですよ」
と、自分でもおっさん臭いと感じていたら、マリーからズバリ指摘されてしまった。
「大丈夫、自覚はある」
この手の話は下手に否定すると逆によくない。こういう時は素直に認めるに限る。
そうすれば、下手にツッコまれる事も。
「いや、それは若者としてどうなんだ?」
と、思っていたが、フーリにあっさりツッコまれてしまった。
いや、俺中身はおっさんだし。ある意味マリーの指摘は的を射ているのだから仕方がない。
「いいんだよ。俺がおっさん臭かったのは事実だし」
なんせ中身は立派なアラサー。反論の余地はないのだ。
「まあカイト君が良いというなら、私がとやかくいう必要は無いが」
フーリはそれだけ言うと、再び自分のラガーに口をつけている。
「それよりもだ。カイト君に大事な話がある」
「え? 俺に?」
フーリは残りのラガーを一息に飲み干すと、改めて俺の方に視線を向けて、そう切り出してきた。
突然改まって切り出されると、どうしたのか気になるじゃないか。
「実はアルクの護衛の話なんだが。少し予定を早めて欲しいらしい」
「あらま。そうなのか?」
何の話かと思ったが、護衛の話か。
アルクにも、何か事情があるのだろうし、別に予定を早めるのは構わないけど、問題はいつになるのかだ。
「それで、アルクは一体いつ頃に出発したいって?」
「一週間後だ」
一週間後か。思ったよりも早いな。てっきり、早めると言っても二~三日程度だろうと思ってたけど、一週間も早めて欲しいのか。
まあ俺としては特に問題は無いんだけど……。
「アミィはさっきから一体何をしてるんだ?」
「ぎくっ」
いや、ぎくって。それ実際に言う人間初めて見たぞ。
実はフーリの話が始まった頃から、アミィは俺のすぐ近くにいた。いたんだが、とりあえずフーリの話を聞いてからツッコもうと思い、放置していたのだ。
「それで、アミィは一体何をしてたんだ?」
「べ、別に何も!」
俺が尋ねると、アミィは慌てた様に誤魔化し。
「あ、いけない! 私まだ仕事があるから、もう行くね!」
「あ、おい」
まるで逃げるかの様にその場から立ち去って行った。いや、実際逃げたのか。
何だったんだ、一体?
「全くアミィは。心配なんかしなくても」
「本当にね。ちゃんとアミィちゃんにも教えてあげるのに」
「ん? 何か言ったか?」
足早に去っていったアミィから二人に意識を戻すと、何やら二人で何か話していた。
「いや、こっちの話だ」
「カイトさんは気にしなくて大丈夫ですよ」
「ん? そうか?」
最近二人が妙に小声で話す時があるんだよな。しかも俺には内緒みたいに。
はっ! もしかして俺って、実は体臭キツイとか? こっちに来てからという物、風呂……ていうか、湯船に全く浸かれていない。
この世界は基本的に水浴びだからな。湯船はおろか、シャワーすらこっちでは見た記憶がない。
もしもこの世界に風呂があるなら、是非とも手に入れたい所だけど、果たしてそう簡単に手に入るだろうか?
っと、いかんいかん。今は二人の話に集中しないと。
「それで、どうだろうか? カイト君は一週間後でも大丈夫か?」
「ああ、俺は特に問題は無いかな。二人は大丈夫なのか?」
俺はこれといってやる事はないけど、二人はもしかしたら違うかもしれない。そう思って尋ねてみたのだが。
「ああ、私は問題ない」
「私も特には」
との事。つまり、三人共問題は無いって事か。だったら話は決まりだな。
「よし、それじゃあアルクには一週間後で大丈夫だと伝えておこう。お、丁度いい頃合いだな」
話に一区切りがついた所で、フーリが視線を向けた先。
そこにはフーリが頼んだのであろう料理がたくさん載った、キッチンワゴンを押すアミィの姿があった。
って、キッチンワゴン?
「お待たせしました! イレーヌのお任せコースです!」
「イレーヌのお任せコース?」
初めて聞くメニューだな。少なくとも昨日まで酒場を手伝っていた時には聞いた事すらなかったメニューだ。
今日から始めた新メニューなのか、もしくは俗にいう裏メニューなのかは分からないが、それにしても凄い量だ。
テーブルの上に次々並んでいく料理の数々。
気が付くと、テーブルがいっぱいになるほどの料理が並んでいた。
……これ、三人で食べきれるか?
二人に視線を向けると、俺と同じ事を思ったみたいで、顔が引き攣っている。
「それじゃあ、ごゆっくり!」
アミィは俺達の表情を確認すると、とても良い笑顔で厨房へ去っていった。
後に残される、大量の料理。
「なあ、フーリさんや」
「こんな筈じゃなかったんだ」
俺がフーリに説明を求めようとすると、両手で顔を覆って嘆くフーリの姿が目に映った。
フーリがこんな風になってるのも珍しいな。
「……とりあえず食べましょうか。三人で食べればきっと食べきれますよ!」
マリーはまるで自分に言い聞かせるかの様に言うが、何か忘れてやしませんか?
アミィは確かに言ったんだ。イレーヌのお任せ「コース」って。つまりこれはコース料理。何で酒場にコース料理があるのか分からないが、そんな事、今は些細な問題。
重要なのは、これから更に料理が追加される可能性があるという点だ。
「……よし、気合入れるか!」
後の事なんて今考えたらダメだ! 今は目の前の料理を片付ける事に集中しなければ!
「すまない、こんな筈ではなかったんだ」
未だに嘆いているフーリには悪いが、今は放っておこう。その内勝手に復活するだろうし。
「いただきます!」
俺は目の前の料理を片付けるべく、フォークを手に持った。
まあ最悪の場合、食べきれない分はストレージに収納するしかないかな、これは。
次からは注文する前に量を確認してくれる事を祈りつつ、俺は料理を口へと運んだ。
量に問題はあるが、やはりイレーヌさんの料理は絶品だった。
尚、その日の夜は食べ過ぎで苦しんだのは言うまでもない。
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