見た目は青年、心はアラサー、異世界に降り立つ! ~チートスキル「ストレージ」で異世界を満喫中~
二十話
「いやいや、俺が好きでやってる事なんだし、流石に悪いって」
俺は別に誰かに言われてやっているのではなく、あくまで好きで酒場の手伝いをしているんだ。
なのにそれを二人に代わって貰うのは流石に悪い。けど、折角の厚意なんだ。変に断るのも逆に悪い気がする。
「遠慮するなカイト君。困った時はお互い様だろう?」
「そうですよ。調子が悪いなら、無理しないで休んで下さい」
二人が俺を気遣う言葉をかけてくれるのが心に染みる。そうだな、折角の二人の厚意だ。ここはありがたく代わって貰おうかな。
「二人共……ありがとう。それじゃあ悪いんだけど、今日は二人に酒場の手伝いをお願いしてもいいか?」
俺が二人にお願いすると、二人は笑顔で頷き。
「ああ、もちろんだとも」
「任せて下さい、カイトさん!」
二人は二つ返事で引き受けてくれた。
「ありがとう、二人共。それじゃあ今日は早めに晩飯を済ませて部屋で休む事にするよ」
俺は二人に感謝し、今日はゆっくり休む事に決めた。
「それにしても、さっきの頭痛は一体何だったんだ?」
俺はついさっき襲った謎の頭痛の原因を考えた。
確か頭痛がする前は……あれ?
「何考えてたんだっけ?」
何だか大事な事を考えていた気がするんだけど、何を考えていたのかイマイチ思い出せない。
眩暈と頭痛がする前は確かに覚えていた筈なのに、今はまるで頭にモヤでもかかっているかの様に思い出せない。
「……ま、いいか。重要な事ならその内思い出すだろ」
思い出せないっていう事は、つまり大した事じゃないという事だ。そう考える事にしよう。
「どうしたんですか、カイトさん? まだ具合が悪いとか?」
「ん? あ、いや、別にそういう訳じゃないんだ」
俺がずっと「うんうん」と唸っていたからか、またもマリーに心配をかけてしまった様だ。
「……うん、もう大丈夫。さあ、今日はもう宿に戻ろう」
俺は多少強引に話を終わらせ、賢者の息吹へ向けて歩き出した。
だって何を考えてたか思い出せないなんて、余計に二人を心配させてしまうだけだろうし。
二人は未だに心配するような視線を俺に向けながらも、何も言わず黙って俺について来てくれた。
「え? お兄ちゃん具合悪いの!?」
宿に戻って一度二人と別れ、アミィに今日の酒場の手伝いは二人に代わって貰う事を伝えるついでに、何か軽く食べられる物は無いか尋ねに来たのだが、アミィは俺の具合が悪いと知るや否や、他の事そっちのけで俺の心配をしてきた。
「ああ、大丈夫。ちょっと眩暈と軽い頭痛がしただけだから。そんなに騒ぐ程の事じゃないよ」
俺はアミィに心配かけない様、何でもない事の様に語った。実際その二つだけで、他は特に異常はなかったのだから間違いじゃない。
「眩暈と頭痛!? 早く部屋に戻って安静にしないと!」
アミィは俺の背中を押して部屋に戻る様必死に促してきた。いやいや、そんな大げさな。ていうか何か食べたくて酒場に来たんだけど?
「な、なあアミィ。出来れば何か食べたいんだけど」
「そんなの私が何か作って持って行くから! だからお兄ちゃんは部屋で寝てて!」
「お、おう、分かった。分かったから」
重病人待遇じゃないですか。別にそこまで調子が悪い訳じゃないんだけど?
でも、アミィはそう思っていない様で、さっきからずっと俺の背中を押しっぱなしだ。
「どうしたんですか、カイトさん?」
この状況をどうしようかと考えていた時、俺に話しかけるマリーの声が酒場内に響き渡った。
マリー、丁度いい所に!
「いや、アミィが俺を重病人扱いしてくるんだよ。もうそんなに調子も悪くないのに」
俺はマリーに、どういう状況なのかを説明した。そうする事でマリーが助け舟を出してくれると信じて。
だが、マリーの口から出たのは予想外の言葉だった。
「カイトさん、ここは素直にアミィちゃんのいう事に従いましょう」
「ほら、マリーさんもこう言ってるよ! だから早く!」
「あれぇ!? マリーはどっちの味方なの!?」
まさかの裏切り!? マリーは俺の味方だと思ってたのに!
「ほら、早く部屋に戻って下さい!」
「ご飯なら私がちゃんと持って行くから!」
アミィだけでなく、マリーまでもが背中を押し始めた。
くぅっ、どうしてこうなった。俺はただ早めの晩飯を食べに来ただけなのに!
って、マリーさん!? あなた口元が笑ってますけど!?
絶対面白がってやってるだろマリー!
「くっ、俺はそんなに重病人なんかじゃないんだって!」
二対一とはいえ、勝てると思わない事だ。俺はここで晩飯を食べるまで部屋に戻らないからな!
「騒々しいな。一体何の騒ぎだ?」
二人に抵抗していると、外にまで声が漏れていたのか、フーリが呆れ顔で酒場に入ってきた。
これは、チャンス!
「た、助けてフーリ! この二人が俺を重病人扱いしてくるんだ!」
俺は今酒場に来たばかりのフーリに助けを求めた。フーリならきっと、この二人が大げさだって分かってくれる筈だ。マリーに関しては分かってやってる疑惑はあるけれども。
俺が助けを求めると、フーリは俺達三人をしばらく観察し。
「さあ、カイト君。部屋に戻ろうか」
フーリまでもが二人に加勢し始めた。
フーリよ、お前もか!
敵が三人に増えた事で、向こうが優勢になってしまったが、それでも最後まで抵抗して見せる!
「もう、お兄ちゃん! いいから部屋に戻って大人しく寝ててよ! そしたら、その……」
アミィは一瞬口籠ったが、意を決したかの様に顔を上げ。
「私が付きっ切りで看病してあげるから!!」
そう叫んだ。
その言葉に、マリーとフーリは呆気に取られた表情をしており、アミィは何故か顔を赤くして、両目をギュッと瞑っている。
え? どういう状況? っていうか、アミィは酒場の仕事があるんだから、付きっ切りで看病とか無理だよね?
とりあえず、アミィは何か誤解している様だし、その辺はハッキリしておかないと。
「いや、だからねアミィ。俺は別にそこまで重病人って訳じゃないんだって。看病までして貰わなくても大丈夫だから」
既に眩暈や頭痛は治まっている。大事を取って今日早めに寝れば明日の朝には回復するだろう。
そういう意味でアミィに説明したんだが、言葉足らずだったか?
アミィは口をポカーンと開け、呆然としている。
どしたん? 急に黙り込んじゃって。
「カイトさん、今のはないです」
「だな。流石にアミィがかわいそうだ」
二人が俺の事を非難するような視線を向けてきた。いや、だって本当の事じゃん。何が鈍いって言うんだろうか?
俺が二人に尋ねようとした所。
「アミィ、一体どうしたの? 厨房まで声が聞こえてきたわよ?」
厨房の奥から騒ぎを聞きつけたのであろうイレーヌさんが姿を現した。
「あ、お母さん……そうだ!」
アミィはイレーヌさんが酒場に現れると、何か思いついたのか、イレーヌさんの元まで駆け寄って行った。
「お母さん、今日お兄ちゃん、具合が良くないんだって」
「あらあら、そうなんですか?」
アミィの言葉に、イレーヌさんは驚いた様な視線を俺に向けてきた。
「ええ、まあ。実は昼間に軽い眩暈と頭痛がしまして。今はもうどうもないんですけど、この三人が俺の事を重病人みたいに扱ってくるんですよ。何とか言って下さい」
俺はイレーヌさんを味方に付けようしたが。
「カイトさん、そういうのは甘く見ない方がいいですよ。今はたまたま調子がいいだけで、後から具合が急変する事だってあり得るんですから」
今までで一番の「正論」という名の武器でぶん殴られてた。
「そ、それは……そうかもしれませんけど」
「ですから、今日は大人しく部屋に戻って安静にしておきましょうね。夕飯なら後で部屋に持って行きますから」
「……そうですね」
これには俺も流石に返す言葉が見つからない。だってイレーヌさんの言ってる事は間違いなく正しい。しかも、有無を言わさず部屋に戻そうとするのではなく、諭す様な言葉を選んでくれているのだ。俺の事を気遣って。
これには流石に頷くしかない。
まあ晩飯は部屋に持って来てくれるっていうし、ここは素直に部屋に戻るしかないか。
俺は四人に見送られ、素直に酒場を後にしようとして。
「お母さん。お兄ちゃんにはとってもお世話になったし、酒場が閉まるまでの間、お兄ちゃんの看病をしててくれない?」
アミィが突然イレーヌさんに俺の看病を頼み始めた。いや、さっきと言ってる事違うじゃん。
俺は別に誰かに言われてやっているのではなく、あくまで好きで酒場の手伝いをしているんだ。
なのにそれを二人に代わって貰うのは流石に悪い。けど、折角の厚意なんだ。変に断るのも逆に悪い気がする。
「遠慮するなカイト君。困った時はお互い様だろう?」
「そうですよ。調子が悪いなら、無理しないで休んで下さい」
二人が俺を気遣う言葉をかけてくれるのが心に染みる。そうだな、折角の二人の厚意だ。ここはありがたく代わって貰おうかな。
「二人共……ありがとう。それじゃあ悪いんだけど、今日は二人に酒場の手伝いをお願いしてもいいか?」
俺が二人にお願いすると、二人は笑顔で頷き。
「ああ、もちろんだとも」
「任せて下さい、カイトさん!」
二人は二つ返事で引き受けてくれた。
「ありがとう、二人共。それじゃあ今日は早めに晩飯を済ませて部屋で休む事にするよ」
俺は二人に感謝し、今日はゆっくり休む事に決めた。
「それにしても、さっきの頭痛は一体何だったんだ?」
俺はついさっき襲った謎の頭痛の原因を考えた。
確か頭痛がする前は……あれ?
「何考えてたんだっけ?」
何だか大事な事を考えていた気がするんだけど、何を考えていたのかイマイチ思い出せない。
眩暈と頭痛がする前は確かに覚えていた筈なのに、今はまるで頭にモヤでもかかっているかの様に思い出せない。
「……ま、いいか。重要な事ならその内思い出すだろ」
思い出せないっていう事は、つまり大した事じゃないという事だ。そう考える事にしよう。
「どうしたんですか、カイトさん? まだ具合が悪いとか?」
「ん? あ、いや、別にそういう訳じゃないんだ」
俺がずっと「うんうん」と唸っていたからか、またもマリーに心配をかけてしまった様だ。
「……うん、もう大丈夫。さあ、今日はもう宿に戻ろう」
俺は多少強引に話を終わらせ、賢者の息吹へ向けて歩き出した。
だって何を考えてたか思い出せないなんて、余計に二人を心配させてしまうだけだろうし。
二人は未だに心配するような視線を俺に向けながらも、何も言わず黙って俺について来てくれた。
「え? お兄ちゃん具合悪いの!?」
宿に戻って一度二人と別れ、アミィに今日の酒場の手伝いは二人に代わって貰う事を伝えるついでに、何か軽く食べられる物は無いか尋ねに来たのだが、アミィは俺の具合が悪いと知るや否や、他の事そっちのけで俺の心配をしてきた。
「ああ、大丈夫。ちょっと眩暈と軽い頭痛がしただけだから。そんなに騒ぐ程の事じゃないよ」
俺はアミィに心配かけない様、何でもない事の様に語った。実際その二つだけで、他は特に異常はなかったのだから間違いじゃない。
「眩暈と頭痛!? 早く部屋に戻って安静にしないと!」
アミィは俺の背中を押して部屋に戻る様必死に促してきた。いやいや、そんな大げさな。ていうか何か食べたくて酒場に来たんだけど?
「な、なあアミィ。出来れば何か食べたいんだけど」
「そんなの私が何か作って持って行くから! だからお兄ちゃんは部屋で寝てて!」
「お、おう、分かった。分かったから」
重病人待遇じゃないですか。別にそこまで調子が悪い訳じゃないんだけど?
でも、アミィはそう思っていない様で、さっきからずっと俺の背中を押しっぱなしだ。
「どうしたんですか、カイトさん?」
この状況をどうしようかと考えていた時、俺に話しかけるマリーの声が酒場内に響き渡った。
マリー、丁度いい所に!
「いや、アミィが俺を重病人扱いしてくるんだよ。もうそんなに調子も悪くないのに」
俺はマリーに、どういう状況なのかを説明した。そうする事でマリーが助け舟を出してくれると信じて。
だが、マリーの口から出たのは予想外の言葉だった。
「カイトさん、ここは素直にアミィちゃんのいう事に従いましょう」
「ほら、マリーさんもこう言ってるよ! だから早く!」
「あれぇ!? マリーはどっちの味方なの!?」
まさかの裏切り!? マリーは俺の味方だと思ってたのに!
「ほら、早く部屋に戻って下さい!」
「ご飯なら私がちゃんと持って行くから!」
アミィだけでなく、マリーまでもが背中を押し始めた。
くぅっ、どうしてこうなった。俺はただ早めの晩飯を食べに来ただけなのに!
って、マリーさん!? あなた口元が笑ってますけど!?
絶対面白がってやってるだろマリー!
「くっ、俺はそんなに重病人なんかじゃないんだって!」
二対一とはいえ、勝てると思わない事だ。俺はここで晩飯を食べるまで部屋に戻らないからな!
「騒々しいな。一体何の騒ぎだ?」
二人に抵抗していると、外にまで声が漏れていたのか、フーリが呆れ顔で酒場に入ってきた。
これは、チャンス!
「た、助けてフーリ! この二人が俺を重病人扱いしてくるんだ!」
俺は今酒場に来たばかりのフーリに助けを求めた。フーリならきっと、この二人が大げさだって分かってくれる筈だ。マリーに関しては分かってやってる疑惑はあるけれども。
俺が助けを求めると、フーリは俺達三人をしばらく観察し。
「さあ、カイト君。部屋に戻ろうか」
フーリまでもが二人に加勢し始めた。
フーリよ、お前もか!
敵が三人に増えた事で、向こうが優勢になってしまったが、それでも最後まで抵抗して見せる!
「もう、お兄ちゃん! いいから部屋に戻って大人しく寝ててよ! そしたら、その……」
アミィは一瞬口籠ったが、意を決したかの様に顔を上げ。
「私が付きっ切りで看病してあげるから!!」
そう叫んだ。
その言葉に、マリーとフーリは呆気に取られた表情をしており、アミィは何故か顔を赤くして、両目をギュッと瞑っている。
え? どういう状況? っていうか、アミィは酒場の仕事があるんだから、付きっ切りで看病とか無理だよね?
とりあえず、アミィは何か誤解している様だし、その辺はハッキリしておかないと。
「いや、だからねアミィ。俺は別にそこまで重病人って訳じゃないんだって。看病までして貰わなくても大丈夫だから」
既に眩暈や頭痛は治まっている。大事を取って今日早めに寝れば明日の朝には回復するだろう。
そういう意味でアミィに説明したんだが、言葉足らずだったか?
アミィは口をポカーンと開け、呆然としている。
どしたん? 急に黙り込んじゃって。
「カイトさん、今のはないです」
「だな。流石にアミィがかわいそうだ」
二人が俺の事を非難するような視線を向けてきた。いや、だって本当の事じゃん。何が鈍いって言うんだろうか?
俺が二人に尋ねようとした所。
「アミィ、一体どうしたの? 厨房まで声が聞こえてきたわよ?」
厨房の奥から騒ぎを聞きつけたのであろうイレーヌさんが姿を現した。
「あ、お母さん……そうだ!」
アミィはイレーヌさんが酒場に現れると、何か思いついたのか、イレーヌさんの元まで駆け寄って行った。
「お母さん、今日お兄ちゃん、具合が良くないんだって」
「あらあら、そうなんですか?」
アミィの言葉に、イレーヌさんは驚いた様な視線を俺に向けてきた。
「ええ、まあ。実は昼間に軽い眩暈と頭痛がしまして。今はもうどうもないんですけど、この三人が俺の事を重病人みたいに扱ってくるんですよ。何とか言って下さい」
俺はイレーヌさんを味方に付けようしたが。
「カイトさん、そういうのは甘く見ない方がいいですよ。今はたまたま調子がいいだけで、後から具合が急変する事だってあり得るんですから」
今までで一番の「正論」という名の武器でぶん殴られてた。
「そ、それは……そうかもしれませんけど」
「ですから、今日は大人しく部屋に戻って安静にしておきましょうね。夕飯なら後で部屋に持って行きますから」
「……そうですね」
これには俺も流石に返す言葉が見つからない。だってイレーヌさんの言ってる事は間違いなく正しい。しかも、有無を言わさず部屋に戻そうとするのではなく、諭す様な言葉を選んでくれているのだ。俺の事を気遣って。
これには流石に頷くしかない。
まあ晩飯は部屋に持って来てくれるっていうし、ここは素直に部屋に戻るしかないか。
俺は四人に見送られ、素直に酒場を後にしようとして。
「お母さん。お兄ちゃんにはとってもお世話になったし、酒場が閉まるまでの間、お兄ちゃんの看病をしててくれない?」
アミィが突然イレーヌさんに俺の看病を頼み始めた。いや、さっきと言ってる事違うじゃん。
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