見た目は青年、心はアラサー、異世界に降り立つ! ~チートスキル「ストレージ」で異世界を満喫中~
十九話
小手とプレート。プレートっていうと、漫画やアニメなんかで急所に装着してある、あのプレートの事だよな?
「ガンツさん、一応確認なんですけど。プレートっていうと、最低限の急所なんかを守る防具の事ですか?」
「あん? そりゃそうだろ。防具って聞いて、他にどんなプレートがあるってんだ?」
「ですよねぇ」
やっぱりあのプレートで間違いない様だ。
つまり、それらをベルトか何かで繋げて身に付けるようにするって事だろう。
「それか、胸当てなんかもアリだと思うが」
胸当てかぁ。確かにそれもアリだな。ついでに肩パッドまで装備すれば、某戦闘民族の戦闘服を再現出来るな!
……うん、鎖帷子とプレートでいいわ。
「それじゃあ、」
「あ、それならいっそ魔鉄で服を作って貰うとかどうですか?」
俺が鎖帷子とプレートでお願いしようとすると、そこにマリーが新たな提案を差し込んできた。
差し込んできたんだが……服? 魔鉄で服なんて作れるのか? 鎖帷子が辛うじて服みたいな形状をしているが、あれは服というには少々無理がある。
「なあ、魔鉄で服って、一体どうやって作るんだ?」
そもそも金属で服を作るなんて想像もつかず、服を提案してきたマリーに尋ねてみる事にした。
「どうやってって、魔鉄を糸状に加工して、服を作る時と同じ要領で編んでいくんですよ。これなら軽くて動きやすいし、魔力を流せば防御力も充分です」
「なるほど、服か。なかなかいいアイディアだな、マリーの嬢ちゃん」
マリーの「服」というアイディアに、ガンツさんも納得している様子だ。ガンツさんも納得するって事は、防具として充分機能するって事だよな?
確かに服なら普段から着ていられるし、邪魔に感じる事もないだろう。
「ちなみに、私が今着ている服も、少量ですがミスリルが織り込んであるんですよ」
「え、そうなのか?」
「はい、そうなんです。本当にごく少量ですけどね」
マリーの服にミスリルが。正直ただの服だと思ってたから意外だ。でも、そうか。自分の服が防具として機能しているからあんなアイディアが出たのか。
何でマリーは防具を身に付けないのかと思ってたけど、これで理解出来た。
「カイト君は鎧みたいな、いかにも「防具です」といった装備よりも、そういう自然に動ける様な物の方が性に合ってると私も思うぞ」
フーリもマリーのアイディア賛成らしい。
いつも一緒に前衛に立つフーリの言葉はとても貴重だ。第三者の目っていうのは自分で思っている以上に大事だし。
「そうだな。ガンツさん、魔鉄で服って作れますか?」
さっきのガンツさんの口ぶりからして、間違いなく作れるんだろうけど、念の為確認してみた。
「ああ、問題ねえな。どうする? 魔鉄で服を作るか? それか、インナーを魔鉄で作って、その上から普段着か別の防具を重ねて着るって選択肢もあるが?」
あ、そういう選択肢もあるのか。確かに魔鉄で作るなら、服だろうがインナーだろうが大した違いはないだろう。
それなら、インナーを作って貰って、上から別の防具なり普段着なりを着れる様にしておいた方が良さそうだ。
「それじゃあインナーでお願いします。それと、一応鎖帷子とプレートの製作もお願い出来ますか?」
確かにインナーは便利で使い安そうだけど、だからといって、他の防具を用意しない理由にはならない。
それを理解したのか、ガンツさんは俺の言葉を聞いてニヤリと笑い。
「おう、任せな! 鎖帷子とプレート、それにインナーだな。この俺が最高の物を用意してやるぜ!」
ガンツさんは自分の胸をドンッと叩き、ニカッと笑った。たったそれだけの事なのに「この人に任せれば大丈夫」と、そんな安心感を抱かせる笑顔だった。
「カイトの防具は決まりとして、二人はどうする? 何か希望はあるかい?」
俺の防具があらかた決まると、今度はフーリとマリーの防具を決めようとするガンツさん。
ガンツさんの問いかけに、二人は少し考えた後。
「そうですね。それじゃあいい機会ですから、私にもインナーを作って貰えますか?」
フーリは俺と同じくインナーを注文した。フーリも俺と同じで、どっしり構えて迎え撃つのではなく、自由に動き回って戦うタイプだから、防具は軽い方がいいのだろう。
そういう意味では「いい機会」なのは間違いない。
そしてマリーだが。
「私もインナーをお願いできますか?」
「あいよ。二人共インナーのみだな」
と、マリーもインナーを注文していた。
意外だ。こう言ってはなんだが、マリーは後衛なのだから、もっとガッツリ防具を揃えた方がいいのではないだろうか?
だが、マリーが考えた末にそう判断したのなら、そこには何かしら理由があるのだろう。そう思い、俺は口を挟むのをやめた。
「それじゃあ俺はこれから三人の防具製作にとりかかる。大体一週間はかかるから、それまでは今までの防具を使っておいてくれ」
「分かりました。それでは私達はこれで失礼します。行こう、マリー、カイト君」
防具の注文が終わると、フーリはすぐに店から出て行こうとする。
もう少し話をしてからでもいいんじゃないかとも思ったが、恐らく「ガンツさんに最高の防具を作って貰いたいから」という気持ちが強いのだろう。
だからこそ、少しでも時間を無駄にしたくない、という気持ちが伝わってくる。
それを理解したからこそ、俺達はそれに素直に頷き、そのままフーリの後を追う形で店を出ようとする。
「お邪魔しました」
「防具、お願いしますね」
「おう、またな!」
店を出る前にガンツさんに一言声をかけ、俺達はガンツ武具店を後にした。
「一週間か、丁度いい。八層の攻略も終わった事だ。今日から一週間、冒険は休みにしないか?」
ガンツ武具店を出てから宿に戻る道すがら、フーリからそんな提案を受けた。
休みか。そういえばこっちに来てから一度も取ってなかったな。二週間以上、一日も休まずに仕事(冒険)か。
……うん、休みって大切だよな! 俺はブラック勤めなんて二度とごめんだ!
「いいな、休み! 果ての洞窟探索も丁度キリが良いし、取ろう! 休み! ビバ休み!」
だからこそ、俺は全力でフーリの提案に乗っかる事にした。
「カイトさん、随分乗り気ですね。でも、私も賛成です。最近は手持ちも結構潤ってますから、一週間ぐらい休んでも問題ありません」
そしてマリーもこの提案に賛成の様だ。
満場一致の賛成。これはもう決まりだな。
「よし、それじゃあ明日から防具が出来上がるまでの間は、冒険は休みにしよう。それでいいな?」
「「賛成!」」
俺とマリーは全く同じ返事をフーリに返し、急ではあるが明日から約一週間の休みが決定した。
さて、久しぶりの連休だ。何をして過ごそうかな?
……あれ? デジャヴ?
なんかこの世界に転移する前もこんな事を考えてた気がするんだけど。確かあの時は、久々の二連休にテンションが上がってて、どう過ごすか考えてたんだよな。
それで、いっそ家族みんなで出かけるのもアリだって考えて……家族みんな?
あれ? 俺の家族って、確か光以外……。
「うっ!」
俺は突然の眩暈に襲われ、体がふらつくのを感じた。思わず足を止め、額を押さえる。
「カイトさん? どうしたんですか?」
「大丈夫か?」
そんな俺の様子に気が付いたのか、二人の心配するような声が聞こえてきた。
「あ、ああ、少し眩暈がしただけだ。疲れてるのかな?」
俺は二人に心配をかけない様、無難な答えを返した。
「そうですか? でも、凄く顔色が悪いですけど」
「大丈夫大丈夫。今日は少し早めに休むことにするから」
今日は店の手伝いをしたら、いつもより早めに寝よう。そうすれば、明日はまた元通りになる筈だ。
「カイト君、今日は私達が酒場の手伝いをするから、君は早めに休んだ方がいい」
そんな事を考えていたら、フーリが俺の代わりに酒場の手伝いをすると言い出した。
「ガンツさん、一応確認なんですけど。プレートっていうと、最低限の急所なんかを守る防具の事ですか?」
「あん? そりゃそうだろ。防具って聞いて、他にどんなプレートがあるってんだ?」
「ですよねぇ」
やっぱりあのプレートで間違いない様だ。
つまり、それらをベルトか何かで繋げて身に付けるようにするって事だろう。
「それか、胸当てなんかもアリだと思うが」
胸当てかぁ。確かにそれもアリだな。ついでに肩パッドまで装備すれば、某戦闘民族の戦闘服を再現出来るな!
……うん、鎖帷子とプレートでいいわ。
「それじゃあ、」
「あ、それならいっそ魔鉄で服を作って貰うとかどうですか?」
俺が鎖帷子とプレートでお願いしようとすると、そこにマリーが新たな提案を差し込んできた。
差し込んできたんだが……服? 魔鉄で服なんて作れるのか? 鎖帷子が辛うじて服みたいな形状をしているが、あれは服というには少々無理がある。
「なあ、魔鉄で服って、一体どうやって作るんだ?」
そもそも金属で服を作るなんて想像もつかず、服を提案してきたマリーに尋ねてみる事にした。
「どうやってって、魔鉄を糸状に加工して、服を作る時と同じ要領で編んでいくんですよ。これなら軽くて動きやすいし、魔力を流せば防御力も充分です」
「なるほど、服か。なかなかいいアイディアだな、マリーの嬢ちゃん」
マリーの「服」というアイディアに、ガンツさんも納得している様子だ。ガンツさんも納得するって事は、防具として充分機能するって事だよな?
確かに服なら普段から着ていられるし、邪魔に感じる事もないだろう。
「ちなみに、私が今着ている服も、少量ですがミスリルが織り込んであるんですよ」
「え、そうなのか?」
「はい、そうなんです。本当にごく少量ですけどね」
マリーの服にミスリルが。正直ただの服だと思ってたから意外だ。でも、そうか。自分の服が防具として機能しているからあんなアイディアが出たのか。
何でマリーは防具を身に付けないのかと思ってたけど、これで理解出来た。
「カイト君は鎧みたいな、いかにも「防具です」といった装備よりも、そういう自然に動ける様な物の方が性に合ってると私も思うぞ」
フーリもマリーのアイディア賛成らしい。
いつも一緒に前衛に立つフーリの言葉はとても貴重だ。第三者の目っていうのは自分で思っている以上に大事だし。
「そうだな。ガンツさん、魔鉄で服って作れますか?」
さっきのガンツさんの口ぶりからして、間違いなく作れるんだろうけど、念の為確認してみた。
「ああ、問題ねえな。どうする? 魔鉄で服を作るか? それか、インナーを魔鉄で作って、その上から普段着か別の防具を重ねて着るって選択肢もあるが?」
あ、そういう選択肢もあるのか。確かに魔鉄で作るなら、服だろうがインナーだろうが大した違いはないだろう。
それなら、インナーを作って貰って、上から別の防具なり普段着なりを着れる様にしておいた方が良さそうだ。
「それじゃあインナーでお願いします。それと、一応鎖帷子とプレートの製作もお願い出来ますか?」
確かにインナーは便利で使い安そうだけど、だからといって、他の防具を用意しない理由にはならない。
それを理解したのか、ガンツさんは俺の言葉を聞いてニヤリと笑い。
「おう、任せな! 鎖帷子とプレート、それにインナーだな。この俺が最高の物を用意してやるぜ!」
ガンツさんは自分の胸をドンッと叩き、ニカッと笑った。たったそれだけの事なのに「この人に任せれば大丈夫」と、そんな安心感を抱かせる笑顔だった。
「カイトの防具は決まりとして、二人はどうする? 何か希望はあるかい?」
俺の防具があらかた決まると、今度はフーリとマリーの防具を決めようとするガンツさん。
ガンツさんの問いかけに、二人は少し考えた後。
「そうですね。それじゃあいい機会ですから、私にもインナーを作って貰えますか?」
フーリは俺と同じくインナーを注文した。フーリも俺と同じで、どっしり構えて迎え撃つのではなく、自由に動き回って戦うタイプだから、防具は軽い方がいいのだろう。
そういう意味では「いい機会」なのは間違いない。
そしてマリーだが。
「私もインナーをお願いできますか?」
「あいよ。二人共インナーのみだな」
と、マリーもインナーを注文していた。
意外だ。こう言ってはなんだが、マリーは後衛なのだから、もっとガッツリ防具を揃えた方がいいのではないだろうか?
だが、マリーが考えた末にそう判断したのなら、そこには何かしら理由があるのだろう。そう思い、俺は口を挟むのをやめた。
「それじゃあ俺はこれから三人の防具製作にとりかかる。大体一週間はかかるから、それまでは今までの防具を使っておいてくれ」
「分かりました。それでは私達はこれで失礼します。行こう、マリー、カイト君」
防具の注文が終わると、フーリはすぐに店から出て行こうとする。
もう少し話をしてからでもいいんじゃないかとも思ったが、恐らく「ガンツさんに最高の防具を作って貰いたいから」という気持ちが強いのだろう。
だからこそ、少しでも時間を無駄にしたくない、という気持ちが伝わってくる。
それを理解したからこそ、俺達はそれに素直に頷き、そのままフーリの後を追う形で店を出ようとする。
「お邪魔しました」
「防具、お願いしますね」
「おう、またな!」
店を出る前にガンツさんに一言声をかけ、俺達はガンツ武具店を後にした。
「一週間か、丁度いい。八層の攻略も終わった事だ。今日から一週間、冒険は休みにしないか?」
ガンツ武具店を出てから宿に戻る道すがら、フーリからそんな提案を受けた。
休みか。そういえばこっちに来てから一度も取ってなかったな。二週間以上、一日も休まずに仕事(冒険)か。
……うん、休みって大切だよな! 俺はブラック勤めなんて二度とごめんだ!
「いいな、休み! 果ての洞窟探索も丁度キリが良いし、取ろう! 休み! ビバ休み!」
だからこそ、俺は全力でフーリの提案に乗っかる事にした。
「カイトさん、随分乗り気ですね。でも、私も賛成です。最近は手持ちも結構潤ってますから、一週間ぐらい休んでも問題ありません」
そしてマリーもこの提案に賛成の様だ。
満場一致の賛成。これはもう決まりだな。
「よし、それじゃあ明日から防具が出来上がるまでの間は、冒険は休みにしよう。それでいいな?」
「「賛成!」」
俺とマリーは全く同じ返事をフーリに返し、急ではあるが明日から約一週間の休みが決定した。
さて、久しぶりの連休だ。何をして過ごそうかな?
……あれ? デジャヴ?
なんかこの世界に転移する前もこんな事を考えてた気がするんだけど。確かあの時は、久々の二連休にテンションが上がってて、どう過ごすか考えてたんだよな。
それで、いっそ家族みんなで出かけるのもアリだって考えて……家族みんな?
あれ? 俺の家族って、確か光以外……。
「うっ!」
俺は突然の眩暈に襲われ、体がふらつくのを感じた。思わず足を止め、額を押さえる。
「カイトさん? どうしたんですか?」
「大丈夫か?」
そんな俺の様子に気が付いたのか、二人の心配するような声が聞こえてきた。
「あ、ああ、少し眩暈がしただけだ。疲れてるのかな?」
俺は二人に心配をかけない様、無難な答えを返した。
「そうですか? でも、凄く顔色が悪いですけど」
「大丈夫大丈夫。今日は少し早めに休むことにするから」
今日は店の手伝いをしたら、いつもより早めに寝よう。そうすれば、明日はまた元通りになる筈だ。
「カイト君、今日は私達が酒場の手伝いをするから、君は早めに休んだ方がいい」
そんな事を考えていたら、フーリが俺の代わりに酒場の手伝いをすると言い出した。
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