見た目は青年、心はアラサー、異世界に降り立つ! ~チートスキル「ストレージ」で異世界を満喫中~
四十二話
「お願い出来ますか?」
俺を見上げる形のマリーは、少し申し訳なさそうにしている。
「いや、まあそれは構わないけど」
ストレージ画面を開き、スライムの魔石から「酸魔法」を抽出し、それをゴブリンの魔石と組み合わせると「酸の魔石」と「酸の魔導石」の二つの選択肢が現れた。
ん? 魔導石ってなんぞ?
とりあえず「酸の魔導石」を生産して取り出し、鑑定をかけてみると「酸の魔導石:酸魔法が付与された魔導石。魔導具の核として使用出来る」と表示された。
マジか。つまり、魔導石=魔核みたいな使い方が出来るって事?
……あれ? これ本格的に魔核いらなくね?
だって魔核って現状魔導具を作る以外に使い道ないし。俺は魔核がなくても魔導具が作れる。
……でもなぁ。なんかありそうなんだよな、魔核って。とりあえず魔核の件は保留かな。
で、この魔導石を……トレントの木材と鉄鉱石と組み合わせてみるか。
俺の予想通りなら、アレが出来る筈だけど。
ストレージからその三つを選択すると「酸の魔導杖」と出てきた。
よし、一先ず成功だな。
早速ストレージから酸の魔導杖を取り出し、それをマリーに手渡した。
「はい、酸の魔導杖。多分魔導具になってる筈だけど」
「魔導杖? って、これ魔導具なんですか?」
「うん、多分」
マリーの武器は杖と弓だから、もしもの時に予備の武器としても使えると思ったんだけど。
「凄く立派な杖ですね。これは今使っている杖より立派かもしれません」
「え? そんなに?」
確かにトレントの木材を使いはしたけど、そこまで?
「はい。造りもしっかりしていますし、軽くて使いやすそうです。これが魔導具だなんて信じられないくらいです」
マジか。そんなに良い杖なのかコレ。
「とりあえず、魔導具のお礼をしないとですね」
マリーが自分の財布を取り出し、中身の確認を始めたので、俺は慌ててそれを止めに入った。
「いやいや、いいってこのぐらい! 別に大した事してないから!」
流石にお金を貰うのは違うだろ。同じパーティの仲間なんだし、出来ればそれはしたくない。
「でも、こんなに立派な魔導具を貰ったんですから、何かお礼をしないと」
俺の言葉にマリーは一度財布を仕舞ってくれたのだが、それでも納得出来ないのか、何かお礼をしたいという。
うーん、確かにマリーのいう事も分かるんだけど。
「……そうだ。それならマリーに一つお願いがあるんだけど」
「お願いですか? いいですよ、私に出来る事なら何でもします」
「ん? 今なんでもするって言った?」
「え? え、ええ、言いましたけど」
おっと、いかんいかん。ついネタで返してしまったが、マリー――ていうか、この世界の人間にこのネタが通用する訳ないよな。
「いや、ごめん。今の言葉は忘れてくれ」
「は、はあ」
訳が分からないといった様にマリーは小首を傾げた。
「それで、お願いなんだけど、マリーって料理出来るか?」
「料理ですか? まあ人並みには出来るつもりですけど」
「そうか。あのな、時間がある時でいいから、時々俺に料理を教えてくれないか?」
俺がそう言うと、マリーはおろか、フーリまで目を丸くして俺に視線を向けた。
「カイト君、急にどうしたんだ? どこか具合でも悪いのか?」
フーリは主に俺の頭を見ながら。
「そうですよ。何か悪い物でも食べちゃったんですか? もしかして毒キノコを 」
マリーも俺の頭を見ながらそんな事をのたまう。
「違うわ! 俺は健康そのものだよ! 別に頭がおかしくなった訳じゃないから!」
失礼すぎるだろこの二人。
俺が料理を教わるのが、そんなに変か?
「あ、すみません、てっきり冗談かと。でも、何で急に料理なんですか?」
あ、やっぱりそこ気になっちゃう?
「実は今朝イレーヌさんの手伝いしている時に、料理面で全然役に立てなくてさ。地味に悔しかったから、いい機会だし覚えようかと」
「なるほど、そういう事か」
俺の言葉にフーリが納得顔で頷いている。
何を納得したかは分からないけど。
「そういう事なら、協力したらどうだマリー?」
フーリの言葉にマリーもいちど頷き。
「うん、そうだね。そういう事なら。私が教えられる範囲で良いなら協力しますね」
「ありがとう、助かるよ」
イレーヌさんに教えて貰ってもいいんだけど、まだまだ本調子じゃないのに無理をさせる訳にはいかない。
ていうか、活性化の魔導具一つであそこまで回復しただけでも奇跡だよな。
アミィはまだまだ宿の事で忙しいだろうし、俺に料理を教える時間はないだろう。
「それじゃあ、お願いしていいかマリー?」
「はい、大丈夫ですよ!」
マリーは二つ返事で了承してくれた。日本にいた頃から全くと言っていい程やった事が無かった料理を、まさか異世界で習う事になるとは。
人生は何があるか分からないものだ。いや、この展開は流石に予想できないだろうけど。
マリーとフーリは一度ガンツさんの所に寄ってから、新しい魔導具の試し打ちをしてくるとの事で、今俺は自室で昨日入手した魔石の確認をしていた。
「お兄ちゃん、何か食べたい物ある?」
「いや、大丈夫だよ」
アミィが隣にいる状態で。
二人と別れた後、一度自室に戻ろうとしたら後ろから声をかけられ、そのまま一緒に俺の部屋まで来て、今に至るという訳だ。
アミィの様子は今朝までのしおらしさを残しつつも、少しずつ調子を取り戻してきている様だ。
ただ、何というか、今のアミィは俺の事を全肯定してきそうで少し怖い。
「お兄ちゃん、マッサージしてあげようか?」
「いや、今は大丈夫。ありがとな」
俺が断ると、目に見えて落ち込むアミィ。それを横目に、俺は魔石の整理を続けようとしたのだが。
(き、気まずい)
今のアミィは何かと俺の世話を焼こうとしては、俺が断ってシュンとなる、というのを繰り返している。
本当に、今日のアミィはどうしたんだ?
タイミング的にイレーヌさんが関係しているとは思うんだけど。こうなったら直接聞いてみるか。
「なあ、アミィ」
「何、お兄ちゃん?」
満面の、でもどこか照れの混じった笑顔で返事をするアミィ。
その様子は、話しかけられただけで嬉しい、といった感情がありありと伝わってくる。
「あー、その、なんだ。今日は随分と俺の世話を焼こうとしてくるけど、何かあったのか?」
「え?」
俺が尋ねると、アミィは一度目を丸くして、それから徐々にその頬を赤く染め始めた。
「えっと、ね。お兄ちゃんがくれた魔導具のおかげで、お母さんが歩ける様になったでしょ? それに、今朝はお母さんの手伝いをしてくれて、朝食の用意までしてくれたし」
朝飯はイレーヌさんが用意したんだけどな。ツッコむのは野暮か。
「ああ、まあそうだな。俺もまさか、イレーヌさんがこんなに早く回復するなんて思ってもみなかったしな」
実際イレーヌさんの回復速度は異常だ。いくら活性化の魔導具を持っているからと言っても、衰えた筋力まですぐに元通りという訳にはいかないと思っていたんだけど。
やっぱり元Aランク冒険者だけあって、普段から鍛えていたとか?
正直そのぐらいしか思いつかない。
「でしょ。昨日お母さんが自分の足で歩いてきたのだって、夢でも見てるんじゃないかって思ったし」
アミィの言葉は続く。俺はそれに黙って耳を傾ける。
「でも、今朝私が寝坊して、大慌てで酒場に来たら、お母さんがキッチンに立ってたの。昔みたいに。それで「ああ、夢じゃないんだ」って改めて思って。それで、これはお兄ちゃんのおかげなんだって思ったら、もう我慢出来なくなっちゃって」
……なるほど。つまり、アミィがさっきから俺の世話を焼こうとしていたのは、一種の恩返しだったって訳か。
だとしたら、少し悪い事をしたかな。ここはちゃんとアミィの気持ちには応えないと。
「アミィ」
「っ!? な、なあに、お兄ちゃん?」
俺が声をかけると、突然の事に驚いたのか、アミィは声を上ずらせながら返事を返してきた。
一瞬の静寂が部屋を支配する。そして……。
俺を見上げる形のマリーは、少し申し訳なさそうにしている。
「いや、まあそれは構わないけど」
ストレージ画面を開き、スライムの魔石から「酸魔法」を抽出し、それをゴブリンの魔石と組み合わせると「酸の魔石」と「酸の魔導石」の二つの選択肢が現れた。
ん? 魔導石ってなんぞ?
とりあえず「酸の魔導石」を生産して取り出し、鑑定をかけてみると「酸の魔導石:酸魔法が付与された魔導石。魔導具の核として使用出来る」と表示された。
マジか。つまり、魔導石=魔核みたいな使い方が出来るって事?
……あれ? これ本格的に魔核いらなくね?
だって魔核って現状魔導具を作る以外に使い道ないし。俺は魔核がなくても魔導具が作れる。
……でもなぁ。なんかありそうなんだよな、魔核って。とりあえず魔核の件は保留かな。
で、この魔導石を……トレントの木材と鉄鉱石と組み合わせてみるか。
俺の予想通りなら、アレが出来る筈だけど。
ストレージからその三つを選択すると「酸の魔導杖」と出てきた。
よし、一先ず成功だな。
早速ストレージから酸の魔導杖を取り出し、それをマリーに手渡した。
「はい、酸の魔導杖。多分魔導具になってる筈だけど」
「魔導杖? って、これ魔導具なんですか?」
「うん、多分」
マリーの武器は杖と弓だから、もしもの時に予備の武器としても使えると思ったんだけど。
「凄く立派な杖ですね。これは今使っている杖より立派かもしれません」
「え? そんなに?」
確かにトレントの木材を使いはしたけど、そこまで?
「はい。造りもしっかりしていますし、軽くて使いやすそうです。これが魔導具だなんて信じられないくらいです」
マジか。そんなに良い杖なのかコレ。
「とりあえず、魔導具のお礼をしないとですね」
マリーが自分の財布を取り出し、中身の確認を始めたので、俺は慌ててそれを止めに入った。
「いやいや、いいってこのぐらい! 別に大した事してないから!」
流石にお金を貰うのは違うだろ。同じパーティの仲間なんだし、出来ればそれはしたくない。
「でも、こんなに立派な魔導具を貰ったんですから、何かお礼をしないと」
俺の言葉にマリーは一度財布を仕舞ってくれたのだが、それでも納得出来ないのか、何かお礼をしたいという。
うーん、確かにマリーのいう事も分かるんだけど。
「……そうだ。それならマリーに一つお願いがあるんだけど」
「お願いですか? いいですよ、私に出来る事なら何でもします」
「ん? 今なんでもするって言った?」
「え? え、ええ、言いましたけど」
おっと、いかんいかん。ついネタで返してしまったが、マリー――ていうか、この世界の人間にこのネタが通用する訳ないよな。
「いや、ごめん。今の言葉は忘れてくれ」
「は、はあ」
訳が分からないといった様にマリーは小首を傾げた。
「それで、お願いなんだけど、マリーって料理出来るか?」
「料理ですか? まあ人並みには出来るつもりですけど」
「そうか。あのな、時間がある時でいいから、時々俺に料理を教えてくれないか?」
俺がそう言うと、マリーはおろか、フーリまで目を丸くして俺に視線を向けた。
「カイト君、急にどうしたんだ? どこか具合でも悪いのか?」
フーリは主に俺の頭を見ながら。
「そうですよ。何か悪い物でも食べちゃったんですか? もしかして毒キノコを 」
マリーも俺の頭を見ながらそんな事をのたまう。
「違うわ! 俺は健康そのものだよ! 別に頭がおかしくなった訳じゃないから!」
失礼すぎるだろこの二人。
俺が料理を教わるのが、そんなに変か?
「あ、すみません、てっきり冗談かと。でも、何で急に料理なんですか?」
あ、やっぱりそこ気になっちゃう?
「実は今朝イレーヌさんの手伝いしている時に、料理面で全然役に立てなくてさ。地味に悔しかったから、いい機会だし覚えようかと」
「なるほど、そういう事か」
俺の言葉にフーリが納得顔で頷いている。
何を納得したかは分からないけど。
「そういう事なら、協力したらどうだマリー?」
フーリの言葉にマリーもいちど頷き。
「うん、そうだね。そういう事なら。私が教えられる範囲で良いなら協力しますね」
「ありがとう、助かるよ」
イレーヌさんに教えて貰ってもいいんだけど、まだまだ本調子じゃないのに無理をさせる訳にはいかない。
ていうか、活性化の魔導具一つであそこまで回復しただけでも奇跡だよな。
アミィはまだまだ宿の事で忙しいだろうし、俺に料理を教える時間はないだろう。
「それじゃあ、お願いしていいかマリー?」
「はい、大丈夫ですよ!」
マリーは二つ返事で了承してくれた。日本にいた頃から全くと言っていい程やった事が無かった料理を、まさか異世界で習う事になるとは。
人生は何があるか分からないものだ。いや、この展開は流石に予想できないだろうけど。
マリーとフーリは一度ガンツさんの所に寄ってから、新しい魔導具の試し打ちをしてくるとの事で、今俺は自室で昨日入手した魔石の確認をしていた。
「お兄ちゃん、何か食べたい物ある?」
「いや、大丈夫だよ」
アミィが隣にいる状態で。
二人と別れた後、一度自室に戻ろうとしたら後ろから声をかけられ、そのまま一緒に俺の部屋まで来て、今に至るという訳だ。
アミィの様子は今朝までのしおらしさを残しつつも、少しずつ調子を取り戻してきている様だ。
ただ、何というか、今のアミィは俺の事を全肯定してきそうで少し怖い。
「お兄ちゃん、マッサージしてあげようか?」
「いや、今は大丈夫。ありがとな」
俺が断ると、目に見えて落ち込むアミィ。それを横目に、俺は魔石の整理を続けようとしたのだが。
(き、気まずい)
今のアミィは何かと俺の世話を焼こうとしては、俺が断ってシュンとなる、というのを繰り返している。
本当に、今日のアミィはどうしたんだ?
タイミング的にイレーヌさんが関係しているとは思うんだけど。こうなったら直接聞いてみるか。
「なあ、アミィ」
「何、お兄ちゃん?」
満面の、でもどこか照れの混じった笑顔で返事をするアミィ。
その様子は、話しかけられただけで嬉しい、といった感情がありありと伝わってくる。
「あー、その、なんだ。今日は随分と俺の世話を焼こうとしてくるけど、何かあったのか?」
「え?」
俺が尋ねると、アミィは一度目を丸くして、それから徐々にその頬を赤く染め始めた。
「えっと、ね。お兄ちゃんがくれた魔導具のおかげで、お母さんが歩ける様になったでしょ? それに、今朝はお母さんの手伝いをしてくれて、朝食の用意までしてくれたし」
朝飯はイレーヌさんが用意したんだけどな。ツッコむのは野暮か。
「ああ、まあそうだな。俺もまさか、イレーヌさんがこんなに早く回復するなんて思ってもみなかったしな」
実際イレーヌさんの回復速度は異常だ。いくら活性化の魔導具を持っているからと言っても、衰えた筋力まですぐに元通りという訳にはいかないと思っていたんだけど。
やっぱり元Aランク冒険者だけあって、普段から鍛えていたとか?
正直そのぐらいしか思いつかない。
「でしょ。昨日お母さんが自分の足で歩いてきたのだって、夢でも見てるんじゃないかって思ったし」
アミィの言葉は続く。俺はそれに黙って耳を傾ける。
「でも、今朝私が寝坊して、大慌てで酒場に来たら、お母さんがキッチンに立ってたの。昔みたいに。それで「ああ、夢じゃないんだ」って改めて思って。それで、これはお兄ちゃんのおかげなんだって思ったら、もう我慢出来なくなっちゃって」
……なるほど。つまり、アミィがさっきから俺の世話を焼こうとしていたのは、一種の恩返しだったって訳か。
だとしたら、少し悪い事をしたかな。ここはちゃんとアミィの気持ちには応えないと。
「アミィ」
「っ!? な、なあに、お兄ちゃん?」
俺が声をかけると、突然の事に驚いたのか、アミィは声を上ずらせながら返事を返してきた。
一瞬の静寂が部屋を支配する。そして……。
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