見た目は青年、心はアラサー、異世界に降り立つ! ~チートスキル「ストレージ」で異世界を満喫中~
三十五話
衝撃の事実判明。この少女はユキだった。
いやいや、まさかそんな。だってユキは猫なのよ? そんな事ある訳が無い。いや、もしかしたら、ユキって名前の全然関係ない女の子かもしれない。
「ねえ、もう一度聞くわね。あなたは私の「愛猫の」ユキなの?」
「うん、だからそう言ったよご主人」
私はあえて「愛猫の」を強調して聞いたのに、それでもユキは肯定した。
見た所嘘を言っている様には見えない。
でも、だからといって安易に信じる事も出来ない。
「え? この子……え? この子がさっきの猫ちゃん?」
隣の橋本さんも、あまりの衝撃に動揺を禁じ得ないみたいだ。
「ねえ、あなたが本当にユキだっていうのなら、何かそれを証明できるものは無い?」
「しょうめい?」
私がユキに尋ねると、ユキは言葉の意味が分からないのか、小首を傾げて頭に「?」を浮かべていた。
「えっと、証明っていうのは、それが本当だって相手に信じて貰う事よ」
厳密には少し違うのかもしれないけど、とりあえず意味合いとしては間違っていない筈だ。
「え、私はユキだよ? ご主人信じてないの?」
「え? いや、別にそういう訳じゃ」
ユキのあまりにもストレートな物言いに、私はつい否定しそうになってしまった。
いやいや、これはユキの為にもはっきりしておかないといけない問題なのよ? ここでハッキリさせておかないと。
「と、とにかく、本当にユキだって証明して貰わないと。例えば、今私の目の前で猫の姿に戻るとか出来ないの?」
そう、要はユキの言っている事を信じるに足る根拠さえあればいいのだ。それだけなら、決して難しい話ではない筈。
「猫の姿? 猫に戻ればいいの?」
私が言いたい事を理解したのか、ユキがその場で目を瞑ると、ユキの体を包むように淡い光が発生し、次の瞬間、ユキは元の白猫の姿に戻っていた。
「ほ、本当にユキの姿になってる」
「まさか、こんな事が……」
私と橋本さんは驚きのあまり、ただただユキの姿を眺めている事しか出来なかった。
と、その場でユキがジャンプしながらクルッと一回転すると、さっきと同様に淡い光に包まれ、ユキが再び人間の姿に戻っていた。
「どう、ご主人? これで信じてくれた?」
「え、ええ、そうね」
流石にこんなものを見せられてまでユキの事を疑おうとは思わない。
「えへへ、良かった。それじゃあご飯の続き、食べていい?」
「……いいわよ」
「やったー!」
私が食べていいと言うと、ユキは満面の笑みで喜びながら、焼き魚に齧り付いていた。
対する私はその様子をただ黙って眺めていた。が、しばらく見ていると、やがてどうでも良くなってしまった。
「まあ、ユキが、別人? 別猫? になった訳じゃないし、いっか」
「え? いいんですか!?」
橋本さんは驚いている様だったけど、よく考えたらこれって別に大した問題じゃないのよね。
「ええ、よく考えたら、別に人間になろうがなりまいが、私にとってユキはユキですから」
それでユキが全く別の存在になるのなら問題だけど、別にそういう感じもないし、現状特に問題はない。
「何というか、光さんって肝が据わっていますね。私ならもっと取り乱していますよ」
「まあ、今は他に考えないといけない事があるっていうのも大きいですけどね」
この世界の事とか、兄さんの事とか。
もっと優先するべき問題があるからこそ取り乱してないというのもある。
「そういうものですかねぇ?」
「そういうものですよ。それより、私達も頂きましょう」
そう言ってテーブルの上のサンドイッチを掴んで一口齧る。
「美味しい……」
そのサンドイッチは、葉物野菜と薄切り肉が挟んであり、ケチャップの様に真っ赤な、少しピリッとした辛みのあるソースを絡めてある、極普通のサンドイッチに見えた。
でも、使っている素材が一級品なのか、噛めば噛むほど旨味が溢れ出してくる。
「ですよね。ここの料理って、どれもとっても美味しくて、つい食べ過ぎちゃうんですよ」
確かに、他の料理もこんなに美味しいのだとしたら、つい食べ過ぎるというのも納得出来る。それぐらいこのサンドイッチは美味しい。
ふと気になってユキの方を見ると、焼き魚が乗っていた皿をぺろぺろと舐めて……。
「アウトー!」
「きゃっ」
ユキの行動を見て、思わず叫んでしまったら、向かいの席に座っていた橋本さんが驚いて小さな悲鳴を上げてしまった。
「あ、ごめんなさい。つい」
「い、いえ、大丈夫です。それより、どうしたんですか?」
「いえ、ユキの姿を見て、ちょっと」
「ユキちゃんですか? 一体何が……ああ、そういう」
橋本さんも今のユキの状態を見て察してくれたらしい。
床に置かれた焼き魚。同じく床に座って手掴みで焼き魚に齧り付き(人間の姿)食べ終わった皿を舐めるユキ(人間の姿)。隣で普通に食事をする二人。
誰がどう見てもいじめの現行犯だ。もしくは奴隷と主人の様に見えるだろうか?
どっちにしろ最悪の勘違いをされてしまう現場だった。
この部屋に他に誰もいないで助かっ……。
「失礼、そろそろ国王との謁見の時間だが、彼女は起き……」
「「……」」
「んー?」
突如部屋に入ってきた謎の爽やか系イケメン男子は、私達とユキの姿を見た瞬間、言葉を失い固まっていた。
対する私達も、イジメの現場(誤解)をバッチリ見られた事で同じく固まってしまう。
唯一この場で状況を理解してないユキだけが、突然微動だにしなくなった私達を、不思議そうに眺めていた。
そして何を思ったのか、ユキは「閃いた」といった具合に自分の皿を私達に差し出してきて。
「ご主人、もっと食べたい!」
何を勘違いしたのか、おかわりを要求してきたのだ。
ただ、この状況でそんな言い方をされると、色々と良くない。
「無事に目を覚まされた様で何よりです。ただ、二人共こう言ってはなんですが、あまりこういう事は感心しないというか」
「「誤解です!!」」
私と橋本さんの声が見事にシンクロした瞬間だった。
数分後
「はあ、まあ事情は大体理解しましたけど」
私達は何とか御剣圭太君(彼の名前らしい)の誤解を解き、何とか事無きを得た。
最初にユキに猫の姿に戻る様に指示したのが良かったのだろう。
比較的スムーズに説明する事が出来た。
その後、御剣君は。
「これから国王との謁見があるから、準備が出来たら僕の部屋に集まって下さい」
とだけ言い残し、そのまま部屋を出て行った。
何というか、御剣君は生まれついてのリーダー気質とでも言うのだろうか?
どんな場所でも常に皆のまとめ役をしていそうな雰囲気だった。
橋本さんがメガネの似合うおとなしい図書委員タイプだとしたら、御剣君は爽やか生徒会長の様な感じね、
そして二人共私より年下。高校生ぐらいに見える。
「そういえば、御剣君も召喚勇者なんですよね? 召喚勇者って何人いるんですか?」
「召喚勇者ですか? 召喚されたのは私達三人だったので、多分三人だけですね」
「あ、そうなんですか」
勇者っていうと、普通は一人ってイメージだったんだけど。
複数人の勇者って、この世界では当たり前なのかしら?
「それより、そろそろ行きませんか?」
「ええ、そうですね。行きましょうか」
橋本さんに促され、私は席を立ち。
「ユキ、私と橋本さんはちょっと出かけて来るから、この部屋で大人しく待ってるのよ?」
「うん、分かったよご主人!」
ベッドの上で寝っ転がり、丸くなりながら手を上げて応えるユキ。今は人間の姿だけど、ベッドの上で丸くなる姿は、完全に猫のそれだった。
まあ、ユキは昔から言う事をよく聞く猫だったから問題ないかな?
そう考え、私と橋本さんは二人で御剣君の部屋へと向かった。
いやいや、まさかそんな。だってユキは猫なのよ? そんな事ある訳が無い。いや、もしかしたら、ユキって名前の全然関係ない女の子かもしれない。
「ねえ、もう一度聞くわね。あなたは私の「愛猫の」ユキなの?」
「うん、だからそう言ったよご主人」
私はあえて「愛猫の」を強調して聞いたのに、それでもユキは肯定した。
見た所嘘を言っている様には見えない。
でも、だからといって安易に信じる事も出来ない。
「え? この子……え? この子がさっきの猫ちゃん?」
隣の橋本さんも、あまりの衝撃に動揺を禁じ得ないみたいだ。
「ねえ、あなたが本当にユキだっていうのなら、何かそれを証明できるものは無い?」
「しょうめい?」
私がユキに尋ねると、ユキは言葉の意味が分からないのか、小首を傾げて頭に「?」を浮かべていた。
「えっと、証明っていうのは、それが本当だって相手に信じて貰う事よ」
厳密には少し違うのかもしれないけど、とりあえず意味合いとしては間違っていない筈だ。
「え、私はユキだよ? ご主人信じてないの?」
「え? いや、別にそういう訳じゃ」
ユキのあまりにもストレートな物言いに、私はつい否定しそうになってしまった。
いやいや、これはユキの為にもはっきりしておかないといけない問題なのよ? ここでハッキリさせておかないと。
「と、とにかく、本当にユキだって証明して貰わないと。例えば、今私の目の前で猫の姿に戻るとか出来ないの?」
そう、要はユキの言っている事を信じるに足る根拠さえあればいいのだ。それだけなら、決して難しい話ではない筈。
「猫の姿? 猫に戻ればいいの?」
私が言いたい事を理解したのか、ユキがその場で目を瞑ると、ユキの体を包むように淡い光が発生し、次の瞬間、ユキは元の白猫の姿に戻っていた。
「ほ、本当にユキの姿になってる」
「まさか、こんな事が……」
私と橋本さんは驚きのあまり、ただただユキの姿を眺めている事しか出来なかった。
と、その場でユキがジャンプしながらクルッと一回転すると、さっきと同様に淡い光に包まれ、ユキが再び人間の姿に戻っていた。
「どう、ご主人? これで信じてくれた?」
「え、ええ、そうね」
流石にこんなものを見せられてまでユキの事を疑おうとは思わない。
「えへへ、良かった。それじゃあご飯の続き、食べていい?」
「……いいわよ」
「やったー!」
私が食べていいと言うと、ユキは満面の笑みで喜びながら、焼き魚に齧り付いていた。
対する私はその様子をただ黙って眺めていた。が、しばらく見ていると、やがてどうでも良くなってしまった。
「まあ、ユキが、別人? 別猫? になった訳じゃないし、いっか」
「え? いいんですか!?」
橋本さんは驚いている様だったけど、よく考えたらこれって別に大した問題じゃないのよね。
「ええ、よく考えたら、別に人間になろうがなりまいが、私にとってユキはユキですから」
それでユキが全く別の存在になるのなら問題だけど、別にそういう感じもないし、現状特に問題はない。
「何というか、光さんって肝が据わっていますね。私ならもっと取り乱していますよ」
「まあ、今は他に考えないといけない事があるっていうのも大きいですけどね」
この世界の事とか、兄さんの事とか。
もっと優先するべき問題があるからこそ取り乱してないというのもある。
「そういうものですかねぇ?」
「そういうものですよ。それより、私達も頂きましょう」
そう言ってテーブルの上のサンドイッチを掴んで一口齧る。
「美味しい……」
そのサンドイッチは、葉物野菜と薄切り肉が挟んであり、ケチャップの様に真っ赤な、少しピリッとした辛みのあるソースを絡めてある、極普通のサンドイッチに見えた。
でも、使っている素材が一級品なのか、噛めば噛むほど旨味が溢れ出してくる。
「ですよね。ここの料理って、どれもとっても美味しくて、つい食べ過ぎちゃうんですよ」
確かに、他の料理もこんなに美味しいのだとしたら、つい食べ過ぎるというのも納得出来る。それぐらいこのサンドイッチは美味しい。
ふと気になってユキの方を見ると、焼き魚が乗っていた皿をぺろぺろと舐めて……。
「アウトー!」
「きゃっ」
ユキの行動を見て、思わず叫んでしまったら、向かいの席に座っていた橋本さんが驚いて小さな悲鳴を上げてしまった。
「あ、ごめんなさい。つい」
「い、いえ、大丈夫です。それより、どうしたんですか?」
「いえ、ユキの姿を見て、ちょっと」
「ユキちゃんですか? 一体何が……ああ、そういう」
橋本さんも今のユキの状態を見て察してくれたらしい。
床に置かれた焼き魚。同じく床に座って手掴みで焼き魚に齧り付き(人間の姿)食べ終わった皿を舐めるユキ(人間の姿)。隣で普通に食事をする二人。
誰がどう見てもいじめの現行犯だ。もしくは奴隷と主人の様に見えるだろうか?
どっちにしろ最悪の勘違いをされてしまう現場だった。
この部屋に他に誰もいないで助かっ……。
「失礼、そろそろ国王との謁見の時間だが、彼女は起き……」
「「……」」
「んー?」
突如部屋に入ってきた謎の爽やか系イケメン男子は、私達とユキの姿を見た瞬間、言葉を失い固まっていた。
対する私達も、イジメの現場(誤解)をバッチリ見られた事で同じく固まってしまう。
唯一この場で状況を理解してないユキだけが、突然微動だにしなくなった私達を、不思議そうに眺めていた。
そして何を思ったのか、ユキは「閃いた」といった具合に自分の皿を私達に差し出してきて。
「ご主人、もっと食べたい!」
何を勘違いしたのか、おかわりを要求してきたのだ。
ただ、この状況でそんな言い方をされると、色々と良くない。
「無事に目を覚まされた様で何よりです。ただ、二人共こう言ってはなんですが、あまりこういう事は感心しないというか」
「「誤解です!!」」
私と橋本さんの声が見事にシンクロした瞬間だった。
数分後
「はあ、まあ事情は大体理解しましたけど」
私達は何とか御剣圭太君(彼の名前らしい)の誤解を解き、何とか事無きを得た。
最初にユキに猫の姿に戻る様に指示したのが良かったのだろう。
比較的スムーズに説明する事が出来た。
その後、御剣君は。
「これから国王との謁見があるから、準備が出来たら僕の部屋に集まって下さい」
とだけ言い残し、そのまま部屋を出て行った。
何というか、御剣君は生まれついてのリーダー気質とでも言うのだろうか?
どんな場所でも常に皆のまとめ役をしていそうな雰囲気だった。
橋本さんがメガネの似合うおとなしい図書委員タイプだとしたら、御剣君は爽やか生徒会長の様な感じね、
そして二人共私より年下。高校生ぐらいに見える。
「そういえば、御剣君も召喚勇者なんですよね? 召喚勇者って何人いるんですか?」
「召喚勇者ですか? 召喚されたのは私達三人だったので、多分三人だけですね」
「あ、そうなんですか」
勇者っていうと、普通は一人ってイメージだったんだけど。
複数人の勇者って、この世界では当たり前なのかしら?
「それより、そろそろ行きませんか?」
「ええ、そうですね。行きましょうか」
橋本さんに促され、私は席を立ち。
「ユキ、私と橋本さんはちょっと出かけて来るから、この部屋で大人しく待ってるのよ?」
「うん、分かったよご主人!」
ベッドの上で寝っ転がり、丸くなりながら手を上げて応えるユキ。今は人間の姿だけど、ベッドの上で丸くなる姿は、完全に猫のそれだった。
まあ、ユキは昔から言う事をよく聞く猫だったから問題ないかな?
そう考え、私と橋本さんは二人で御剣君の部屋へと向かった。
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