見た目は青年、心はアラサー、異世界に降り立つ! ~チートスキル「ストレージ」で異世界を満喫中~
三十二話
それは突然だった。
自称「電撃魔法の魔導書」を開き、試しに習得と呟いてみた。すると次の瞬間、私の体を眩い光が包み込み、やがてそれは握り拳大の大きさの光の玉に変化して私の体の中に吸い込まれていった。
あまりに突然の出来事に、私は思わず尻餅をついてしまっていた。
「いったた。何? 何が起こったの?」
尻餅で痛むお尻をさすりながら、壁に手を当てて立ち上がり、周囲を見回してみたが、特に異常は見受けられない。
強いて言うなら、ユキが驚いてソファから飛び上がっていたぐらいか。
「……もしかして、今のでスキルを習得出来たの?」
スキルを習得するという事がどういう事なのか、よく分からないから確かめようがないけど。
もし本当に、そのスキルとやらが習得出来ているのなら、今この場で使えてもおかしくない。
電撃……電気……。
「サンダー!」
窓を開け、庭に向かって右手を突き出し、思いっきり叫んでみたが、特に何も起こらなかった。
「……恥ずかしい」
どこの世界に、こんな朝っぱらから庭に向かってサンダーって叫ぶバカがいるというのだろう? いや、私がいるんだけれども。
何か間違えたかもしれないと思い、もう一度手紙を開いてみた。
【あ、言い忘れていましたが、スキルとは想像力――すなわちイメージで扱うものなので、曖昧なイメージで発動しようとしても失敗してしまう可能性が高いです】
「先に言いなさいよ!」
おかげでいらん恥かいちゃったじゃない!
幸い早朝という事もあり、誰かに見られる事はなかったけ……。
「そういえば、今はまだ六時前。こんな時間に宅配便が届くなんて、少しおかしくない?」
この時間帯に届く宅配便なんて聞いた事もない。いや、私が知らないだけで、もしかしたらあるのかもしれないけど、少なくとも私は聞いた事がない。
「気味が悪いわね」
もしかして私は何か取り返しがつかない事をしているのではないか?
そんな思考が頭をよぎるが、頭を振ってすぐにその思考を振り払う。
他に兄さんの手掛かりがない以上、今はこれに賭けるしかないのだから。
「そう、そうよ。兄さんを取り戻せる可能性があるのなら、私は全てを賭ける覚悟がある!」
そう声に出して自らを勇気づけ、残り全ての魔導書を開いて習得を再開した。
十分後。
全ての魔導書からスキルの習得を終えた私は、休憩も兼ねて朝食をとる事にした。
トーストにココア。それにサラダという簡素なものだけど、朝はこのぐらいの量で丁度いい。
それらをテレビを見ながらゆっくりと食べ、ユキに餌をあげてからもう一度手紙を開いてみた。
【さて、そろそろ全てのスキルを習得し終えた頃かと思いますが、ここで皆さんに朗報です。アイテムボックスと呟いてみて下さい】
「アイテムボックス? って、一体……」
何? という言葉は口から出て来る前に飲み込まれてしまった。
私がアイテムボックスと呟くと、突然目の前に真っ黒な穴の様な物が出現したのだ。
「え? これ何?」
上下左右、後ろに正面。ありとあらゆる方向から観察してみたけど、どの方向から見ても真っ黒な穴が空中に浮いてる様に見える。
試しに触れてみようと手を伸ばしたら、肘から先が穴の中に飲み込まれてしまった。
「っ!?」
驚きのあまり咄嗟に手を引き抜くと、そこには私の右腕が無傷で存在していた。
どうやら腕が無くなった訳ではないらしい。
「どういう事? これは現実なの?」
こんな現象、現実的に考えてありえない。
だが、実際に私の目の前で起こってる事だ。
「これが、スキル?」
実際にこの目で見るまでは、半信半疑だった。ただ、兄さんの手掛かりが見つかるならと、藁にも縋る思いで信じてみたのだけど、これはもしかすると、もしかするかもしれない!
「で、肝心のアイテムボックスっていうのはどんなスキルなの? これに飛び込めばいいの?」
【待て待て待て待て! 名前で想像つくでしょう! それは所謂収納スキルで、その中に好きな物を収納して保管出来るスキルですよ】
まるで私の言葉を聞いているかの様な内容で驚いてしまった。
まあ、私以外に似たような事を考える人がいても、別に不思議じゃないけれど。
でも「収納」ね。すごく便利そうじゃない。
試しに近くにあった食パンを袋ごと穴の中に入れてみると、それは穴の中に吸い込まれる様に消えていった。
そしてそのすぐ後、目の前に浮かぶ薄いタブレット画面の様な代物。
「今度は何? えーっと、食パン×四?」
そこには今穴の中に吸い込まれていった食パンの数が表示されていた。
つまり、これはアイテムボックス内に何が収納されているかを表しているって事?
ここまで来るとスキルの存在は、最早疑いようがない。
「となれば、もっと色々試してみたい事があるわね」
このアイテムボックスは何でも収納出来るのか? アイテムボックス内は時間が経過するのか? 容量はどれぐらいか?
それこそ本当に色々ある。
「……今日は長い一日になりそうね」
とりあえずこのアイテムボックスというスキルについて、出来る限り調べておかないと。他のスキルについてはその後で。
私はそのままアイテムボックスに関する実験を開始するのだった。
結局あの後、アイテムボックスについて色々調べていたら、いつの間にか時計は夜中の二時を指していた。
「ん、んっー!」
似たような態勢で長時間作業をしていた為、全身の筋肉が固まってしまっているかのような錯覚に陥る。
とりあえず背筋を伸ばす様に体をほぐし、軽くストレッチをしてみた。
うん、体が大分軽くなった。
「それにしても、もう夜中になっていたのね。全然気付かなかった」
あの後、色々と気になる事を試していく内に、段々と楽しくなってきた私は、時間も気にせず作業をしていたらしい。
「にゃー、にゃー!」
そして足元にはユキの姿が……あっ。
「いけない、ユキのご飯!」
この時間になるまで気付かないぐらい集中していたという事は、当然ユキのご飯もまだという事だ。
私は急いで缶詰の蓋を開け、ユキの皿の上に丸ごと取り出して床に置いた。
すると「待ってました!」とばかりに食い付くユキ。
「ごめんねユキ。すっかり忘れていて」
愛猫に謝りながら、ふと気付いた。そういえば私も何も食べてないな、と。
体というのは単純なもので、思い出した途端「ぐぅ」と空腹を訴えてくる。
「この時間だとスーパーも閉まっちゃってるし。仕方ない、コンビニで済ませまちゃおっと」
一度部屋に戻り、適当に着替えを済ませると、財布と車の鍵を手に取って部屋を出る。
そのまま車を走らせる事五分。
夜中のコンビニで適当にお弁当とアイスを買い、さっさと家に帰る。
「はぁ。何だか疲れたわね。ご飯食べて、今日はもう寝ましょ」
コンビニで買ってきたアイスを冷凍庫にしまい、お弁当をレンジで温めてから食べる。
コンビニのお弁当は、それなりには美味しいんだけど……うん、やっぱり自分で作った方が美味しいわね。
そんな事を考えながらお弁当を食べ終えた私は、それをゴミ箱に捨ててからシャワーを浴びて部屋に戻り、そのまますぐに眠りについた。
自称「電撃魔法の魔導書」を開き、試しに習得と呟いてみた。すると次の瞬間、私の体を眩い光が包み込み、やがてそれは握り拳大の大きさの光の玉に変化して私の体の中に吸い込まれていった。
あまりに突然の出来事に、私は思わず尻餅をついてしまっていた。
「いったた。何? 何が起こったの?」
尻餅で痛むお尻をさすりながら、壁に手を当てて立ち上がり、周囲を見回してみたが、特に異常は見受けられない。
強いて言うなら、ユキが驚いてソファから飛び上がっていたぐらいか。
「……もしかして、今のでスキルを習得出来たの?」
スキルを習得するという事がどういう事なのか、よく分からないから確かめようがないけど。
もし本当に、そのスキルとやらが習得出来ているのなら、今この場で使えてもおかしくない。
電撃……電気……。
「サンダー!」
窓を開け、庭に向かって右手を突き出し、思いっきり叫んでみたが、特に何も起こらなかった。
「……恥ずかしい」
どこの世界に、こんな朝っぱらから庭に向かってサンダーって叫ぶバカがいるというのだろう? いや、私がいるんだけれども。
何か間違えたかもしれないと思い、もう一度手紙を開いてみた。
【あ、言い忘れていましたが、スキルとは想像力――すなわちイメージで扱うものなので、曖昧なイメージで発動しようとしても失敗してしまう可能性が高いです】
「先に言いなさいよ!」
おかげでいらん恥かいちゃったじゃない!
幸い早朝という事もあり、誰かに見られる事はなかったけ……。
「そういえば、今はまだ六時前。こんな時間に宅配便が届くなんて、少しおかしくない?」
この時間帯に届く宅配便なんて聞いた事もない。いや、私が知らないだけで、もしかしたらあるのかもしれないけど、少なくとも私は聞いた事がない。
「気味が悪いわね」
もしかして私は何か取り返しがつかない事をしているのではないか?
そんな思考が頭をよぎるが、頭を振ってすぐにその思考を振り払う。
他に兄さんの手掛かりがない以上、今はこれに賭けるしかないのだから。
「そう、そうよ。兄さんを取り戻せる可能性があるのなら、私は全てを賭ける覚悟がある!」
そう声に出して自らを勇気づけ、残り全ての魔導書を開いて習得を再開した。
十分後。
全ての魔導書からスキルの習得を終えた私は、休憩も兼ねて朝食をとる事にした。
トーストにココア。それにサラダという簡素なものだけど、朝はこのぐらいの量で丁度いい。
それらをテレビを見ながらゆっくりと食べ、ユキに餌をあげてからもう一度手紙を開いてみた。
【さて、そろそろ全てのスキルを習得し終えた頃かと思いますが、ここで皆さんに朗報です。アイテムボックスと呟いてみて下さい】
「アイテムボックス? って、一体……」
何? という言葉は口から出て来る前に飲み込まれてしまった。
私がアイテムボックスと呟くと、突然目の前に真っ黒な穴の様な物が出現したのだ。
「え? これ何?」
上下左右、後ろに正面。ありとあらゆる方向から観察してみたけど、どの方向から見ても真っ黒な穴が空中に浮いてる様に見える。
試しに触れてみようと手を伸ばしたら、肘から先が穴の中に飲み込まれてしまった。
「っ!?」
驚きのあまり咄嗟に手を引き抜くと、そこには私の右腕が無傷で存在していた。
どうやら腕が無くなった訳ではないらしい。
「どういう事? これは現実なの?」
こんな現象、現実的に考えてありえない。
だが、実際に私の目の前で起こってる事だ。
「これが、スキル?」
実際にこの目で見るまでは、半信半疑だった。ただ、兄さんの手掛かりが見つかるならと、藁にも縋る思いで信じてみたのだけど、これはもしかすると、もしかするかもしれない!
「で、肝心のアイテムボックスっていうのはどんなスキルなの? これに飛び込めばいいの?」
【待て待て待て待て! 名前で想像つくでしょう! それは所謂収納スキルで、その中に好きな物を収納して保管出来るスキルですよ】
まるで私の言葉を聞いているかの様な内容で驚いてしまった。
まあ、私以外に似たような事を考える人がいても、別に不思議じゃないけれど。
でも「収納」ね。すごく便利そうじゃない。
試しに近くにあった食パンを袋ごと穴の中に入れてみると、それは穴の中に吸い込まれる様に消えていった。
そしてそのすぐ後、目の前に浮かぶ薄いタブレット画面の様な代物。
「今度は何? えーっと、食パン×四?」
そこには今穴の中に吸い込まれていった食パンの数が表示されていた。
つまり、これはアイテムボックス内に何が収納されているかを表しているって事?
ここまで来るとスキルの存在は、最早疑いようがない。
「となれば、もっと色々試してみたい事があるわね」
このアイテムボックスは何でも収納出来るのか? アイテムボックス内は時間が経過するのか? 容量はどれぐらいか?
それこそ本当に色々ある。
「……今日は長い一日になりそうね」
とりあえずこのアイテムボックスというスキルについて、出来る限り調べておかないと。他のスキルについてはその後で。
私はそのままアイテムボックスに関する実験を開始するのだった。
結局あの後、アイテムボックスについて色々調べていたら、いつの間にか時計は夜中の二時を指していた。
「ん、んっー!」
似たような態勢で長時間作業をしていた為、全身の筋肉が固まってしまっているかのような錯覚に陥る。
とりあえず背筋を伸ばす様に体をほぐし、軽くストレッチをしてみた。
うん、体が大分軽くなった。
「それにしても、もう夜中になっていたのね。全然気付かなかった」
あの後、色々と気になる事を試していく内に、段々と楽しくなってきた私は、時間も気にせず作業をしていたらしい。
「にゃー、にゃー!」
そして足元にはユキの姿が……あっ。
「いけない、ユキのご飯!」
この時間になるまで気付かないぐらい集中していたという事は、当然ユキのご飯もまだという事だ。
私は急いで缶詰の蓋を開け、ユキの皿の上に丸ごと取り出して床に置いた。
すると「待ってました!」とばかりに食い付くユキ。
「ごめんねユキ。すっかり忘れていて」
愛猫に謝りながら、ふと気付いた。そういえば私も何も食べてないな、と。
体というのは単純なもので、思い出した途端「ぐぅ」と空腹を訴えてくる。
「この時間だとスーパーも閉まっちゃってるし。仕方ない、コンビニで済ませまちゃおっと」
一度部屋に戻り、適当に着替えを済ませると、財布と車の鍵を手に取って部屋を出る。
そのまま車を走らせる事五分。
夜中のコンビニで適当にお弁当とアイスを買い、さっさと家に帰る。
「はぁ。何だか疲れたわね。ご飯食べて、今日はもう寝ましょ」
コンビニで買ってきたアイスを冷凍庫にしまい、お弁当をレンジで温めてから食べる。
コンビニのお弁当は、それなりには美味しいんだけど……うん、やっぱり自分で作った方が美味しいわね。
そんな事を考えながらお弁当を食べ終えた私は、それをゴミ箱に捨ててからシャワーを浴びて部屋に戻り、そのまますぐに眠りについた。
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