見た目は青年、心はアラサー、異世界に降り立つ! ~チートスキル「ストレージ」で異世界を満喫中~
十九話
【ここまで読んで下さって、本当にありがとうございます】
あの後、引き続きブログを読み進めた結果分かったのは、このブログ主が転移した世界が「ガイアーラ」だという事。そして、ガイアーラには「魔物」と「魔法」そして「スキル」という概念があるという事が分かった。
【さて、ここまで読み進めて下さった皆さん、お待たせしました。お約束通り、皆さんには私が作り出した魔導書を販売させて頂こうと思います】
最早私は確信に近い予感を抱いていた。
それは、このブログ主の様に、異世界に渡らないと兄さんは見つからないのだろうという事。
既に兄さんが行方不明になって一年の時が過ぎようとしているのに、未だに何の進展もない状態だ。
このまま警察に任せていても、自分で探しても、兄さんが見つかるとは思えない。
それならば、いっその事この方法に賭ける方がまだ可能性があると思える。
試すにしても、試さないにしても、せめて魔導書だけは絶対に手に入れておかないと。
【魔導書は全部で五種類ございます。一冊一万、五冊セットで四万五千円の特別価格となっております。スキルの内容については……】
「思ったより安いわね。これなら仮に騙されていたとしても痛くない出費だわ」
てっきり十万ぐらいはするかと思っていたから、この価格には驚いた。
しかも全部で五冊もあるのなら、まとめて買っておいた方がいい筈。
私はそのまま購入画面まで進み、五冊全てを注文しておいた。
「おお、カイトじゃねえか! 元気そうで何よりだ!」
ガンツ武具店に入ると、店の奥から立派な黒髭が目立つドワーフのおじさん――ガンツさんが出迎えてくれた。
「三日も寝たきりだって聞いて心配していたんだが、その様子ならもう大丈夫そうだな!」
ガンツさんは俺の肩をポンポンと叩きながら安心したように言葉をかけてくれた。
どうやらガンツさんにも心配かけたみたいだな。
「ええ、もう大丈夫です。ご心配をおかけしました」
ガンツさんには鎖帷子を買う時に随分とお世話になったからな。挨拶の一つもしておくのが礼儀という物だろう。
「なあに、カイトが無事ならそれでいい。それより、今日はどうした? また防具でも買いに来たかのか?」
「ええ、大分資金が貯まってきたんで、そろそろ防具を揃えようかと思いまして」
「でも一番は、カイトさんの元気な姿をガンツさんに見せる為、ですよね?」
俺がガンツさんに答えると、マリーが補足説明をしてくれた。
まあ確かにそうなんだけどさ。
直接言葉にされると気恥ずかしさが出てくるな。
「そうかそうか。ありがとよ、カイト。お前さんの元気な顔が見れて俺も安心したぜ! がっはっはっは!」
ガンツさんが更に肩をバンバンと叩きながら豪快に笑うが、地味に肩が痛い。
やっぱりこれだけいいガタイをしているだけあって、力は大分強いみたいだ。
「ガンツ殿、そのぐらいにしておかないと、カイト君が痛がっていますよ」
「ん? おお、悪い悪い! つい力を入れすぎちまった!」
ガンツさんは俺の肩から手を離し、申し訳なさそうにしていたけど、ガンツさんもワザとではないのは分かっていたし、これも一種のコミュニケーションだと思う。
ただ、次からはもう少しだけ加減をして欲しい所だけど
「それで、今日はカイトの防具を作りに来ただけなのか? なら、予算と希望を教えてくれればすぐにでも……」
「あ、いえ、実は私も新しい剣を作って欲しいと思っていまして」
「私も! 私も新しい杖を!」
俺の希望を聞こうとしていたガンツさんに、フーリが慌てて待ったをかけ、新しい剣を作って欲しいと言い、マリーも新しい杖を頼んでいた。
二人も武器を新調するつもりだったのか。
「うん? 二人もか? そりゃ構わないが、一体どんなのが欲しいんだ?」
「ミスリルの剣をお願いします!」
「私はミスリルの杖を!」
ミスリル え、この世界ってミスリルとかあるの?
てっきり漫画の中だけの存在だと思っていたのに、まさか実在するとは。
でも、ミスリルっていえば……。
「ミ、ミスリルだと? そりゃ別に構わないが、それなりの値段はするぜ。いいのかい?」
そう、ミスリルは高いと相場が決まっている。
一体いくらぐらいなのかは分からないけど、ガンツさんの口ぶりからして相当高いのだろう。
「ガンツ殿、その件で少し相談があるのですが」
「うん? 相談だぁ? 一応言っとくが、借金の相談は勘弁だぜ」
フーリの言葉に訝し気な表情になるガンツさん。それもそうだろう。
たった今「ミスリルは高い」という話をしたのに「払える」ではなく「相談がある」と言ったのだ。
誰だってそんな表情になるだろう。
「いえ、そういう話ではなくてですね。実は、武器の素材のミスリルは私達で用意するので、ガンツ殿にはその加工をお願いしたいと思いまして」
「ああ、何だそういう事か。持ち込み依頼だな。それなら全然問題ないぜ! マリーの嬢ちゃんも持ち込みか?」
「はい、私も姉さんと同じ、持ち込み依頼でお願いしたいんですけど」
持ち込み依頼か。
材料はこっちで用意するから、材料費は抑えられるか。
なるほど、それなら大分金額も抑えられるという訳か。
「分かった、二人共持ち込みだな。で、素材は?」
「素材はこれから果ての洞窟で調達して来ようと思います」
「分かった。それじゃあ加工は明日以降だな。武器の新調は二人だけでいいのか? カイトはどうする?」
「俺ですか?」
ガンツさんに尋ねられて、俺はどうしようかと考えてみた。
確かストレージの中には、オーガの金棒があったし、武器に関しては別に今すぐどうこうという事はないだろう。
俺は大丈夫です、と断ろうとして。
「カイトさん。折角ですから、カイトさんも私達と一緒に素材集めをしませんか?」
「え?」
突然のマリーの誘いに俺は少し困惑した。
「素材集めって、今から行くんだろ? だったら俺も当然一緒に行くんだとばかり思っていたんだけど」
それとも、果ての洞窟という所は、俺じゃまだ早いぐらい難易度が高いのだろうか?
でも、俺も一応少しは強くなっていると思うんだけど。
「いえ、これはあくまで私達二人の武器新調の為ですから、カイトさんが別に受けたい依頼があるのなら、そっちを優先して貰って構いませんよ? でも、もしカイトさんも一緒に素材集めをしてくれるのなら、いっそカイトさんも持ち込み依頼にしちゃったらどうかなって思いまして」
「持ち込み依頼か」
確かにそれなら費用を大分抑えられそうだ。
これから先、何が起きるか分からないのだし、お金は少しでも多いに越したことはないだろう。
「どうする? カイトも持ち込みにするか?」
「そうですね、とりあえず俺も素材を集めて来ようと思うので、その時にまた決めますね。防具はその時に詳しく見せて下さい」
二人がすぐには頼まないのなら、俺も二人に合わせて素材を集めてから考えよう。
あの後、引き続きブログを読み進めた結果分かったのは、このブログ主が転移した世界が「ガイアーラ」だという事。そして、ガイアーラには「魔物」と「魔法」そして「スキル」という概念があるという事が分かった。
【さて、ここまで読み進めて下さった皆さん、お待たせしました。お約束通り、皆さんには私が作り出した魔導書を販売させて頂こうと思います】
最早私は確信に近い予感を抱いていた。
それは、このブログ主の様に、異世界に渡らないと兄さんは見つからないのだろうという事。
既に兄さんが行方不明になって一年の時が過ぎようとしているのに、未だに何の進展もない状態だ。
このまま警察に任せていても、自分で探しても、兄さんが見つかるとは思えない。
それならば、いっその事この方法に賭ける方がまだ可能性があると思える。
試すにしても、試さないにしても、せめて魔導書だけは絶対に手に入れておかないと。
【魔導書は全部で五種類ございます。一冊一万、五冊セットで四万五千円の特別価格となっております。スキルの内容については……】
「思ったより安いわね。これなら仮に騙されていたとしても痛くない出費だわ」
てっきり十万ぐらいはするかと思っていたから、この価格には驚いた。
しかも全部で五冊もあるのなら、まとめて買っておいた方がいい筈。
私はそのまま購入画面まで進み、五冊全てを注文しておいた。
「おお、カイトじゃねえか! 元気そうで何よりだ!」
ガンツ武具店に入ると、店の奥から立派な黒髭が目立つドワーフのおじさん――ガンツさんが出迎えてくれた。
「三日も寝たきりだって聞いて心配していたんだが、その様子ならもう大丈夫そうだな!」
ガンツさんは俺の肩をポンポンと叩きながら安心したように言葉をかけてくれた。
どうやらガンツさんにも心配かけたみたいだな。
「ええ、もう大丈夫です。ご心配をおかけしました」
ガンツさんには鎖帷子を買う時に随分とお世話になったからな。挨拶の一つもしておくのが礼儀という物だろう。
「なあに、カイトが無事ならそれでいい。それより、今日はどうした? また防具でも買いに来たかのか?」
「ええ、大分資金が貯まってきたんで、そろそろ防具を揃えようかと思いまして」
「でも一番は、カイトさんの元気な姿をガンツさんに見せる為、ですよね?」
俺がガンツさんに答えると、マリーが補足説明をしてくれた。
まあ確かにそうなんだけどさ。
直接言葉にされると気恥ずかしさが出てくるな。
「そうかそうか。ありがとよ、カイト。お前さんの元気な顔が見れて俺も安心したぜ! がっはっはっは!」
ガンツさんが更に肩をバンバンと叩きながら豪快に笑うが、地味に肩が痛い。
やっぱりこれだけいいガタイをしているだけあって、力は大分強いみたいだ。
「ガンツ殿、そのぐらいにしておかないと、カイト君が痛がっていますよ」
「ん? おお、悪い悪い! つい力を入れすぎちまった!」
ガンツさんは俺の肩から手を離し、申し訳なさそうにしていたけど、ガンツさんもワザとではないのは分かっていたし、これも一種のコミュニケーションだと思う。
ただ、次からはもう少しだけ加減をして欲しい所だけど
「それで、今日はカイトの防具を作りに来ただけなのか? なら、予算と希望を教えてくれればすぐにでも……」
「あ、いえ、実は私も新しい剣を作って欲しいと思っていまして」
「私も! 私も新しい杖を!」
俺の希望を聞こうとしていたガンツさんに、フーリが慌てて待ったをかけ、新しい剣を作って欲しいと言い、マリーも新しい杖を頼んでいた。
二人も武器を新調するつもりだったのか。
「うん? 二人もか? そりゃ構わないが、一体どんなのが欲しいんだ?」
「ミスリルの剣をお願いします!」
「私はミスリルの杖を!」
ミスリル え、この世界ってミスリルとかあるの?
てっきり漫画の中だけの存在だと思っていたのに、まさか実在するとは。
でも、ミスリルっていえば……。
「ミ、ミスリルだと? そりゃ別に構わないが、それなりの値段はするぜ。いいのかい?」
そう、ミスリルは高いと相場が決まっている。
一体いくらぐらいなのかは分からないけど、ガンツさんの口ぶりからして相当高いのだろう。
「ガンツ殿、その件で少し相談があるのですが」
「うん? 相談だぁ? 一応言っとくが、借金の相談は勘弁だぜ」
フーリの言葉に訝し気な表情になるガンツさん。それもそうだろう。
たった今「ミスリルは高い」という話をしたのに「払える」ではなく「相談がある」と言ったのだ。
誰だってそんな表情になるだろう。
「いえ、そういう話ではなくてですね。実は、武器の素材のミスリルは私達で用意するので、ガンツ殿にはその加工をお願いしたいと思いまして」
「ああ、何だそういう事か。持ち込み依頼だな。それなら全然問題ないぜ! マリーの嬢ちゃんも持ち込みか?」
「はい、私も姉さんと同じ、持ち込み依頼でお願いしたいんですけど」
持ち込み依頼か。
材料はこっちで用意するから、材料費は抑えられるか。
なるほど、それなら大分金額も抑えられるという訳か。
「分かった、二人共持ち込みだな。で、素材は?」
「素材はこれから果ての洞窟で調達して来ようと思います」
「分かった。それじゃあ加工は明日以降だな。武器の新調は二人だけでいいのか? カイトはどうする?」
「俺ですか?」
ガンツさんに尋ねられて、俺はどうしようかと考えてみた。
確かストレージの中には、オーガの金棒があったし、武器に関しては別に今すぐどうこうという事はないだろう。
俺は大丈夫です、と断ろうとして。
「カイトさん。折角ですから、カイトさんも私達と一緒に素材集めをしませんか?」
「え?」
突然のマリーの誘いに俺は少し困惑した。
「素材集めって、今から行くんだろ? だったら俺も当然一緒に行くんだとばかり思っていたんだけど」
それとも、果ての洞窟という所は、俺じゃまだ早いぐらい難易度が高いのだろうか?
でも、俺も一応少しは強くなっていると思うんだけど。
「いえ、これはあくまで私達二人の武器新調の為ですから、カイトさんが別に受けたい依頼があるのなら、そっちを優先して貰って構いませんよ? でも、もしカイトさんも一緒に素材集めをしてくれるのなら、いっそカイトさんも持ち込み依頼にしちゃったらどうかなって思いまして」
「持ち込み依頼か」
確かにそれなら費用を大分抑えられそうだ。
これから先、何が起きるか分からないのだし、お金は少しでも多いに越したことはないだろう。
「どうする? カイトも持ち込みにするか?」
「そうですね、とりあえず俺も素材を集めて来ようと思うので、その時にまた決めますね。防具はその時に詳しく見せて下さい」
二人がすぐには頼まないのなら、俺も二人に合わせて素材を集めてから考えよう。
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