あの日

僕ちゃん

九話 子供の限界

「グッ」  

 私は喉から溢れ出かけた言葉を何とか封じ込めた。全力で走った私は頭が整理され、ことの重大さに気付くことができたからだ。

 来世の自分は別に味方であるとはかぎらないましてや私の魂がこの世界から消えたら、魂が二つになり結果として寿命が伸びる可能性があるのだ。私を殺そうとしている可能性の方が高い。しかも相手はあの女だ。私の義母。私は本当にあの女が来世の自分の魂をもっているのかそして本当に信頼できるのかをもっと調べる必要があると結論づけた。

 「と とらエモンがはじまっちゃう」

 私は精一杯誤魔化したつもりだったがこのアニメが始まる時間はもっと後なのであの女は呆れた顔をしていた。

 ここで私は気付いた。別に誤魔化す必要なんてなかったことに。ただ走って帰ってきただけなのに。変に誤魔化したから余計に変な空気になってしまった。

 私は急いで家の中に逃げていった。そして冷蔵庫を開きひんやり冷えた麦茶をガブガブのんだ。そして決心した。まずはあの女が私の来世の魂を本当に持っているかを確かめてやると。

 自分の部屋で珍しく机に向かい熱心に作戦を考えた。今まで考える前に体を動かしていることがほとんどだったので、とても大変な作業となった。結果、私の作戦は私しか知らない記憶をあの女にしゃべらせる、または知っていないとできないことをさせる、この二つに落ち着いた。そうあの女がなぜか私達が警察にお世話になったことを知っていたように。

 しかし、小学生の私にはそうするためには何をしたらいいのかがわからなかった。とりあえずノープランのまま何日も過ぎた。その間私はあの女といつも以上に会話するようにしていた。何かきっかけをつかめるかもしれないと思ったからだ。しかし私がよく話しかければかけるほどあの女の笑顔が増えていくだけで、なにもあの女が来世の魂をもっているという根拠は得られなかった。

 私しか知らない記憶といっても私は自分の未来の記憶なんて知らないし、過去といってもそこまでの過去を持っていなかった。だから知っていないとできないことをさせようと思ったのは自然の流れだったのかもしれない。

「ワッー」

 後ろから何度もあの女をびびらせる。記憶があるならびびらないと思ったのだ。しかしあの女は本気でびびっているように見えた。何度もびびらせていたのでしまいには怒られてしまった。私の作戦は失敗した。

 だが私は気付いた。例え記憶を持っていたとしても驚ろかすなんて小さな記憶覚えているだろうか?いやないと思う。例え覚えていてもそれがいつかなんて覚えているわけがない。もっと大きな出来事でないと、それこそ私が一生忘れないような。確かに海に行ったこと、警察に追われたことは一生忘れないだろうなと私は思った。

 作戦変更だ。何か大きなことをしないと記憶に残るようなことを。私は少し考えたが、すぐに一つだけ悪魔のような作戦を思い付いた。

 もちろんすぐに実行する。家の中にそこらじゅうから草を集めてきて水で充分湿らす。そして父の部屋からくすねてきたライターで日のをつけた。 

「モクモクモク」

 どす黒い煙が部屋の中に充満する。私はあの女が私の記憶を持っているのならただの煙だけだと気付いてほっとくと思ったのだ。もしないなら火事だと思ってすぐにくると思った。

 しかしあの女はすぐにかけつけてきた。そしてすぐに煙を完全に鎮火した。とても焦っているように見えた。そして部屋はとても熱くなっていた。

「パンッ」

 今度はあの女は本当に怒っていた。私は自分のやらかした事の重大さに気付き、あの女の次の言葉待ったが、あの女は私の頬を殴った後ずっと無言だった。何か考えているようだったが、本当に怒っているということは終止伝わってきた。

 家の外には村の人達が集まって来ていた。すぐにあの女は私の前を立ち、皆に謝りに行った。村の人達は「子供がやることだから」とすぐに許してくれたが、あの女はずっと謝り続けていた。

 その姿を見るとなぜか涙が溢れ出してきた。私はよく考えずにとんでもないことをしたんだ。煙の熱でも火事にはなる。私はバカだ。涙はまだ止まらない。あんなことをしたらどちみちあの女が来るに決まっていたじゃないか。ただ村を危険にさらしただけだった。私は何度も涙をぬぐった。泣き止んだ時には空はもう暗くなり、手の甲は水びたしになっていた。

 私は一人で来世の魂を見つけることはやめようと決心した。私一人の考えでは危険過ぎるし、考えが幼すぎる。大人の考え方が必要だと思った。

 「コンッ コンッ」

 私は満月だけを連れて降田さんのところに向かった。頼れる大人は降田さんしか思い付かなかったし、私の意味不明な話に付き合ってくるのは満月しかいないとおもった。

 私は二人に全ての話を話つもりでいた。信じてはくれないかもしれないが降田さんだったら面白がってそれなりのアイデアをくれると思ったからだ。

 それがまさかあんなことになるなんて・・・・

 まだ私には考えもついていなかった。

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