あの日

僕ちゃん

三話 衝撃 

 今日も髪の毛がおでこにくっつくようなじめじめした日だ。梅雨の影響だからしょうがないのだが、私は今もそして子供の時も雨が大嫌いだった。しょうがないので水溜まりを上手に避けふらふら歩いていると。

「おっはよぉーーー」

 突然背中を叩かれた。少し痛い。雨の日にこんなにも元気なのは桜しかいない。

「おはよ」  「よっ」

 満月と瑛太もやってきた。この二人がきたってことは

「おはよぅお」

 ほら福太もきた。この三人は家が近いこともあり一緒に登校しているらしいが、福太だけいつもワンテンポ遅れてくる。

「おはよー」

 一通り挨拶がすんだところで桜がしゃべりだした。

 「昨日の夜、雷怖かったね」
 だいたいは桜が話題をふる

 「あれは神様達が喧嘩したるんだって」
 満月はじいちゃんこだからこういう話をさせたら結構面白い

「おでぇ神様達、喧嘩しすぎだどおもうな
   おでぇ怖くて眠れなかった」

 福太はでっかい図体ににあわず結構びびりだ

「ゴロゴロ ドッカーン」

「うわっ皆やめでぇよぉーー」

 最近は皆で福太をびびらせる遊びが私達のなかで結構流行っている。やり初めたのはやっぱり瑛太だった。私達はだいたいこのようなたわいない会話をしながらいつも学校向かう。 

 今日は体育が二限もある日だ。私はこの日が一番好きだった。なぜなら体育があるだけでモチベーションが上がるし、運動のあとはなぜか頭がよく働くからだ。

 しかもこの日は、近くの産婦人科の人が来てくれるとかで五限目も授業がなく私にとっては最高の日だと思っていた。

「キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン」

 いつものあの音がなり私達は五限目の産婦人科公演を受けるために、給食終わりの重たい腹を支えながら体育館にむかった。

 以外にも産婦人科の人の話は面白かったので思わず前のめりできいていた。途中の質問にもすぐ答えていた。

「じゃあこの中で、二歳とか三歳の時の記憶ある人いる??」

 もちろん私はすぐに手をあげる。他にも手を挙げている人は結構いた。

「たくさんいますね。じゃあゼロ歳は??」

 私はまたすぐに手を挙げた。これは急に数が減り五人ぐらいしか挙げ手いなかった。私は皆恥ずかしがりなのかなと思った。

「じゃぁーあ、もしかしてだけど生まれる前の記憶ある人とかいる?」

 私は産婦人科の人のいない前提みたいな聞き方に少し疑問を持ったが、すぐに手を挙げた。私ともう一人しか手を挙げていなかった。

 どんなのだったのか聞かれたのでなぜそんな分かりきったことを聞くんだろうと疑問に思いながらも、ふわふわな生物のことや選ばれなかった親のところに行く赤ちゃんもいるんだという話を淡々と聞かせた。

 しかしもう一人の手を挙げていた子がお腹の中で蛇さんと遊んでたなんて意味不明なことを言い出したから私は本当にビックリした。この時の私は皆が生まれる前の記憶を持っているんだと思っていた。

 しかも私に対する産婦人科の人の応答がひどすぎた。もう一人の子には   
 
「蛇さんじゃなくて多分へその緒だと思うよ。すごいじゃん」

とそれなりのフォローをいれていたが

 私に対しては急に恐い顔になり 

「選ばれなかった親なんていません。あなた達はちゃんと親を選んできたんです。それにふわふわな生物ってなんですか??」

 と真っ向から私の意見を否定してきた。私の言ったことは事実だったし。私には選ぶ権利があったのに選んだ親と違う親になっていた。さすがの私も頭にきた。

 私は怒ろうとしたが満月と瑛太がギリギリのところで止めてくた。私はそれにも頭にきたが二人は私がこれ以上この場で浮くことを止めてくれたんだと今ならわかる。そして感謝している。

 私はもやもやしながらもその日は家に帰った。自分は事実を言っただけなのに...本当に納得できなくて夜、布団の中でないた。大人に初めて真っ向から否定されたのだ。寝てしまうまで泣き続けた。

 次の日学校に行くと、黒板に私の名前がでかでかと書かれていてその横に嘘つきとかいてあった。産婦人科の人が私に怒ったことから私は悪者認定されたのだ。

 私は昨日の夜泣きまくったせいで疲れていたが、心底ムカついて疲れなんて吹き飛んだ。怒り慣れていなかった私はとにかく発散させるために近くの机を蹴り飛ばそうとした。

 「バッーーーン」

 私が机を蹴る前に凄い音がした。瑛太が黒板に私の悪口を書いたやつを投げ飛ばしたのだ。私は暴力が悪いことだとは分かっていたがこの時は思わず涙が流れ出した。

 昨日の夜でかれたと思っていたが違う種類の涙ならいくらでも出るらしい。桜がすぐにハンカチを私に貸してくれた。とても落ち着く匂いがした。

 それから私達は四人で学校を抜け出した。どこも向かうべき場所はなかったが私達はとにかく遠くに向かって走り出した。

「ハァハァ 薺、心がモヤモヤするときは井戸に向かって叫んだら良いらしよ」

満月だ。

「ハァハァ おでぇは ハァハァ 海がいいって聞いたけどな ハァハァ」

次は福太ここで一旦足を止める。

「海って ハァハァ 私見たことない」

これは桜だ。

「じゃあさ薺 皆で海にストレス発散しに行こうぜ」

 最終的には瑛太がだいたい決めてくれる。

 学校を抜け出した私達は海を目指すことにした。私達四人共まだ海を見たことはなかった。だが、海は私達の不安を全て包んでくれる母さんみたいなものなんだと私達は思っていた。

 今の私にはそれだけで向かう理由としては十分だった。海までの距離なんて私達には関係がなかった。私達は海に向かって歩きだした。




 

 
 

コメント

  • ノベルバユーザー541130

    また面白くなってる。話進まんけど笑

    0
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