誘惑の延長線上、君を囲う。
誘惑の延長線上、君を囲う。【4】
私は悩みに悩んで、ニットのネックワンピースにした。首元が上まで隠れる洋服はこれしか無かったといっても過言ではない。
──夕方5時。パーティーにお呼ばれした先は、副社長の実家、花野井家だった。花野井家はとにかく大きくて、セキュリティも万全で家政婦さんも居る。
副社長の実家ということは、日下部君の実家"だった"ということにもなる。副社長は義理の弟にあたり、社長は二人の母という立場だ。
「あけましておめでとうございます。佐藤さん、郁弥がいつもお世話になっております。さぁ、どうぞ」
玄関先で出迎えてくれたのは、社長だった。社内でもなかなか会えない雲の上の存在なのに、意図も簡単にお会い出来るとは……。
「あけましておめでとうございます。今年度もよろしくお願い致します。では、お邪魔致します」
私は一礼して、靴を揃えてから自宅の中へと足を進める。社長はいつ見ても若々しく、年齢を感じさせない。目鼻立ちがはっきりしていて、綺麗な人。間違えなく、副社長は母親似だよね。日下部君はどちらかといえば、父親似だと思う。高校時代に見た実のお父さんは、切れ長の瞳が日下部君に似ていたもの。
通された先は広いリビング。そこには、社長夫妻、副社長と秋葉さん、副社長の秘書さんと彼女さん、綾美ちゃん夫婦が御出迎えしてくれた。年始の挨拶を済ませて、指定された場所に日下部君と一緒に座る。テーブルには豪華な料理が沢山並んでいた。
「ご婚約おめでとうございます!」
副社長のお父さんにご挨拶をして手土産を渡した。その後、案内されたリビングのソファに腰をかけた瞬間、パァンッと弾けたような音が鳴り響く。散らばらないクラッカーを皆が鳴らしたのだった。状況を理解出来てない私は思わず、隣に座っている日下部君の顔を見てしまう。唖然としている私に秋葉さんがシャンパンの入ったグラスを手渡してくれた。
「改めまして郁弥君、琴葉さん、ご婚約おめでとうございます!二人の末永いご幸福を祈念いたしまして、乾杯!」
副社長が乾杯の音頭を取り、おめでとうの歓声が再び広がる。
「郁弥君が結婚すると聞いたので、いち早く、お祝いをしたかったんだ。佐藤さんが知っている通り、郁弥君は有澄の兄であり、私達の息子でもある。疎遠になってしまった時期もあったが、今はこうして、皆が仲良くしてくれる事が嬉しいんだよ。これからは気軽にこの家にも足を運んで下さい」
社長の旦那様、つまりは副社長のお父様が私を見て優しい微笑みを浮かべながら語りかけてくれた。
「そうそう、琴葉ちゃんも女子会メンバーになったんだから、これからは遠慮なく遊びに来てね。郁弥が居なくても来て。紫ちゃんも綾美ちゃんも和奏ちゃんも皆、男が来なくても来てるわよ」
和奏ちゃんとは、副社長の秘書さんの彼女である。社長は会社内ではツンケンしているようなバリキャリだけれども、今は顔つきも柔らかく、親しみやすい。オンとオフの切り替えをきちんとしている人なんだなぁ。
「琴葉をそんな会には入れたくないんだけど……」
ボソッと呟いた日下部君に対して、私は「私は入りたいです。是非、お願いします」と言った。
高校時代の話はあれこれ話せたが、付き合ったきっかけは話す事が出来なかった。それもそのはず、再会した時に身体を重ねたのがきっかけなんて口が裂けても言えない!
秋葉さんとも話したけれど、可愛いだけじゃなくて、本当に良い子だった。副社長と日下部君が好きになるのも分かる。自分自身の事よりも先に第三者の事を考えてしまう性格の子で、大好きなものは大好きだと揺るがない性格。
「日下部さんにお嫁さんになってくれる方が現れて良かった。そして、その方が佐藤さんで良かったです。佐藤さんが私のお姉ちゃんになるんですよね。ずっとずっと、お姉ちゃんに憧れてたんで嬉しいーっ!」
ぎゅむっ。私の隣に座り、腕に絡みついてくる秋葉さん。シャンパンを飲んで酔っているのか、腕にふわふわな胸があたっている。
「有澄、コイツ、これ以上飲ませるとうるさいからやめさせろ」
日下部君は離れて座っている副社長を手招きした。
「うるさいなぁ、日下部さんは会社でも家でも!私は佐藤さんと話したいの!……佐藤さん、名前で呼んでも良いですか?」
日下部さんにキツい目線で睨みつけたかと思えば、私にはキラキラと可愛い目線を向けてくる秋葉さん。私が「私も紫ちゃんて呼ぼ……」と言いかけた時、日下部君が邪魔をした。
「お前こそ、会社でも家でも生意気な奴だな!今度からはお前の義理の兄でもあるんだから、俺の事をもっと敬え」
「イヤ、絶対に嫌!」
私を挟んで両側からヤジが飛んでくる。
「はいはい、子供みたいな兄妹喧嘩はおしまいにしてね。本当にこの二人は、仲が良いから妬けちゃいますよね、佐藤さん?」
「うん、分かる気がする……」
止めに来た副社長も呆れた顔をしていたが、ヤキモチも妬いているみたい。日下部君は秋葉さんを好きだったから、副社長も気が気じゃなかったんだろうな。気持ち的に落ち着かずにモヤモヤした時もあったんじゃないかな?と勘ぐってしまう。
──夕方5時。パーティーにお呼ばれした先は、副社長の実家、花野井家だった。花野井家はとにかく大きくて、セキュリティも万全で家政婦さんも居る。
副社長の実家ということは、日下部君の実家"だった"ということにもなる。副社長は義理の弟にあたり、社長は二人の母という立場だ。
「あけましておめでとうございます。佐藤さん、郁弥がいつもお世話になっております。さぁ、どうぞ」
玄関先で出迎えてくれたのは、社長だった。社内でもなかなか会えない雲の上の存在なのに、意図も簡単にお会い出来るとは……。
「あけましておめでとうございます。今年度もよろしくお願い致します。では、お邪魔致します」
私は一礼して、靴を揃えてから自宅の中へと足を進める。社長はいつ見ても若々しく、年齢を感じさせない。目鼻立ちがはっきりしていて、綺麗な人。間違えなく、副社長は母親似だよね。日下部君はどちらかといえば、父親似だと思う。高校時代に見た実のお父さんは、切れ長の瞳が日下部君に似ていたもの。
通された先は広いリビング。そこには、社長夫妻、副社長と秋葉さん、副社長の秘書さんと彼女さん、綾美ちゃん夫婦が御出迎えしてくれた。年始の挨拶を済ませて、指定された場所に日下部君と一緒に座る。テーブルには豪華な料理が沢山並んでいた。
「ご婚約おめでとうございます!」
副社長のお父さんにご挨拶をして手土産を渡した。その後、案内されたリビングのソファに腰をかけた瞬間、パァンッと弾けたような音が鳴り響く。散らばらないクラッカーを皆が鳴らしたのだった。状況を理解出来てない私は思わず、隣に座っている日下部君の顔を見てしまう。唖然としている私に秋葉さんがシャンパンの入ったグラスを手渡してくれた。
「改めまして郁弥君、琴葉さん、ご婚約おめでとうございます!二人の末永いご幸福を祈念いたしまして、乾杯!」
副社長が乾杯の音頭を取り、おめでとうの歓声が再び広がる。
「郁弥君が結婚すると聞いたので、いち早く、お祝いをしたかったんだ。佐藤さんが知っている通り、郁弥君は有澄の兄であり、私達の息子でもある。疎遠になってしまった時期もあったが、今はこうして、皆が仲良くしてくれる事が嬉しいんだよ。これからは気軽にこの家にも足を運んで下さい」
社長の旦那様、つまりは副社長のお父様が私を見て優しい微笑みを浮かべながら語りかけてくれた。
「そうそう、琴葉ちゃんも女子会メンバーになったんだから、これからは遠慮なく遊びに来てね。郁弥が居なくても来て。紫ちゃんも綾美ちゃんも和奏ちゃんも皆、男が来なくても来てるわよ」
和奏ちゃんとは、副社長の秘書さんの彼女である。社長は会社内ではツンケンしているようなバリキャリだけれども、今は顔つきも柔らかく、親しみやすい。オンとオフの切り替えをきちんとしている人なんだなぁ。
「琴葉をそんな会には入れたくないんだけど……」
ボソッと呟いた日下部君に対して、私は「私は入りたいです。是非、お願いします」と言った。
高校時代の話はあれこれ話せたが、付き合ったきっかけは話す事が出来なかった。それもそのはず、再会した時に身体を重ねたのがきっかけなんて口が裂けても言えない!
秋葉さんとも話したけれど、可愛いだけじゃなくて、本当に良い子だった。副社長と日下部君が好きになるのも分かる。自分自身の事よりも先に第三者の事を考えてしまう性格の子で、大好きなものは大好きだと揺るがない性格。
「日下部さんにお嫁さんになってくれる方が現れて良かった。そして、その方が佐藤さんで良かったです。佐藤さんが私のお姉ちゃんになるんですよね。ずっとずっと、お姉ちゃんに憧れてたんで嬉しいーっ!」
ぎゅむっ。私の隣に座り、腕に絡みついてくる秋葉さん。シャンパンを飲んで酔っているのか、腕にふわふわな胸があたっている。
「有澄、コイツ、これ以上飲ませるとうるさいからやめさせろ」
日下部君は離れて座っている副社長を手招きした。
「うるさいなぁ、日下部さんは会社でも家でも!私は佐藤さんと話したいの!……佐藤さん、名前で呼んでも良いですか?」
日下部さんにキツい目線で睨みつけたかと思えば、私にはキラキラと可愛い目線を向けてくる秋葉さん。私が「私も紫ちゃんて呼ぼ……」と言いかけた時、日下部君が邪魔をした。
「お前こそ、会社でも家でも生意気な奴だな!今度からはお前の義理の兄でもあるんだから、俺の事をもっと敬え」
「イヤ、絶対に嫌!」
私を挟んで両側からヤジが飛んでくる。
「はいはい、子供みたいな兄妹喧嘩はおしまいにしてね。本当にこの二人は、仲が良いから妬けちゃいますよね、佐藤さん?」
「うん、分かる気がする……」
止めに来た副社長も呆れた顔をしていたが、ヤキモチも妬いているみたい。日下部君は秋葉さんを好きだったから、副社長も気が気じゃなかったんだろうな。気持ち的に落ち着かずにモヤモヤした時もあったんじゃないかな?と勘ぐってしまう。
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