誘惑の延長線上、君を囲う。
日下部君の家族【4】
日下部君は平然とした顔をしてキッチンに向かい、揚げたての唐揚げを摘み食いしている。私にとっては気にしてしまう発言も、日下部君にとってはなんて事ないのだ。
ガタンッ!
陽翔君が寝ているソファーから、鈍い音が聞こえた。咄嗟に陽翔君の方向に目をやると、無意識の内に寝返りを打とうとしてソファーから転げ落ちた様だ。転げ落ちた時にテーブルに腕がぶつかり、鈍い音がしたらしい。
「いてて……」
体制を崩した陽翔君は完全に目が覚めたらしく、アクビをしながら立ち上がる。転げ落ちても、手にはスマホを握り締めていたので、今時の子は何よりもスマホが大切なんだなぁ……と思った。
「陽翔、お前、今日は駄目だって言っただろう」
陽翔君に向かって、日下部君はキツめに言った。
「アイツが夏休みだからって、友達を泊めるとかで、昼間からキャーキャーうるさいから、お兄だけが頼りなんだよ。お兄が家に居たら、更にアイツら、うるさかったと思う」
不貞腐れた様に頬を膨らませて、日下部君にアピールする陽翔君。アイツ?
「愛音(あいね)の友達が来てるのか……。確かに友達連中が泊まりに来てたら、陽翔は居づらいよな。それならそうと先に言えよ。電話でも泊まらせてしか言わないし……」
日下部君は陽翔君に近寄り、頭をグリグリと撫でる。頭から手を離された後、クシャクシャになった髪を陽翔君は手ぐしで直す。あいね?陽翔君の下にも妹が居たのかな?初耳だ。
「前までは、それでもオッケーだったから来てから話せば良いと思ってたし……。まぁ、断れた理由も分かるけど……。彼女、いつ出来たの?一緒に住んでるの?」
陽翔君が日下部君に向かって問いただす。日下部君は冷静な態度で「うん、一緒に住んでる」とだけ、伝えた。それを聞いた陽翔君は急に悲しそうな顔をして、「分かった」と呟いた後に、背負ってきたリュックの中をガサガサと弄りチャックを閉めた。
「じゃあ、帰るわ」
「家に帰るのか?」
「んー、友達に泊まって良いか聞いてみる。ダメなら、また考えるわ……」
日下部君との会話の後に陽翔君はリュックを背負って部屋を出ていこうとしたので、私は咄嗟に止めた。
「陽翔君が良ければ、泊まっていって。私は私の部屋があるし、寝る場所ならちゃんとあるから。ご飯もね、陽翔君の分も作ってるし、心配しないで大丈夫だから!」
私の言葉に立ち止まり、何も言わずに日下部君の顔をじっと見ている陽翔君。私も自然と目線を日下部君の方へ向ける。日下部君が良いと言わなければ、陽翔君はどうすることも出来ないよね。私達の眼差しに耐えられなくなった日下部君は、「仕方ない。今日だけだぞ」と呆れ顔で言った。
夕飯の支度をしている内に陽翔君と日下部君はお風呂を済ませた後はソファーに並んで座り、ゲームをしている。どうやら、スマホアプリの同じオンラインゲームをしているらしい。楽しそうな声が聞こえる。
年の離れた兄弟だけれど仲が良い。そういうの、何だか良いなぁ。私は一人っ子だから、兄弟が居るって憧れだった。特にお兄ちゃんかお姉ちゃんが欲しくて、幼い頃はサンタさんにお願い事をしてみた。今思い返せば、それは絶対に叶うはずのない願いでサンタさんも困り果てていただろうなぁ。
「ご飯、食べよう!」
カウンターキッチンから二人に声をかける。テーブル上には唐揚げやピザ、サラダなどが並んだ。
「今日はおかずが沢山あるな」
「陽翔君も居るから、張り切っちゃった!……でも、ピザはレトルトでごめんね」
日下部君は何種類も並んでいる食卓に驚いていた。陽翔君は何も言わないが、日下部君に促されて、二人は隣通しに座った。有り合わせの材料とレトルトでどうにか乗り切った感じ。二人分しか買い置きしてなかったから、量は少ないけれど、品数は多め。冷蔵庫の中身はスカスカになってしまったけれど、陽翔君も喜んでくれると良いなぁ……。
陽翔君は、「いただきます」とだけ言ってモグモグと食べ始めた。
「陽翔君には妹が居るの?」
陽翔君に声をかけたのだが照れくさいのか、頷くだけだった。
「愛音だよ。今は中二。今どきの中学生って感じでテンション高くて、人生楽しそうに過ごしている奴。今度、会わせるから」
「愛音ちゃんか、会える日が楽しみだなぁ」
陽翔君は見た目は日下部君の学生時代に似ているけれど、愛音ちゃんも似ているのかな?似ているとしたら、美人さんになりそう。
「……お姉さんの都合の良い日に連れて来る。でも、アイツ、本当にうるさいからヤバイけど、それでも良いの?」
黙って話を聞きながら、御飯を食べていた陽翔君が急に口を開いた。目線は合わせてくれないけれど、私に話をかけてくれる。
「勿論!どんな愛音ちゃんにも会いたいよ」
私は陽翔君に微笑み返すと、彼はそっぽを向いてしまった。そんな反応も、思春期だから仕方ないか……。日下部君の妹ちゃんに興味が湧いているから、そんな日が本当に来る事を望む。
ガタンッ!
陽翔君が寝ているソファーから、鈍い音が聞こえた。咄嗟に陽翔君の方向に目をやると、無意識の内に寝返りを打とうとしてソファーから転げ落ちた様だ。転げ落ちた時にテーブルに腕がぶつかり、鈍い音がしたらしい。
「いてて……」
体制を崩した陽翔君は完全に目が覚めたらしく、アクビをしながら立ち上がる。転げ落ちても、手にはスマホを握り締めていたので、今時の子は何よりもスマホが大切なんだなぁ……と思った。
「陽翔、お前、今日は駄目だって言っただろう」
陽翔君に向かって、日下部君はキツめに言った。
「アイツが夏休みだからって、友達を泊めるとかで、昼間からキャーキャーうるさいから、お兄だけが頼りなんだよ。お兄が家に居たら、更にアイツら、うるさかったと思う」
不貞腐れた様に頬を膨らませて、日下部君にアピールする陽翔君。アイツ?
「愛音(あいね)の友達が来てるのか……。確かに友達連中が泊まりに来てたら、陽翔は居づらいよな。それならそうと先に言えよ。電話でも泊まらせてしか言わないし……」
日下部君は陽翔君に近寄り、頭をグリグリと撫でる。頭から手を離された後、クシャクシャになった髪を陽翔君は手ぐしで直す。あいね?陽翔君の下にも妹が居たのかな?初耳だ。
「前までは、それでもオッケーだったから来てから話せば良いと思ってたし……。まぁ、断れた理由も分かるけど……。彼女、いつ出来たの?一緒に住んでるの?」
陽翔君が日下部君に向かって問いただす。日下部君は冷静な態度で「うん、一緒に住んでる」とだけ、伝えた。それを聞いた陽翔君は急に悲しそうな顔をして、「分かった」と呟いた後に、背負ってきたリュックの中をガサガサと弄りチャックを閉めた。
「じゃあ、帰るわ」
「家に帰るのか?」
「んー、友達に泊まって良いか聞いてみる。ダメなら、また考えるわ……」
日下部君との会話の後に陽翔君はリュックを背負って部屋を出ていこうとしたので、私は咄嗟に止めた。
「陽翔君が良ければ、泊まっていって。私は私の部屋があるし、寝る場所ならちゃんとあるから。ご飯もね、陽翔君の分も作ってるし、心配しないで大丈夫だから!」
私の言葉に立ち止まり、何も言わずに日下部君の顔をじっと見ている陽翔君。私も自然と目線を日下部君の方へ向ける。日下部君が良いと言わなければ、陽翔君はどうすることも出来ないよね。私達の眼差しに耐えられなくなった日下部君は、「仕方ない。今日だけだぞ」と呆れ顔で言った。
夕飯の支度をしている内に陽翔君と日下部君はお風呂を済ませた後はソファーに並んで座り、ゲームをしている。どうやら、スマホアプリの同じオンラインゲームをしているらしい。楽しそうな声が聞こえる。
年の離れた兄弟だけれど仲が良い。そういうの、何だか良いなぁ。私は一人っ子だから、兄弟が居るって憧れだった。特にお兄ちゃんかお姉ちゃんが欲しくて、幼い頃はサンタさんにお願い事をしてみた。今思い返せば、それは絶対に叶うはずのない願いでサンタさんも困り果てていただろうなぁ。
「ご飯、食べよう!」
カウンターキッチンから二人に声をかける。テーブル上には唐揚げやピザ、サラダなどが並んだ。
「今日はおかずが沢山あるな」
「陽翔君も居るから、張り切っちゃった!……でも、ピザはレトルトでごめんね」
日下部君は何種類も並んでいる食卓に驚いていた。陽翔君は何も言わないが、日下部君に促されて、二人は隣通しに座った。有り合わせの材料とレトルトでどうにか乗り切った感じ。二人分しか買い置きしてなかったから、量は少ないけれど、品数は多め。冷蔵庫の中身はスカスカになってしまったけれど、陽翔君も喜んでくれると良いなぁ……。
陽翔君は、「いただきます」とだけ言ってモグモグと食べ始めた。
「陽翔君には妹が居るの?」
陽翔君に声をかけたのだが照れくさいのか、頷くだけだった。
「愛音だよ。今は中二。今どきの中学生って感じでテンション高くて、人生楽しそうに過ごしている奴。今度、会わせるから」
「愛音ちゃんか、会える日が楽しみだなぁ」
陽翔君は見た目は日下部君の学生時代に似ているけれど、愛音ちゃんも似ているのかな?似ているとしたら、美人さんになりそう。
「……お姉さんの都合の良い日に連れて来る。でも、アイツ、本当にうるさいからヤバイけど、それでも良いの?」
黙って話を聞きながら、御飯を食べていた陽翔君が急に口を開いた。目線は合わせてくれないけれど、私に話をかけてくれる。
「勿論!どんな愛音ちゃんにも会いたいよ」
私は陽翔君に微笑み返すと、彼はそっぽを向いてしまった。そんな反応も、思春期だから仕方ないか……。日下部君の妹ちゃんに興味が湧いているから、そんな日が本当に来る事を望む。
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