誘惑の延長線上、君を囲う。
ひと夏の思い出【1】
お盆期間の前後を含めて、一週間は休暇がある。その期間を利用して、日下部君がリゾートホテルのビアガーデン宿泊プランを予約してくれた。リゾートホテルは避暑地と呼ばれる自然に囲まれている場所にある。
「ビールもカクテルも飲み放題って凄いなぁ!こんなにオシャレなビアガーデンに初めて来たよ」
サラリーマンのおじ様方が沢山居る屋上ビアガーデンとかならば、前の職場の方々に誘われて行ったことがある。おじ様達が沢山居る屋上ビアガーデンも開放感が溢れていて好きなのだが、このビアガーデンは家族連れも居るし、若いカップルから年配の御夫婦も楽しんでいる。そんな和やかな雰囲気を持ちつつ、場所は緑に囲まれている事が、とてつもなく良い……!
「連休中はお互いに予定がなかったから、琴葉と来られて良かったよ」
「予定なんて毎年ないよ。だって、おひとり様だから……」
本当はおひとり様の私の為に毎年、友達が一日は予定を空けといてくれるのだけれど……、今年は予定があると言って断ってしまった。『彼氏が出来たの?』と聞かれたが、彼氏では無いので仕事が忙しいとか適当な事を言ってはぐらかした。
「琴葉はもう、おひとり様じゃないでしょ?目の前に未来の旦那様が居るって言うのに……」
日下部君は地ビールを飲み干しながら、小さな声でボソボソと呟いた。私は聞こえないフリをして、目の前にあるチョリソーを口に運ぶ。こんな時、どう答えたら良いのかが分からない。彼女ならば、『そうだね』と答えられるのに。
「じ、地ビールって美味しいよね。今飲んでるのは一般的なビールよりも美味しいと思うなぁ」
小さな製造所で作られたクラフトビールと呼ばれる、生産者が選び抜いた麦が使われている地ビールも飲み放題なプラン。ここの地ビールはフルーティーな喉越しで飲みやすく、ほのかな甘みも感じて虜になりそう。
「そうだな。……酒、オカワリして来る」
返答に困り、はぐらかしてしまった。日下部君は、そんな私に対して溜め息を落とすとオカワリをしにバーカウンターへと向かった。
日下部君が本当に私をお嫁さん候補として見てくれているのならば、気持ちを素直に受け取りたい。しかし、日下部君からは『好きだ』とは言われないままに身体を重ねては、生活を共にしている。
たった一言なのに、日下部君の口からは聞けない。だから、いつまで経っても宙ぶらりんのままな関係。私から言おうにも、関係が壊れてしまう事を恐れてしまい、言い出せない。
日下部君が以前、無意識のままに口に出した『あきば』とは、秋葉さんの事だ。秋葉さんは私よりも年下で天然美人な女性らしい人。それに比べて私ときたら、酒好きだし、可愛げも無い30オーバーな人。自分で言うのも何だけれど、お肌は荒れてないと思うんだよね。それだけは自信がある。
お肌が荒れてないとはいえ、年齢はどうする事も出来ないし、秋葉さんみたいに女性らしくも振る舞えない。私の外見は女性だとしても、内面はおじさん寄りなのかもしれないよなぁ……。カフェよりも居酒屋大歓迎だし、一人でラーメン屋も構わず入れるし。秋葉さんなら、きっと一人でしない事も私は一人でも出来る。秋葉さんと比べる事が間違っているのかもしれないが、どうしても比べてしまう。
自分とはどこが違って、どういう所が日下部君が好きなのか、想像する。答えは明確だから、比べなくても良いのにね……。
カタンッ。
日下部君が戻って来て、ロックグラスをテーブル上のコースターに乱暴に置く。ロックグラスに注がれている透明な液体がテーブルに飛び散った。
「な、何を怒ってるの……?」
恐る恐る尋ねる。
「怒ってない」
「いやいや、怒ってるでしょ?」
日下部君は明らかに顔がムスッとしていて、私の方を見ようともしない。原因は私自身だと知っているけれど、私はあくまでも知らない振りをする。
「ビールもカクテルも飲み放題って凄いなぁ!こんなにオシャレなビアガーデンに初めて来たよ」
サラリーマンのおじ様方が沢山居る屋上ビアガーデンとかならば、前の職場の方々に誘われて行ったことがある。おじ様達が沢山居る屋上ビアガーデンも開放感が溢れていて好きなのだが、このビアガーデンは家族連れも居るし、若いカップルから年配の御夫婦も楽しんでいる。そんな和やかな雰囲気を持ちつつ、場所は緑に囲まれている事が、とてつもなく良い……!
「連休中はお互いに予定がなかったから、琴葉と来られて良かったよ」
「予定なんて毎年ないよ。だって、おひとり様だから……」
本当はおひとり様の私の為に毎年、友達が一日は予定を空けといてくれるのだけれど……、今年は予定があると言って断ってしまった。『彼氏が出来たの?』と聞かれたが、彼氏では無いので仕事が忙しいとか適当な事を言ってはぐらかした。
「琴葉はもう、おひとり様じゃないでしょ?目の前に未来の旦那様が居るって言うのに……」
日下部君は地ビールを飲み干しながら、小さな声でボソボソと呟いた。私は聞こえないフリをして、目の前にあるチョリソーを口に運ぶ。こんな時、どう答えたら良いのかが分からない。彼女ならば、『そうだね』と答えられるのに。
「じ、地ビールって美味しいよね。今飲んでるのは一般的なビールよりも美味しいと思うなぁ」
小さな製造所で作られたクラフトビールと呼ばれる、生産者が選び抜いた麦が使われている地ビールも飲み放題なプラン。ここの地ビールはフルーティーな喉越しで飲みやすく、ほのかな甘みも感じて虜になりそう。
「そうだな。……酒、オカワリして来る」
返答に困り、はぐらかしてしまった。日下部君は、そんな私に対して溜め息を落とすとオカワリをしにバーカウンターへと向かった。
日下部君が本当に私をお嫁さん候補として見てくれているのならば、気持ちを素直に受け取りたい。しかし、日下部君からは『好きだ』とは言われないままに身体を重ねては、生活を共にしている。
たった一言なのに、日下部君の口からは聞けない。だから、いつまで経っても宙ぶらりんのままな関係。私から言おうにも、関係が壊れてしまう事を恐れてしまい、言い出せない。
日下部君が以前、無意識のままに口に出した『あきば』とは、秋葉さんの事だ。秋葉さんは私よりも年下で天然美人な女性らしい人。それに比べて私ときたら、酒好きだし、可愛げも無い30オーバーな人。自分で言うのも何だけれど、お肌は荒れてないと思うんだよね。それだけは自信がある。
お肌が荒れてないとはいえ、年齢はどうする事も出来ないし、秋葉さんみたいに女性らしくも振る舞えない。私の外見は女性だとしても、内面はおじさん寄りなのかもしれないよなぁ……。カフェよりも居酒屋大歓迎だし、一人でラーメン屋も構わず入れるし。秋葉さんなら、きっと一人でしない事も私は一人でも出来る。秋葉さんと比べる事が間違っているのかもしれないが、どうしても比べてしまう。
自分とはどこが違って、どういう所が日下部君が好きなのか、想像する。答えは明確だから、比べなくても良いのにね……。
カタンッ。
日下部君が戻って来て、ロックグラスをテーブル上のコースターに乱暴に置く。ロックグラスに注がれている透明な液体がテーブルに飛び散った。
「な、何を怒ってるの……?」
恐る恐る尋ねる。
「怒ってない」
「いやいや、怒ってるでしょ?」
日下部君は明らかに顔がムスッとしていて、私の方を見ようともしない。原因は私自身だと知っているけれど、私はあくまでも知らない振りをする。
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