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誘惑の延長線上、君を囲う。

桜井 響華

恋人みたいな過ごし方【1】

「……ねぇ、日下部君、起きて……!」

「んー?……あれ、映画は?」

ふんぞり返って寝ていたベンチシートから上半身を起こしたが、完全に寝ぼけている。

「もう終わったよ。私達が最後だから急いで出よう」

日下部君をベンチシートから立たせた。大きなアクビをしている日下部君の背中を押して、半ば無理矢理にシアターから追い立てる。

レイトショーを見に行こうと自分から誘って来たが、眠くて寝てしまった日下部君。ラブミステリーものだったが断じて静かな音ではなかったはずだが、昨日からの寝不足には勝てなかったようだ。やけに熟睡していたから、普段からの仕事の疲れも出ていたのかもしれない。

そんな中、私に付き合ってくれている。どんな思惑から無理してまで付き合ってくれているのか?

「結末言わないでね!ブルーレイ出たらレンタルするから」

映画館を出て、コインパーキングまで歩く。その間に夕飯を食べる良いお店はないか吟味しながら、歩幅を小さくゆっくりと進む。

「……結末も何も中盤も寝てたよ」

「はぁ?寝てないし」

ギロリ、と鋭い目付きで私を睨む。まるで子供みたいに否定している日下部君が可愛らしく思えて、笑みがこぼれた。

「あ、良い匂い!ラーメン屋さん!」

「夕飯、ラーメンにする?」

「焼肉の匂いもして来た。串カツも食べたい……!」

飲食店が建ち並ぶ場所があり、辺りからは良い香りが漂っていた。若い人達やサラリーマン達が出入りしているのが伺える。今日は金曜日だもんね、そりゃ賑わうよね。

「佐藤、意外にもガッツリ系が好きなんだな」

「ち、違うもん!良い匂いがしたから……!」

「寝たら腹減ったから、ガッツリ系付き合います」

「だから、違うって!」

慌てて打ち消したが、ラーメンとか焼肉とか本当は大好き。女友達と外食する時はオシャレなお店が多いから、ガッツリ系やラーメン屋さんは行かない。行きたくても女一人ではどちらも行きにくく、しばらく満喫していなかった為、やたらと視覚と嗅覚を刺激されたのだ。

「焼肉ってお酒飲みたくなるよね」

私が食べたそうにしていたのが滲み出ていたのか、夕飯は焼肉になった。

「今日は俺は飲まないけど、遠慮しないで飲んでいいよ」

「……日下部君が運転だから、今日は止めとく」

場所的に車を置いていくには不便だし、昨日の今日だから日下部君はお酒をセーブしているらしい。

「帰ってから飲もう。送って行くから荷物取りに帰って、俺ん家来いよ」

「……は?」

「佐藤はどうせ、明日も用事がないんだろ。だったら、今日も泊まって行けよ」

「何で用事がないって決めつけるの?」

「……俺の勘」

確かに明日も用事なんてないですけど!サンチュを巻きながら平然とお肉を食べている日下部君は、私を今日も泊まらせてどうするのだろう?

「暇なんだったら、どこか連れて行ってやるよ。どこが良い?」

「随分と上から目線ね!どうせ日下部君だって暇だから私を誘ってるんだろうから、しょうがないから付き合ってあげるよ」

「素直じゃないねぇ……」

「どっちが?」

まともに会話してたら、急な誘いに心拍数が上がってドギマギしてしまい、対応なんて出来ない。けれども、素直に行きたいと言える私でもなく、結局は可愛くない私が顔を出して対応する。

心底嬉しいと叫びたい位なんだよ。高校時代の恋愛を拗らせてるからか素直になれずに子供みたいだ。

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