誘惑の延長線上、君を囲う。
愛も恋も存在しない【1】
「佐藤、先にシャワー浴びて。着替えはこれしかないけど我慢して。着てた服は洗って乾燥機にかけるから、洗濯機に入れちゃって」
「……うん」
日下部君からバスタオルとパーカー、部屋着のズボンを受け取る。びしょ濡れの私は部屋に入る前に玄関先にてタオルで髪をわしゃわしゃと拭かれた後、バスルームに直行させられた。まるで子供みたいだ。日下部君に多大な迷惑をかけている。
バスルーム脇にあるドラム式の洗濯機の中に濡れた服を放り込む。身体が雨に濡れていてベタベタで気持ちが悪い。シャワーを浴びながら、私はものすごく虚しくなった。日下部君に迷惑をかけてまで何をやっているのだろう、私は……。日下部君に気を遣わせた挙句に勝手に押しかけてストーカーみたいじゃないの。
バスルームから出て、借りた服に着替える。日下部君に借りたパーカーも大きいし、ズボンもウエストがずり落ちてしまうし長い。引きずってしまうから、もはや下は履かない方が良いのかな?
「く、日下部君……。あのね、ちょっと…」
脱衣場からちょこんと顔を出し、日下部君を見つけて手招きする。
「どうしたの?やっぱり大きかった?」
「……うん。上はどうにか大丈夫なんだけど、下がずり落ちてしまうし長い……」
「ちょっと待ってて」
代わりにハーフパンツを持って来てくれた日下部君。
「……部屋着は大きめなのしかないから、代わりの物がないからごめん。ハーパンが駄目なら仕方ないから、上だけ着てて」
ハーフパンツは紐がついていたから何とか大丈夫だった。髪を乾かしてから、脱衣場を出た。
「……シャワーありがとう」
「部屋着はゆったり着たい派で俺でも大きいから、佐藤にはもっと大きいよな」
恥ずかしながらも日下部君の前に現れた。日下部君は私を見てすぐに目を反らし、「シャワー浴びてくる」と言ってバスルームに消えた。
これが彼シャツならぬ彼パーカーと言うやつか。私には初めての体験だ。袖が長くて肩幅が広いから肩から落ちてきてしまい、丈も長い。柔軟剤の香りも良い匂いがする。ソファーに座り、日下部君を待つが落ち着かないので、三角座りの体制で座っていた。
「佐藤……?寝ちゃったの?」
「……ひゃ、」
どうやらソファーの隅で座っている間にウトウトしていたらしい。頬に缶チューハイをピタリとつけられ、冷たさで目が覚めた。
「明日も仕事だから、もう寝る?」
日下部君は肩にバスタオルをかけ、濡れた髪のままで缶チューハイを飲んでいた。濡れた髪が日下部君の男の色気の引き立て役になり直視出来ない。渡された缶チューハイの缶を開けて一口飲んでから、「コレ飲んでから寝る」と言った。日下部君は飲んでいた缶チューハイをテーブルに置くと髪を乾かしてから、私の隣に座った。
「洗濯はタイマーかけたから、朝には乾いてる。出勤前に自宅に帰って着替えてから行くの?」
「……うん、そうするつもり」
日下部君は右手をソファーの背にかけて、私の方向を向くように話しているけれど、私は目を合わせられないので左側に顔を向けている。再開した時は日下部君が泥酔に近かったので、どうせ覚えてないかも?との考えが強かったから気にしなかったけれど、今はほろ酔い位だもの。顔が火照っているのを見られたくない。
「めんどくさいからそのまま着ていけば良いのに。何なら、車で職場まで送ろうか?」
「そ、そんな事して誰かに見られたら、日下部君が困るでしょ。私達は付き合ってもいないんだし……」
正面を向きゴクゴクと一気に缶チューハイを飲み、顔を下に向ける。
「……じゃあ、どんな関係?」
「ど、どんな関係って……」
日下部君は下を向いていた私の顔を覗き込む。私は驚いて、ソファーの背に反り返る。私はきっと耳まで真っ赤になり、酷い顔をしていると思う。胸の高鳴りも止まらない。
「友達……?」
聞かれても私は何も答えられない。友達だったけれど、大人の関係を結んでしまった私達は一体何なのだろう?自分から、あの日の事は成り行きだから忘れて欲しいと言っておきながらも、引きずっているのは私。
「友達なら、一人暮らしの男の所に着いてきちゃ駄目だよね?……しかも、夜に」
日下部君は私の顔を見つめながら、私の髪に触れた。
「……うん」
日下部君からバスタオルとパーカー、部屋着のズボンを受け取る。びしょ濡れの私は部屋に入る前に玄関先にてタオルで髪をわしゃわしゃと拭かれた後、バスルームに直行させられた。まるで子供みたいだ。日下部君に多大な迷惑をかけている。
バスルーム脇にあるドラム式の洗濯機の中に濡れた服を放り込む。身体が雨に濡れていてベタベタで気持ちが悪い。シャワーを浴びながら、私はものすごく虚しくなった。日下部君に迷惑をかけてまで何をやっているのだろう、私は……。日下部君に気を遣わせた挙句に勝手に押しかけてストーカーみたいじゃないの。
バスルームから出て、借りた服に着替える。日下部君に借りたパーカーも大きいし、ズボンもウエストがずり落ちてしまうし長い。引きずってしまうから、もはや下は履かない方が良いのかな?
「く、日下部君……。あのね、ちょっと…」
脱衣場からちょこんと顔を出し、日下部君を見つけて手招きする。
「どうしたの?やっぱり大きかった?」
「……うん。上はどうにか大丈夫なんだけど、下がずり落ちてしまうし長い……」
「ちょっと待ってて」
代わりにハーフパンツを持って来てくれた日下部君。
「……部屋着は大きめなのしかないから、代わりの物がないからごめん。ハーパンが駄目なら仕方ないから、上だけ着てて」
ハーフパンツは紐がついていたから何とか大丈夫だった。髪を乾かしてから、脱衣場を出た。
「……シャワーありがとう」
「部屋着はゆったり着たい派で俺でも大きいから、佐藤にはもっと大きいよな」
恥ずかしながらも日下部君の前に現れた。日下部君は私を見てすぐに目を反らし、「シャワー浴びてくる」と言ってバスルームに消えた。
これが彼シャツならぬ彼パーカーと言うやつか。私には初めての体験だ。袖が長くて肩幅が広いから肩から落ちてきてしまい、丈も長い。柔軟剤の香りも良い匂いがする。ソファーに座り、日下部君を待つが落ち着かないので、三角座りの体制で座っていた。
「佐藤……?寝ちゃったの?」
「……ひゃ、」
どうやらソファーの隅で座っている間にウトウトしていたらしい。頬に缶チューハイをピタリとつけられ、冷たさで目が覚めた。
「明日も仕事だから、もう寝る?」
日下部君は肩にバスタオルをかけ、濡れた髪のままで缶チューハイを飲んでいた。濡れた髪が日下部君の男の色気の引き立て役になり直視出来ない。渡された缶チューハイの缶を開けて一口飲んでから、「コレ飲んでから寝る」と言った。日下部君は飲んでいた缶チューハイをテーブルに置くと髪を乾かしてから、私の隣に座った。
「洗濯はタイマーかけたから、朝には乾いてる。出勤前に自宅に帰って着替えてから行くの?」
「……うん、そうするつもり」
日下部君は右手をソファーの背にかけて、私の方向を向くように話しているけれど、私は目を合わせられないので左側に顔を向けている。再開した時は日下部君が泥酔に近かったので、どうせ覚えてないかも?との考えが強かったから気にしなかったけれど、今はほろ酔い位だもの。顔が火照っているのを見られたくない。
「めんどくさいからそのまま着ていけば良いのに。何なら、車で職場まで送ろうか?」
「そ、そんな事して誰かに見られたら、日下部君が困るでしょ。私達は付き合ってもいないんだし……」
正面を向きゴクゴクと一気に缶チューハイを飲み、顔を下に向ける。
「……じゃあ、どんな関係?」
「ど、どんな関係って……」
日下部君は下を向いていた私の顔を覗き込む。私は驚いて、ソファーの背に反り返る。私はきっと耳まで真っ赤になり、酷い顔をしていると思う。胸の高鳴りも止まらない。
「友達……?」
聞かれても私は何も答えられない。友達だったけれど、大人の関係を結んでしまった私達は一体何なのだろう?自分から、あの日の事は成り行きだから忘れて欲しいと言っておきながらも、引きずっているのは私。
「友達なら、一人暮らしの男の所に着いてきちゃ駄目だよね?……しかも、夜に」
日下部君は私の顔を見つめながら、私の髪に触れた。
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