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誘惑の延長線上、君を囲う。

桜井 響華

夜が明ける【4】

面接ではないにしろ、私は何処に連れて行かれるのかな?不安に思いつつも、高校時代の昔話を楽しんでいた。日下部君はあの夜の話には一切触れず、思い出を語りながら車を運転している。

スーツ姿の日下部君が車に乗って現れた時、心臓が破裂するかと思う位にバクバクしていた。スーツ姿は高校時代の制服とは格が違う位に格好良い。正に仕事の出来る男に見えて、大人の色気を感じた。

心を踊らせながらも、心の奥底では苦痛だった。手に入らないと分かっているからこそ、思わせ振りに思えてしまう生殺しの時間が辛い。

「ここから少し歩くから」

コインパーキングに車を停め、オシャレな街中を二人で歩き出す。はたから見たらデートに見えるかな?

「……今日、面接じゃないって言ったからワンピース着てきたの?」

「……うん、何となくね。天気も良いし、ワンピースをずっとしまったままで可哀想だったってゆーのもあるけど」

期待してはいけないのに、普段はなかなか着ないワンピースなんかを着てきた私は滑稽かもしれない。

「そう。初めて見た」

こうして一緒に外出する事なんてなかったので、日下部君の前では制服がほとんどだった。私がワンピースを持っていた事を不思議に思っているのかな?

「私もスーツ姿の日下部君は成人式以来だよ。スリムのスーツが様になってるじゃん」

私は日下部君の一歩後ろを歩いていたので、背中をバシバシと叩く。なるべく正常心で居る為に茶化したり、冗談言ってなきゃ、二人で居るのはキツい。

「相変わらず、委員長の叩き方は痛い……」

「ご、ごめんね、痛かった?」

「ぷ、変わってないな、本当に。いつも痛いって突っ込みを入れると急に謝って来る癖。そこまで痛くないから平気だよ」

「……もう!」

日下部君が些細な事に吹き出して、笑っている。少しだけ、高校時代にタイムスリップしたかのような感覚に陥る。私も釣られて自然に笑みが零れた。

「……ここが、第3号店。今後、什器が搬入されてくるから、今はまだ何もない」

私は一歩後ろではなく、話している内にいつの間にか横に並んで歩いていた。そんな事にふと気付いた直後に日下部君が立ち止まった。目の前の店舗には、近日オープンと貼り紙がしてある。

「とりあえず、中に入って話そう」

私は縦に頭を振り、承諾する。日下部君に案内され、扉の奥のバックスペースに向かう。この場所は休憩室になるらしく、椅子が二脚だけが置いてあった。

「面接の時に詳しく話すけど、地方にも店舗を拡大してる最中だから、それまではこの店舗で研修して、エリアマネージャーになるまでの準備期間にして欲しい」

「はい」

「俺としては委員長を採用したいと思ってる」

「ありがとうございます」

「それよりも……」

日下部君は高校時代の話や仕事の話をしていたから、もうこないだの件についてはスルーしているのだと思っていた。だがしかし、非常に雲行きは怪しい。私から目線を外して言いにくそうにしているものの、追求されそうな雰囲気だったりする。

「俺、記憶が曖昧なんだけど……、委員長とその……」

日下部君は照れくさそうに言葉に出すのをのを躊躇っている。

「……エッチしたよ」

私はもう逃げられないと思ったので、はっきりと伝えた。日下部君には不本意かもしれないけれど、男女の関係になってしまったのは真実だから。

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