話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

誘惑の延長線上、君を囲う。

桜井 響華

夜が明ける【2】

大学卒業後に冷凍食品メーカーの営業として入社したが、数年後に異物混入事件が発生する。異物混入事件はアルバイトに来ていた若者が逮捕されると言う結末を迎えて収束した。その後の業績悪化により自己破産手続きを取り、会社自体がなくなる。元々大きな会社ではなく給料体制もそこそこだったが社長や奥さん、手伝いをしていた息子さん夫婦や近所のおじさん社員など働いている方々の人柄が良くて大好きだった。

おじさん社員に連れられてお得意先を回ったり、新規開拓を狙い自分のヒールが擦り切れる程歩いて、時には筋肉痛にもなる。楽な事ばかりではなかったが毎日が充実していた。

大学在住中に大手企業の面接も何度か受けて二社から採用を言い渡されたが、冷凍食品メーカーの社長達の人柄に惚れ込んでしまい、そちらに乗り換えた。

誰もが知っている大手企業からの採用を断ったと知った周囲からは『馬鹿じゃないの!』と非難されたが、大手企業に就職するだけが人生の幸せではないので、私は全く気にしなかった。

そもそも冷凍食品メーカーに就職したのは自分の大好きなカニクリームコロッケを作っていたのがきっかけ。初めの内に受けた就職試験は手応えを感じず、煮詰まり始めていた。ネットからも募集案件を探し当て、自分の大好きな子供の頃から馴染みのあるカニクリームコロッケを作っている会社だと知り、採用試験を受けた。

勤めていた冷凍食品メーカーがなくなり、就職先を探していた私は投げやりになって、常に募集をかけていた有名な住宅メーカーに入社する。住宅メーカーは主に男性が活躍していて、自分は何故営業で入社してしまったのか悔いていた。

───そんなこんなで、住宅メーカーは向いていなかったので辞めて正解。

歩道の信号待ちの時、今日の空は雲一つない綺麗な青空だと気付く。こんなに晴れ晴れとして気持ちの良い日は、せっかくだからテラス席で程良く吹いている春風に当たりながらゆっくりとランチでも取る事に決定した。

啖呵をきって午前中の内に仕事を辞めてしまったので、おひとり様の私は急に時間が出来てしまった。そんな私は、お気に入りのカフェでゆったりと紅茶を飲み、ネットサーフィン中。

「あっ!」

就活サイトを眺めていると輸入雑貨を扱うお店がエリアマネージャーを募集しているとあった。私は興味が湧いたのでつい、声をあげてしまっていた。周囲からは驚きの視線を感じる。募集要項には学歴、経験、年齢は問わずと記載されている。

”Иatural+”ナチュラルプラス輸入雑貨販売。大元の会社は彩羽コーポレーション。彩羽コーポレーションと言えば、他にも雑貨店やカフェを経営している。私もここの雑貨やカフェは好きで、お世話になっている。天職になったら良いな、と思った日が吉日、カフェを出てから問い合わせをしてみた。

早速、履歴書と職務経歴書をメールに添付する事になり、自宅に帰宅するとすぐに取りかかり翌日の朝には送信した。

面接の日はいつだろう?連絡を待っている間、冷凍食品メーカーに就職する時みたいにワクワクしている。

夕方、見慣れない番号から連絡が来たので出ると彩羽コーポレーションの人事担当者からだった。面接の日程が決まり、事前に彩羽コーポレーションについて下調べをしている時に見知らぬ電話番号からスマホに電話が来た。

誰だろう……?以前、知らない番号からかかって来た時に咄嗟に出てしまったら何かの勧誘だったり、オレオレ詐欺だったので対応するのが面倒だったから、なるべくなら知らない番号には出たくないんだよね。

「……もしもし?」

放置しておくつもりだったのだが、随分と長めのコール音が響いていたので、諦めて恐る恐る電話口に出る。

「委員長?俺、だけど……」

勧誘よりも、オレオレ詐欺よりも、対処するのが難しい人物から電話が来たのだった……。私、電話番号は教えてなかったはずなのに。

「誘惑の延長線上、君を囲う。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く