婚活アプリで出会う恋~幼馴染との再会で赤い糸を見失いました~
業務命令(4)
2月のバレンタインイベントが終了した頃、万智から呼び出された。
仕事帰りに二人でコーヒーショップへ立ち寄る。
「里穂、小田さんの正体がわかったよ!」
万智は社内にいる情報通の女子から、色々と話を集めてきたらしい。
「あの人、以前の会社でも、同じようにストーカーしてたらしいよ。その関係で解雇されたみたい。うちの会社の重役に親戚がいるんだって。そのツテでここに入ったらしいの」
「そっか。……そう言えば、小田さんに案内されたカフェバーで、マスターが前の彼女のことを話題にした時、急に怒り出したことがあった。そういう事情が関係してたんだ……」
「外見からはわからないけど、元々性格の偏った人だったのかもね」
「私……そんな人と、今まで付き合っていたなんて……」
今までのやり取りした記憶が重くのしかかり、思わず両手で頭を抱えた。
「里穂。これはただの事故だよ。たまたま変なのに引っかかっただけ。
気にしちゃダメだよ。社内でも里穂のことを擁護する意見が出てるから、元気出して」
「いつもありがとう、万智。……そう言ってもらえると、ホント救われる」
嬉しい言葉に、思わず涙腺が緩んでくる。
こうして応援してくれる人がいるのだから、もう一度立ち上がらないと……。
心を引き締め、万智に笑顔を向けた。
仕事を終え、レジデンスに戻ると、すぐに夕飯の準備に取り掛かる。
キッチンに立ち、オムライスでも作ろうと玉ねぎをむいた。包丁で半分に割り、刻み始めると目の奥が痛み出す。
すぐに視界がぼやけ始めて、それが玉ねぎのせいなのか、辛い現実のせいなのか、よくわからなくなる。
ボロボロと涙がこぼれるうちに、遥斗が帰ってきてしまった。
「どうした? 泣いてるのか?」
「違うよ。オムライス作るのに、玉ねぎ切ってたから」
「だからって、こんなに必要ないだろ?」
キッチンカウンターには、皮のはがれた玉ねぎが5,6個転がっていた。
遥斗は強引に私の肩を掴むと、こちらの顔を覗き込んでくる。
「里穂、俺の顔を見ろ」
少し見上げると、滲んだ遥斗の顔が見えた。相手は表情を読み取ろうと、視線を合わせてくる。
「直接聞かないが、何があったかは大体知ってる。元の部署に戻りたいんだろ?」
異動を遥斗には伝えていない。きっと、バレンタインイベントに参加していないことで、気がついたのだろう。
「私には向いてなかったのかも。裏方で働く方が気が楽だし」
「そうか……わかった。それなら、里穂にピッタリのプロジェクトがある。参加するか?」
「プロジェクト? 遥斗の会社の話? 他社の私が参加していい仕事なの?」
「まあね。ぜひ里穂に参加してもらいたい」
「わかった。お世話になってる遥斗に頼まれたら、断れないよ」
幼馴染の遥斗に紹介してもらう仕事なら、きっと安心して参加できるかもしれない。
「それまではここにいて、家事をやってもらおうか」
「居候させてもらってるんだから、もちろん、やらせていただきます」
遥斗に向かって笑顔を向けると、彼の手が私の濡れた頬を拭った。
「どうだ? 今夜は一晩中慰めてやろうか?」
「いいえ、結構ですっ!」
ニンマリと笑う遥斗をわざと睨みつけて、はっきりと断りを入れた。
仕事帰りに二人でコーヒーショップへ立ち寄る。
「里穂、小田さんの正体がわかったよ!」
万智は社内にいる情報通の女子から、色々と話を集めてきたらしい。
「あの人、以前の会社でも、同じようにストーカーしてたらしいよ。その関係で解雇されたみたい。うちの会社の重役に親戚がいるんだって。そのツテでここに入ったらしいの」
「そっか。……そう言えば、小田さんに案内されたカフェバーで、マスターが前の彼女のことを話題にした時、急に怒り出したことがあった。そういう事情が関係してたんだ……」
「外見からはわからないけど、元々性格の偏った人だったのかもね」
「私……そんな人と、今まで付き合っていたなんて……」
今までのやり取りした記憶が重くのしかかり、思わず両手で頭を抱えた。
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気にしちゃダメだよ。社内でも里穂のことを擁護する意見が出てるから、元気出して」
「いつもありがとう、万智。……そう言ってもらえると、ホント救われる」
嬉しい言葉に、思わず涙腺が緩んでくる。
こうして応援してくれる人がいるのだから、もう一度立ち上がらないと……。
心を引き締め、万智に笑顔を向けた。
仕事を終え、レジデンスに戻ると、すぐに夕飯の準備に取り掛かる。
キッチンに立ち、オムライスでも作ろうと玉ねぎをむいた。包丁で半分に割り、刻み始めると目の奥が痛み出す。
すぐに視界がぼやけ始めて、それが玉ねぎのせいなのか、辛い現実のせいなのか、よくわからなくなる。
ボロボロと涙がこぼれるうちに、遥斗が帰ってきてしまった。
「どうした? 泣いてるのか?」
「違うよ。オムライス作るのに、玉ねぎ切ってたから」
「だからって、こんなに必要ないだろ?」
キッチンカウンターには、皮のはがれた玉ねぎが5,6個転がっていた。
遥斗は強引に私の肩を掴むと、こちらの顔を覗き込んでくる。
「里穂、俺の顔を見ろ」
少し見上げると、滲んだ遥斗の顔が見えた。相手は表情を読み取ろうと、視線を合わせてくる。
「直接聞かないが、何があったかは大体知ってる。元の部署に戻りたいんだろ?」
異動を遥斗には伝えていない。きっと、バレンタインイベントに参加していないことで、気がついたのだろう。
「私には向いてなかったのかも。裏方で働く方が気が楽だし」
「そうか……わかった。それなら、里穂にピッタリのプロジェクトがある。参加するか?」
「プロジェクト? 遥斗の会社の話? 他社の私が参加していい仕事なの?」
「まあね。ぜひ里穂に参加してもらいたい」
「わかった。お世話になってる遥斗に頼まれたら、断れないよ」
幼馴染の遥斗に紹介してもらう仕事なら、きっと安心して参加できるかもしれない。
「それまではここにいて、家事をやってもらおうか」
「居候させてもらってるんだから、もちろん、やらせていただきます」
遥斗に向かって笑顔を向けると、彼の手が私の濡れた頬を拭った。
「どうだ? 今夜は一晩中慰めてやろうか?」
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