婚活アプリで出会う恋~幼馴染との再会で赤い糸を見失いました~
優しさに触れて(5)
「まず座ってください。私も安易に飲んで、酔ったから良くなかったんです。それに、自分の意見をはっきり言うべきでした」
小田さんは静かに腰を下ろすと、テーブルの上に置かれた自分の手を見つめながら、言いづらそうに話し出した。
「勝手な提案だけど……もう一度、友達からやり直そう」
その言葉に納得がいかなかった。友達として付き合うという提案もよくわからないし、小田さんに対する感情は既に嫌悪感しかない。
「友達って……どういう意味ですか?」
「里穂ちゃんの都合のいい時にご飯へ行くとか、仕事の愚痴を聞くとか。そんなんでいいから」
小田さんは頭を下げ、必死に頼み込んできた。
「でも……もう、二人で会いたくないんです。だから……」
すると、小田さんの表情が急に強張った。
「アプリで困っていたのを助けたのは誰のおかげだと思う? 里穂ちゃんだって、あの時助かったって言っただろ? もしかして、イベントまで付き合って、僕を都合よく利用したのか?」
突然怒り出したような態度に、驚愕した。
「ちっ、違いますっ。そんな……あの時は、本当に小田さんと付き合うことも考えて……」
「それなら、いいじゃないか。僕は友達からやり直そうって言ってるんだよ」
実際アプリの件で助けてもらっているのは確かだった。けれど、とても以前のように接することはできない。
もし、このまま彼を怒らせてしまったら何をされるか……。
社内では周知されているし、結婚の噂まで出ている。しばらくは友達として過ごして、自然と関係が遠のけば、小田さんも諦めてくれるだろうか。
「わかりました。もしかして、ずっと友達のままになるかもしれないですけど、それでもいいのなら……」
すると、小田さんの表情は一変し、嬉しそうに顔を上げた。
「良かったぁ~。このまま嫌われたらどうしようかと思った。落ち着いて年が越せないところだったよ。ありがとう、里穂ちゃん。今度は一歩ずつ、ゆっくり進もうね」
動悸が激しくなり、体のだるさに加え、頭も痛くなってくる。
話を切り上げて、早くここから出たい。
「ここはね、コース料理が2種類あって選べるんだ。里穂ちゃんの好きな方を注文しようかと思って」
「あの……ごめんなさい。誘ってもらって悪いのですが、本当に具合が悪くて、ご飯も食べられそうにないんです」
小田さんは驚き、すぐに残念そうな顔をした。
「そ、そうなのか……。じゃあ、タクシーで送って……あっ、今度こそ、きちんと送って行くから」
「いえ。一人で帰れますから、大丈夫ですっ。 とにかく、今日は失礼します!」
頭を下げ、荷物を掴むと席を立ち、急いで出口へと向かった。
駅へ戻る足取りが次第に重くなる。
お昼に飲んだ薬の効き目もそろそろ切れたのだろう。
最寄り駅の地下にある店で二人用の小さな丸いケーキを買い、地下鉄に乗り込んだ。
車内は混んでいて、つり革すら掴めない。
それに体調のせいなのか、こうして立っているのも辛くなってくる。
フラフラしながら、電車を降り、やっとのことでレジデンス前まで辿り着いた。
エントランスに入り、エレベーターに乗り込む。足元がフワフワして、視界がぐらつく。
玄関に手をかけ、扉を開けた。
「やっと着いた~……」
荷物を置いて安心したせいか、あまりのだるさに座り込み、目を閉じた。
そこから意識がぼんやりし始め、自分の荒い呼吸だけが耳へと響く……。
小田さんは静かに腰を下ろすと、テーブルの上に置かれた自分の手を見つめながら、言いづらそうに話し出した。
「勝手な提案だけど……もう一度、友達からやり直そう」
その言葉に納得がいかなかった。友達として付き合うという提案もよくわからないし、小田さんに対する感情は既に嫌悪感しかない。
「友達って……どういう意味ですか?」
「里穂ちゃんの都合のいい時にご飯へ行くとか、仕事の愚痴を聞くとか。そんなんでいいから」
小田さんは頭を下げ、必死に頼み込んできた。
「でも……もう、二人で会いたくないんです。だから……」
すると、小田さんの表情が急に強張った。
「アプリで困っていたのを助けたのは誰のおかげだと思う? 里穂ちゃんだって、あの時助かったって言っただろ? もしかして、イベントまで付き合って、僕を都合よく利用したのか?」
突然怒り出したような態度に、驚愕した。
「ちっ、違いますっ。そんな……あの時は、本当に小田さんと付き合うことも考えて……」
「それなら、いいじゃないか。僕は友達からやり直そうって言ってるんだよ」
実際アプリの件で助けてもらっているのは確かだった。けれど、とても以前のように接することはできない。
もし、このまま彼を怒らせてしまったら何をされるか……。
社内では周知されているし、結婚の噂まで出ている。しばらくは友達として過ごして、自然と関係が遠のけば、小田さんも諦めてくれるだろうか。
「わかりました。もしかして、ずっと友達のままになるかもしれないですけど、それでもいいのなら……」
すると、小田さんの表情は一変し、嬉しそうに顔を上げた。
「良かったぁ~。このまま嫌われたらどうしようかと思った。落ち着いて年が越せないところだったよ。ありがとう、里穂ちゃん。今度は一歩ずつ、ゆっくり進もうね」
動悸が激しくなり、体のだるさに加え、頭も痛くなってくる。
話を切り上げて、早くここから出たい。
「ここはね、コース料理が2種類あって選べるんだ。里穂ちゃんの好きな方を注文しようかと思って」
「あの……ごめんなさい。誘ってもらって悪いのですが、本当に具合が悪くて、ご飯も食べられそうにないんです」
小田さんは驚き、すぐに残念そうな顔をした。
「そ、そうなのか……。じゃあ、タクシーで送って……あっ、今度こそ、きちんと送って行くから」
「いえ。一人で帰れますから、大丈夫ですっ。 とにかく、今日は失礼します!」
頭を下げ、荷物を掴むと席を立ち、急いで出口へと向かった。
駅へ戻る足取りが次第に重くなる。
お昼に飲んだ薬の効き目もそろそろ切れたのだろう。
最寄り駅の地下にある店で二人用の小さな丸いケーキを買い、地下鉄に乗り込んだ。
車内は混んでいて、つり革すら掴めない。
それに体調のせいなのか、こうして立っているのも辛くなってくる。
フラフラしながら、電車を降り、やっとのことでレジデンス前まで辿り着いた。
エントランスに入り、エレベーターに乗り込む。足元がフワフワして、視界がぐらつく。
玄関に手をかけ、扉を開けた。
「やっと着いた~……」
荷物を置いて安心したせいか、あまりのだるさに座り込み、目を閉じた。
そこから意識がぼんやりし始め、自分の荒い呼吸だけが耳へと響く……。
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