婚活アプリで出会う恋~幼馴染との再会で赤い糸を見失いました~

春乃未果

お付き合い(6)

「細かいことは後で話そう。こんなところを見られたら噂を広めるだけだから。僕は後から戻るから、里穂ちゃんが先に行って」

そう言われて、もどかしい気持ちでエレベーターに一人乗り込んだ。

彼にとって、みんなに交際が伝わることは、喜ばしい出来事なの……?
いつかはみんなに知られるかもしれない。だけど、今じゃなくても……。
お互いに対する考え方のズレが、納得できなかった。

デスクに戻ると、万智から声が掛かる。

「さっき、小田さんが探しに来たよ。外へ出かけたって伝えたけど、会えた?」

そう尋ねられて、一瞬ドキンとした。

やはり、遥斗と一緒にいたところを目撃されたのかな?
まさか、そんなことないよね……。
小田さんの様子からはそんな気配は感じ取れなかった。

――――はぁっ~……。

考えることが多すぎてオーバーフローしそう。
まだ一日の半分しか過ぎてないのに、既に疲れがピークに達していた。



午後は入力業務中心だったので、ぼんやりとこなしているうちに終業時間になった。

やっぱり遥斗とは、しばらく距離を置かないと……。
早いうちに、置いてある荷物を回収しに行こう。

会社帰りに遥斗のレジデンスへ立ち寄ることにした。
今の時間だったら、遥斗はまだ帰宅していないはずだし、こっそりと荷物だけ取りに行って、後でメッセージを送れば済んでしまう。

地下鉄を乗り継ぎ、駅からレジデンスへと向かった。
豪華なエントランスの灯りが見えてきて、中へ入ろうと近づいた瞬間、エレベーターホールの奥から来る二人の影が目に入る。

――まずい!

雰囲気と背格好で、遥斗だと確信した。
くるりと背を向け、急いで植え込みの暗がりに身を隠す。
様子を伺い、彼のかたわらにいる親し気な様子の人物を見て、ハッとした。

また、あの女性ひとだ!!
同じ会社に勤め、先日遥斗と一緒に歩いていた、あの色っぽい女性だった。

レジデンスから一緒に出て来たってことは、まさか、あの人と――――。

そんな…………。

目の前がぼんやりとかすんでいく。
遥斗が私へささやく言葉は、やはり噓だったようだ。

何を勘違いしてたんだろ……。

駅まで戻る途中、涙がじんわりと浮かび、泣きそうになるのをグッとこらえた。
心のどこかで、純粋に私だけを追いかけているのかも……そんな淡い期待があったから。

結局もてあそばれて、笑われていたんだ……。

荷物のことも忘れ、アパートに戻るため電車に乗り込んだ。
遥斗にこんなにも期待していたなんて。
暗い気持ちのまま電車から降りて階段を少しづつ上がる途中、悲しい気持ちが変化し、だんだん遥斗に対して怒りのような感情が湧いてきた。

どうして遥斗のことでこんなに悩む必要があるんだろう。彼はただ復讐のために現れただけの存在。翻弄ほんろうされる必要なんてないのに。




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