婚活アプリで出会う恋~幼馴染との再会で赤い糸を見失いました~
お付き合い(1)
11月に入り、いよいよクリスマスイベントが近づいてきた。広報宣伝部の準備も日ごとに忙しくなり、残業も増えてくる。
私の担当は、イベント当日に会場で流すアプリ宣伝用の映像を制作すること。
社内で可愛いと評判の経理部、井沢さんにお願いをし、写真を撮らせてもらい、BGMを付け、パソコンで画像編集をしていく。
画像を確認している最中、課長に呼び出された。
「昨日の会議で、君の報告書を見た部長がさ、リアルな意見を発信したいって言いだして。当日鈴河さんに、体験談をステージ上で語ってもらいたい案が出てるんだけど、どうかなぁ?」
突然の提案に驚いた。
私がステージでアプリについて話すってこと!?
相手がもし小田さんだと社内でバレたら……。
二人でステージに祭り上げられそうで怖くなった。
「絶対に無理ですっ!」
拒否すると、課長が苦笑いしてウエーブした髪を掻きむしった。
「部長の提案を、俺の立場で断れると思うかぁ?」
「結局、やらないとまずいんですね……」
「顔出しは無いからさぁ。被り物とかして、司会者の質問に答えてくれれば充分だから。ねっ!!」
広報宣伝部にいる以上、この仕事からは逃れられないようだった。
「わかりました」
仕方なく承諾するしかない。
ランチの時間になり、気が重くなって万智に相談することにした。
「他に若くてかわいい女子がいるのに、どうして私が……」
「里穂、この前も朝会食に呼ばれてたし。色々と、大変だぁ~」
人の苦労も知らないで、万智が面白がるように呟く。
「もしかして私、この部署が向いてないのかも……」
大学を卒業し、新卒でここへ入社して5年目。
総務部や営業部など渡り歩いて、ちょっと華やかな広報宣伝部に憧れて志願したものの、やはり地味な私に、ここは向いていなかったのかもしれない。
「会社も里穂のことを買ってるから抜擢したんでしょ。いつでも話を聞くから、頑張りなよ!」
「万智~」
今回は覚悟して、引き受けるしかないらしい。
* * *
あれから遥斗のレジデンスには戻らず、まっすぐアパートへ帰っている。
そろそろレジデンスに置きっぱなしの荷物を、引き取りに行かないといけない。けれど、遥斗の顔を見ただけで心が揺らぐ気がして、連絡するのをためらっていた。
それに、どうやら後遺症が酷いらしく、メッセージアプリの一覧を見る瞬間、思わず遥斗の名前を探してしまう。
これはかなりの重症らしい。
最近は仕事が大詰めを迎え、平日は遅く帰宅することも増えた。
小田さんとも会う時間が無くなり、頻繁にデートに誘われていたので、来週の土曜日に出掛ける約束をした。
『仕事お疲れ様。最近会えなくて寂しいな。土曜日が待ち遠しいよ』
小田さんはとてもマメな人で、1日に数回はメッセージを送ってくれる。
文面にはいつも、会いたいという文字が躍っていた。
『たまには公園に行って、のんびりお昼でもどうかな?』
『忙しい日が多かったので、いいですね』
『できれば、里穂ちゃんにお弁当作ってもらえたら嬉しいな』
『わかりました。いつもご馳走になっているので、簡単なお弁当で良ければ作りますよ』
料理には自信が無いけど、お礼も兼ねて作ることにした。
私の担当は、イベント当日に会場で流すアプリ宣伝用の映像を制作すること。
社内で可愛いと評判の経理部、井沢さんにお願いをし、写真を撮らせてもらい、BGMを付け、パソコンで画像編集をしていく。
画像を確認している最中、課長に呼び出された。
「昨日の会議で、君の報告書を見た部長がさ、リアルな意見を発信したいって言いだして。当日鈴河さんに、体験談をステージ上で語ってもらいたい案が出てるんだけど、どうかなぁ?」
突然の提案に驚いた。
私がステージでアプリについて話すってこと!?
相手がもし小田さんだと社内でバレたら……。
二人でステージに祭り上げられそうで怖くなった。
「絶対に無理ですっ!」
拒否すると、課長が苦笑いしてウエーブした髪を掻きむしった。
「部長の提案を、俺の立場で断れると思うかぁ?」
「結局、やらないとまずいんですね……」
「顔出しは無いからさぁ。被り物とかして、司会者の質問に答えてくれれば充分だから。ねっ!!」
広報宣伝部にいる以上、この仕事からは逃れられないようだった。
「わかりました」
仕方なく承諾するしかない。
ランチの時間になり、気が重くなって万智に相談することにした。
「他に若くてかわいい女子がいるのに、どうして私が……」
「里穂、この前も朝会食に呼ばれてたし。色々と、大変だぁ~」
人の苦労も知らないで、万智が面白がるように呟く。
「もしかして私、この部署が向いてないのかも……」
大学を卒業し、新卒でここへ入社して5年目。
総務部や営業部など渡り歩いて、ちょっと華やかな広報宣伝部に憧れて志願したものの、やはり地味な私に、ここは向いていなかったのかもしれない。
「会社も里穂のことを買ってるから抜擢したんでしょ。いつでも話を聞くから、頑張りなよ!」
「万智~」
今回は覚悟して、引き受けるしかないらしい。
* * *
あれから遥斗のレジデンスには戻らず、まっすぐアパートへ帰っている。
そろそろレジデンスに置きっぱなしの荷物を、引き取りに行かないといけない。けれど、遥斗の顔を見ただけで心が揺らぐ気がして、連絡するのをためらっていた。
それに、どうやら後遺症が酷いらしく、メッセージアプリの一覧を見る瞬間、思わず遥斗の名前を探してしまう。
これはかなりの重症らしい。
最近は仕事が大詰めを迎え、平日は遅く帰宅することも増えた。
小田さんとも会う時間が無くなり、頻繁にデートに誘われていたので、来週の土曜日に出掛ける約束をした。
『仕事お疲れ様。最近会えなくて寂しいな。土曜日が待ち遠しいよ』
小田さんはとてもマメな人で、1日に数回はメッセージを送ってくれる。
文面にはいつも、会いたいという文字が躍っていた。
『たまには公園に行って、のんびりお昼でもどうかな?』
『忙しい日が多かったので、いいですね』
『できれば、里穂ちゃんにお弁当作ってもらえたら嬉しいな』
『わかりました。いつもご馳走になっているので、簡単なお弁当で良ければ作りますよ』
料理には自信が無いけど、お礼も兼ねて作ることにした。
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